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月の恋人 ―狼―  作者: 楓 海
12/20

 読んで戴けましたら、倖せでございます。

 神社に向かう道を案内しながら歩く狼姿のアシュラは、誰がみても解るくらいむくれっ面をしていた。


逢魏都(あぎと)、凄く不愉快だ」


「仕方ないじゃない、犬は繋いで歩くものなんだから

 この間、村長さんに言われたでしょ」


 どうやらリードに繋がれて歩くのが、気に入らないらしい。


「ボクは犬じゃない」


「犬って事にしておかないと、鉄砲で撃たれちゃうんだよ」


 逢魏都はにっこり微笑んで言った。


「アーシュラ

 似合ってるよ、迷彩柄の首輪」


「すんごい、不愉快」


 田畑に挟まれた大通りに出ると、向こうから富山さんの奥さんが歩いて来る。


 富山さんの奥さんは逢魏都たちを認めると笑顔で話し掛けて来た。


「あら、逢魏都ちゃん

 犬を飼い始めたんだってねえ

 この大きな犬がそうなの? 」


 逢魏都は俯いて一礼して通り過ぎようとした。


 富山さんの奥さんは一言言ってやりましょうと言うように逢魏都に向き直った。


「逢魏都ちゃん

 この間その犬、村長さんとこの鶏襲ったんだってね

 そんな危険な犬飼って大丈夫なの? 」


 逢魏都は振り返って、睨むように富山さんの奥さんを見た。


「アシュラは、そんな事しません! 」


 アシュラは牙をむいて唸った。


 富山さんの奥さんは、逢魏都とアシュラの剣幕にドン引きして、そそくさと去って行った。


「ったく、なんで襲ったのがアシュラになっちゃってるのよ! 」


「足跡はどうなってたんだろうね」


 逢魏都はガックリ肩を落として言った。


「ごめん、訊く事できなくて.....」

 

 アシュラはしっぽを振って言った。


「いいよ、逢魏都だけはボクの潔白を知っていてくれてるんだから」


 逢魏都は、遠くの山に囲まれた平地に広がる田畑を見渡した。


 綺麗な碁盤の目に区切るあぜみちのタンポポに綿毛が混じり始めている。


「ここの春は、あっと言う間だね」


「短いけど、とても綺麗だと思う」


「うん......」


「あ......」


 アシュラはしっぽを立てた。


「あそこだよ! 」


 アシュラが急に駆け出したので、リードを持つ逢魏都は引き摺られるように走らねばならなかった。


 そこは、だだっ広い田畑の一角に小さな林が生い茂る場所だった。


 鳥居の前まで来ると逢魏都が思い切りリードを引いたので、アシュラは首吊り状態になって立ち止まった。


 アシュラは逢魏都を振り返ると抗議した。


「酷いよ、逢魏都!

 首絞まって死ぬかと思った! 」


 逢魏都は眉間に皺を寄せて言った。


「ダメだよ、アシュラ

 無闇に鳥居を(くぐ)っちゃいけないんだよ」


 アシュラは座って首を傾げた。


「門を潜るって言葉あるでしょ

 鳥居を潜るのは門下に入るって意味があるんだよ」


「はあ? 」


「ワタシは釈迦ひと筋だから、ここは潜れない」


「はあ......

 それって、誰が言ったの? 」


「おばあちゃん」


「逢魏都の釈迦好きは、おばあちゃんの影響なんだ」


「そうだよ」


 逢魏都が鳥居の横の草むらを漕いで進むので、アシュラは半ば呆れながら従った。


 敷き詰められた砂利の上に古い落ち葉が降り積もっている。


 奥に進むと小さな祠が在った。


 祠の小さな観音開きの扉の片方が壊れて黒ずんでいた。


 逢魏都は祠の前に立つと、上を見上げた。


 うっそうと茂る木々の枝葉に遮られて、空は殆ど見えない。


 昼間だと言うのに、この一角だけ別世界のように薄暗く、湿った空気が辺りを包んでいる。


 逢魏都は言った。


「ここ、聞いた事あるよ

 昔、日照りが続いて村人が困窮していると、一匹の白い狼が現れて、決して枯れない泉に村人たちを導いたんだって」


 アシュラは耳をピンと立てた。


「白い狼? 」


 逢魏都は辺りを見回して、祠の傍にある丸く囲った石の上にしめ縄を載せた場所を指して言った。


「多分、あそこが泉なんじゃないかな」


 アシュラが近付いて石に囲まれた窪みを覗くと、そこはカラカラに渇いていて古い茶色の落ち葉が溜まっていた。


「枯れてるみたいだけど.....」


 逢魏都は肩を(すく)めた。


 急にアシュラが鳥居を振り返った。


「逢魏都、誰か来る

 この匂い、あの獣医だ」


「なんで、あいつが.....」


「とにかく隠れよう」


 アシュラと逢魏都は祠の裏に屈んで身を隠し、息を(ひそ)めた。


 間も無く、足音が近付いて来る。


 足音は祠の前で立ち止まった。


「総史.......」


 それは間違い無く兼城(かねしろ)の声だった。


「この間、お前にそっくりな奴に逢ったよ......

 記憶を失くしたと言っていた」


 アシュラと逢魏都は息を殺して聞き耳を立てた。


「お前にそっくりで、ちょうどお前が居なくなった時と同じ年頃だった

 髪を銀色にして、銀色のカラコン入れて、今時の格好してたけど......

 僕はあいつがお前のような気がしてならない

 いや、そうであって欲しいと思ってる


 生きていて欲しいと......

 思ってる......


 むしがいいと思うよな

 やっぱり.............」


 逢魏都は屈んだ足が痛くなり、そっと態勢を変えようとして砂利が鳴った。


 アシュラと逢魏都はフリーズした。


 それは兼城も同じようだった。


 静寂の中、遠くで雀のさえずりだけが聞こえていた。





 読んで戴き、有り難うございます。


 私は神社が嫌いです。

 ある経験からなのですが、それとは別の理由があります。

 ある経験に付いては、後ほど語るとして、別の理由は


 暮れになると神社の札を町内会で班長が配りますが、うちが班長で札配りになると、決まって私、熱出すんですよお。

 そんな私に最悪のイベントが有りました。

 いとこが、神社で結婚式挙げて、出席したら三日間熱に苛まれました。


 街の中心に神社があって、秋とかに娘が保育所の遠足に、神社へ行くと決まって転んだりして、怪我して帰ってきました。


 この街の神社の林には、丑の刻参りした後があるそうです。

 そうです、呪いの藁人形が木に打ち付けられているそうです。


 不思議だとおもいませんか❔

 神聖な場所のはずなのに、そんな負のパワーを利用した事に利用されるなんて。

 私は神社って、みんなが言うようないい場所とは信じられないです。


 私が何か無自覚で、神社に悪い事したとしても、それを根に持って悪い事起こすって、それが人間を守る物のする事でしょうかね。

 だから、私は仏に走りました。笑


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― 新着の感想 ―
[一言] ぼくも神社は入れない(宗教的な理由です)ので、アギトの気持ちが痛いほどわかります…w世の中神社、多過ぎて…w
2022/12/21 21:01 退会済み
管理
[一言] いよいよ出会いましたか。 これで、獣医さんも話してくれるのかな?
[良い点] どんどん物語も続きが気になる展開となってきましたね。 面白いです。 [気になる点] あまり気にしてなかったのですが、小説のカテゴリーってなんだろう。まさか!? サスペンス? [一言] 更新…
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