部屋でくつろぐ22~何?この石像は?思っていた以上に酷いので、父、ブチギレます1~
「そうだな?皆で冷やかしに行くか?」
「冷やかし、ですか?」
先生が困惑している。
「そうですよ。冷やかしです。私達は神ですからね?自分自身の宗教を何が面白くて入る輩がいますか?」
「それに、死んでいるならまだしも、生きている自分の身内を拝むなんて嫌だ」
「あー。た、確かに嫌だな?」
「納得したところで、案内をお願いします」
「分かりました」
俺達は寮から外に出る。
「先生?お祈りの他に何かあるのですか?」
「ああ、お祈りの後に教皇の話を聞くんだよ。これが長くてな」
「そうなんだ?やっぱり、信徒にならない方が良いかな?私、絶対に寝ているわ」
「確かにな!下らない話は眠くなるな!」
父さんが笑いながら言う。
「あっ、先生?私達には普通で話してくださいね?敬語だと、怪しまれますから」
「分かりました」
「後、本山に何があるの?」
「ああ。本山の入り口には神聖王様とされた石像があるのだがな………それが全く似ていない。顎髭が異常に長いんだ。その髭は地面まで付いている石像なんだよ」
「ほう?人相は?」
父さんの少し冷たい声。
「はい、老人の神様になっていますが………絶対に笑わないで欲しい………です」
その声に先生はビビっている。
「えっ?そんなに酷い石像なの?」
マリアが質問した。
「ああ。本人と懸け離れているからな………私は昨日お会いするまではその石像が神聖王様と思っていたが、全く似ていないし、はっきり言って残念な石像だな」
「そこまで!?」
本山に近付くと段々と人々の数もが多くなって来ている。この王都に暮らす、ほぼ全員の住人達が本山に向かっているようだ。
そして、本山の入り口に着く。
「こ、これが神聖王様とされた石像です………」
先生が指差した方向を見ると、頭の天辺が大きな円形の禿げ頭で髪の毛は両サイドと後頭部は髪の毛が長くなっており、前髪もある。顔は確かに老人で、顎髭は想像していた以上に異常に長く地面に付いて居るどころか、地面に引き摺って、更に足の後ろまで髭があるかなり大きな石像があった。
これはアウトだ!いくら何でも顎髭を地面に引き摺るまで伸ばす神はいないぞ!
「プッ」
「アーハハハハ」
俺達4人はこの石像を見て笑ってしまった。
「こ、この石像は、酷いわ。あ、あまりにも酷すぎるわ。な、なんで、頭が円形禿げになっているのよ」
「た、確かにね?実際にもこんなヘンテコな神はいないわ。しかも、これが父さんだなんて、更にありえないわ」
マリアと母さんがフォローしているが、笑いながら言っていたからタチが悪い。
「だから、笑うな!他の皆が見ているぞ!」
先生は慌てて俺達を止めるが、ダメだ。こんな異常でへんちくりんな石像を見せられたら、もう笑うしかない。この姿を敬えと言われても絶対に無理だ!しかし、信徒達は良くこんな姿の石像を神聖王と思い拝んでいたな?刷り込みは本当に恐ろしいな。
「な、なんだ?このふざけた石像は!!これが俺だとう!!ふざけるなよ!!」
父さんがブチギレた。その影響で、その石像が粉々に破壊された。
周りに居た人々が騒ぎ出した。
「父さんの魔力は強過ぎだ!」
「あら?聖は神の魔力が判るのね?普通の人間達には分からないけどね?まあ、素の父さんの魔力量は神聖王の時よりも強いわ。これは拙いわね?」
母さんの言うとおり、こんなに晴れていた空が急にどんよりとなってきている。そして、雷がゴロゴロと鳴っている。
そこまでに父さんが怒っていたが、突然に父さんの魔力が霧散した。それに比例して空も晴れて来た。
「母さん!帰るぞ!やはり、ここは俺達が来るような場所ではなかったな!」
そう言って、父さんは本山に背を向けて歩き始めた。
「分かりましたよ。先生。私達はここまでです。聖、リク、マリア、帰るわよ」
「分かった」
先生の返事を待たずに、俺達も父さん達の後を追い始めたが、そうは問屋がおろさなかった。
本山を護衛する兵士達だろうか?その兵士達が。
「そこの男!止まれ!貴様には、神聖王様の石像の破壊の容疑が掛かっている!!大人しく投降しろ!!」
兵士が怒声を浴びせる。
あーあ、せっかく、父さんが怒りを静めたのにまた振り出しだな。
「あ゛あ゛っ!!なに言っていやがる!!あんな石像は俺じゃあねぇよ!!だから、俺が直々に破壊したんだ!感謝しろ!」
オイ!父さん!何トンチンカンな事を言っているんだよ!!確かに、父さんの立場ならそうだけどさ。兵士達の立場は違うからな!!
「母さん?これって拙くない?」
「そうね。マリア、リクは先に帰りなさい。巻き込まれると大変だから」
「「分かりました」」
母さんは2人を転移魔法で、俺達の部屋に転移させた。
さて、どうなることやら。