夢
気がつくと、私は家の近くの竹林を眺めていた。
突然のことに驚いて、そっと自分の両手を見ると、私の手はとても小さくて、これは夢だと悟った。
ふと横を見ると男の人が立っていて、私はこの人を知っていると思った。
しばらくして、その男の人がこちらを向く。
しかし顔は靄がかかっていて、見ることができない。
すると男の人が口を開いた。
「竹はね、120年に1度だけ、花が咲くんだ。」
すると私の口は、私の意思に構わず開いた。
「次はいつ咲く?」
私がそう尋ねれば、男の人は少し考えてから言った。
「君が生まれる1年前に咲いたんだ。美しかったよ。」
少し答えはズレていたけれど、計算をすれば次にいつ咲くのかはすぐに分かった。
私の口はまた勝手に開く。
「じゃあこの花は何?」
私は自分で言ったことに驚いて、"私"が指差している地面見ると、確かにそこには花弁が地面を覆い尽くす程に落ちていた。
「ああ、ここの竹の花は特別でね、10年もの間、落ちた花弁が残るんだ。……ああ、そうだ。そうだった。最後に咲いたのは8年前だよ。」
"私"は暗算がまだ出来ないようで、指を使って計算をし始めた。
男の人の言葉を聞いて、私は気づいた。
これは妄想でも何でもなく、本当に過去にあったことだと。
しばらくして"私"は計算が終わったようだ。
「……次は112年後?」
「そうだね。…次は、次は一緒に見よう。」
私は、112年後だなんてもう生きていないのではないか、と思った。
そして、それを口に出そうしたけれど、その前に男の人が口を開いた。
「さあ、もう時間だ。行っておいで。」
どこに、と思ったけれど、そんな私には構わず、"私"は小さな声で、分かった、とだけ言った。