表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

120年と花






「姫君がおられぬぞ!」


「何っ!?」


「お目覚めになったのか?」


「探せ!皇帝陛下に御報告せよ!」



バタン


なに、だれ、今の……。


鎧を身につけた私が知らない5人程の男が、私の部屋に勝手に入り込んでいた。

私が部屋を出る時と同じように、窓からこの部屋に入ろうとしたその瞬間に扉が開いて、その男達が入ってきたのだ。

私は慌てて外に出て息を潜めていた。

やっとどこかに行ったらしい。


怖い、な。



「お帰りなさい。」



……!

誰、だろう。

先ほどのこともあって後ろを振り向けない。


小さく息を吸う。



「……ど、どちら様でしょうかっ!」



恐る恐る目を開けると、そこには誰もいない。

慌てて声のしたと思われる窓を覗くと、左手にどこかへ駆けていく明らかに怪しげな人影が見えた。


追いかけなきゃ……!


私は何かに惹かれるように、先ほどの私宛の手紙を握りしめて、窓に思い切りよく足をかけて靴も履かないまま駆け出す。



「まって!」



目の前には誰もいない。

それでも、向かうべき場所を私は知ってる。


あと半分……!



「いらっしゃられたぞ!」



大きな声がして私が振り向くと、少し離れた向こうに、先ほど私の部屋に居たのと同じ鎧の男達が立っていた。


私は必死に走ったが、当然見るからに屈強そうな男の走る速さに勝てるわけがない。

もう少しで、追いつかれてしまう。

追いつかれてはいけない。

どうしてかは分からないけど、絶対追いつかれてはいけない。


……でも、もう…。



「こちらです!」



目の前に男の人が颯爽と現れて私の腕を引いた。


あぁ、この人だ。

私に手紙をくれて、窓から話しかけてくれた人は。

彼はとても身軽に、時に隠れながら、追いかけてきた男達を振り切った。



「あの、ありがとうございます。」


「いえ、元はと言えば、私のせいですので。」


「……?…私、丁度ここに来たかったんです。」



そう。この人は私の目的地を知ったか知らずか、竹林に連れてきてくれたのだ。



「ここは、人には辿り着けない場所ですから。」


「…あなた、ですよね。全部。」


「………。」


「─、───、──より、永い眠りから醒め、ただいま戻りました。大変長らくお待たせいたしました。」


「お帰りなさい、───さま。ずっと、ずっと、貴女をお待ちしておりました。」



彼がそう言った瞬間、竹の花が咲き誇った。



私は120年とは一瞬なのだなと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