陛下からの依頼
「確かに、フレイム家とマリア、貴女方の家とは何も関わりがないな」
陛下が保証した。
「なら、安心です。お姉ちゃんが全て解決してくれますから」
「聖殿を信頼しているのだな?」
「勿論です。私のお姉ちゃんですから」
「そうか。それにしても、我が妻の姿がさっきから見当たらないが?」
「後、リクの姿もよ?どこに行ったのかしら?」
「この部屋からは出ていない筈だ」
「ね?いい匂いがてしいない?」
エリサの指摘に鼻を嗅ぐと確かに香ばしい匂いがする。コレはクッキーの匂いか?まさか?クッキーを焼いているのか?
キッチンを見ると、王妃様とリクが居た。
そして、
「クッキーが焼けましたわ」
そう言って、王妃様がリクと共にクッキーを皿に入れて持ってきた。
というより、なんで勝手にキッチンを使っている?危ないでしょう?そう、他人のキッチンは使い勝手が悪い。だから、怪我をする事だってある。しかも、相手が王妃様だ。万が一何かあったら大変な事態になるが、当の王妃様は。
「わたくし、政治が苦手でして、同じく暇そうにしていたリク殿を誘った一緒にクッキーを作っておりましたの」
と、のほほんとして話していた。
「まあ、クッキー作りは良いですが、せめて私の許可を取ってからにして下さい。万が一、何かが起きてからでは遅いですからね?」
「はい、申し訳ございません」
「ごめんなさいお姉さま。本当は言うつもりでしたが、王妃様が、サプライズってなんですか?」
リクの言葉に皆がこけた。
「オーイ、リクや。質問は、話終わった時に言おうな?」
「いたた、そうじゃのう。急に質問になるとは思わんかったぞい」
「すみません」
「まさしくサプライズだわ」
「本当だわ。リクは狙っていないから余計にそうだわ」
「まさか、私がコケるとはな」
「そうですわね。わたくしも初めてコケましたわ」
「あ、あの……?」
「驚かせる事をサプライズと言うのよ」
「分かりました」
そして、クッキーを食べる。
「面白い形のクッキーだわ」
クッキーを手に取り言った。
「私が作りましたが、変でしたか?」
「そうね?このクッキーの形は潰れたペンギンだわ」
「えっ?潰れたペンギン?えーっとコレは………なんだけ?忘れてしまいました」
「自分が作ったモノぐらい覚えておきなさいよ?」
「ご、ごめんなさい。色々と作っている内に忘れてしまって………」
マリアに言われてリクはしょんぼりしていた。
「まあまあ、形はともかく、味は保証しますわ」
「お母様はクッキー作りは得意ですから」
俺はそのクッキーを口に運ぶ。
「うん、美味しいです」
「確かに美味しいわ。見た目はともかく」
「うっ!?」
「マリア?そうリクをいじめないの。リクだってクッキーを作ったのは初めてでしょう?」
「はい、そうです」
「なら、段々と上手くなっていくよ。初めは誰だって下手くそだったからね?」
「そうですわね。また作りましょう」
「わ、分かりました」
「聖殿、別の件で、個人的に貴女に依頼したいのだが」
「依頼ですか?なんでしょうか?」
「ウム、娘のテレサを捜し出して欲しいのだ」
「テレサさんを?確か、ケンカをして出て行ったとか?」
「そうなのだ。我が娘が、彼氏を連れて来た時に。私達は、2人の愛を試すつもりで色々と、彼に嫌みとか言ってしまってな」
「それで、テレサさんが怒ってしまったと?」
「ああ、テレサは感情的になってしまって」
「わたくし達は2人の仲は認めておりますが、親としては、試さずにはいられませんでしたが、まさか、あんなに怒るとは思いませんでしたわ」
「では?テレサお姉様の勘違いなの?」
「そうなのだよ。私達も極秘裏に兵を使って捜しているが………まだ見つかってはいないのだ。一刻でも早く見つけ出して、誤解を解きたいのだ。だから、聖殿、私の依頼を引き受けてはくれまいか?」
「分かりましたが、しかしながら、そのテレサさんの顔が分かりません」
「ああ、テレサの顔はこれです」
懐から写真を取り出し、見せてくれた。
「あら、可愛い赤ちゃんの写真ですね?」
「あっ!本当だわ。可愛い赤ちゃんだわ」
「えっ?あっ!し、失礼。間違えた。これです」
陛下は赤ちゃん写真を戻し、今度はちゃんと確認してから俺達に見せてくれた。
「コレが娘のテレサです」
「エリサにそっくりだわ」
「確かにね。エリサを大人にした感じだわ」
「まあね。私からもお願いするわ。お姉様と婚約者を捜して」
「分かった。今の件が終わってからね」
「それで構いません。宜しくお願いいたします」
陛下達が頭を下げた。