0.手違いでヒロインが死んじゃったんだよね!
私は小さな頃から体が弱くて、外で走り回ることなんて出来なかった。
そんな私の楽しみは、アニメや漫画、ゲームといった娯楽だった。
小中高ともに、教室の隅で大人しく本を読んでいるタイプだった私は、高三の終わりがけ、雨の日の帰り道、バスの中でいつものように本を読んでいた。中学の時にドハマリした乙女ゲームの攻略本を。
ふふふふふ、やっぱりこのゲームのキャラクターの設定の作り込みは、圧巻だわぁぁ。
『光のような君と』という乙女ゲームがある。
魔法西洋ファンタジーの中で5人の攻略者がいて、魔法学園の中で恋愛したり、魔法使ったり、魔物を倒したり。
恋愛要素だけではなく、バトル要素もふんだんにあり、王道っぽいと思わせて新しい。そんなゲームに私は夢中になっていた。
そんな時だった、急にバスが大きく揺れて、乗客の悲鳴が聞こえてきた。
何があったんだと、前を見ると、急なカーブと雨で濡れた地面のせいで曲がりきれてなく、ガードレールに突っ込んでいた。
そこからはあっという間だった、真っ逆さまに崖の下へと落ちていくバスと、乗客の悲鳴を聞きながら私は静かに目を閉じた。
ん、んん、、、?
眩しい光を感じて、ゆっくりと目を開ける。
まだ慣れない目を擦りながら周りを見渡すと、360度全部が真っ白の世界だった。
なにここ、、、私、死んだ、よね??
てことは、天国?あの世?
不思議だと周りをキョロキョロしている私の肩を誰かが突然叩いた。
「やぁ!」
「うわっ!!!」
突然、それも誰もいなかったはずの方向から声をかけられ、思わず大きな声が出た。
声のした方にゆっくりと振り返ると、真っ白な髪に真っ白な肌、真っ赤な目をした12歳くらいの女の子がたっていた。
え、だれ、、、?
私がその子を凝視してると、女の子は照れたようにニコッと笑って話し出した。
「君が死んだのは手違いなんだよねぇ」
「……は?」
「君は本当は死なない予定だったんだけどなぁ、そうそう、手違いって言ったら、ヒロインが死んじゃったんだよね!」
ちょっと何を言っているのかがわからない。
手違いってなんだ!?ヒロインってなんの話し!?
無邪気そうに話す女の子は、急に深刻そうな顔をした。
「君に、ヒロインのかわりをして欲しいんだよ。」
「はぁ???」
「『光のような君と』っていうゲームは知ってるでしょ?そのゲームの世界のヒロインがね、手違いで死んじゃったの、それも生まれてすぐに。どうしよっかー、」
え、なんの話しをしてるんだ???
『光のような君と』は知ってるけど、ヒロインが死んだってなに、、?てか、ゲームの世界ってなに??
困惑している私を、ふむふむも頷きながらみている女の子。
「君に、ヒロインのかわりをやってもらおうかな!!」
「え!?!?」
そう言った女の子は私のお腹に手を当てた。
「とりあえず、ヒロインとして魔王を倒してね!」
女の子の無邪気な笑顔を最後に私は眠りについた。