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一目惚れという好きな人には言ってはいけない最上級のセクシャルハラスメント発言

作者: C:drive

「一目惚れしました、僕と付き合ってください!」

 まだ太陽が燦々と輝く平日の放課後、私にそう言ったのは名も知らない少年だった。名も知らないどころか、一度だって見たこともない。唐突に頭を下げて叫びだしたものだから顔もまともに分からない。そう、私は出会った覚えもない少年に今まさに告白されている。


 私は少年の告白を聞いて複雑な心境だった。自分の容姿にはそれなり以上に自信があったし、告白をされたことも何度もある。告白の方法も台詞も千差万別だ。しかしそれらのなかでも最低な台詞は『一目惚れ』だと思うのだ。


 一目惚れということは相手の第一印象、つまり性格や能力を一切排除した容姿だけで好きになったということだ。それは物語でいえば騎士と姫が惹かれあうように劇的で運命的であるのだろうが、現実ならばセクシャルハラスメント発言そのものだ。何故かというと(あくまでも私個人の意見だが)、『一目惚れしました』という発言は『あなたのことはなにも知りませんが性的には好みです』という発言に変換できる。つまりそれは成人向けコンテンツを見て興奮したことをコンテンツに登場する被写体に報告することと同義なのだ。当然そんなことをする人間は変態であると誰でも断じるだろう。


 長々と語ったが、つまるところ私は何が言いたいかというとそんな変態行為を前にして何とも言えない心境となっていた。はじめはそんな変態行為に驚き、やがて怒りがこみ上げる。しかしいつしか目の前の少年のあまりにも真っ直ぐで大胆な行動力に呆れ、どこか興味さえ沸いてきていた。まだも知らない変態少年はいったいどんな表情で、こんな原始時代のような情緒の欠片もない告白をしたのか。返事などとうに決まっていたが、私はゆっくりと下げられた少年の顔が上がるのを待った。


 顔が上がった時、私はどきりと心臓が強く脈打つのを感じた。期待に目を潤ませる少年の顔を見つめるほどに身体中が燃えるように暑くなっていく。ああ、散々に馬鹿にしていたはずの自分はどこへいったのか。私は事前に決めていたはずの返事が全く口から出なかった。代わりに情緒のへったくれもない変態的台詞が自然と出る。


「私も一目惚れしました。付き合ってください!」


 そうして私と顔も名も知らなかった少年は結ばれた。幸い最高に性的に好みな見た目のお陰かお互いをよく知った後も仲は良い。これは現実だけれども、物語のように劇的で運命なことだってあるものだ。

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