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即死属性持ちの同い年を拾った話  作者: スタイリッシュ土下座
8/10

神類は定住しました

 遂に最終話を迎えてしまいました。どうも、作者の土下座です。

 ハクメとエイミの恋物語というのは実はそこまで考えて作ってた設定ではないのです。あくまで構想初期段階は「暮らすだけ」でした。

 しかし関係が深まると共に、自分も書いてて「うへへ」と声を漏らすぐらい変t.......ハマってしまっていたので本当に不思議ですね。

 そんな素人作者のなろう小説ですが、どうか最後まで読んで頂けると幸いです。

 それでは、どうぞ。

 一週間という儚くも忙しかった日々を越え、私は炭と化した瓦礫の中から身体を起こした。


「生きてる.......!」


 あれだけの暴発が起これば、普通の人間なら絶対助からないだろうと危惧していた。決して無傷という訳では無い。

 左足を損傷し、血が流れていた。しかしそれ以外は全くと言っていい程の無傷だった。(本当の所はどうか分からないが)これも生神様の御加護かもしれない。


「エイミちゃんは!?」


 私は周囲の廃虚と化した焼け跡を探した。傷を負った左足がズキズキと痛むが、今はそれどころの話ではない。

 むしろまだ動けるほどの状態である事が奇跡だった。


「何処.......まさか死んでないよね.......?」


 段々と不安に襲われた。この一帯を燃やせと指示を出したのは私である。そのせいで彼女が生き絶えていたら──。


「もう少し、後もう少しだから」


 限界を超えて疲労が蓄積された身体は思うように動かなくなっていた。腕を使い、這いながら進むがやっとだ。それでも私は諦めたくなかった。


「何故だァ!?」


 後ろから力強い男の声が聞こえた。思わず振り向くとそこにいたのは私達をここまで追い詰めたエンゼ警官だった。


「もう、しんどいんです。勘弁してください」


「違う!!俺が聞きたいのはその台詞じゃない!何故お前はそこまでする」


「そこまでする.......とは?」


 私はキョトンとした顔を隠せなかった。彼はボロボロになった制服の煤汚れを払い落としながら言った。


「貴様はもう動けないまでに俺に抵抗し、それでも何かを全うしようと動いている。何が貴様を駆り立てているんだ!?」


「私は、私自身の想いで彼女を助けたかっただけ。あの家ごと全部爆発させたのは、あなたのような警官から彼女を遠ざける為」


 なんの迷いも無く答えた私に彼は驚きもしなかった。その溢れんばかりの熱気で私に疑問を投げかけるのだった。


「馬鹿が!あの女は触れるもの、関わるもの全てを皆殺しにする悪質なテロリスト紛いだ!なのに貴様はそいつを守ろうとする!正義というものを知らないのか!?」


「正義だとか何だとか、私は信じてません。元々私は誰からも守って貰えなかったし、誰からも救って貰えなかった」


「頭のネジが外れているのか貴様は!?この世界はな、助け合いも守り合いもあるはずが無い!貴様のやってる事は──」


 唐突に怒りの感情が湧き上がる。私の中で何かが壊れた。


「誰も守らないなら、私が守ってあげたいと思っただけです!!それの何が悪いんですか!!」


 彼に見向きもせず、私は再び地べたを這った。足の痛覚がまだ残っているだけまだ良い。これが無くなった時が最後だ。


「おい」


「しつこいです。私の邪魔をしないでください」


「今のお前じゃ、あの死神女を助ける事はできないだろ」


「分かってます。でも.......」


 涙が溢れてきた。この瓦礫の山の中、彼女を助けるにはどうしても誰かの助けが必要だった。彼の言う通り今の私にはどうする事もできない。


「俺の負けだ」


「えっ」


「勘違いするなよ。誰が間違っているとかそういう話じゃない。貴様がそれだけ焦ってあの女を探しているのなら、俺がとっ捕まえる」


「警官さん。あなたに頼る訳には.......!」


「ゆっくり休んでろ。正義を守るのは警官の仕事だ」


 彼はすぐにこの惨状で無事だった仲間を派遣し、焼け焦げた家屋の屑を払い除けながら捜索した。やがて、私の元に一人の警官がやってきてこう告げた。


「ハクメさん.......ですよね」


「ええ」


「エイミを見つけました。ですが残念ながら.......!」


 一瞬で世界が真っ暗になった。信じられない。信じたくない。ここまで真剣に彼女の事を想って戦ってきたはずだ。


「今すぐ案内して」


「しかしハクメさん、足が.......」


「いいから!!」


 見つかった場所へ急行すると、そこには焼け焦げた瓦礫の下に眠った白い肌の女の子があった。思わず気絶しそうになった。全く動かない。


「エイミちゃ.......」


 私の心は絶望の中に沈んだ。亡くすにはあまりにも惜し過ぎる子だった。私にとって美しくて、勇敢で気高い子だった。そっと、彼女の綺麗な肌に手を触れると──ほんのり温かい。


