部屋でくつろぐ25
天に帰る振りをして、寮に帰って来た俺達。
「ただいま~」
ぐったりとした声で言う俺。
「「おかえり……えっ!?」」
俺の姿を見て固まるマリアとリク。
「どうした?」
「お姉ちゃんだよね?」
「ああ、ちょっとな、あれから問題が起きてな。前世の姿にな」
父さん達とリビングに行きこうなった事情を話す。
「そうだったのね?」
「お姉さまがお兄さまに………はっ!これは!おねにいさま!!」
「リク、それは止めろ!この変身魔法は直ぐに消えるよ」
「そうなの?チェッ、つまんないわ。一緒にお風呂に入りたかったのになぁ」
「マリア?この姿は男だぞ?一緒にお風呂に入る事は出来ないぞ」
「えー!私は気にしないよ?だって、お姉ちゃんでしょう?」
「俺が気にするよ。…………はい、魔法が切れるよ」
そう言って、元の姿に戻った。
「あっ!」
「本当に戻ったわ。ねえ?また、お兄ちゃんになってよ」
「あのね?もう出来ないよ」
「どうしてよ?」
「説明しただろう?この姿は神とてし出てしまったと。万が一誰に見られたら大変だよ」
「「あっ!?」」
「分かった?」
「「はい」」
それとは別に、前世の姿とはもう訣別をしないといけない。もう俺の体はこの女の体だから、いくら、変身魔法で前世の姿をしても、それは偽りの姿だ。
「しかし、あれが俺だとはな」
「笑ってごめんなさい」
俺達は謝る。
「イヤ、俺も当事者ではなかったら、一緒に笑っていたさ」
「だよな?いくら何でもあの石像は酷いよな。一体、どうやったらあんな石像が誕生するんだ?父さんは大昔にこの王国を造ったのならば、普通の成人の人間でしょう?少なくともジジィ姿はないでしょう?」
「そうだな。だが、ジジィ姿の方が神らしいと思ったかもな?」
「ジジィ神の方がありがたみがあるか?」
「おそらくな?」
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
「エリサか先生か?」
「行ってみれば分かるわね?」
「そうだね?」
俺が玄関の方へ行くと。
「聖?私よ。開けてくれる?」
エリサの声が聞こえたので、ドアを開けると、陛下と王妃様もいた。
「いらっしゃいませ。どうぞ中へ」
3人をリビングまで案内をする。気付いた父さんが。
「国王か。先ほどは悪かったな?」
父さんは軽く謝罪をした。
「いいえ、あれはわたくし共がいけなかったのです。神聖王様」
「そうだな?あのゴミが登場したせいで、こちらも予定が狂った。だが国王!何故あんなゴミをトップに据えた?」
「はっ!これは、言い訳に過ぎませんが、教皇の選出は教会幹部達だけで決めているだけです。わたくしは、ただ、承認の判を押すだけです。これは、政治と宗教を切り離したのが原因です」
「なるほどな?宗教家に成る奴は政治家には成らさない、そして、宗教家は、けして政治には口を出すなと?そして、その逆も然りか?だから、国王、お前は、その人物がゴミと判ってても、ただ黙って判を押すしかなかったと?」
「はい。その通りですが、まさか、あのゴミが神聖王様達を否定するとは………あのゴミは何故あそこまで登りつめたことが出来たのか不思議です」
「おそらく、金でしょうね?金を使って幹部達を買収でもしたのでしょう。あのゴミは教団をただの金儲けにしかみていなかった」
「確かにな。暴言吐いたら全財産を押収はないな。どれだけの金の亡者なんだ?」
「人間としてもクズです」
父さん達もあのゴミを切り捨てる。
「しかし、神聖王様?あの時、どうして、知らないフリを?聖殿とクレアが教えてくれたから、そうしましたが?」
「俺達が事前に知っていれば、いくら民衆とはいえ仕組まれていると思われるだろう?そして、あの力を示しても、俺の事を絶対に偽者と言う輩も出る筈だ。あの場合はお互いに知らないフリをしていた方が良いんだよ」
「た、確かにそうですが、しかし、わたくしはあなた様の事を………」
「それは仕方ない事だよ。それを承知の上で知らないフリをしているんだ。お前が気負う事はない」
「は、はい。ありがとうございます」
「ところで、さとるというのは、一体どこから?」
エリサの質問だ。
「ん?ああ、ひじりという字からだな。聖という字は『さとる』とも読めるから、俺があえてそう言ったんだ。『ひじり』では拙いだろう?」
「なるほど、そうだったのですか?しかし、今朝、写真で、見た男の聖がまさか神様として登場してくるとは思ってもいませんでしたから」
「全ては、あの石像が悪い!あの石像はなんだ!ふざけて造っているのか?」
父さんの怒りがぶり返す。
「い、いえ。けしてふざけて造ったモノではありません。あの石像の顎髭の長さは1本1本が全世界で暮らす生命体の数を表しており、髭が抜け落ちれば、その世界の生命体が全て死滅すると言われておりました」
「だから、あんなに異常に長い顎髭になっていたのね?」
なるほどな。解釈で、自然とそうなったのか?あの石像の意味が分かったが、でも、酷い石像には変わりはないな。
「はい」
「じゃあ?あの円形禿げは?」
マリアの質問だ。
「さ、さあ?それは分かりません。その解釈がどこにもありませんでしたので…………」
「そうか?だがな!これからは普通の人間の姿の俺を造れ!変なモノは2度と造るな!!」
「はい、仰せの通りに致します」
陛下は頭を下げた。
ピンポーンと再び玄関チャイムが鳴った。