部屋でくつろぐ8
「堕天使から天使に戻った天使とは誰でしょうか?」
バーストさんからの質問だ。
「それは、ウリエルです。ウリエルは、一度、堕天使に成りましたが、改心して、天使に戻りましたよ」
「えっ?あの四大天使の一角のウリエルが堕天使になったの!?」
俺が驚く。
「ええ、聖も会ったでしょう?そして、ウリエルの髪の毛を見ましたか?」
「ああ。確か、黒っぽい蒼い髪の色をしていたよ?」
「そうです。堕天した為にウリエルの髪の毛は一度、全て黒く染まりました。しかし、天使に戻り、本来の色、蒼い色になるのですが、黒く残ってしまいました。それが、堕天使だった名残ですよ」
「でも、どうして、ウリエルは堕天使に?」
「原因は父さんのお酒よ」
そう言って、母さんは溜め息を吐いた。
「あっ!」
その一言で俺は全てを察した。
「ウリエルは嫌気がさして堕天使になったのよ。そして、私が頭を下げて天使に戻った訳なのよ。ああ見えてウリエルは真面目だからね?ウリエル自身も堕天使に成りたくて成った訳ではないのよ」
「それは父さんが全面的に悪いな!!俺もウリエルと同じ行動に出るな!というか、家出だな!」
「えっ?何の話でしょうか?」
エリサが俺達に聴いた。
「身内の恥の話です。よそ様にはけして聞かれたくない話ですよ」
「この話を聞いた途端に、我が父は、誰からも尊敬されなくなり、すごく冷たい目で見るようになり、信者を辞めたくなります」
「そ、そこまで!?」
「「はい」」
俺と母さんが揃って返事をする。
「そ、そこまで酷いの?」
「酷いよ。この話を聴けば、『先ほどの事はやっぱりじっくりと家族で話し合って決めさせて頂きます。』と、100%言うよ」
「………」
エリサが言葉を失った。
「まあ、話が大分逸れてしまいましたが、バーストさん?人間は無理でも天使には成れるチャンスはありますよ。バーストさんの寿命も普通の人間よりも長いのでしょう?」
「はい、長いと思いますよ」
「なら、何年掛かろうが、天使に成って下さい。私達は歓迎をしますよ」
「えっ?私をですか?」
「勿論です。天使ですからね?当たり前ですが差別はしませんよ。それだけで、堕天に繋がりますからね?それに天使の数も多くないのよ。1人でも増えてくれれば助かりますよ」
「そうですか?しかし、私は今の仕事を辞める気はありません」
「それは大丈夫ですよ。天使に成っても、貴方が気が済むまで、働けば良いわよ?私達は寿命は無いに等しいですからね?いつまでも待っていますよ」
「あっ!そうでしたね。分かりました」
「さて、わたくし達はそろそろ帰らないといけないな?」
「そうですわね」
「そうか?」
「はい。お忍びですので、あまり、宮殿を空ける訳にはいきませんし、闇貴族の横暴も冢宰1人では抑えきられませんので」
「確かに冢宰だけだと、抑えられませんわね?」
「そうなんだ。わたくしとなければな」
「では、陛下、王妃様。参りましょう」
バーストさんが声をかけた。
「ウム、神聖王様。お逢い出来て良かったです」
「ああ」
「では、失礼致します」
2人が頭を下げた。
「転移!!」
バーストさんが転移魔法を発動した。
「なるほど?バーストさんが2人を」
「みたいね?私は、バーストが転移魔法を使えるとは思わなかったわ」
まあ、ずっと自分の正体を隠してきたからね?
「では、私達も聖の部屋に戻りましょうか」
「そうだな」
「エリサ?来るかい?」
「えっ?い、良いの?」
「勿論だよ」
「ありがとう。私、メイドに言ってくるわ」
エリサは部屋を出た。
「優しいわね?」
「あんな、寂しい顔をされたんじゃ声をかけずにいられないよ?」
「そうね」
「お待たせしました」
「では」
母さんの転移魔法で、俺達の部屋に戻った。
※補足:冢宰は、王の代わりに政治を行い、政治の全てを仕切る役名。今で言う首相の役割です。
この世界の冢宰の役割は国王の政治の補助をし、全ての貴族達を纏めるリーダーの役割も持っています。