恋愛系(5)
私の親友はとても優しい子だった。大好きで、きっと大人になってもおばあちゃんになってもずっと一緒なんだと信じて疑わなかった。あの日までは・・・。
彼と出逢ったのは偶然だった。たまたま見つけた喫茶店でたまたま同じものを頼み、たまたま同じ本を読んでいた。そんな偶然が重なったキセキのような出逢いだった。
その日から彼とはこの喫茶店でよく逢うようになった。
彼の名前は陸也で私の名前は葉子だったので、私は彼のことを陸と呼び、彼は私のことを葉と呼んだ。
私と彼は、とてもよく似ていた。
私達はまったく違うのにとてもよく似ていた。
彼には大地と言う名の双子の兄がいるらしい。
私は一人っ子だと言った。
彼は父子家庭で、私は母子家庭だった。
よく似た境遇だった。
彼と私の好みは似ていた。
だからこそ、キセキのような偶然の出逢いも生まれたんだろう。
彼と逢うたび、胸が高鳴った。私は彼に惹かれていた。
けれど、私は分かっていた。
私では絶対に彼を幸せに出来ないことを・・・。
だから、私は一度も言葉にしないと誓った。
いくら私が彼を好きになり、愛しても、私の愛は重過ぎて暗過ぎて歪み過ぎているのだから・・・。
私の親友の織音が「彼氏が出来たの!葉子にも紹介したいから、今日一緒に遊ぼ?」と恥ずかしそうに言ってきたのは私と彼が出逢ってから半年がたった頃だった。
織音は彼氏とは一ヶ月前に出会い、一昨日織音の方から告白して付き合うことになったのだと教えてくれた。
恥ずかしそうにはにかむ織音は本当に可愛いと思った。
結果から言えば、織音の彼氏は私の好きな彼だった・・・。彼が幸せならいいと思った。
織音なら彼を幸せに出来るだろうと、とも思った。
けれど、きっと彼へのこの想いは織音への裏切りにつながるだろう・・・。
それでも、この想いは消せなかった。
私の中での織音への絶対的な絆が・・・消えた。
葉子と陸也と織音と大地。微妙な四角関係になってしまいます。
壊れないと信じていた友情と兄弟愛。
それから・・・葉子の陸也と大地の過去が重なって、それぞれの本当の気持ちに気付いて素直になってくれればいいな~と思います。