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12/13

永禄7年/鳴動


 やり直しを決意した日から一年が経つ。

状況的に詰みかけていた政治基盤の再構築として柄杓山の桐生氏を使った。

桐生氏は弁之助と才之助くんのおかげで俺へのマイナスイメージが少なく、相老などの少数ではあるが伝手があったため利で簡単に転んだ。

そこから岩松派の中でも話が分かる脇屋を中心とした家臣団や、横瀬派の中でも理に敏い家臣を中心に切り崩し、利権や実弾(金)にものを言わせて政治基盤の再構築に成功した。

結果として新田金山の跡継ぎ問題は混沌としている。

実利の国寿丸と血統の猫天丸だと思われていたのに、実際は政治基盤の国寿丸と実利の猫天丸となっており得られる情報によって思想と真逆の状況が起こってしまっている。

そういう部分でちょっとした諍いがある事に関してはある種仕方ない部分だろうな、と諦めている。なるようになれだ、俺は悪くねぇ!

それと諜報機関として防人衆の一部を所謂忍者のような諜報員にするために諜報専門職を作った。

新田金山での風説の流布などは俺が防諜を蔑ろにしたせいで起こったようなものだ。

既に流れてしまっている風説は覆せるようなものではないが、これ以上のイメージダウンを避けるためにも必要だった。

防人衆の中でも実力派の三日月という人物がまとめて行っており、三日月村という忍者の里のようになっているようだ。

その三日月村への視察を伝えるために防人衆を尋ねて行く道中を歩いていたら、才之助くんがキラキラした顔で語り掛けてくる。

去年より続いていた灌漑工事が完了しており通水試験が行われているようだ。


「猫天丸さん~。見て下さいよ!ちゃんと水が流れ始めましたよ!」


「ああ、もうそんなに工事進んだのか。」


 今行われている渡良瀬川から阿左美沼を通り茶臼山外周を回わる大がかりな用水路を作成する治水工事がひと段落ついたことを告げる水が流れて来た。

徳川幕府のように目安箱を設置し、住民の声に耳を傾けた所、圧倒的に多かった灌漑を望む声。

灌漑はその周囲しか土地を豊かにしないが、住民の為でもあるし桐生との連携の為にも造らせた。

やっぱり住民は粟稗のような雑穀ではなく米の白い輝きを求めているらしい。雑穀米でもおいしいパンとか流行らせたかったのに、ちくせう。


「川の水を引き込んで用水路にする事は灌漑工事としてはよくある事ですけど、でもこんなに早く進むなんて!」


「鋼と根久利岩だろ、そこに関しては。」


「それもそうですけど、やっぱり猫車は強力ですね。運搬能力が全然違います!」


 高炭素鋼製の丈夫な鉄器具やコンクリートによる護岸工事の短縮、猫車による運搬能力向上などが寄与して思ったより早く工事が終わった。それに人口の影響による賦役人数の増加も大きいか。

殆どが流民で形成される藪塚は既に人口五千を超えており、既に新田金山を超えている、はず。

はず、というのは藪塚では戸籍管理を徹底しある程度の人口を把握しているのだが、藪塚以外は石高での計算でしかないためだ。


「これで暮らしが良くなったと言ってくれればいいのだがな。」


「なりますよ!だって猫天丸さんがやったことなんですから!」


どこか機嫌の良さそうな才之助くんの様子を眺め、某アロハシャツのおっさんのような質問をしてみる。


「なんか良いことでもあったのかい?機嫌がよさそうだけど。」


「あ、そうでした!お兄ちゃ、いえ、兄と話があるので僕はこれで!」


 そういうと才之助くんは急いでどこかへ走って行ってしまう。なんだろ、弁之助との話とは。

なんか不穏だな。何事も無ければいいのだが。


桐生兄弟は未だ戻ってきていない新田衆として参陣している桐生氏を待っている間、新田金山城へ預けられていたのだが、藪塚城が出来てからこっちへ来てくれた。

そろそろ戦況も落ち着いたという報告もあったし、戻ってきそうなものだけど今の所連絡がない。

便りが無いのは良い便りというが、あれ、これってこの時代にあったことわざだっけか?


