部屋でくつろぐ30
俺達は風呂から出て、部屋に戻った。
ステラ先生のリクエストは今朝食べた刺身だった。もう一度食べたいと。
ま、魚は大量にあるから、ちょくちょく魚料理は出る。刺身を作り、残った食べられる身はあら汁の具として作る。そして、炊飯器とあら汁の鍋、刺身の大皿をテーブルに置く。
「ご飯とあら汁は自分で好きなだけよそって下さい。おかわり自由の食べ放題です。刺身も欲しかったら追加で捌きますよ」
「おおっ!良いのか?」
「良いですよ。ここには俺達しかいないので」
「分かった」
皆、好きなだけよそり。
「いただきます!」
食べ始めた。
「刺身旨いな!このワサビの辛味も良いな」
「今朝はあんなに不安がっていたのが信じられないな?」
「仕方ないだろう?分からなかったからな!」
先生はガツガツと食べていた。
「でも、お姉ちゃん?どうして、またこのあら汁?なの?」
「刺身に出来なくてもまだ食べられる所があるからね。そして、魚の旨み成分をたっぷりと出してくれるのが、あら汁なんだよ。多少の骨があるけど、食べられるなら食べてあげないともったいないからな」
「そうなんだ?あら汁の他には出来ないの?」
「出来なくはないけど、それこそ空間に入って作らないといけないな」
例えばラーメンとかね。それは材料が足りないからまだ出来ないし、俺はまだ麺が打てない。
「そうなんだ?」
「そういえば、他の生徒達はどうしているのですか?学園全体が凄い静かですが?」
「ああ、学園が始まっての初めての休みだからな。全員が家に帰っているぞ、地方から来ている奴らも、まだ、親が王都の宿屋に居るからな。宿屋に行っているはずだ。だから、リク達がここを襲った時に緊急放送を流さなかったんだよ。残っていたのは、お前達だけだからな」
「そういえば、学園の始まった初週の休みは私も家に帰っていたわ」
「そういうことだ。本当ならリリカも、用事が終われば、お前達を迎えに来て、一緒に帰っている筈だったんだよ」
「じゃあ?私達が来たから?」
リクがおそるおそると聴く。
「そうだな。それと、場合によっては、警備の兵士達だけで、誰もいない時に襲撃していた可能性もあるな?」
「あっ!?」
「では、タイミングが悪かったら、空振りだったと?」
「そういう事だな。で、空振りなら、今頃、こうやってのんきに私達は、一緒に飯を食ってはいなかっただろうな?」
「確かにね?」
「…………」
リクは黙ってしまった。一連の事件で責任を感じているようだ。
「でもさ、結果的には良かったじゃないの?私は魔力の覚醒が出来たし、神聖王達はリク達を見つけられたしね?確かにマイナスの要素はあったけどさ、プラスの方が大きいでしょう?」
被害者のマリアが言った事で、リクの心のキズは大分違う。
「そうだな。結果的にはアトランティスが助かった形になったからな。じゃないと、アトランティスと王国は戦争状態になっていたところだ」
先生もそう言った。確かに、アトランティスの民達は、1度は陛下の恩情で生き延びたが、今回の事が一大事になれば、アトランティスの民達は全員が死亡となっていたし、王国側も死亡者が出るだろう。コトと場合によっては、俺もマリアを助ける為にアトランティスの民達を殺していたかもしれない。そして、リクは俺の妹になっていなかっただろうしな。
「そうだな。今回は被害は最小限に押さえたから良かった。それで良いでしょう?過去はもう変えられないのだからさ」
「そうだな?時の魔法でも無理だな」
「そういう事ですよ。だから、リクが気負うことはないよ」
「分かりました」
「さて、ご飯も粗方食べ終わっているので、父さん達の伝言を発表します」
俺はそう宣言した。