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ライバル  作者: 宮澤花
36/57

7 ヤツの願い -4-

 しばらくして奥から女の人が出て来た。

 俺を連れて来てくれた女性と同年代。ただ、喫茶店の女性はやせぎすで派手系。この人は少しぽっちゃり目で、どことなく愛嬌のある感じだ。

 ええと、礼子と呼ばれていたから、面倒なので礼子さんでいく。


「サチコ。何、朝から」

 礼子さんはちょっとつっけんどんに言った。サチコさん(喫茶店の女性)も同じ調子で返す。

「アンタのところの居候。探してるって子が来たから、連れて来てやったのよ。感謝して?」

 そこで礼子さんと老人の視線が俺に集まる。

「ホント? ホントに、あの子の知り合い?」

「やっぱり探しとったのか」

 二人が一斉に俺に話しかけてくる。えーと、どう対処したものだか。


 とりあえず俺とツボタの関係をぼかしつつ、ヤツが俺の知り合いのところの客であったこと、しばらく姿が見えないので先生も心配していることを話した。

 話を聞いて、三人はうーんと首をかしげ。

「それはもしかして、山城さんのところのお嬢さんか」

 と老人が尋ねた。


 何でピンポイントで先生のことが分かるんだ!

 驚愕したのが顔に出てしまったのか、女性二人が『やっぱりねー』とうなずき合う。


「あ、あのう。何で、分かるんですか」

 恐る恐る尋ねてみると。

「あら。だって、昔からの地主のお嬢さんだもの。有名人よね」

「そうそう。若い頃は海外留学とかして、カッコ良かったしね」

「武道の家元だって話は、古くから住んでる者なら知ってるしね」


 そして。

「あのお嬢さんで、あの子なら納得だわー」

 とサチコさん。

「そうだね。あの顔ならあのお嬢さんに目を付けられるわ」

 と礼子さん。

 先生……。地元民にどんな目で見られてるんですか……。


「あの。それでツボタは」

 尋ねると。

「へえ、あの子ツボタっていうんだ」

 と驚かれた。

「うちでは、カズヒトとしか聞いてなかったから」

 俺にはカズヒトって呼ぶなって言ったくせに! 何だ、アイツはよ! 意味分かんねえな!


「その、ツボタカズヒトに会いたいんですが!」

 つい語気が荒くなってしまう。いや、この家の人が悪いわけじゃないんだが。

 礼子さんと老人は顔を見合わせた。

「うん。あの子なんだけどねえ」

「まあ、上がれや」

 俺はそう言われて、ワタナベ家の住居部分にお邪魔することになった。


 狭い階段を上がった突き当りに、広い部屋があった。

 寝台が左右の壁に付けて二台置いてあり、その片方にツボタが寝ていた。顔が青白い。ぐっすり眠りこんでいる様子だ。


「この前、雨が降った日の夜にびしょぬれで帰って来てさ。その時にはもう熱が高くって。四十度くらいまで上がってさ」

 と礼子さん。

「それから、ずっとこんな具合だよ」

 と、老人が補足する。


 ……ってよお! 何だ、このスペシャル大馬鹿野郎は!!

 だから早く帰れって言ってやったんじゃねえかよ! 何で夜まであそこに突っ立ってんだ! 傘を持ってった俺の気遣いを何だと思ってんだ!


 俺は脱力した。ガックリとツボタの枕元で膝をつく。

 徒労感がハンパない。

「ああ、もう……! こんなことになってるんじゃないかと思ったんだ」

 つうか、誰かこのクソバカを何とかしてくれ。コイツの頭の中はどうなってるんだ、一体。



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