リリカさんとお買い物と模擬戦2
養子手続きが出来る施設は、日本という国でいうと、役場のような所だった。そこで、養子手続きと俺の住人登録を行った。
各項目欄で、不明や白紙が多いが、それは問題に無いらしい、難民や孤児がいる世界だし、生まれた地名を知らない人達も居るらしくて、それは仕方ないと担当者が言ってくれた。重要なのは、住人登録をしっかり行って、王都の住人だと示す事のようだ。
そして、住人登録と養子手続きが終了になり、俺は、マーカー家の一員となったが、ファミリーネームは山瀬のままだ。
この王国は養子になっても、ファミリーネームを変えなくても良いらしい。
俺は山瀬のファミリーネームを残しておきたかった。アイツらとの唯一の繋がりだから、俺は、死んで、この体に転生をしているから、アイツらとの兄弟という血の繋がりはもう無くなっている。『アイツらとは嘗て兄弟だった。』という事実だけだった。
それを汲んでくれたリリカさんの心遣いにも感謝だ。
カフェに戻り、お昼ご飯は食べるが、カフェは閑古鳥がないていている。ファルコンさんの料理が不味いという事はないが、全く流行らない。
イヤ、ギルド員や常連客は来ているが、新規のお客が来ない。
理由が、やはり、パパの姿だ。この強面だからね。パパが『いらっしゃいませ。(ニッカリ)』と言っても、新規お客はビクッとして、『失礼をしました。』と言って、慌てて逃げ出すという。
うん、判るよ。その気持ち。俺もそうだったからさ、マリアがいなければ、逃げていたもの。更に酷いのはガイ兄さんと一緒の時だ。筋肉隆々の二人がカフェに居たら、即逃げ出すよ。
「こんなに閑古鳥では拙いからさ俺も手伝おうか?ウェイトレスとして?」
「良いのか?」
パパが聞いた。
「ああ、ま、ギルド員になっても、クエストは学校が始まった時だからな?それに俺を養子にしてくれたお礼も兼ねてと女性言葉の練習もな」
「なるほどな?そうだな。客の接待業に付いていれば、丁寧な言葉も自然と身に付くだろうな?」
「そうね。この店もある程度の収入がないとね~?」
「ぐっ!?」
ママに言われてパパの言葉が詰まった。
「とにかく、頼んだわよ。それに気になったら、遠慮なく、パパに言って頂戴ね?」
「分かりました」
「働いた分はバイトとして、給料を出しておくからな。自分が使う金はあった方が良いだろう?小遣いよりはな」
「分かった。ありがとうパパ」
「ああ」
「さあ、模擬戦をやるから、ギルドの建物に行きましょうか、ギルドの建物中に訓練所があるから、そこでやるわよ」
「分かった」
「私も行くわ。ママとお姉ちゃんの模擬戦を見たい」
「俺も行こう。聖の闘い方を見てぇからな」
俺達4人はギルドの訓練所に行く。
訓練所は色んな種類の武器が置いてあり、試し斬り用の人形もあり、訓練所の広さもかなりある。
「この訓練所は自分にあった武器を見つける為にもあるのよ。その武器の性能や相性も確かめるようにね。良かったら、武器屋で自分の武器をカスタマイズをして貰うのよ」
そう説明してくれた。
「聖は何を使うの?」
「俺は武器は竹刀しか持った事がないからな?けど、やっぱ、コレかな?」
俺は創造魔法を使って日本刀を創造させる。
「なにこの剣は?片刃の剣?」
「見たことがないが?」
「コレは日本刀さ。俺が生まれ育った国で大昔に使用していた武器。別名、人斬り包丁さ」
「人斬り包丁?」
「昔の日本という国は争い事が絶えなかったのさ。どこかでいつも戦争をしていたのさ。そして、人間をより斬れる刀を突き詰めていったのがコレさ。この刀は人間をより斬れるように反っている。ママが持っている剣とは全く違う」
「確かにね?」
「聖は斬れるのか?」
「さあ?俺もこの刀を持つのは初めてなんだ。今の日本という国はこういう刀を持つ事じたいが禁止になっているんだ。所持しただけで捕まる。所持をしたいのなら許可証が必要だ。勿論、コレクションの為にな」
「そうなのか?」
「お姉ちゃん?竹刀ってどんなの?」
「竹刀はコレだよ。竹で出来ているんだ。今の日本は竹刀で剣術を習っているよ。俺達もそうだ。特に妹は、有名な大会で優勝をしているよ。その道の人達から、かなり、注目されているよ」
「そうなんだ?凄いわね?」
「まあね」
「では、模擬戦はどうするの?その竹刀とやらを使うなら私は木刀を使うわよ?」
「分かりました。良いですよ」
ママと俺は訓練所の中央に行く。
「勝敗は関係無いわ。貴女の腕を見るだけよ」
「分かりました」
お互いに構えて、打ち合うが、直ぐに吹き飛ばされる俺の力負けだ。やはり、この体の筋力が無さ過ぎる。トレーニングをやらないと、闘えない。
「参った!!」
俺が負けを宣言する。
「えっ?たったの一合を打ち合っただけでしょう?」
ママは不満げだ。
「イヤ、俺の負けさ。この体は使い物にならない。ただ、魔力が多いだけで、接近戦が弱いし、筋力が無さ過ぎる。トレーニングをやらないとギルドも役に立たないよ」
「なるほどね?たった一合打ち合っただけで、そこまで、今の自分の体を把握したのね?」
「まあね。長い時間をかけて、トレーニングをやらないと、筋力が付かないし」
「そうね?女性の体は付かないわよ。私も苦労しているわ」
「そうだな。俺のこの筋肉も毎日トレーニングをやって作ったからな」
「明日から朝練をやるよ。空間魔法を利用して、時間魔法も利用ね」
「えっ?空間魔法と時間魔法!?聖はそんな特殊魔法も使えるの?」
ママが驚いていた。
「ええ、万能能力貰ったから、出来るよ。後は重力魔法も使うか」
「重力魔法!?」
ママが更に絶句する。
「重力魔法を使って何をやるんだ?」
兄さんが不安げに聞いてくる。
「勿論、トレーニングをやるんだ。体に負担を掛ければ、それだけ、体も強くなるし、筋力や魔力も多くなると思う」
全く、チートな万能能力を貰ったが、体が付いていかれないのじゃあ宝の持ち腐れだ。とことん修行あるのみだな。