discussion
「私は反対です」
空気の質量が何千倍にもなった気がした。
ただ矢継ぎ早に次の言葉を紡いだ。
「もしも、ここで銀行の嫌いなところを話合わずに、良いところを話あった場合この会社の理念に反すると思うからです。ここの理念は『鳥の声も聞く』事です。鳥の声など万物の声には気持ちは奥底に考えがある、その考えに基づいて声を発してるわけです、銀行側には私達にこの事を話し合ってほしい理由が何かあるはずです。にも関わらず誰かが勝手な忖度を行なって違った事をしたいのであれば、その方は、、、」
ここでやめようかと思ったが、もう一言続けた。
「今すぐに他社の選考に参加するべきです」
話終わった後直ぐに気づいた、周りの就活生達の顔が修羅の様になっていた。
そして、皆口早に
「何を勝手にこの会社を知ったかの様に」
「別に大した大学も出ていないくせに、何を論理的に喋ったつもりでいるんだ。」
「ちょっと顔がいいからって、調子に乗って」
私は思った、違うと。
今までは周りの就活生は完璧な人間だと思っていた、それに比べて私は大した取り柄もないので出来るだけその中でも取り立てて際立つものだけを発してきた。
皆そうだったんだ。
ただ、ちっぽけなプライドを背負ってそれがばれない様にする、それが人間だったんだと。
それと同時にどの様にここを切りぬけようかと考えた、私は討論で負けた事はない、口だけは達者だとよく教師に言われ弁護士に向いているとも言われたので実際に弁護士に会ってみると、その方からは政治家になる様に言われた、弁護士は弁舌だけでは成り立たない職だという事だったが、、
そんな私だがここは無理だと直ぐに悟った。
感情と論理性は共存できないそれは明々白々な事実だと今まで気づかされてきたからだ。
ここで何を言っても仕方ながないと思い、私は非常識では有るのは承知の上で、席を立ち銀行を出た。
途中いる受付嬢には簡単な挨拶だけ済まして。
家に帰るとどっと疲れが出た、なんで事をしたんだろうと自責の念にも駆られたりした。
その時、携帯が鳴った。
目をつむったまま誰かわからなかったが取ってみると、青山紳助だった。
「もしもし?」
「はい」
「あ、良かった繋がった。」
「日本の情報技術は比較的優秀だもんね」
「そういう技術的な話じゃなくて、取ってくれたんだね電話」
「まあ、目をつむって取ったら君だっただけ」
なんの電話だ、馴れ合いの電話なら直ぐにでも切ろうと思った矢先に紳助は、言った。
「君に会いたい」
何を勝手な事をと思った。
そもそも紳助との恋愛に、終焉を迎えさしたのは向こうだ私は散々泣いて高校時代の友人にずっと相談していたほどだ。それが影響して大学も旧帝大に行けなかった。まあ今となっては私立の方が気楽で良かったとは思っているのだが、、、
しかし、それと同時に明日香は思った、この就職活動による不安な気持ちを紳助に吐露したいと。
「いいよ」
「あ、本当に?」
「しつこい」
「あ、ごめんごめん、いついける?」
「今から空いてる」
「分かった、どこで待ち合わせ?」
「初めて行った水族館の前でいいんじゃない、」
「1時待ち合わせでいいかな?、そこに」
「うん。じゃあねー」
「じゃあ。」
どうしてオッケーしたんだろー、空いたくないという気持ちと会いたいという気持ち相反する関係が何故だかいつもは会いたいという気持ちはぼろ負けなのだが今日に限っては会いたいという気持ちが上回ってしまったのだ。
「紳助に会わなきゃ行けないよ」
犬に喋りかけると、犬はクゥーンと寂しい声を出した。