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私は誰?  作者: たく
明日香
1/9

conflict

朝日が照りつけ目を覚ました。

昨日は夜まで必死に今日いく会社の面接のためのエントリーシートを書き寝てしまったので、目の下は黒く窪んでいる。

「おはよう」

飼っている犬に話しかけたが、尻尾を振るばかりだ。

朝ごはんのパンをのんびりと食べているとふと気づいた、もう時間がない。

朝の9時から面接があるにも関わらず、時計は8時を指している。

「また、やってしまった」

そう愚痴りながらスーツに着替える。

なんで就活をしている人はみんなスーツなんだろう、よく企業の人事は

「それぞれの個性を見て採用をしています」

なんて言っているが、それなら私服にして個性とやらを見ればいいのに、そんな思想にふけっている間にも時計は進んでいく。


「なんとか、まにあった」

最寄りの駅から出発する電車に乗り込み明日香は呟いた。

明日香の最寄りの駅は田舎の駅で、そこから出発する電車は勿論のように席が空いているが座りはしない。

目的地の最寄り駅に着いた明日香は直ぐに携帯を開き、面接会場の場所を探した。

「あ、ここだ」

目的地に着きそのビルを見ると、まるで巨大な塔だった。

「流石は大手の金融機関、緊張するなー」

透明のスライドガラスを開け中に入り名前を言うと、直ぐに案内係に案内された。

着いていくがままに歩きながら明日香は歩数を数えていた。

そして案内された部屋に入ると皆同じスーツを着た男女が葬式場のように静まり返っていた。

「おはようございます」

「おはようございます」

事務的な会話だけ済まし、席に座った。

ここにいる人は何を考えているんだろう、面接で話すこと、それとも私と同じように周りの考えを探っているのかなー。

「小林明日香さん」

人事の人に呼ばれた時に簡素な返事をして脈を早めながら席を立った。

ノックを3回し、扉を開けるとそこにはいかにも大学生の間に真面目に勉強してきたと思えるすらっとした男性が座っていた。

「失礼します」

そう言いながら鏡の前で何度も練習した笑顔をふりまいた。

「どうぞ」

簡素なこの返事はどうにかならないものかと頭によぎった。

「自己紹介をお願いしてもいいですか」

あー、またこの質問か。いつもこれだからなー。そう思いながらも笑顔で

「はい、私は天音大学から来ました小林明日香です、私の長所は」

「あ、そこからはいいです、時間が無いのでこちらからの質問にはできるだけ簡素に答えてください」

すこしムッと来たがすみませんとだけ謝った。

「なぜ、弊行を志望されたのですか?」

「私は御行の企業理念に共感したからです。【鳥の声を聞こう】と言う理念は最初は何のことだろうと思いましたが、調べて行くうちに万人の声を聞きそして万人に受け入れられるような行動を起こそうということだとわかった時に私は過去を思い出したんです。小学生の頃、クラスに1人物静かな男の子がいました。その子はいつも本ばかり読んでいて友達は本みたいな子だったのですが、あまりにも退屈そうに思えたので勇気を出して声を掛けたんです。そこからその子と親友になったのですが、小学生を卒業する頃こう言われたんです、あの時、声を掛けてくれてありがとう、ずっと寂しかったんだって。その時感じたのが喜び以上に人には話さずともそれぞれの声を胸に秘めているんだなって事でした」

「その時の感情と弊行の企業理念がマッチしているという事ですか?」

「はい、そういう事です」

「わかりました、ありがとうございました。本日はこれで面接を終えます」

「あ、はい、ありがとうございました」

また、明日香は笑顔を作りながら部屋を退出した。

帰りの電車でずっと考えていた、なんであんなことを言ったんだろう、前日に考えていたのは企業理念じゃなくて企業の教育方針がマッチしてるって言おうと思ってたのに。

帰るとまだ10時だった。


11時になると次は学校の支度を始めた、学校は東京にあるので昼の1時からだが、12時には出ないと間に合わない。

ふと携帯を見ると友達の智恵美から電話が来てた。

「はい、もしもしー」

「明日香ー!私やったよ!」

「え、もしかして内定出たの?」

「そうそう!しかも第一志望のメディアから!」

「おーー!おめでと!」

「ありがとう。あれもこれも明日香のお陰だよ。」

「なんかしたっけ?」笑いながら聞いた

「嫌、何にもしてもらってないけど」

智恵美とは小学校からの付き合いだが、要領がよく美人なので誰からも好かれる。こんな自慢を他の人が言って来たら腹がたつと思うが智恵美の自慢は聞きたくなる。

「でも、いいなー、私なんて全く内定を頂けないよー」

「えー、意外ー明日香は魅力的なのにー!」

そんなやりとりを30分続けていたら気づくともう家を出る時間になっていた。

「あ、ごめん!もう家出なくちゃ!」

そう言って電話を切り急いで駅に向かった。


大学に着くと、そこには拓海がいた。

拓海は背が高くて顔もかなりのイケメンだが、あまりのチャラさに避けていたのだが、出会ってしまった。

「おはようー」

「おはようございますー」

「凄く余所余所しいね」

そりゃそうなるよーと毒づきながら拓海の横を通って授業の教室へ向かった。

着くともう13時だったが、授業はまだ始まってなかった。

「セーフ」

呟きながら座ると、後ろの席から声が聞こえた。

「アウト」

ふと、振り返ると悠馬がそこにはいた。

「あ、今日は学校来たんだ」

「いっつも来てるよ!」

そんなやりとりを覚ました頃に先生が入って来た。

この授業は金融論だ。かなりの高難易度に加え、先生がかなりの堅物なので生徒数は20人にも満たない。

難しいものから逃げるくらいなら大学に来なければいいのに、そんなことを思いながらノートをめくった。

「リーマンショックはサブプライム問題から発展しました。融資先として本来は優遇されるはずの優良先は各行が融資してしまったので、次に優遇されるお金のない人宛に」

何回も習ったよ、これ。

授業が終わると、家に帰って資格試験の勉強に励む予定だったが、家に帰るとやる気が出そうに無いので仕方なく学校で勉強をする事にした。

実行税率を下げるも、一時的に企業は利益を縮小する、なんて意外だなー。

勉強を一通り終え大学の最寄駅に向かおうとすると、拓海がまたいた。

「明日香ちゃん、今から空いてない?ご飯でも食べようよ」

またか、私はよく男性にご飯を誘われるが絶対に行かない。以前、飲み会に行った後に無理やり行為に向かおうとした男性がいて、それ以来男性と2人きりでどこかに行くのは避けているのだ。

「あー、ちょっと厳しいなー。勉強もしないとダメだし」

勉強なんて、帰ってからはしないので全くの方便だった。

「えー、そんなこと言わないで、奢るからさー」

しつこく誘ってくるのでまた無視して行こうとすると、手を掴まれた。

「やめて」

とっさに大きい声を出したので周りからジロジロと見られた。

「あっそ、勝手に帰れば」

拓海は拗ねて帰って行った。


家に着くと夕食を作った。

私には両親と弟がいるが、大学に行く時に一人暮らしを始めたのでご飯は1人で作らなければならない。

「もう、後一年で学校も終わりかー」

犬に話しかけた。

また尻尾を振っていた。

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