「どーーーーーん!!!!!」


「うひゃぁぁぁぁっ!!!???」


 塵ゴミを吹き飛ばし、華麗に彼女は飛び上がった。思わず数秒間ほど失神してしまった。


「おい、死神女てめぇ!ただでさえコイツ疲れてるだろうが!なんて事しやがる!?」


「流石にやり過ぎちゃったですか。ごめんです。警官さん」


「違うだろお前!俺に謝るんじゃなくてコイツに謝れよ。なぁ!?」


 幸い、私が倒れかかった場所がエンゼ警官隊長の懐だったので良かった。

 それよりも、何よりも願っていた事が起きた。いや、何かの力で起きてしまったのだ。


「エイミちゃんが.......生きてる.......!」


 あの時の祈りは届いていたのだ。一体何が作用してこうなったか、それすらも今は考える脳は残ってなかった。


「ハクメさん!!!生きてて良かったです!!!」


「はは.......もう笑いしか出てこないよ」


 彼女は私と初めて会った時の様に抱きついてきた。ひっつき虫な所、笑顔いっぱいで元気な所、何事も恐れない強気な所、全て含めて本物のエイミそのものだった。


「とにかく、今回の件は本部に報告しておく!いや、しておかなければならない!」


「え、でもエンゼさんも私達を探すのに協力してたです。何かやましい事でもあったですか?」


 彼はこの期に及んでようやく顔が緩み始めた。前の冷酷で高慢なそれとは少し違った。


「うっ、うるせっ!!俺は誰にも協力した覚えはない!人命が関わる為仕方なくやった事だ!それに」


「それにです?」


「今回報告する内容はあくまでお前らの罪状に関する事じゃない。危険性はあれど悪気が無いと分かった。俺の方から貴様らの厳重観察を条件に逮捕を保留すると伝える」


 後から聞いた話ではあるが、彼にも彼なりに事情があるのだった。

 元々彼は世間に対し良い感情を持っておらず、罪人を捕まえる事だけが彼の生きがいになっていたとの事だ。


「これだけ大事おおごとになるとは思わなかった。仕方あるまい。俺も面倒事は嫌いだ。今回だけは見逃してやる」


「本当ですか!?」


「しかし、覚えておけ!貴様らがもしこれ以上他者に被害を与えたなら、即座に俺は貴様らを捕まえに行く!その時は覚悟しろ」


 エンゼ警官はそう言い、残った部隊と重症を負った警官達を抱えて焼け跡から姿を消した。どうやら彼にも彼なりに感じた事があるのだろうと思った。


「ハクメさん。本当に良かったです。凄い傷ですけど、治療しようにも」


「うん。家が全壊しちゃったから」


 彼女はしょんぼりとした顔を見せた。今まで積み上げてきたその農場は私の人生そのものと言っても過言では無かった。


「大丈夫。また作り直せばいいよ」


「また無理してるです」


「え?」


「無理しないでくださいって何回も言ってるじゃないですか。もしかしたら、これで全部治るかもです」


 彼女が懐から取り出したのは『元戻草』の半欠片だった。その異世界草には固物の状態を元に戻す機能がある。


「その量じゃ無理だよ。それに全てが全て元に戻る訳じゃない」


「やってみなきゃ分からないです。ほら、持っててくださいです」


 そう言って彼女は私に優しくその草を渡した。そして、息をすうっと吸い込み呪文を唱え始めた。


「エイミちゃん?」


 彼女は答えず、詠唱を繰り返した。すると突然、地面が盛り上がり、焼け焦げて使い物にならなかったはずの木材が段々と組み上げられていく。


