distress
「そんな、どうしたいって、、」
明らかに紳助は逡巡していた。
紳助はプロサッカー選手になる位だからモテるのはほぼ間違いない、女性はスポーツ神経が良い男性には弱い。
しかも、努力家でかつ経済力も今後果てし無く高くなっていくそんな男だ。
ただ、その努力家という部分が女性といる時間を減らしている。
以前付き合った時は六ヶ月付き合ったのだが行ったところは遊園地だけ。
だけなのだ。
だから自分の欲望は勿論理解しているがそれをうまく発信出来ないのだろう。
「早く決めてよ、もう帰ろうか?」
「いや、それは」
「じゃあ、どうしたいの?」
勿論今日ぐらいいろんな事を忘れたいのでこんな早い時間には帰りたくない。
さらには、紳助といる事で高校時代に戻った気がして心地よく大学の間の自分の至らなさを忘れられる気がしていた。
「ちょっと休もうか」
「良いけどどこで?」
これは流石に紳助がかわいそうだなと思い、
「家に来る?」
と誘った。
「どう?ここが我が家」
「おー、女の子の家って感じがするね」
「そう?紳助女の子の家とか行ったことあるの?」
「それくらいあるよ!!」
「何回くらい?」
「えーっと、、、」
こういうところが可愛いところだ。
今時計を見ると9時前だった。
その時ドンっと大きい音が家中に響いた。
「え?今の何?」
「紳助怖がりなんだね」
「明日香は逆に怖くないの?」
「もう慣れた」
そう実はこの家に、ここ数日夜の9時ごろになると何処からか何かが飛んできたかのように、家が揺れ大きな音が出る。
その後また、数分後にドンと音がなる。
何かと思い外を見ても何もなく、隣家に聞いてもそんな事はないと言い張る。
曰く付きの物件なのかと思いながらも不動産屋に聞いても知らないの一点張り。
一度誰かに来て欲しかったのだ。
智恵美やちょっとおとなし目の理恵子に頼んで見たけど、そういうの駄目な一点張り他の友達に頼むのは恐縮だと思い頼まなかったのだが、、
「えー、何回も来るの?」
「そうだよ。曰く付きなのかもね」
そう言うと先程までこれから何が起きるのかと目が星になっていた紳助は我に返り明らかに動揺していた。
「と、とりあえず何が原因か探してみようよ」
「お、そう行ってくれると思って呼びましたよ!」
打算的な女と言いながら紳助は家中を駆け回った。
まあ、何もないんだろうなと思った矢先に突然紳助は
「これだ!」
と叫んだ。
慌てて駆けつけてみると、そこには飼い犬のチワワのシロがいた。
「え、いやいやこの子は飼い犬のシロで」
「違うよ、その奥」
その奥に目を向けるとなんと、シロのゲージにもたれかかる何処かの飼い犬であろう犬がいた。
「おそらく、発情期でオスの犬がこの子に会いに来たんだね、その時にあの小さい穴から入って来てて音がなったんだよ」
「だから、二回か!」
「多分、そう言う事なんだね」
「くそー、こいつのせいで最近眠れなかったんだよ」
「怖くて?」
ジロッと睨むと紳助はビクッとした。
「まあ、でも一度試して見ないとね」
そう言ってその見知らぬ飼い犬をその穴から無理やり出してみた、すると丁度穴と同じくらいの大きさの為家に負荷がかかりドンっと音がなった。
「ひどい女だね」
「うるさいわよ」
そのやり取りをみてシロはオロオロとした。
あの騒動の後、11時くらいまで部屋で飲んでいた
「そろそろ帰らないと紳助終電逃すんじゃない?」
「あ、泊まるものかと」
「大学生の独り身の女の子の家に?」
「そ、そうですねかえります」
その後紳助は身支度をして1人で帰ろうとしたので、
「駅ぐらいまでは送るよ」
なぜこの一言を言ってしまったのか、めんどくさいのに。
駅に着くと紳助は名残惜しそうにしていたので、「また来てよ」
と言うと、紳助は犬の様に喜んでいた。
その紳助を見送ったあと帰路で、ダメだと思った。
紳助は確かに大学時代の堕落した自分を忘れさしてくれる、でも私が生きているのは今であって昔はもう取り返せない、だからこそ今を生きようと。
その後星を数えていると家に着いた。