conclusion
次の日、朝起きると10時になっていた。
学校は4回生にもなると殆どない為良いのだが、こんな時間に起きると進路のことかで不安になってしまう。
「おはよう」
「ワン!」
珍しく、返事をしてきた。
さて、なにを食べようかなと冷蔵庫を漁っていると携帯が鳴った。
その携帯を見てみると、見知らぬ番号だった。
「はい、もしもし」
「おはようございます、私kcf銀行の人事担当の松本と申します、簡潔にお伝えしますと面接の結果が出せないとのことです」
「えっと、不合格ってことですか?」
「いえ、是非とももう一度常務の方とあっていただきたくご連絡差し上げました」
「わかりました、チャンスをもう一度作っていただきありがたく存じます」
「いえいえ、日程なんですが、、、今すぐにお越しいただけますか?」
今、、すぐ?
「はい、可能なんですが家が少し遠くて、、」
「あ、勿論その位は把握しています、2時間後とかの予定でも大丈夫ですか?」
「はい!すぐに身支度します」
「すみません、常務は忙しいみたいで、では失礼します」
プチッと音がなるのを確認するとすぐにスーツに身を包んだ。
さてどうしたものか、銀行について常務のいると言う部屋に入りお話をしているのだが、どうも採用の方向らしい。
「すみません、私以前の面接で失礼な行為をしたのに何故採用なんですか?」
もう、どうにでもなれと思い聞いて見た。
「そう言う人物が欲しかったからです、銀行業界の実情はご存知かと思いますが年々日本の人口は減っていっています。その為融資先が減っていく為、海外への融資を増やそうと躍起になっていました。いたんですが、最近はその市場時代がフィンテックと呼ばれるITとの融合で変わってしまいました。ITは動きが早い、今までの古い体制では我がメガバンクでさえ存続の危機に陥ります。なので、物事を即座に判断でき、行動できる人物が欲しかったのです。」
「それはありがたい話です、内定を受諾するかな返答は後日でも構いませんか?」
「勿論です、ただ一つ覚えていて欲しいのは弊行の採用の中でも貴方は特別な採用です、給料は勿論保証しますし昇格も他の人物より早いでしょう。」
「わかりました」
その時の明日香の心の中には蝶々がイメージされていた。
翼は有るのだ、あって上空には魅力的な場所があり蝶が多くいる。
ただ、この地面には好きな母や父がいて友人がいた。
家に帰るとシロは何か悩んでいるように見えた。
「とりあえず、智恵美のプレゼントを渡さなきゃ」
そう言って、棚の奥から香水を出してきた。
気にいるだろうと思って買っていたのだ。
「もしもし智恵美?今から空いてない?」
「あいてるあいてる、どっかいく?」
「うん。どこでも良いから遠くへ」
「じゃあ、車で行くね」
30分も経たないうちに智恵美は車を明日香の家に止めた。
「ごめんね、誕生日の人に御苦労かけて」
「昨日だから大丈夫」
「これ、」
そう言って香水を差し出した。
智恵美はありがとうとだけ言ってそれをバッグにしまった。
「さて、海でも行こうか」
智恵美と行った海は綺麗だった。
燦然と煌めく海、こんなのは見たことがなかった。だが、それと同時に海のどこか全てを引き込む力が恐ろしく見えた。
「どうかしたの?」
「うん、銀行の内定貰ったよ」
「良かったね、でもなんでそんな儚そうな顔しているの?」
「そんな顔してる?」
そう良いながらルームミラーを見ると明日香の顔は元気があるようには見えなかった。
「本当だね」
「大手銀行なら年収とかも凄いんじゃないの?」
「凄いと思う、周りも凄い人ばかりだし、頑張らなきゃ」
「内定受けるんだ」
ここでハッとした、銀行に決まった訳ではなかった事に。
初めての内定だったためにもはや銀行に行くことが既定路線のように思えていたが、まだ他に人生はあるんだった。
その後明日香はあらゆる企業を受けに受けた、商社から飲食まで、でも違っていた。
明日香には様々な能力がある、例えば論理的思考これは秀でている。
その他にも、記憶力、集中力。
そんなものを生かそうと様々な努力をしたが、明日香はある事に気づいた。
私は私なんだと。
できない部分、例えば人とのコミュニケーションをあまり取ろうとしない部分や、時々全てにおいてやる気をなくす部分、そんなところも含めてアイデンティティなんだと。
確かに、秀でている部分を使うと銀行中でも出世出来るかもしれない。
しかし、そうしてしまうと明日香の一部が評価されるだけで全てが評価される事にはならない。
そのような考えに至り、明日香は最終的には保育の学校にまた通う事にした。
勿論給料なんてものは銀行の何分の1だ。
しかし、自分を殺してまで金や欲を得ようという気持ちが明日香にはなかった。
「先生、どうしたの?」
「なんでもないよ。昔のこと思い出しただけ」
「へー、先生って好きな人とかいるの?」
「先生はね、結婚してるんだよ」
あ、うそうそどんな人と群がってきた。
子供でもこういう事は興味あるんだなとびっくりした。
「プロのサッカー選手だよ」
読んでくださりありがとうございました。
この作品は一部ノンフィクションです。