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46.X8話  響=ロリorショタ?? その3

「響ちゃん……ええとね?」

「?」


なんだかかがりの様子がおかしい。


甘味が足りないの?

早く頼みなよ。


「あの。 その……何度も聞いてしまって悪いけれど、響ちゃん、こういう話をこんなところ……人に聞こえてしまうかもしれない場所でしてしまってもいいのかしら? ええと、こういう話題でも……」


む。


かがりが至極常識的過ぎることを口にしている。


「なんだ……かがり、僕に甘いものを頼ませて多く残させて自分が食べたいっていう理由でもじもじしていたわけじゃないのか」


「違うわよ! もうっ、響ちゃんは私のことをどのような目で」

「ん。 食欲の秋だね」


「ひびきったら詩的ー。 んじゃ私は無難に食べてよく育つ……よく……ぐぬぬぅ……」

「自分で言っといてあんたは……でもまあ、そうね。 いつも食べているわね、かがりさん。 それでよくそのプロポーション維持できるなぁって思うわ」


「えっと……その、虫歯になるから……い、言えませんっ」


「みんなひどいわっ!?」


かがりのくるんが心しか尖っている。


……やっぱり、この子たち同じ女子中学生基準でも食べ過ぎだったんだね。


僕はてっきりこれが女の子の標準だって思っていたから困ってたんだ。


だって、特に最初の方なんかは「女として生きるかもしれない」って思っていて、その参考を一時期はかがりにしていたもんだから……これだけ甘いものとかを食べなきゃいけないのかって思っていたから。


あと……やっぱりできているんだね、虫歯。

そりゃあそうだよね、会っているときはほとんどなにかを口にしているし。


それで太らないのが本当に不思議なくらいだ。


栄養を妄想で消費しているんだろうか?

あ、でも、身長が高いから基礎代謝的なのは多いのかもね。


そうしてひととおり……被害担当はさよで、それに割って入る感じのりさがいて、その場面をスマホで撮っているのがゆりか。


そんな、年相応のはしゃぐっていうものをお店の人に怒られない程度の声で繰り返すこと数分。


ひたすらにみんなにさっきの発言について問い詰めて、それでとりあえず満足したっていう感じなかがりは、ふぅ、と髪の毛を触りつつ、落ち着いた様子。


「……さて、それでは私も言わなければ、ね。 響ちゃんのこと。 私としては、響ちゃんは『小さな乙女』という印象よ」


「あ、戻すのね話題。 いや、私はいいんだけどさ……さすがはかがりん。 てことはー、つまり『ロリ響ちゃん』ってことだね? ロリっ子だね?」


「ロリータ……そう、ゴシックもとても似合いそうで」

「……あの、その、また脱線……し、そうになって……」


「たとえ普通の格好だって……最初に会ったときには、ええと、ストリート系みたいな格好だったけれど、それからは今みたいに。 ――――――――そう。 響ちゃんは、完成されすぎているのよ。 完全なロリータなのよ」


「おお……また新しいかがり語録が」


「語録?」

「あ、あの、あの……どうか落ち着かれて……」


かがりが、目を閉じて黙る。


これは、非常によくない。

なにかが起きる前触れだ。


かがりが普段とは違う反応を見せるような、こういうときっていうのは。


「そうよっ!!!」


あ。


がた、と席を立とうとして思いっきり太もものあたりをテーブルにぶつけて、上にある食器がみんなガチャンって音立てて、近くの席の人がそんなかがりを見つめ始めて……口を開きかけているかがりを、すすす、と静かにきちんと席を立って、すとん、と座らせるりさりん。


さすがに目立っていると気がついたのか、いつになくおとなしい様子。


……もう慣れてきているなぁ、この子も。

いや、みんなが……かがりの奇行に。


やはりこの子は基準じゃなかったんだな。


そしてさよがまだあったかい紅茶を差し出して発音しかけていたかがりの口をふさいで、ごくごくと飲ませてほうっとひと呼吸するくらいはあって。


それをスマホで撮り続けているゆりかと、お誕生日席が故にクッションっていう不安定な足場で動けないでいる僕を除いたふたりが協力して……もう1回、かがりを抑えようとした。


……でもダメだった。


余計なスイッチ、押しちゃったみたいで。

よりによって、トドメは僕で。


ああ、僕はまた……。


「みんなよく聞くのよ? 響ちゃんは響ちゃんなの。 響ちゃんは響ちゃんで響ちゃんなのだからもちろんわざわざこうして言うまでもないと思うのだけれど、あらもう少し結論だけではなくてその過程も話さないといけないのだったわよね響ちゃんごめんなさいね響ちゃんつい、このあいだ言われたばかりなのにいえずっと前から教えてくれていたのよねでもそれを最近ようやく分かってきたのよ」


