親友
読んで戴けたら、倖せです。
逢魏都は慌てて叫んだ。
「ちょっと!
そんな事する前に、ワタシがアンタを殺してやるんだから! 」
「逢魏都ちゃん.....」
兼城は大きく目を見開き逢魏都を見詰めた。
「君.......二言以上喋ることできるんだ」
逢魏都は静止した。
「...............そこ?
じゃなくて
アシュラを酷い目に遇わせたら、絶対許さない! 」
逢魏都はあらん限りの力を籠めて兼城を睨んだ。
兼城は混乱し、暫く逢魏都とアシュラを交互に見ながら頭を整理した。
逢魏都とアシュラは兼城を睨んで、兼城がどんな反応をして来るのか待った。
静寂が三人を包み、時間の流れが急に重くなった様な気がした。
兼城は両手を軽く上げ、フッと笑いを漏らした。
「人語を話す白いエゾ狼は置いとくとして、逢魏都ちゃんには、その狼が凄く大切なのは理解したよ
取り敢えず........」
兼城は困った顔で言った。
「タバコ消していい?
根性焼きしそうだ」
そう言うと兼城はズボンのポケットから携帯灰皿を取り出してタバコを消した。
アシュラがおもむろに口を開いた。
「アンタの親友の天野総史は、間違い無くボクだ」
兼城は吹き出して笑った。
「総史は狼じゃない」
アシュラは逢魏都に話した様にこの場所で目が覚めた時のことを話し始めた。
兼城は俯いたまま、黙ってアシュラの話に耳を傾けた。
アシュラが話し終えると、兼城は真剣な顔で言った。
「つまり、総史はこの祠を壊した為に、ここに祀られた狼のバツを受けて狼にされたってことかい? 」
「え? 」
アシュラと逢魏都は顔を見合わせた。
「話を素直に総合すると、そう言う事になるけど.......」
「そう言う事だったんだ.......」
アシュラは祠に目をやった。
「ボクがこうなったのは
神として崇められた狼の怒りを買ったからだったんだ.....」
兼城は視線を空に漂わせ、独り言のように言った。
「あの時見た白い犬は、総史だったのか.......」
アシュラはお座りして言った。
「アンタはこれから、どうする積もりなの?
アンタの動き方次第では、ボクは逢魏都の傍には居られない」
「アシュラ! 」
逢魏都は愛しさを籠めてアシュラを見た後、憎しみを籠めて兼城を睨んだ。
そんな逢魏都を見て兼城は困り果てたようにため息をついて言った。
「そんな怖い目で見ないで、逢魏都ちゃん
僕は確かに、あの猫を安楽死させた
だけど仕方無かったんだ
あの猫は顎がズレてる上に複雑骨折していて、僕の技術じゃどうする事もできなかった
他の獣医に頼む手もあった
だけど、そうしたら君は途方もない医療費を払い続けなければならなかった
放って置いたら弱って、苦しみを長引かせるだけだったんだ.....」
兼城は優しく逢魏都を見詰めて言った。
「僕は親友を二度も見捨てる事ができるほど、無情な男じゃないよ
自分のせいで、こんな姿になったんだ」
逢魏都の目に孕んでいた鋭い怒りが和らいだ。
アシュラは言った。
「信じてくれるの? 」
兼城は誠実さを籠めてアシュラを見詰めた。
「信じるしかない
そう信じたら、総ての辻褄が合ってしまうんだから......
そう信じれば、ボク自身も少しは救われる
それに........」
兼城は逢魏都を悪戯っぽい目でチラ見した。
「これ以上、逢魏都ちゃんに軽蔑されたくないしね」
逢魏都は恥ずかしそうに俯いた。
読んで下さり有り難うございます。
今回出て来た猫、実は実在します。
安楽死させた訳では無いですが、見付けた時顎がはずれていて食べ物を噛む事ができませんでした。
見付けた時、黒い固まりで土の塊かと思いました。
近付くと、片目が赤くて顔が歪んでました。
逃げるけど、その逃げ方がとても弱々しくて直ぐに捕まえられました。
顔に泥が固まってくっついていて、それで顔が歪んで見えたのです。
活字中毒の娘が二日間、6時間ずっと撫で続けてやっと危害をくわえないことを理解してもらいました。
どっかのバカが顎蹴っ飛ばして、泥を顔にこすりつけたのじゃないかと思います。
やった奴、地獄に堕ちろ。
とても大人しくて、実は凄く人懐こいにゃんこで、可愛いを凝縮したような可愛い過ぎる性格の猫でした。
「へ~ぇ」と、ため息ついたり、夜みんな寝ちゃうと淋しがって夜泣きはするし、おしっこは垂らすし、でもそこも可愛いにゃんこでした。
結局、死なせてしまいましたけど.......。
逢いたいな、あじゅ.......。