「嘘ぉ!?」


 私の手に持ったそれは閃光を放ち、光の当たった箇所から少しずつ元に戻っていく。それは普通に『元戻草』を使う時の数倍は早く、恐ろしいレベルの修復能力で何から何まで全てに広がり、新品同然にまで回復した。


「終わったです」


「エイミちゃん、今何したの.......?」


「リンネ博士が『どうしようもなくなった時の最後の手段として使いなさい』と教えてくれたです。私も呪文の言葉しか覚えてないですが、それは異世界草の効力を──」


「ありがとう!!エイミちゃん!!」


「嬉しいですけど.......少し苦しいです」


 私は彼女に抱きついた。信じられなかった。ボロボロに朽ち果てたその柱も、パチパチと音を立てて燃えていた農場も、私とエイミが過ごした思い出の部屋も、全てそのままの状態で復活してしまった。

 気付けばボロボロで疲れ果てていた身体も胸や足の傷も全て完治した。

 外は暗雲立ち込めていたはずなのに、いつの間にかすっかり晴れて、お日様が照らした。


「ハクメさん。こんな私でもこれからもずっと、ずーっと、側にいていいですか?」


 私の彼女に対する答えは一つしか無かった。彼女の手をぎゅっと握りしめて答えた。


「これからもずっと、何十年先も、生まれ変わったその先も、エイミちゃんと一緒にいたい!」


 私達は二人揃って笑顔をこぼした。安心したのかお腹がぐうと鳴った。あの事件から私達は何も食べていないのを思い出した。


「ご飯食べよっか」


「ですです!」


 彼女の目がキラリと光ったので、二人揃ってリビングの方へと走りました。これが私の『即死属性持ちの同い年を拾った話』です。

 書き終えてしまいました。遂に。

 自分でも綺麗に終わり過ぎた後のあとがきなんで書いても余韻として悪いのかなとも思いますがしばしお付き合いを.......

 この作品は主に『生と死』をテーマにおいて作ってきたつもりですが、自分自身あまり歳を取っておらず、人生経験もそこまでないので、現代を生きる若者視点での物語を作ってみようというのがこの物語の始まりでした。

 最初の方は読む人がいるのかなと不安になりながら書き進めてましたが、少しずつですが応援してくれる人も増えてこの作品を書くのも日課になりつつありました。

 自分自身、この作品の一話は鬱になりかけていながら書いていたので未だに『こいつ何書いてんだ?』ってなる所もあります。(エイミちゃんが急に皆死んだ発言する所とか)

 それでも過去の自分が成し遂げたかった小説の姿とはなんだろうなと思い、書き続けてたら何とかこれだけでも完結させる事ができました。(切実に)本当にありがとうございます。

 ここまで応援してくださった、そしてコメントをくださった全ての読者の方の力があってこその作品だと思います。

 まだ公開しきれていない伏線の回収や、書きたいエピソードが少しだけあるので、最終回と言えども気が向いた時に思い出しながら書こうと思います。ここまでのご愛読、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 序盤、爆発草で爆発したのに怪我するような描写も存在せず、アハハで笑って済ませたので(しかも二度)、あ、これはギャグ小説だと思って読んでた。・・・なのでラストを読んでも、「何シリアスな結末にし…
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