異世界作品マスターの俺は原作を間違えたので、一旦国を滅ぼします
俺は異世界作品マスターだ。
異世界作品が大好きで、昨日も今日も明日も読んでいるだろう。
いくつもの作品を読破してきた。内容は全て頭に入っている。
ひょんなことで俺は異世界作品の主人公に転生をした。なあに、理由は簡単。トラックに轢かれたからだ。
最初に転生したのは、何の作品だっただろうか。たしか『最強魔王に転生したはずが最弱だったので成り上ります』だった気がする。
俺は魔王として原作通りに生き抜いた。やっとの思いで物語は完結、現世への戻り方もわかった。
「よし。この魔方陣に乗れば現世に戻れるんだな……そーっれ!!」
だが、現世に戻れなかった。俺は、新たな異世界作品に転生していたのだ。
それから何度転生し、どんな作品に転生したかもよくは覚えていない。最強主人公の作品だったり、勇者に仕える聖剣に転生したり、エッチなゴブリンに転生したこともあった……etc。
だが俺は異世界作品マスター。己の知識と技術と経験で、生き抜いてやる。そして絶対に現世に戻ってやるんだ。
俺は草原で目を覚ました。
重たい体を起こし、目を擦る。
くそ。まーた現世に戻れなかったか。今回は上手くいくと思ったんだけどなあ。
まあいい。今回も原作準拠の最短ルートで走り抜けて、今度こそ、あの忌々しい現代の天井を拝んでやるぜ。
俺は草原を歩きだした。
その時だった。
空が割れた。いや違う、厳密にいえば空が光った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
唸り上げるような轟音。隕石が降ってきたのだ!!!
「はあっ!?!?!?」
嘘だろ。まじかよ!!
い、いや待て、落ち着け。これも何かの物語のあらすじのはずだ。
思い出せ。
……あ。
俺は思い出した。両手を天高く広げる、そして。
唱えた。
「アルティメットバーニング・スーパーウルトラフラッシュバーン光線ッ!!!!」
あほらしい必殺名だった……が。
手のひらから放たれた巨大な光線は、隕石に一直線。
隕石を跡形もなく燃やし尽くした。
そして俺はその功績が認められ、王から王女をもらい勇者となり、加えて英雄になった。
ええっと確かタイトルは『転生してすぐに隕石を破壊した俺は、英雄になって無双生活』だったかな。
今は王の間にいる。
金銀ギラギラきらびやか。品がねえなこの部屋は。
それになんか……
俺は答えのわからない違和感を覚えた。
悶々と考えていると王が部屋に入ってくる、不細工のデブ。原作には似つかない風貌。
原作の王は、聡明でハンサム、そして果敢で国民から愛されている人物だったはずだ。見た目だけでも大いに違う。
「冒険者よ。よくぞこの国を守った、褒めて遣わす……なんて、俺さまを騙せると思ったのか?」
(……ん?)
「得体の知れないお前のことを調べたが、戸籍が存在せずギルドにもお前の情報がない。それらを鑑みると、今回の事件は俺さまに取り入ろうとした自作自演であり、お前は首謀者だ。よって死刑に処す」
「はあっ!?!?!?」
「連れてゆけい!!」
「お、おい!ちょっと待てよ。どういうことだよおい!放せ、触んじゃねえよ!!」
どうなってんだこれ。原作通りやったよな?
いや待て。原作通りやってなかったってことなのか?
……あ。
俺はまたまた思い出した。
主人公が転生してすぐ隕石落下に巻き込まれ、隕石が落ちたことで消滅した土地に新たな国を作り上げる物語を。
タイトルは確か『転生ニートが作り上げたのは、世界最強の魔法国家でした』だったよな。
この物語の原作は、隕石を破壊するんじゃない。隕石が落ちることによって国消滅、そこから物語スタートってわけか。
やべええええ。がっつり作品間違えてんな。
てかなんで主人公の必殺技がこっちの作品でも使えるんだよ。
あ、そうだ。
確か作者が同じで、色々とリンクしてるから主人公の技名も同じなんだよな。なんというご都合主義。
てか話の導入がどっちも隕石ってなんやねん。
やれやれ、やれやれすぎるよ……
「どうしたものかな」
俺は城のてっぺんの処刑場で首つりの準備をされていた。
窓からは、生き生きとした国が見える。
あーあ、隕石破壊しちゃったしもうどうでもいいかなぁ。いっそのことこのまま死んでしまおうか……
否!!
そんなことは、俺が許さない。
俺はここでひらめいた。ピコ―――ン
俺は隕石を破壊した。どうやって?必殺技で跡形もなく。つまり隕石=必殺技の威力。
よしやることが決まったな。ならば行動するのみ。
この国もろとも必殺技で破壊して、原作準拠。『転生ニートが作り上げたのは、世界最強の魔法国家でした』をやり遂げる!!
国を破壊する過程が違うが、まぁいいだろう。過程を見てほしいなら学生やっとけって言うくらいだしな。結果が同じならいいだろう。
俺は走り出した。体を括り付けられる最中だったが抜け出し、そのまま窓にダ――――イブ!!!
そのまま俺は必殺技を唱えた。
「アルティメットバーニング・スーパーウルトラフラッシュバーン光線ッ!!!!」
相変わらずあほらしい必殺名だった。
国もろとも辺り一帯が消滅した。
――静寂。
そこには何もなかった。
金銀ギラギラで品のない王の間も、不細工なデブ王も、ガヤガヤ騒いでいた宮殿の兵士たちも、そして足元に広がっていたはずの王都すらも、跡形もなく綺麗さっぱり消え去っていた。
残されたのは、ただ広大で、何もない巨大なクレーターだけだった。
「やべえ……やりすぎたかもな」
俺は地面に降り立ち、自分の両手を眺めながら呟いた。
過程は原作と完全に真逆どころか文字通りの大爆破だけど、結果として「国が消滅して何もない土地になった」という点においては、見事にスタートラインに立ったと言えなくもない。
むしろ、ここから俺がゼロベースで魔王軍をも凌駕する最強の魔法都市を築き上げれば、タイトル通りの『転生ニートが作り上げたのは、世界最強の魔法国家でした』を完全再現できるはずだよな。
「よし。まずは住む場所、というか家だな。無一文のニート生活の始まりだぜ」
ガキの使いのように、広大な更地を一人でトボトボと歩き出す。
相変わらず現世には帰れていないし、やることのスケールがバグり散らかしているけれど、異世界作品マスターとしての血が騒ぐのもまた事実。
「次こそは、スムーズにクリアして現代の天井を拝んでやるんだからね!!」
誰もいない荒野に俺のツンデレ声がむなしく響き渡る中、新たなクソ面倒くさい国家建設の幕が、盛大に上がってしまったのだった。




