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優しくて残酷な恋物語

 彼は鳥になりたかったと言っていた。

 優しくて暖かった彼はその優しさの中にどれほどの苦しみ悲しみを抱えていたのだろう。

 ずっと車椅子で過ごしていた。

        歩けなかったから。

 ずっと笑っていた。

        そうじゃないと泣いてしまうから。

 鳥になりたいと笑って言った。

        自由に旅をしてみたかったから。

 彼は決して人前では泣かなかった。

 だって彼の病は治らないものだったから。

 彼は誰かに見られたくなかったんだろう。自分の弱みを。だから人よりも生きる時間の短い彼は誰かを愛そうとしなかった。

 愛してもどうせ置いて逝くだけだったから。

 それなのに私は彼を愛してしまった。優しくて悲しい彼を・・・。

 彼もまた私を愛してくれた。けど・・・私と彼の別れの時は刻一刻と迫っていた。

 愛する彼がただ安らかに眠れることを祈るばかりだった。

 この優しくて悲しい愛する人が安らかに苦しまずに眠れることができればいいと願った。

 最期くらい苦しんで欲しくはないから・・・。










 誰も愛さないつもりだった。人よりも早く死ぬことは分かりきったことだから。

 それなのに僕は君と出逢って恋を知り、愛を知ってしまった。

 君は孤独な人だった。いつも上手く笑えなくて片頬だけが引き攣った笑い方をしていた。周りに必死に合わせて苦しんで、拒絶していた君。守りたかった。そんな力はなかったけど、初めて僕は誰かを守りたいと思った。

 それでも僕は君をもっと孤独にする。

 僕は君よりも早く死ぬから。君を置いて逝くから。君に幸せになって欲しい。君に本当の笑顔で笑って欲しい。

 君を愛しているから、君の孤独を少しは理解しているから・・・僕が君を幸せにすることも、君を本当に笑わせることもできないことは僕は分かっている。

 この願いは君にとってとても残酷なだと分かっている。でも・・・わがままな僕の願いを叶えてくれるなら、最期まで傍に居て欲しい。

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