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 プログラム4.とりあえず尋問。

 自称盗賊さんたちを昏倒させて、縛り付けて、今は村に向かっている。

程よく辺りは薄暗くなってきているが、木々が光を遮っているせいで森の外よりも早く暗くなっているだけだろう。


 さて村に着いたら何て言って泊めてもらおう…通貨も違うだろうし、もし宿みたいな場所があったとしてもタダでは無理だし。

 働いて返すとか…最悪風雨が凌げる場所にさえ入れてもらえれば十分だし、晩御飯は食べたいけれどこの際一食くらい我慢するしかない。


 あとは、あの盗賊さんたちもどうにかしてもらわないと夜の森にずっと放置しておくのは流石に心配だ。この森に獰猛な動物が居なければいいのだが。




 道を聞いた盗賊さんの言う通りに崖沿いを歩くこと20分、遠くに光が見えた。

あそこまでたどり着けばもう森の外に出られるのだと思うと私の足は、知らず早くなっていた。自然の中を歩くのは嫌いではないけれど、こう何時間も薄暗い森の中だと少々気が滅入ってしまう。


 どんな村なのだろう。物語に出てくるような中世的な感じの、のどかな村なのかな。まだ見ぬ未知の情景に心を躍らせながら、私は森の外へ一歩踏み出した。




 で、私はいまれっきとした屋付きの屋内に腰を下ろしている。このままここでゆっくりできればいいのだけれど、現在そうもいかない事情にて軟禁されています。

 ええもう見事に不審者に認定されました!




 森を抜けて直ぐに広がる牧歌的な村に感動しながら村を眺めていると、職務質問よろしく村の門を守っている人に質問責めにあった。

 そのあまりのまくし立てに色々と何か言おうとしていた事が全て吹き飛んで頭の中が真っ白になり、不審者として捕まって今に至るというわけで。


 勿論、抵抗すれば組み伏せられる自信はあったけれどただの一般人の方にそんな無体は働きたくないし、盗賊さんの話をしたら警備隊の方を引き連れて確認に行ってくれるみたいだし…早く誤解が解けてゆっくり休めるといいな。


 突然不思議な出来事に巻き込まれ、自分でも思っていた以上に精神的に疲労していたらしく目を閉じたらゆっくりと睡魔がやってくる。

 こう、周りの物音が遮断されもう少しで眠りに落ちられそう…という所で睡魔は何かの物音で遠くに霞んで消えてしまった。


 「こんな状況で眠れるなんて、感心するな。」


 「ええまぁ中断されましたけど。」


 聞こえたのはこの建物の扉が開いた音で、やって来たのは昔話とかその辺りの物語に出てくるいかにも騎士様!という感じの優男。

 私の返答を聞くや否や、あからさまに不機嫌なご様子になったその彼の印象は、


 『家名でのし上ったお飾り騎士様』


 と、いう感じ。仰々しい格好をしているけど、そんなに強そうにも見えないし隙だらけ…正直ガッカリだ、とってもガッカリだ。見た目がいいだけに余計ガッカリだ。


 「とりあえずそれはいい。これから私のする質問に貴様は正直に答えろ、いいな。」


 「はいはい。」


 「…あの盗賊の身柄を拘束したのは本当に貴様か?」


 おっとストレート。もう少し勿体ぶってくるかと思っていたが直球でくるとは。根は単純なのかもしれない。


 「それはもう村の方に説明しましたが。」


 「黙れ、貴様は質問に答えればいい。」


 いかにも私は偉い貴族様ですと言わんばかりの物言いに、一気に色々とやる気が削がれた。正直もう色々放り出してここから逃げようかなぁ。あぁ面倒くさい。

 そんな私の態度がまたもやお気に召さなかったようで、お貴族様は剣を抜いてこちらに突き付けて来た。


 「貴様のような餓鬼があんな手錬を倒せる筈が無い!言えっ!貴様、何を企んでいるっ!?」


 「……はぁ。」 


 あの盗賊さんがそんなに強いと感じると言う事は、このお貴族様はやっぱりお飾り様ということで落ち着く。物凄く納得した。


 「自分の言った事に嘘偽りはありません。」


 ハッキリと言い切る私に怪訝そうな表情で様子を伺ってくるお飾り様。これだと私が何を言っても信用してはくれそうにない。

 深いため息をついてまた睨まれる事にほとほと嫌気がさしていた頃に…不意に扉がまた開く。


 「タイチョー、裏取れましたよー討伐したのそのボウズで間違いなさそーですよ。」


 「なんだと?」


 入ってきた部下さんらしき男の人の言葉に、納得できないというご様子でお貴族様は外に出て行った。

 どうやら誤解も解けたようで、やっと軟禁から開放されるのかと思うと少し安心した。地面が堅くてそろそろお尻が痛い。


 安堵から息を吐いていると、隊長さんが出て行った方を見ながらヤレヤレと肩をすくめる部下さんが目に入った。苦労させられているのだろう。


 「悪かったなぁボウズ、ちゃんと隊長に事情説明して誤解解いたらすぐ出してやっから。」


 「それはどうも…ん?」


 顔を上げて部下さんと目が合う…と、なにやらファンタジーな世界がそこに広がっていた。

 妙な声を上げた私にどうしたんだ?と覗き込んでくる部下さん。額から顎が凄く長いというかウマヅラというか……普通に馬だった。


 「…馬?」


 「ん?獣人見るのは初めてか?まぁこの辺じゃあ、あんまり居ないか。」


 


 ここで私は、本格的に異世界に来たんだなぁと実感することとなった……




獣人さん登場。お話の舞台となる世界には、他にも様々な人間以外の異種族がいらっしゃいます。

その辺りも追々出てくるんじゃないかな、出てきます。

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