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部屋でくつろぐ9

 部屋に戻り、リビングに行く。


「あっ?父さんはこの部屋初めてだったな?」


「ん?まあな。なかなかの部屋ではないか?この広さなら、一家が余裕で住めて暮らせるぞ?」


「そうだな。これで、学園の寮だからな?日本の寮とはスケールが違うよ」


「そうだな。お前が通う予定だった学校の寮とは段違いだな」


「えっ?そんなに違うの」


「ああ、全く違うよ。マリアには話したが、赤の他人と小さな1部屋で共同生活だよ」


「そうなんだ?でも、何故赤の他人と暮らすの?」


「他人同士でも、協力をしあって、社会出ても、生きて行けるようにらしいが、ここでも、初等部から、寮で1人暮らしだから、そっちの方が逞しいよ」


「そうかもしれないわね?」


 母さんが賛同する。


「そうかな?エリサはどう思う?」


「えっ?私は執事やメイドが居たからね。分からないわ」


「あっ?そうだよね?リクは……論外だわ」


「うっ!」


 まあ、リクは寮は今まで無縁だったから仕方ない。


「さてと、夕飯の支度をするよ」


「えっ?もう?」


「ああ、結構時間が掛かる料理なんだよ。父さんか母さんか、お米持っている?」


「お米?なにに使う?」


「カレーライスを作ろうかと思ってね?人数も多いからさ」


 この世界にも米があるが、全く美味しくないから、主食はパンが中心になっている。


「なるほどね?じゃあ、買ってくるわ。えーっと、一升程で良いかしら?」


「ああ、良いよ。余っても使うからさ」


「分かったわ」


 母さんは転移魔法で行った。


「一体何処に?」


「おそらく、地球だろうな?米を買って来る」


「米を買うために地球に転移魔法か?」


「そうは言うが、地球の米、イヤ、日本の米は、何処よりも美味いからな」


「なるほどね?なら、俺はカレーを作っているよ」


「ねぇ?カレーって何?」


「いろいろな野菜や肉が入っていて、いろいろなスパイスをブレンドして、ご飯にかけた食べ物よ」


「えっ?訳が分からないわ」


「お姉さま?一体どんな食べ物ですか?私も判りませんよ」


「なんか聴いて不味そうな食べ物だわ」


「確かにな?カレーを知っている俺もお前の説明が分からないぞ?」


「うーん?何って言えば良いの?単純に言えば、茶色いルーに野菜や肉が入って、ご飯にかけて食べる物か?あっ!ビーフシチューに似た食べ物だな」


「ビーフシチューね?それなら判るわ」


「私も、判るわ」


「私は判りません。というより、食べたことがありません」


 リクだけが分からないか。


「ま、出来るのを待っててね」


「分かりました」


 俺は玉ねぎを炒めた。


 1時間炒めていると、母さんが帰って来た。


「ただいま~お米を買ってきたわ。これがカレーに合うお米よ」


 母さんは俺の前に米袋を置いた。


「えっなに?まさか、お米の専門店に行って来たの?」


「当たり前でしょう?美味しい物を食べないとね?あっ、お米は私が炊くわ。カレーに合う美味しい炊き方を教えて貰ったから」


「任せるわ」


 母さんが手際良くやっていた。しかも、完璧だ。


「アレ?母さんも家事が出来るの?」


「当たり前ですよ。あなた達と暮らす為に家事は覚えましたよ」


「へぇー?そうなんだ?」


「なによ?その言い方は?」


「イヤ、いつも、母さんがいても、がぶり姉ぇが作っているからさ。出来ないかと思っていた」


「違うわよ。ガブリエルが、『王妃様はやらなくても良いです。私が全てやりますから。』と言って、家事を一切合切、私にやらせてくれなかったのよ」


「なるほどね?普段の母さんの行動を見ていれば、家事も滅茶苦茶になると思ったのでしょうね?」


「なによ?私がいけないの」


「正解だよ。それにがぶり姉ぇも不安だったのよ。瞬時に治るといっても、母さんに怪我をさせても困るってね?」


 そう話しているうちに調理がどんどんと進んで行く。


「ガブリエルは私の事も心配していたの?」


「当たり前でしょう?がぶり姉ぇは部下でしょう?どうしてもそうなるよ。俺の時でも、いつも心配した顔で見ているからな」


 スパイスを調合してルーを作る。


「言われてみればそうね?」


 そのルーを大鍋の中に入れる。野菜や肉。隠し味として果物の果汁、チョコレートも入れている。


 グツグツと煮込んでいると。


「お、お姉さま?な、なんですかこの色は?」


 リクは初めて見る色に驚いていた。


「これがカレーだよ」


「へー?これがカレーなんだ?私、魔女の鍋だと思ったわ?」


「マリア?なに?魔女の鍋って?」


「えーっとね?子供の頃絵本で読んだのだけどね?部屋にビーカーや試験管やヤモリやイモリの燻製などがあってね?そして、魔女の老婆が大鍋の前でイーヒッヒッヒッって、笑いながらかき混ぜていたのよ。まあ、その絵本の大鍋の色は緑色だったけどね?」


「なに?そのビーカーや試験管って?」


「さあ?分かんないわ?でも、そう絵本に書いてあったからさ?ビーカーや試験管ってそれってどういうモノなの?パパ達に聴いても分からないって言っていたわ?」


「ビーカーや試験管は科学で使うモノだよ。この世界は科学は全く進歩していないからな。それでどこからビーカーや試験管の絵や名前が出てきたんだ?まさか?俺やアトランティスの人達の他に地球からやって来た人間がいるのか?」


 俺は父さん達を見る。


「さあな?お前達の世界をずっと見ている訳にはいかないからな?もしかしたら、居るかもな?」


「おそらくね?私達も完璧ではないし、色々とやっているからね?」


「そうだよな?まあ、出逢ったら出逢ったで、どうしようもないな」


「そうだな?」


「カレーが出来たよ」


「ご飯も炊けたわ」


「さあ、食べよう」


 この時は軽く考えていたが、本当はこれが大変な事だったのが判ったのはかなり後になってからだった。

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