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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僧侶が戦士とイチャイチャしてると思ったら、矢印の方向が全然違った件

作者: 青空爽

「痛いよぉ、リム」

「はいはい。すぐに治してあげますからねぇ」


 そう言ってリムはセルロの腕の傷を回復魔法で治してあげた。


「よく我慢できましたねー。偉いでちゅよ」

「うん。俺、耐えたよ」

「よしよし」


 ご褒美だと言わんばかりにリムはセルロの頭を撫でている。

 私は二人のやり取りに寒気を感じながら、一歩引いてそのやりとりを眺めていた。本当に勘弁してほしい。この二人はいつもこうなのだ。


 私たちは冒険者で三人パーティだ。

 戦士のセルロ。

 僧侶のリム。

 それに魔法使いの私だ。


 そのうちの二人がデキているものだから、残りの一人である私の居心地の悪さと言ったらない。

 本当に、毎度毎度二人だけの世界を作るのだ。お願いだから二人でいる時だけイチャイチャしてほしいものだ。

 とにかくセルロの傷も治ったことだし、仕事を続けたい。私は存在をアピールするためゴホンと咳払いをしてから、話を始めた。


「では、そろそろ村に行くぞ」


 今日はギルドでゴブリン退治の仕事を受けていたのだ。村に行く途中でモンスターに出会い、戦闘になってセルロが負傷してしまったと言うわけだ。

 このままだと泊まりの仕事になってしまうかもしれなかったので、私は一刻も早く目的地に到着したかった。

 だが、二人は私の焦りにも気付かずにのんびりしている。


「そんな急がなくてもいいじゃねーか」

「そうですよ。少し休んでから行きましょう。あ! 私二人にお弁当作ってきたんです! 良かったらここで食べていきませんか?」


 セルロはニコーッと微笑んだ。


「マジで? 俺、腹ペコでちゅ」

「あらあら。じゃあ、すぐに食べましょう。これをどうぞ」


 そう言ってリムはリュックからお弁当箱を一つ取り出し、セルロに渡した。

 セルロは喜んで受け取ると、パカリとお弁当箱を開けた。

 白米に梅干し一つだ。

 シンプルな弁当だなと思っていたら、リムが私にも別の弁当箱を渡してくれた。

 礼を言ってから受け取る。

 ガツガツ食べ始めたセルロをチラリと見てから、私も弁当箱を開けた。


「こ、これは……!」


 唐揚げにタコさんウインナー。卵焼きとほうれん草のおひたし。更に白米には海苔で『LOVE』と描かれていた。


――こ、これは本命弁当というやつだ……!

 

 リムのやつ、弁当を渡す相手を間違えたな!?

 ここで指摘してもいいが、セルロはもう梅干し弁当を食べ始めている。今更交換するのも嫌だがこのままではリムに悪いと思い、セルロから少し離れた場所にリムを呼んだ。


「なんでしょう?」


 キョトンとしているリムに弁当箱を見せて、渡す相手を間違えていると指摘した。

 だが、リムはフルフルと首を横に振る。


「間違ってませんよ? これでいいんです」

「え? でも、これ本命弁当だろう?」

「そうです」

「ならば、セルロにあげるべきではないか?」


 私の言葉に、なぜかリムはクスクス笑った。

 

「リム?」

「ふふ……。セルロ様なんてどうでもいいんです。私、マルテナ様のことが大好きだから頑張ってお弁当作ったんです」


 な、なにを突然言い出すのだ!?

 いつもあんなに二人でイチャイチャしているのに!

 ビックリ仰天した私は反論した。

 

「は!? 君が好きなのはセルロだろう?」


 リムは人差し指を立てて、チッチッチと舌を鳴らす。

 

「そんな訳ないじゃないですか。私が好きなのはマルテナ様です」


 えー!? そんなバカな!?

 大いに動揺しつつ、話を続ける。

 

「そ、そうなのか? では、なぜ今までセルロとイチャイチャしていたのだ?」

 

 リムはクスクス笑いながら説明した。

 なんでもセルロは大の女好きらしい。実際リムも口説かれたそうだ。こんな女好きと私を二人きりにしたら、私はすぐにセルロの毒牙にかかってしまうだろうと思ったそうだ。

 それを危惧したリムがセルロにべったりくっ付き、私を守ってくれていたそうだ。


「だってあの人、マルテナ様を見ている目が完全に狙っていましたよ?」

「そ、そうなのか?」

 

 真実を聞いてもいまいち信じられない。

 

「私なんかをセルロは口説くだろうか?」

「口説きますよ。だってマルテナ様って、美人さんだもん」

「……」

 

 リムはニコニコ微笑んだ後、私の手を(にぎ)った。

 

「それで、私の気持ちを知ったマルテナ様はどうしますか?」

「え?」

「あまりにも(にぶ)いから、ラブラブお弁当作戦を決行したんです。これで私の気持ちに気付きましたよね?」

 

 そ、そんなこと言われても……。

 

 困惑してしどろもどろになっていたら、弁当を食べ終わったセルロが近付いてきた。

 

「かわい子ちゃん二人でなに内緒話してるの? 俺も入れてよ」


 セルロの気持ち悪い発言を聞いたリムは、今までの優しい声でなく、冷めきった声色で口を開いた。

 

「ヤリチンは黙っててください」


 途端にセルロが固まった。

 まさか自分に好意を抱いている女の子がそんなことを言うと思わなかったのだろう。

 セルロはオロオロしながら作り笑いをした。

 

「こ、こわっ。どうしたんだ? リム?」


 冗談で済ませようとしているセルロをひと睨みしてから、リムは私の手を取る。

 

「もうマルテナ様に気持ちを伝えたから、あなたのことはどうでもいいんです。さぁ、マルテナ様。お弁当食べてください」

 

 そう言ってリムは、ニコリと微笑んだ。

 呆然とたたずむセルロを哀れに思いながらも、今後のリムとの付き合い方に頭を悩ませる私なのだった。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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