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46.X8話  響=ロリorショタ?? その1

「てな感じでさ? ひびきって犯罪臭がするかどうかって話題があったんだけどさー、ふたりはどー思うのかいな? あ、ぜひぜひホンネで!! ね? ね??」


「ええと……? ……良く分からないわ?」

「あ、……あぅ」


ゆりかは元から、とことん物事を楽しむ子。


それは趣味然り、そのための勉強や家の掃除などの手伝いをしっかりすること然り、始めから終わりまで全てにおいて。


つまりは常に全力投球というわけで。


当然ながらに彼女にとって「楽しい話題」があったのなら、絶対にそれを余すことなく楽しみ尽くすのは道理だろう。


だから僕たち3人の間だけでなんとか収まっていたのが……こうして広がる。


うん、女の子だもんね……うん、諦めてたよ。


「ほら、ほらほらぁー。 響にも許可取ってるしさー? ねー? ひびきー?」

「……うん」


何かの会話の表紙で「良いよね?」って聞かれて、で、いつものごとく聞いてなかったけど聞いてたフリするために「うん」って言っただけなんだけどね。


でも今回は僕が悪いっぽい。

それにどうせ同じだからって気にしてない。


気にしてないから大丈夫。


僕が女装してるとかそういう話のときに居なかった、かがりとさよ。

彼女たちへ伝わるのも……どうせ時間の問題だっただろうしね、もう良いよ。


下手に知らないときに共有されてかがりに突撃されても、それはそれで困るし。


「やー、しっかしすげぇ髪の毛。 あ、蛍光灯だと完全に透けて見える!」


いつも以上におちゃらけた感じなゆりかは、僕の隣で僕の髪の毛をばさばさしながら楽しんでいて、とにかく落ち着きがなくて。


今日は珍しくお誕生日席になっていない僕の反対側には、くるんなかがりといつもの眼鏡じゃないさよ。


「ゆりかはロリで僕はショタ」みたいな会話になったときの場面を、女子や女性特有のすごい記憶力で見事に再現されてから少し。


僕が忘れかけていたところとかまでほぼ一字一句っていう感じに再現してのけたゆりかってすごいね。


まあ、ゆりかのことだから結構に盛られているところもあったけれども……とかく女性は脳の想像上エピソード記憶っていうやつだったかが優れているらしい。


けれども記憶力がすごいが故に恋人や夫婦の間ではそのせいでいさかいが絶えないと聞く。


なんて恐ろしいことだ。


女性は「どうして自分と居たり話した場面を覚えていないの!?」って怒って、男は「そんなこと言われても覚えていないものは覚えていないんだ!」って感じになるらしい。


うん、分かる。


すっごく。


なにしろ目の前にいるダブルくるんさんはその代表例だもん。


何度もそれで……初めのころは軽い感じでだけども怒られたっけ。

勉強で教えたこととかはすぐに忘れちゃうのになぁ、この子……。


「?」


ぱちりとかがりと目が合って……そして彼女はいつもどおり「くるん?」してきた。


多分何も考えてないんだろうなぁ……羨ましいなぁ。


……今日のゆりかは……ファミレスに着いてみんなのジュースを「いい感じ」に作り上げたあとに席に座った彼女は、話し始めた。


あのときの……りさとのあれこれがあったときの、あの話題を。


だけれども本当のことは言っていない。


彼女は上手いこと彼女自身が恥ずかしいような場面は話さず、けれども辻褄の合うように、だけれども嘘を言わない範囲でごまかして「ゆりかと僕が並んで歩くと小学生同士みたい」だとか「ゆりかは自称年齢詐欺ロリで、僕は年齢不詳ロリかショタ」っていう感じに話したいことだけを話している。


「それでぇ?? どーよどーよおふたりとも?」


「そうねぇ――……」

「わ、私は…………」


それにしても、ここのところみんなが良い意味で遠慮がなくなってきているのを感じる。


なんて言うか……壁がないっていうか、話そうとしてぐっと抑える感じとかが消えてきたっていうか。


僕の事情……嘘だらけではあるけれども……を知って、そこそこの時間が経ったからかな。

だからこそゆりかも結構積極的に話を振ってくるようになっているんだし。


まぁ今日のはやり過ぎだって思うけれど、でも無遠慮ってわけじゃない証拠に新しい1歩を踏み出そうとするときにちらちら僕のことを見てきて、軽く話を振って「いいのかな?」って確認するような感じだから、別に嫌な気分になることはない。