【「便りの無いのは良い便り」は、英語のことわざ「No news is good news」が由来で、連絡がないのは問題なく平穏無事に過ごしている証拠、という意味で、明治末期に日本に伝わり定着したとされる西洋由来のことわざです。】


明治って事はまだこの時代にはないことわざか。あぶねー、普通に定例会とかで口走りそうだったわ。

というか、こういうミス何回かしてそうだよな。なんか意味通じないことあったし、その度に妙印尼が面白そうな顔してたし。やっちまったかもな。


「行ってしまわれましたね、どうしますか?猫天丸様。」


「では本来の予定通り防人衆の様子でも見に行くか。お貞、馬を。」


「はい、こちらへどうぞ。」


 防人衆の所へ行って進捗を確認しなければいかんな、忍者の里ってどういう事やねん。

お貞と共に馬で藪塚の街並みを見る、流民たちで廃材から作った街並みとは呼べないような代物から今の石垣白壁の整備された街並みへと変貌しており、この街も発展してきたなぁと実感が湧く。

そんな道すがら、住宅街に差し掛かった辺り。


「猫天丸様!丁度良かった!お城に持っていこうと思ってたのよ!」


 急に住民のおばさんから声を掛けられる。

確かビニールハウスの代替品を試してもらってる農民の奥さんだったかな。


「見て頂戴?この前猫天丸様が作ってくれた漆喰紙畑で採れたのよ。」


 そう言うと大きな箱を持ってきて中身を見せてくれる。


「おお、立派な西瓜だな。」


「でしょう?ようやく綺麗に出来上がったのよ。」


 この次代の西瓜は品種改良が進んでおらず現代のような真っ赤な果肉が詰まった品種ではなく白い繊維が大部分を占めている。

現代人から言わせてもらえばしょぼい瓜のようなものだ。しかし、温帯でしか生産できず貴重な甘味のため、この藪塚のような貧しい土地で作れる事自体が凄いのだ。


「ご苦労だったな、これは城番にでも持って行って例の漆喰紙の試作だと伝えてくれ。」


「わかりました、どれもこれも猫天丸様のおかげですよ!」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。」