「ええと何の話だったかしらあらそうだったわ響ちゃんのことねつまりは響ちゃんは響ちゃんというのはつまりは響ちゃんという存在は究極的には『美』ということなのよ、美という言葉が意味するところはね、表現が非常に難しいのだけれどもあえて言ってみるわね、響ちゃんの容姿は完成されているのよ。 私は残念ながら一緒にお風呂に入ったりする機会もなかったから下着の下は見たことはないのだけれども、でもお着替えをお願いされたときにその上までは見たことがあるから分かっているの、いつも見ているから分かっているのよ理解しているのそれはそれは極めて美しいの」


「あらもう少し説明しないといけないのよね、話は人が聞いて分かりやすいように前提というものを先に話してから本題に入らないといけないと響ちゃんから夏休みのときにも散々に教わったというのに私ったら、ええと響ちゃんの容姿が美であって完成されているというのもまるでそうなるようにって設計して創られたようなお人形さんのようだという意味よ分かるかしら、たとえばみんなだってお家にお気に入りのお人形さんが何人もいるでしょう? いなかったとしても昔はお部屋にいたはずだしゆりかちゃんみたいにマンガやアニメに出てきているようなお気に入りの子でも全然に構わないわ」


「だから隠していてもどこかに染み出しているような美しいかわいらしいという印象以外には表現できないのだし見つけ出せないのよ、もちろんおはなししているときには男の子らしさもあるのだし、あ、だけれども響ちゃんってどう表現したらいいのか分からないけれども不思議なのよ、男の子らしいのに女の子らしくもあって女の子らしいのにどこか男の子らしいというものが伝わってきてときどき頭がどちらかしらと考えてしまうの」


「…………………………………………」

「…………………………………………」

「…………………………………………」

「…………………………………………」


……もう誰も身動きを取れない。


ただただそのことばの暴力に惑わされている。


幸運なことに、途切れることなく話し続けているかがりの声が聞こえる範囲には誰もいなくて、店員さんもこっちには来ていなくって他の人に迷惑をかける心配はないけども。


スマホで録画しているだろうゆりかもその手はそのままに、笑顔が固まっていて……たぶん、あっけにとられている。


口が半開きだし。


……誰だってそのはず。


そうじゃないのは、かがりのこれを何回か浴びせられている僕と……さよくらい?


ほとんど息継ぎなしで蕩々と僕についてを話しているかがりは、こんなことを考えているあいだにもとめどなくするするとぬるめると言語を紡ぎ出している。


「……それはつまりアンバランスということなのよ響ちゃんはアンバランスゆえに響ちゃんなの、分かるかしらアンバランスというのは響ちゃんの幼い女の子という女性も男性もご年配の方も物心つかない赤ちゃんだってひと目で見て分かる完成形の器というものに、これもまた完成された男の子の魂が完成された誰かに吹き込まれたようなそのようなイメージを持ってくれたならよく分かると思うわ、ええそうね言うなれば童女、いえ、ゆりかちゃんがこの前言っていたわね幼い女の子つまりは幼女というのかしらそれとも先ほど言っていたようにロリータ、あるいはロリと言うのかしら」


「…………………………………………」


ゆりかを見る。


「…………………………………………」


心持ち顔を背けられた。

あとで問い詰めよう。


「そのような、ええ、ロリと言う完成された小さな女の子の体の中に少年、いえ、これもまた先ほど言っていたようにショタというのかしら……ではないわねそれはふさわしくない気がするわ? ゆりかちゃんには申し訳ないのだけれどもだって私のどこかがそれは違うと叫んでいるのだから私にはショタとは表現できないの、ならどう言えばいいのかしらね、男の子、男性、少年、青年、男の人ああ思いついたわしっくり来る表現がそう青年よ!!! 私たちよりも年上の高校あるいは大学にいて穏やかで線の細い男性な青年という人よ! それを無理がないようにいえむしろぴったりとそこに合うように収めたというような感覚ねええそうよ私にとって響ちゃんは青年さんで青年ちゃんなのよ!」


一瞬とひやりとする。


……かがりは完全なる感覚派な子。


いつもいろいろと足りないって思っているけれども、勉強を教えたりするときには嫌というほどに前を向かせないといけないもんだから、いつもいつも振り回されているもんだからついつい忘れがちだけど……この子だって決して頭は悪い方じゃない、むしろいい方ではあるんだ。


ただ興味がすべて、そういう方向に向いちゃっているっていうだけであって。

それが全てを台無しにしているんだけれども……それは置いておいて。


だからつまり、かがりは普段から僕のことをよくよく観察しているっていうことで、だから僕の本質の一部を……今言っていたように理解しているんだ。


だから、ひやっとして手に汗がじわっとにじんだわけだけれども。


でも、心配することはないだろう。


だってどうせ、今話し終えたら……いつものかがりのこと。

どうせ完璧に忘れちゃうんだろうから。


ただただ自分が思っていることとか話しているあいだに思いついたようなことをしゃべり倒して、それですっきりして満足するだけなんだろうから。


うん。


僕は詳しいから分かる。


いつもだから。


あの……夏休みにかがりとふたりきりの日っていうものを何日も何日も経験したら、そりゃあもう慣れないほうがおかしいんだから。


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