ないんだけど……なんというか、こう……単純に恥ずかしいんだ。


僕のことについて、僕が話題の中心になるっていうのは今までほとんど経験して来たことがなかったから。


けれど今では慣れつつある僕も居て、なんだか少しだけ……この歳になって成長できた感覚がある。


不思議。


「……え、と。 つまり……響さんが、い、一般的に見て、客観的に……その、漫画などで出てくるようなロリータ、とか、ショタ……と、いうようなもの。 と、いうこと……ですか……?」


「そーそーそのとーりだよさよちーん。 ザッツライッ! だってさだってさー、気になるじゃん? 響知らない人が響見て響のこと見たとき、どーんな感じな反応になるのかなーって。 もちろん面と向かっては言わないだろうから心の中でさー」


くるんくるんしているくるんはくるんのままでくるんだから置いておくとして、さよはさっきからずーっと僕たちの顔を順繰りに見続けていて、くるんさん不在のままに会話らしきものは続いている。


……さよには悪いけれど、できればこのままくるんな沈黙が続いてゆりかがさっと場の空気を読んで別の話題に変えてくれたら良かったんだけども。


「ねね、響だってそーでしょ? 一般的な印象っての……あ、もちいつもみたく顔とか隠さないで、堂々としてるときの印象ってのをさ? ま、ここには事情知ってる子しかいないけどね。 しかもみんな女子。 ハーレムじゃよ、ひびき?」


「――こら。 なにやってんの」

「あう〝っ!? ……ったー、ひどいよりさりん」


「私が目を離した隙にまーたその話題とか……もう。 で、さっさと席詰めなさいな。 どうせ私がちょっと外に出てたから響さんをムリヤリ居心地悪いところに引っ張ってきたんでしょ。 ……あ、ごめんなさいね響さん、さ、いつもみたいに奥にどうぞ」


「……うん、ありがとう」


りさがなんか気を利かせてくれたんだけど……いや別に僕、お誕生日席が好きなわけじゃないんだけれども?


何でそう思ってるの?


だけど善意からみんなが勧めてくる手前、断ることはできない。

そんなわけで僕はすごすごと定位置に戻されることになる。


初期位置の定位置のいつもの陣形に。


僕がお誕生日席でみんなと店の人とか通り過ぎる人からの視線を浴びて、目の前のテーブルの左右にふたりずつが座っているっていう。


僕が口を開くと4対の瞳が左右から飛んでくるっていう、僕にとってはこれ以上なく苦手な場所へと。


そうして足が床につかないから手とおしりでずりずりと進んで、奥に着いたら今まで座っていたクッション3枚をゆりかから「これが響のぬくもり……」とかこの子の未来が少し不安になるようなつぶやきとともに受け取って、座高をかさ増しにして。


で……結局はいつも通り僕はお誕生日席。


……だからなんでなんだろ。


でもなんだか落ち着くような気もする感じがして来ちゃっている今の僕の定位置。


だけれども僕の精神はちっとも落ち着かない。


だってロリとかショタとかいうワードを、こんなに幼い女の子たちが口にしているのにまだ慣れないんだ。


なんていうかいかがわしいっていうか、こう……上手く表現できないけれども。


親戚の子たちが久しぶりに会ったら……って感じ?


もう「小さい」って言われること自体には慣れっこだし、肉体年齢はこれでも盛りに盛っているから文句は言えやしないんだけれども。


……だけども、嫌なものは嫌だなぁ。


それをはっきりと言えない僕自身もまた、いつも通りに嫌なんだ。

でも事実だしって思う僕自身も居て、つまりはよく分からない。


強いて言えば、この体のこと。


今の幼女な体のことを僕自身なんだって当たり前に思っているっていう事実を意識するから嫌なのかなって。


「じゃー、ひびきも気にしてないってことで本題に入りましょーっ! さてさて、響ははたしてロリかショタか。 一世一代の討論を!」

「んなことせんでいい。 適当でいいじゃないの」


「だめだなー、そんなことだからりさりんは……あごめんなさいりさりんさまですからそのこぶしをそろーりと下げてくださると私私とてもとても」

「……はぁ――……」


ため息をつきつつも「まぁいつものゆりかよね」って顔をしているりさ。


「そういうことならまずは言いだしっぺからね」

「えー」


「えー、じゃない。 さよさんたちまで呼びつけたんだもの」

「うぇー」


「あ……あの、私たちは別に……」

「いいのよ。 人集めといてハイどうぞ、なんてズルいじゃない」


結局話の流れは変わらず。


僕がそのどっちに当てはまるかっていうものになっちゃうらしい。


なんだかんだ言って、こうしてゆりかを叱っている風なりさだって実はずっと顔がにやけているしなぁ。


ストッパーが居ない。


この子たち、僕のこと話すときはやけに熱心だからなぁ……なんでだろ。

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