部屋でくつろぐ26~ドナドナドーナドーナ~
ピンポーンと玄関チャイムが鳴る。俺が応対すると。
「聖、私だ」
今度はステラ先生の声だった。
ドアを開けると、学園長も居た。
これは丁度いいな。
「さあ、どうぞ。今、陛下もおりますので」
「やはり来ているか?」
「ええ」
2人を案内すると、陛下が驚いていた。
「ベルモット殿?何故貴方が?」
「ウム、ワシも神聖王様に用があるのじゃよ」
「ほう?じいさん?俺と一戦やるのか?」
父さんはストレートで言う。ま、回り道をしても無駄だな。
「ベルモット殿!?まさか?神聖王様と?」
「………戦うつもりじゃったがのう。あのようなお力を見せられては、戦意も無くなるのう。ワシでは話にならぬわい。それとは別にリクの事ものう。しかし、神聖王様達にわざわざお越しになるのは失礼じゃから、ワシが来たのじゃ」
「じいさんよ?聴いた話ではC組は不良の巣窟じゃねぇか?そんなクラスには我が娘リクを通わす事は出来ないな?」
「それに私達の兄さんの事があったのに!!」
「………そうじゃな。初めはリクをC組に入れて不良化を止められると思っておったが。ステラが、悪霊の仕業の可能性があると言うてな?改めてたのじゃ」
「では、私のクラスは?」
「ウム、A組じゃ」
「ああ、良かった」
「本当に良かったわ」
リクの事はー安心だな。
「学園長?そのC組の悪霊なんだけど、退治しても良いか?」
「聖?おぬしがか?」
「ああ。そういう魔法も持っているからな」
「分かった。任せよう」
「ああ。と言っても、学園長?貴方も付き合うんだよ」
「ワシもか?」
「当たり前だ!ここの責任者でしょう?それに、悪霊を退治したという証人もいる」
「なるほどのう。分かったが、いつ退治をするのじゃ?」
「昼間の内に、もっと言えば、この話が終わった後」
「分かった」
「それとは別に学園長は、父さんに立ち向かって、死ぬつもりだったのか?愛する妻の元に逝きたかったのか?」
『なっ!?』
驚きの声をあげた。
「…………」
学園長は黙ってしまった。
「じいさんよ。それは辞めて正解だったな?俺達、神に殺されると、魂までも消滅してしまう。俺と戦って死んでも文字通り無駄死にだ」
「そうだったのですか?」
「ああ、数万年前に俺は人間を殺した事があってな。本来なら、魂を出てくる筈が、魂まで消滅してしまったのだ。まあ、そいつは大罪を犯した奴だったから、結局は地獄逝きだがな」
「そうだったのですか?」
「ああ。で?じいさん?亡くなった妻の名は?」
「はい。ルエルですじゃ。ルエルは若い時に亡くってしまったのですじゃ」
「だろうね?じゃなかったら、おばあさんでは回し蹴りが出来ないし」
「えっ?回し蹴りって?」
「あの時、エリサは気絶して現実逃避いたから知らないけどね。学園長の魂が戻って来た時に死んだばあさまに会って来たが回し蹴りで戻って来たと言っていたのさ、学園長の妻は若い頃に亡くなったと思ったよ」
「えっ?そうなのですか?学園長?」
「ウム、そうじゃな。しかし、ルエルは翼が生えておったがあれは一体?」
「おそらくルエルは天使に成ったんだよ?ね?」
父さん達を見る。
「ああ。あまり、俺達、神の生情報を人間達に教えたくはないが、確かに、ルエルという天使はいるな。そして、ルエルはある神の秘書になる予定だ」
「なんと!」
「それに元人間から天使に成るという事は、心が清かったという証拠ですよ」
「そうだったのか?………ルエルは……優秀な女性じゃった。しかし、あの実験で…………うっうっ」
「これ以上は言わなくても分かります。貴方が辛くなるだけですから」
「す、すまぬ」
「ベルモット殿………」
「すまぬのう。こんな年寄りに皆が心配をかけてしもうて……」
「学園長?俺の父さんと母さんの方が遥かに年上ですよ」
『あっ!?』
「そ、そうだったな?」
「確かにね?さっきも数万年前と言っていたしね?」
「「聖?ちょっと来なさい!イヤ、来い!!このクソガキが!!誰が年寄りだって!!」」
2人して怒っているが、真実だしね?それに。
「父さんなんかさ、神界で再会した時なんか、ジジィの姿で出迎えていたよ?あれの姿はマジでショックだったな。今朝の石像と同じレベルでさ。俺、がぶり姉ぇに、2、3日寝込むと言っちゃったもの。それにがぶり姉ぇも賛同していたよ?」
「えっ!?そうなの?ちょっと父さん?これでは聖を怒れないでしょう!どうして、そんな姿に成ったのよ!」
母さんの怒りの矛先が父さんに向けられた。
「い、いや、あの時はお茶目のつもりでな…………」
父さんはタジタジになった。
母さんはますますキレた。
「何がお茶目ですか!父さんって神は!聖!部屋を借りるわよ!父さん!来なさい!」
「お、オイ!怒るのは聖だろうが?」
「いいえ、今、私が一番怒っているのは、父さんですよ!!」
「…………」
「さて、部屋でゆっくりと話し合いましょうかね?(ニッコリ)父・さ・ん!!」
そう言って、母さんは父さんの襟元を持って父さんを引き摺って部屋に入っていってしまった。
その間のやり取りを俺達はただ黙って見届けるしかなかった。