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私は誰?  作者: たく
明日香
6/9

rendezvous

水族館の前に着くと、もう紳助は来ていた。

「おはよう」

「おはよう」

帰って来た挨拶はなんて有意義な挨拶だろうと思った。

事務的な挨拶をしてしまった自分がバカらしい。

「どこに行く?」

真面目な顔して聞いて来た紳助の顔をマジマジと見た、何のために水族館前で待ち合わせしたのかわかってないのか。

「水族館でいいんじゃないかな」

「わかった、そうしよう」

何か、懐かしさを覚えた。


いざ、水族館に入るとそこには平日の昼ということもあって引退世代の方々や大学生らしき若者で溢れかえっていた。

「あれが有名なクラゲだよ」

冗談で言ってみると

「え、クラゲが有名なの?」

と返事が返って来た。

紳助は大丈夫なのかなと少し疑ってしまった。

「明日香は就活うまくいってる?」

「ぼちぼちかな、今日も銀行の最終面接に行って来たところ」

「それはおつかれさまです」

「ありがとうございます」

チグハグな会話が終わったところでふと考えた。紳助はどうなったんだろう、聞くべきか聞かざるべきかを考えていた矢先に突然

「僕はもう決まったよ」

「え、嘘」

「何でそんなに驚くの、」

「ごめんごめん、どこに?」

「プロサッカー選手」

「え!!プロになれたの?」

「何とかね、しかも海外のチームにいけた」

「凄いじゃない、夢が叶ったね」

「それだけなんだね」

えっ?と聞き返した時に丁度ジンベイザメのショーが始まるとかで大きなアナウンスが流れた。

「見に行こうか」

「紳助そんなの興味なかったよね」

「4年の月日は短いようで長いよ」

確かにと思った。

私は中々な大学に入ったがこの4年間は何をしていたのだろう。

紳助はプロになる為によほどの努力をしたに違いない、ふと足を見るとすごく太くしかし引き締まっている筋トレや厳しい練習に耐えてそして掴み取ったんだろう。

私は少しの勉強はしてきたし、成績もかなりよかった。ただ、何の夢も持たずその場その場をうまく過ごしてきたに過ぎない。

そんな人生に何の意味があるのだろうか。


「ジンベイザメ凄かったね」

「そうだね、明日香食い入って見てたね」

「まあ、私動物好きだからさ」

「人間には興味ないのにね」

「心外だね」

そう言いながら2人で笑っていると

「そこのお二人」

「はい?」

「私昼月新聞のものなんですが、世論調査を行なっておりましてお時間いただけないでしょうか?」

よく乱数電話での調査は聞くが直接、しかもこんな水族館の中でされるとは夢にも思っていなかった。

ただ、まあ時間はあるしいいかと思い。

「少しなら」

「ありがとうございます」

「では早速ですが、2人の事を始めに聞かしていただきますがカップルという事でよろしいでしょうか?」

「全く違います」

直ぐに私が全否定すると、紳助は少し嫌そうな顔をしていた。

「それはそれはすみません、お友達という事でいいですか?」

「はい」

「では、お友達のお二人にお聞きします、ズバリ今の与党をどう思っていますか?三択のうちからお選びください」

その三択を見てギョッとした、政権を直ぐにでも変えて欲しい、政権にやや不満がある、今の政権に完璧に満足している。

この三択だとやや不満があるに流れる人の方が多いに違いない。

ここの記事はやや野党のある党を押している面があるなと思っていたが、確信した。

私は正直何でもよかったのでやや不満があると答えようとすると

「完璧に満足しています」

突然の事で私も質問者も豆鉄砲を食らった。

「今の政権に何故満足しているのですか?」

「経済が良くなっているからです。他党や同党でも他者の政権の際に伸び悩んでいた完全失業率が群を抜いて下がってきている、よくGDPはあまり上がってないとか物価は上がってないとか、金融緩和のしすぎでインフレに歯止めが効かなくなるとかいろんな事を言われますが、私は1番の見るべき点はより失業率だと考えていますので、今の与党に満足しています」

少し自分の会社の考えと違った返答だったのでムッときたのか、また質問をしてきた。

「なぜ、失業率を重視するのですか?」

「それは、おたくの会社の言う良き隣国に聞けばどうですか?」

よほど腹が立ったのか、ありがとうございますとぼそっといて直ぐに帰っていった。

「おつかれさま」

笑顔で言うと、

「ありがとう、どうせ意見は反映されないんだろうね」

笑顔で帰ってきた。

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