「また何かあったら言ってくださいね、喜んでお手伝いしますので!」


「ああ、またよろしく頼む。」


 別れ際に笑顔で手を振ってくれる農民の奥さん。


「猫天丸様、良かったですね。」


 少し歩きだしてから、お貞がそう俺に語り掛ける。


「ああ、漆喰紙畑が成功したならば他にも色々やりようがあるかもしれん。」


「いえ、違いますよ。」


「ん?どういうことだ?」


「藪塚の民は猫天丸様の事を信頼しその成果の喜びを分かち合おうとしてくれています。」


「ああ、それは、まぁそうだな。」


「はい。」


 藪塚の民からの信任は厚いものであった。

勿論狙って得たものでもあるのだが、それでも認められていることは嬉しかった。




「お!総隊長殿じゃあないですかい!」


 新田防人衆の詰所の中にある技術局へ着いて俺を見た流山が大きな声を出しながら近づいてくる。


「よう流山、どうだい?調子は。」


「良い感じですよ!この前たたらばと金物屋と技術交換しましてな、もしかしたらお望みのあれ、早くに作れるやもしれません!」


 この大きな男は流山源之丞ながれやまげんのすけ、防人衆最年長で技術局の長をしている。


「火縄がか?鋼は足りるのか?」


「ええ、何分流れの商人が来る頻度が上がりましてな、そいつらに鉄くれを集めさせてるのですが、良い感じで集まりましてな?それを使えば余裕が出来そうですわい。」


 資源問題はいつの時代にも付きまとうもので、ここ藪塚でも急激な人口増加も合わせて色々と資源が不足しがちになっている。

その辺から取ってこれる資材なら問題ないのだが、鉄・布・木材などは常に買い足している程だ。


「そうか、それはよかった。そいつはこれからの主力武器になる。頑張ってくれ。」


「任せてくだされ!」


「そう言えば話は変わるのだが、灰山はどうしている?」


「ああ、あの総隊長殿肝入りの、呼んできましょうかい?」


「いや、調子を確認しに来ただけだ。」


「アイツは使えますね。我々のような古い人間にはない発想を持っておりますな。」


「爆発物以外でも役に立っているか?」


「ええ、基本を叩き込んでからすぐに順応しましてな、今回の件もアイツの働きによるところも多き物です。」


「そうか、そいつはよかった。」


「しかし気になったことであれば探究をしたがりましてな、すぐ飯を忘れてぶっ倒れるからそこだけ心配しております。」


「灰山らしいな。分かったありがとう。」


 確認したい事も確認し終えたので話を切ろうとしたら流山らしからぬキレの悪い感じで話しかけられる。


「あー総隊長殿、この前の話なんですが。」


この前の話ってあれか、秘密技術研究局の話か。


「どうした?」


「灰山を筆頭に何人か候補は出せますが、ワシは辞退させてもらおうかと思っておりましてな。」


「まぁ危険を伴うものだからな、お前のような腕の立つ人員が欲しかったのだがな。」


「いや、その、別に危険である何てこたあ良いんですよ。しかし、ビビっちまって。」


「ん?どういうことだ?」


「灰山を見てると思うんです、ワシは古い人間だと。ならば古い技術を生かせる方が総隊長殿の為になるのではないか、と思ったので。」


「なんだ、そんな事か。気にするな。流山のやりたい事をやってくれ。」


「総隊長の指示の下、別の世界が出来ると言われるほどの研究です、やりたくないわけじゃないんですが、しかし、ワシには古い技術を使ってる方が性に合ってるんです。」


「そうか、それならばこちらの技術局の方は流山に任せたぞ。古い技術の応用だと言ってもお前のように腕がなければ成り立たない職だ。その腕存分に生かせよ。」


「この不肖流山!確と承りました!」


 そう言って防人衆流の敬礼する流山、感動してるのか泣き始めてるおっさんを見てちょっとばかりキモいと思わざるを得ない。


「止めんか、偉丈夫たるお前に泣かれるとそれはそれで迫力があるんだよ。ほら、とっとと折戸を呼んで来い。それと人払いを済ませた部屋を用意しろ。」


「は”ぃ!」


 信用してないわけじゃない、むしろしてる、けどそれとこれは別問題だ。折戸を呼びに行った流山のような防人衆の優秀な人材ですら更に情報セキュリティを敷かなければならない。

秘密技術局でこれから行う研究が外部に漏れたりした日には何千何万でも足りないくらい人が死ぬのが目に見えている。


 そう、以前諦めた科学化合物の再現だ。


 以前、黒色火薬は生成した。それは材料があり調合の比率を変える、正解を知っているなら容易い事だ。しかし、その先の無煙火薬などに至る為にはどうしても科学技術が必要になってくる。

ニトログリセリンやニトロセルロースなどが代表例と言えるだろう。それらを無くしてこの先の戦場に立つには分の悪い賭けにしかならない。

現段階で火縄銃の簡単な原理と黒色火薬が再現できるんだ、その先の薬莢紙やダブルバレルなどで他より進化した武器がなければならない、という話。

更にその先、雷管と薬莢、つまりマシンガンのように連射機能を付けるとなると黒色火薬では熱暴走や銃身の耐久性に難が出てくるわけだ。

無煙火薬を作る副作用というわけでもないが、ニトログリセリンと言えば、そう、ダイナマイトだ。

火薬を詰め込んだ簡易手榴弾などとはレベルが違う、少量で城すら破壊できる代物だ。あ、別に城と代物をかけた冗句じゃないぞ。


 まぁ、そんな感じで秘密技術局ではやべーもん作る予定だしそれを外部に漏らさないように細心の注意を払ってるわけ。

そんな取り留めのない事を考えていたら折戸が意気揚々とダンスでもしてるのかってくらい楽し気に来た。


「やぁやぁやぁ!我らが御大将!御用とあらば即参上!」


「折戸、話は色々あるが中で話すぞ。」


「御意!おい、お前らとっておきの茶菓子を用意しろ!」


「茶菓子はいいから人払いしろって聞いてないのか。」


「お聞きに及んでますって、御大将が御着きになる前に用意してこそ三日月の仕上げた草です。」


「それについて内密に話しに来たのがわからんのか?そんなに走りたいのか?」


「ええ!是非とも御大将のご用命とあらば!」


「もはや何も言うまい。」


馬鹿みたいなテンションの折戸を置いておいて、しかしもう既に防人衆でも認知度があるし、そして本当に俺が付く前に茶と茶菓子を置いて部屋から出て行ってるようだ。


「あーまぁ、ちょっと触れたが三日月の、あれはどうなっている?」


「問題ありませんよ、ちょっと教えたらどんどん取り込んでいってくれる人が多くて助かってます。」


 と、不意に折戸の影から三日月が出てきて答えた。


「いつからそこに居たんだ?」


「ずっと。」


「まぁ、優秀そうで何よりだよ。」


「ありがとうございます。」


 物静かで何考えてるか分からない危うさがあったが、こう見ると純朴な少年にしか見えんのよなぁ。

会話が終わったと察した折戸が演技がかったいつものテンションから落ち着き払う。


「っと、それで、三日月に何かありましたかい?任務ですか?」


「いやな、報告では上がっていたが諜報機関として三日月の所は使えそうなのかどうなのか進捗の確認をしに来ただけだ。」


「それはもう、正直俺のような田舎武者ではお目に掛かれないくらいの極上の仕上がりですぜ。巷では伊賀とか甲賀が幅を利かせているようですがそれに負けずとも劣らない、それどころか御大将の教えを学んだ三日月村の奴らはそれを超えているように思えますぜ。」


