第一章:ようこそ、「白昼の街」へ
沈砚は、ある日突然、見知らぬ真っ白な部屋で目を覚ます。そこは現実ではなく、「無限副本」と呼ばれる謎の異空間だった。
彼が参加させられたのは「白昼の街」というサバイバル型のゲーム。プレイヤー12人、制限時間は7日間。課された任務は「真実の人間」を見つけ出すこと——失敗すれば、全員が“消去”される。
沈砚は冷静沈着な心理学の修士。一見人当たりが良く穏やかだが、内には観察と計算を張り巡らせる。
彼と運命的な“絆”を結ばされたのは、元軍人の冷淡な男・陸准。寡黙で他人を寄せつけない彼にもまた、簡単には明かせない過去と秘密があった。
真実とは何か。誰が嘘をついているのか。
この街では、“信頼”が命取りになる。
——これは、白昼夢のように静かな地獄で出会った、二人の男の物語。
沈砚が目を覚ましたとき、空はまだ白かった。
それは太陽の下で輝く晴天の白ではなく、まるで霧のような、不気味な白だった。
彼がいたのは密閉された部屋で、四方の壁は一片の汚れもない真っ白。天井に明かりはなく、床には継ぎ目もない。まるで巨大な実験容器の中に閉じ込められたようで、息をするのも慎重にならざるを得なかった。
【無限副本「白昼の街」へようこそ】
耳元に突然響いたのは、感情の一切ない機械のような電子音だった。
【副本タイプ:サバイバル/謎解き/対抗】
【プレイヤー数:12名】
【目標:7日以内に「真実の人間」を見つけ出せ。失敗すれば——全員抹消】
沈砚は眉をひそめ、「真実の人間」という言葉の意味を考えようとしたそのとき、壁の一面が“シュッ”という音を立てて扉のように開いた。
そこに立っていたのは、一人の男。
彼は全身黒の服に身を包み、姿勢は軍人のように直立していた。冷たい目がこの死白の世界と強烈なコントラストをなしている。
彼は沈砚を見つめたまま、遠慮なく命じた。
「出ろ。」
沈砚はすぐには動かず、目を細めた。
男は苛立ちを隠さず、再び言った。
「出ろと言ったんだ——」
「君は誰?」沈砚は低い声で問いかけた。
二人は一瞬、無言のまま睨み合う。それは探り合いでもあり、対等な挑戦でもあった。
やがて男は視線を逸らし、冷たい声で言った。
「陸准。君は九番目に目覚めた。時間を無駄にするな。」
沈砚は立ち上がり、部屋の外へ出ると、すぐに中央に数人が集まっているのが見えた。ホワイトボックスのような広間の中央には、情報パネルが浮かんでいる。
【副本タイマー:6日23時間59分】
【各プレイヤーは速やかにチームを組んでください。正式なゲーム開始まで、あと10分。】
陸准は振り返り、沈砚に一言だけ言った。
「生き残るには、運に頼るな。」
沈砚は微笑んだ。その目は穏やかに見えたが、どこか計算高く冷ややかだった。
「それじゃあ、協力しようか。」
そのとき誰にも気づかれないよう、沈砚の指先がそっと右手首を押さえた。そこには腕時計型のデバイスがひっそりと装着されていた。これが彼の持ち込んだ唯一の“道具”。
そして次の瞬間、機械音が再び響く——
【「白昼の街」隠しシステムを起動】
【運命の絆が発動しました:沈砚—陸准(未判明)】
【両プレイヤーは“信頼”と“裏切り”を慎重に選択してください——結末は、どちらか一方のものになります】
ここまで『白昼の街』を読んでくださって、本当にありがとうございました。
最初にこの物語の構想が浮かんだとき、「白い街」「信頼と裏切り」「一対一の宿命的な関係」というテーマが頭から離れませんでした。
沈砚は一見優しそうだけど、内心では常に他人を分析し、コントロールするタイプ。
陸准は冷たくて無愛想だけど、その不器用な守り方が、実はとても誠実で痛々しい。
この二人が、どれだけ不器用に、どれだけ本音を隠しながら、それでも惹かれ合っていくのか——それを書きたくて仕方ありませんでした。
“無限流”というジャンルは、ゲーム性や謎解き、緊張感も魅力ですが、
私はやっぱり「誰を信じるのか」「その人とどう生き残るのか」っていう人間関係のドラマに惹かれます。
読者の皆さまにも、沈砚の静かな焦りや、陸准の無言の優しさ、少しでも届いていたら幸いです。
そしていつか、また別の副本で、二人に再会させてあげたいですね。
——また、白昼の街で。
著:邵嫣