エスケープ
殺したい。
殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。
そんな衝動が僕の中で暴れまわる。
殺したくて、殺したくて堪らない。
絞め殺すのは、好きじゃない。
水に顔を押し付けるのは、悪くないけど。
一番いいのはナイフで首を掻き切るのがいい。
内蔵をえぐり出すのも好きだ。
血が飛び散るのがいい。
髪も肌も地面もみんな血で赤く染め上げるのがいい。
殺す人間が白い服を着ていれば、もっといい。
真っ白な服が真っ赤に染まっていくのが、いい。
殺すのは男よりも女がいい。
柔らかい皮膚を引き裂くのがいい。
でも、子供は駄目。
子供を殺すのは好きじゃない。
子供は暴れるし、騒ぐし、泣く。
とにかく、子供を殺すのは好きじゃない。
「それはさぁ、天使が子供を同類だと感じてるからなんじゃない?」
狼少年はそう言った。
意味が分からない。
同類?
僕と餓鬼が?
そんな訳ないだろう。
僕は人殺しで、殺人鬼で、血に穢れ、狂った人間だ。
そんな僕と同類なんて、同じ人殺しくらいだろう?
「違うだろう。お前は狂ってなんかいない。お前は狂いたいだけだろう?」
意地悪く悪魔が嘲笑う。
違う。
違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
違うーー。
僕はーー。
真っ黒な顔の悪魔が笑う。
「違わないさ。お前は狂って忘れてしまいたいだけだ。壊れてしまいたいだけだろう?」
違うよ。
違う。
言葉をただ繰り返す。
「違うよ。言葉はそうやって使うんじゃない。もっと巧妙に、もっと優雅に、もっと毒を含ませて」
そう言って狼少年は嘲笑う。
「ほら、出来るだろう? 平気な顔で嘘を吐く悪魔。君だってなれる」
嫌だ。
嫌ーー。
耳を塞いで顔を背ける。
僕はーー。
「人を殺すのは良くて、嘘を吐くのは駄目なんだ」
その声にハッと顔をあげる。
その目線の先にいるのは一人の少女。
忘れられた子供ーー。
僕が捨てた子供ーー。
「いつまでしがみついているつもり?」
少女が僕を嘲る。
「私を捨てたくせに」
…………。
「だって……。駄目なんだ」
「何が?」
「僕自身が。もう駄目なんだ」
自分の手を見る。
真っ赤でどす黒い血が、
べっとりと両手についていて、
真っ赤な滴が滴り落ちるーー。
「汚れてしまったんだ」
僕が言う。
「自分で壊したじゃない」
少女が言う。
その顔が歪む。
そこに映る感情は一体何ーー?
「もう我慢の限界だったんだ」
僕は言い訳のように言った。
少女はさらに顔を歪ませる。
「違う。違うでしょ」
少女が首を振る。
「嘘つきだね」
狼少年が嘲笑う。
彼の手が僕の目を覆い隠す。
彼が耳元で囁くんだ。
「いいよ。
忘れなよ。
見ないふりしなよ。
知らないふりしなよ。
そうやってーー
逃げちゃいなよ」
彼の手の隙間から少女が見えたーー。
何かを叫んで
何かに泣いているーー。
どうして
どうして泣いているの?
分からないよ。
僕はそのまま目を閉じたーー。
* * * * *
目を開くといつもの天井。
いつものベットの上。
何も変わらない現状。
横にはいつものように彼がいる。
嘘つきの狼少年。
嫌な夢を視たーー。
体を起こしつつ思う。
何故だろう。
久しく夢なんて視ていなかったのに。
立ち上がり洗面台へと向かう。
そうして鏡を見る。
そこに映った自分を見る。
嗚呼。
理由が分かった。
髪が伸びてる。
髪が耳につかないくらいのベリーショートにしていたのに、若干耳が隠れるくらい伸びている。
嫌だな。
不愉快だ。
僕は一旦洗面台を離れて鋏を取りに行く。
そして再び鏡の前に立つと乱雑に髪を切った。
伸びた部分を切っていく。
真っ黒な無数の髪が切り取られ落ちていく。
さっぱりとしたところで僕は鋏を置く。
髪なんて邪魔なだけ。
僕に必要ない。
『そうやって何でも捨てちゃうんだ』
鏡の向こうで夢の中の少女が笑う。
「……うるさい」
低く呟いてその場を離れる。
そのまま、上着を羽織って外へ出る。
誰でもいい。
殺そう。
目についたのは犬の散歩をする高校生くらいの少女。
犬が邪魔だけど、あれでいい。
後ろから近づいて、話しかける。
「可愛い犬ですね」
少女は急に話しかけられ驚いたようだったが、相手が同じくらいの歳の少女であることに安心したらしく、にこやかに笑う。
犬が吠える。
「こら。吠えちゃ駄目」
少女が言う。
「触ってもいいですか?」
少女は頷く。
僕は犬に触れる。
犬は唸る。
僕は頭と顎の下辺りを撫でてやる。
そのまま犬の胸を少女に見えないように刺した。
短く小さく犬が哭いた。
そして崩れ落ちるように倒れた。
噛まれなくて良かった。
「えっ?」
少女が驚いた顔をする。
彼女のペットの最期の声は聞こえなかったらしい。
「どうしたの?」
彼女の位置からはナイフは見えない。
少女は屈んで犬の様子を見ようとする。
僕は逆に立ち上がり中腰の体勢になり、そのまま屈もうとしていた少女の胸を刺す。
「あっーー」
静かな殺し。
朝の早い時間。
人通りも少ない。
ナイフを引き抜き、少女の腸を引きずり出す。
それなりに時間のかかる作業だ。
誰かに見られるかもしれない。
けれど、僕は構わずに少女の体を引き裂き、内蔵を取り出す。
そうしていると息が上がる。
それでも僕は続けた。
とにかく目の前に転がる肉の塊を壊してしまいたかった。
「ははっ」
声が漏れる。
「ははは」
笑える。
「あははははは」
笑いながら、ナイフを突き立てる。
小さな体から血が溢れてーー。
僕は笑った。
わらって
笑って
嘲笑ったーー。
視界が眩んで、
もうーー
訳も分からなくなってーー
ただひたすらに
赤を笑っていた。
赤を汚して
黒く染め上げて
その醜さを嘲笑ってたーー。
* * * * *
「おかえり」
いつもと変わらない表情で狼少年は言う。
真っ赤に染まった僕を見て微笑む。
「髪、また切ったんだね。とっても綺麗な黒髪なのに」
彼は普段と変わらない会話をする。
僕は普段と変わらず彼の言葉には答えない。
靴を脱いで部屋に上がる。
そのままナイフをその辺に放り捨てて服を脱いだ。
彼が僕の捨てたナイフを拾い上げる。
「また、派手にやったね」
少年は笑う。
僕は気にせずベットに横たわり、目を閉じたーー。
少年の嘘も悪魔のような微笑みも今は見たくなかった。
『そうやって逃げるんだ』
少女の責めるような声ーー。
聞きたくないーー。
消えろよーー。
僕は手近なところにあった鋏を力一杯壁に突き刺したーー。
少女の声が消えるーー。
僕の枕元で三日月の口をして悪魔が嘲笑ってたーー。
誤字脱字があればお願いいたします