微笑みは誰が手に
もしキミが返ってくるのなら、きっと僕は何でもするだろう。
でも、そんなことをしてもキミが喜ばないことは分かってる。
だってキミは彼が好きなんだろう?
微笑みは誰が手に
暗い、暗い、暗い。
夜ってこんなに暗かったんだ。
星も無い。月も無い。光が無い。
在るのはただ底冷えのする陰い闇と耳障りな水が地面を叩く音。
希望も無い。嬉しさも無い。喜びも無い。
絶望、悲しみ、憎悪。
もう何もかもどうでもいい。
僕はこんなにキミのことが好きなのに。
どうして。
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何時でもさりげなくキミの隣にいて、キミが傍にいないと不安になった。
だからどんな時でも離れないようずっと一緒にいた。
キミからプレゼントを貰ったときは、本当に嬉しかった。
あの時は何を返したらいいか分からなくて、砥石なんてムードの無いものあげちゃったけど、今ならもっといい物をあげる自信がある。
いつも庇って貰って情けなかったけど、僕がキミを守る時もあった。
その時に見せてくれる、ともすれば見逃してしまいそうな微笑みは、本当に綺麗だった。
キミの為なら命を投げ出すことだって厭わない。
もし、自分の命と引き換えにキミを助けられるなんていう状況になったら、そんな機会が来たらだけど、もし来たら僕は間違いなくキミに命を捧げるだろう。
そう、つまるところ僕は、キミのことを心の底から愛していたんだ。
けど、キミはあいつを選んだ。
僕じゃなくてあいつを選んだんだ。
どうして。
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僕はキミを選んだ。
けど、キミをあいつを選んだ。
彼女はあいつを選んだ。
けど、あいつはキミを選んだ。
みんながあいつを選んでく。
あいつのどこがいいのさ。
あいつなんかより僕のほうがずっと頭がいい。
あいつより家事を上手に出来る。
あいつなんていつも出来もしない理想ばっかり口にして。
あいつはトマトが食べれないし、取りえなんて運動だけ。
考え無しで、煩くて、馬鹿でマヌケでいつも誰かにメイワクをかけているくせに。
そして、なによりあいつなんかより僕のほうがずっとキミのことを想っているのに。
それなのに。
どうして。
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彼女は諦めた。
悲しいけれど、こうするのがあいつのためだからと笑って自ら身を引いた。
僕にはできない。
キミを好きになったのは僕のほうが先だ。
諦めて、二人を祝福するなんて冗談じゃない。
そんな簡単に割り切れるはずが無い。
本当に好きならどこまでも追い続けられるはずじゃないか。
キミはあいつの全てが好きだと言った。
勉強が出来ないのは可愛らしい。
家事は“二人”で解決するのが楽しい。
あいつなら理想をいつか現実に出来ると、少しも疑いのない瞳で語った。
トマトが食べれないのも、運動くらいしか取りえがないのも、理想を追いかけるのも、みんなあいつらしくて好きだと言った。
それどころか、一体それがどうしたんですか、と聞き返された。
そのうえ、どうしてそんな酷いことを言うんですか、と悲しい目で逆に聞かれた。
どうして?
それは僕のセリフだよ。
どうしてあいつを選んだの?
どうして僕を選んでくれなかったの?
僕は子供だから?
キミには好きな人が居たから?
僕のことがキミは嫌いだったから?
ボクノコトガきみハキライダッタカラ?
もしそうなら、僕はどうすればいいのさ。
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僕は、一人のニンゲンを嫌いになった。
憎んで、憎んで、憎みきった。
憎しみが連鎖を起こして、矛先は全てのニンゲンへ向かった。
けれど、僕が愛した唯一のヒトも人間だった。
生きていくうちに次第に薄れていくと分かっていても、いずれ辛くなるだけだと分かっていても、愛さずにはいられなかった。
だから、僕にはどうすることも出来ない。
二つのオモイがぐちゃぐちゃに混ざりあって、どうすればいいかも分からない。
だから何もできず、何もせずに無為に永い時を過ごすのだろう。
キミの涙、怒り、微笑み、
あれらはもう僕に向けられることはない。
それを向けられるのは−−−−−−
かつての親友だった一人のニンゲン。
微笑みを焼き付けて、僕は眠る。
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はっはー! 恋愛初挑戦だぁい!(壊)
はじめましてコンニチハ。夜行達界です。
さて、なんか切ない系になりましたがここまでするつもりは……なんか壊れちゃってるし、男の子。
でもまあ、自分が納得できたんでヨシです!
これも見る人が見ればわかるんだろーねー。狙ってるけど。