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月の恋人 ―狼―  作者: 楓 海
9/20

コーラ

 読んで戴けたら、倖せです。

「アシュラ、一人で大丈夫? 」


「心配してくれるの? 」


 逢魏都は肩を(すく)めた。


 アシュラは笑った。


 午後から逢魏都は村長さんの家の、田植えの手伝いがあるので、バスに乗って村に帰って行った。


 アシュラはメモの住所へ行く為に、一度駅に戻った。


 駅員に訊くとメモの住所は何キロも離れた場所にあった。


 駅前の市内バスに乗り、降りてからは人伝に訊いて歩いて探した。


 家は閑静な住宅街にあった。


 アシュラは一軒の家に辿り着いた。


 表札を見ると天野とある。


 家の構えや庭を見るがなんの感慨も、記憶の欠片さえ浮かばない。


 家から人の気配がして、アシュラは慌てて向かいの家の門に隠れた。


 一人の上品そうな六十代くらいの夫人が出てきて庭の掃除を始めた。


 アシュラは門の陰からその様子を見ていたが、その夫人が母親なのかさえ、解らなかった。


『今、この姿で出て行ったら.........』


 アシュラは門に凭れて天を仰いだ。




 逢魏都が田植えの手伝いを終えて家に帰ると、アシュラは戻っていて体育座りをしてテレビを観ていた。


「お帰り、帰ってたんだ」


 逢魏都が声を掛けるが、アシュラは振り向きもしない。


「アシュラ? 」


 アシュラは黙って俯いた。


「逢魏都、ボクがこんな風になって二十年の年月が経ってる

 ボクにはもう、ここに居場所が無いんじゃないかって思う」


 逢魏都は、その言葉に慌ててアシュラの傍に駆け寄って、アシュラの顔を覗き見た。


 アシュラは泣いていた。


「どうしたの? 

 何かあった? 」


 アシュラは逢魏都を見ずに言った。


「何も.........

 何も無いから虚しい」


「アシュラ......」


 アシュラは哀し気な目を逢魏都に向けた。


「家に行ったけど、何も思い出せなかった

 母親みたいな人が出て来て庭掃除してたけど、まるで他人を見るみたいに何も感じなくて、声を描けようかって思ったけど、色んな事が頭を駆け巡って怖くてできなかった」


 アシュラはそこまで言うと床に手をついて泣き出した。


 逢魏都はどうしていいか解らなくて、アシュラの頭を優しく撫でた。


 アシュラは少し起き上がって言った。


「なんか、その撫で方、犬にしてるみたいで嫌だ.......」


 逢魏都は手を引っ込めた。


「だって、こんな時なんて言ってあげればアシュラを元気付けられるのか解らないんだもん」


 逢魏都は肩を縮籠めた。


 それから急に笑顔になって手を叩いた。


「ねえ、コーラ飲もうか! 」


「コーラ? 」


 アシュラは顔を上げて涙を手の甲で拭った。


 逢魏都は冷蔵庫から缶のコーラを取り出すと一本をアシュラに見えないように振ってからアシュラの手に握らせた。


「好きな物飲んだら、気持ちも落ち着くよ

 ネガティブなんて、どっかに飛んで行っちゃうかも」


 逢魏都はアシュラの顔を覗き込んで言った。


「ね? 

 飲も」


 アシュラは泣き顔で無理に笑った。


 それから、缶を開けた。


 思い切りコーラがふきだして、アシュラの顔や髪がコーラまみれになった。


 逢魏都は腹を抱えて笑った。


 アシュラはきょとんとしていたが、状況を飲み込むと逢魏都を睨んだ。


「ボクがコーラ好きと知っての狼藉(ろうぜき)だなあ」


 アシュラはコーラを床に置くと逢魏都を捕まえようとした。


 逢魏都はするりとかわして外へ裸足で飛び出して行った。


 アシュラも靴も履かずに逢魏都を追い駆け外へ飛び出した。


 逢魏都は振り返った。


「おーおかみさーん、こちらっ! 」


 広い庭を逢魏都は逃げ回った。


「逢魏都お、食べ物の恨み晴らしてやるう! 」


「食べ物じゃ無くて、飲み物だよお

 また、買ってあげるってばあ」


 アシュラは逃げ回る逢魏都を夢中で追い賭けている内に、いつの間にか心から笑っていた。 








 読んで下さり有り難うございます。


 ただいまD`espairs Rayのチャンネンみつけて観てました。

 懐かしいと言うより、やっぱこのバンド最高と思って観てました。

 歪くんのダミ声、コーラスするときのkaryu坊の金魚口、妖精のような零様、喋ると訛ってるけど思い切り王子の司っち。

 皆様、めちゃイケメン。



 アンコールのシュプレヒコールはD`espairs Rayとバンド名を呼ぶのが決まりなのですが、どうしてもそれが「いっぱつ芸」に聞こえるんですよね。笑


 空耳と言いますか聞き間違いが、やたら多いバンドで英語の歌詞が日本語によく聞こえます。

「弱音吐いてもいいですか!?」とか「やぎ」とか「ヤバい」とか「ばあさんとじいさん」とか....。

 友達と見つけては笑ってました。


 当時、ヴィジュアル系のバンドのアメリカやヨーロッパへの進出が盛んで、我らがディスパも、しょっちゅう外国に遠征してました。

 アメリカンツアーしたときに、日本ではリハーサルは当たり前にあるのですが、アメリカではリハーサルを全くしなくて、そのやり方に四人は戸惑って日本に帰ろうかなんて話したりしてたそうです。

 でも、やり通して、帰った時「あの時アメリカに行ってなかったら、もっとショボい奴になってたと思う」と語ってました。


 D`espairs Rayを作ったのはギターのkaryu坊なのですが、私は絶対顔で決めたろ、と思ってました。笑


 インディーズからメジャーになった時、やな予感しかしませんでした。

 ちょっと考えたら解ります。

 アメリカの大手会社がそのバンドの持ち味なんか尊重してくれる訳無いのです。

 潰されなきゃいいなあって思ってました。


 やな予感は的中して、病気だろうが、熱あろうが働かせ続け、歪くんは喉の難病になり歌えなくなりました。

 そして、ユニバーサルと言う会社はカップリング曲を集めたベスト盤を出し、写真集を出して、ファンから絞れるだけ絞って、ディスパを解散させました。


 お陰様で、未だにユニバーサルと言う会社が嫌いです。

 そうです。

 レディーガガ様が所属しているユニバーサル。

 めちゃ恨んでます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほんわか回で、心が癒されていく情景が良いですね。 姉弟って感じです。 [一言] 何箇所かヒロインの漢字、タイプミスがありましたよ。 難しい漢字なので、打つ方も大変ですね。 お疲れ様です。
[一言] 二十年の歳月は長いですよね。 でも、二人が明るければ、大丈夫という気もします。
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