もっふーん
読んで戴けたら、嬉しいです。
「ああああ~~」
逢魏都は意味不明な声をあげて、テーブルに伏した。
テレビを観ていた狼姿のアシュラは目を丸くして逢魏都を振り返った。
「なに変な声出してるのさ」
「赤字~~~~~ぃ」
逢魏都は家計簿を前に、悲鳴のように言った。
アシュラは耳をピンと立てた。
「家計簿見て嘆くなんて、所帯染みてるう
いわゆる、これは一つのばばあ臭いって奴ですね」
逢魏都は顔を上げた。
「ばばあ言うな
先月、アシュラの身の回りの物とか買ったから酷い赤字
こんな事してたら会社勤めしている時に貯めた貯金使い果たしちゃう」
アシュラは上目遣いで逢魏都を見詰め、しっぽを垂らした。
「ごめんね
ボクの為に........」
逢魏都は勢いよく立ち上がった。
「アシュラ!
明日からサバイバル生活に入るよ! 」
「は? 」
「まず、一番に絞れるのは食費
明日から山の幸で生き延びる! 」
「はあ」
逢魏都は大きく伸びをして言った。
「そうと決まったら、明日は早いよ
と言う事で寝る! 」
アシュラはおおいに不満だった。
「もう?
これからテレビ面白くなるのにい」
「ふーん」
逢魏都は邪悪な笑みを浮かべてアシュラを見た。
「アシュラ、人間の食べる物とドッグフード、どっちが安く上がると思う? 」
安上がりな沈黙が流れた。
「.........う~~~ぅ
痛いとこ突くなあ」
アシュラはふて腐れて、いつもの様に逢魏都の布団の傍に伏した。
「あれ、素直だね」
アシュラは急に立ち上がって窓を見た。
「クマだ! 」
「ダメだよ、アシュラ! 」
逢魏都はピシャリと言った。
「解ってる......
でも、誰も襲われてなきゃいいけど.......」
アシュラは伏した。
逢魏都は宥めるように言った。
「大丈夫、ここの人たちはそんなに弱くないよ
きっと、大丈夫」
逢魏都は微笑んで言った。
「寝よ」
「うん......」
逢魏都は歯を磨いて、布団に入った。
「ねえアシュラ、もう寝ちゃった? 」
アシュラは顔を上げた。
「寝てないよ
なに? 」
逢魏都は顔を赤らめて言った。
「こっちに来ない? 」
「は? 」
「昔から、やってみたかったんだよね
大きな犬、抱っこして寝るの」
アシュラは目を座らせた。
「犬じゃない」
「細かいなあ」
アシュラは立ち上がると逢魏都の布団に潜り込んだ。
「これでいいの? 」
逢魏都はアシュラの首に抱き付いた。
「わあ、もふもふ!
もっふーん!
天然抱き枕、気持ちいいーー! 」
逢魏都はアシュラの毛に頬ずりした。
「こんな風に抱き付かれても、何もできないから嬉しいようで嬉しく無い」
「え?
なんか言った? 」
「なにも! 」
「なに怒ってるの? 」
「怒ってないよ
おやすみ」
アシュラは手の上に頭を載せて目を閉じた。
逢魏都はアシュラにへばりついて眠った。
『ボク、一応お年頃の雄なんだけどなあ.......
男扱いどころか人間扱いも微妙だよね』
アシュラは大きなため息をついた。
読んで下さり有り難うございます。
実は、狼姿のアシュラを逢魏都がお風呂にいれると言うシーンのアイディアがありました。
でも、この流れで入れるタイミングなくて、後、色々諸事情の関係で、できませんでした。
残念。