 なるほど、以前諜報機関設立時にCIAやMI6を参考にカモフラージュ術など諜報に役立つ情報をまとめた技術書を作った事があったがそれを体系化できたのであれば心強いな。


「オレ、大将に貰った変な木の実の饅頭、貰ったからここに居るんだって思ってます。だから、大将の役に立つためなら何でもします。そう、なんでもできます!」


「…嬉しいよ、そう言ってくれて。」


 はて、このセリフを言うの今日で何回目だろうか。以前流民にシュトーレンもどきの乾燥した果物をまぶしたパンを振舞った事があったがそれの事を言ってるみたいだな。あれは俺の暴走というか、美味しいもの作りたくなって作りすぎたというか。

というか三日月も目がぐるぐるしてて怖いよ、そんなに美味しかったわけか。まぁ結果として喜んでくれているようだし、ヨシっ!(現場猫)


「緊急です!総大将様!失礼仕ります!」


 なんかほっこりした空気が一変、三日月の所で鍛えられたであろう忍者のような伝令が扉を蹴破るように入室して来た。


「おい、人払いと言ったのに入ってくるとはどういうことだ!?」


「折戸、今はどうでもいい、緊急と言ったな何があった、申せ。」


「は、はい。唐沢山での戦でお味方敗走との知らせが!」


「なんだと、どういうことだ!?」


「仔細は分かりかねますが、上杉勢は攻城を諦め引いた模様です。」


 バタフライエフェクト、つまりは何かがトリガーとなって意図しない出来事が起きる。

風吹けば桶屋が儲かるみたいな話だが、つまりはそれが起こったという事だ。

この時期の上杉勢は勢いもあり、今年の唐沢山での戦いにおいて勝つはずだった。それが、どうして?


【史実において勝つはずの戦に負けた場合、あなたとあなたの起こした影響によるものが発生したと考えられます。

1、参加していないはずの新田岩松家が参戦している。

2、あなたの行動によって物流の流れが変化して十分な物資が集められなかった。

3、あなたの行動によって流民の流れも変化しており十分な兵力を集められなかった。

以上が原因として考えられます。本来戦力となるはずだった部分が足らずその部分を補う新田岩松家が勝ち戦に乗るだけという日和見主義で戦意が低い事も要因として考えられます。】


 ちょうちょパタパタで草。


「く、お貞戻るぞ。」


「はい、馬を用意してきます。」


「おい、お前ら!御大将がお戻りになるぞ!」


「おい莫迦者!そんなことしてる暇ないんだって!」


「なぁに、これって別に御大将にとっちゃ好機じゃないですかい。ここで一気に主権を取って戦場で我らを使ってドーンと活躍!そうなりゃ跡継ぎ問題なんて屁でもなくなりますぜ。」


「そういう問題じゃなくて後始末が面倒なことが起きたってことだ、そういうのは後で考える!」


「へへへ。そういうことですかい。お可哀そうな御大将だ。」


「お前やっぱ城の周り10週してこい。」


「はい!御大将!はい!わーれらの御大将はすーばらしい御仁~♪」


 なんか変な歌うたいながら走り出した折戸を尻目に防人衆の詰所を出ようとした所に桐生兄弟が目に留まる。


「才之助くん、弁之助!丁度いいところに居た!城へ戻るぞ!大変なんだ!」


「いや~折戸さんは変な人だな。あ、猫天丸、丁度良かった。話があるんだ。」


「猫天丸さん、兄が防人衆の所で訓練を学んでいたのでお邪魔していました。どうしたんですか?そんな血相変えて。」


「仔細は後だ、すぐ出立の用意をしてくれ。」


「丁度いい、俺らの話もそこでして良いか?」


「ああ、構わない。急いでくれ。」


「まぁまぁ、話は逃げませんから。」


「猫天丸様、準備が整いました。こちらへ。」


 急いで猫車に乗り、才之助くんと弁之助も続かせた。


「おいおい、こんな急いでどうした?何かあったのか?」


「先程俺の手の者が我ら上杉勢敗走の情報を手にした。」


「え、父上は無事なんですか?」


「分からん、ただ、攻城戦だ。無理はしないだろうから平気だとは思いたいが、万が一の事がある。」


「ふーん、そうか。父上達は負けたのか。」


 心配そうな才之助を余所にどうでも良さげな弁之助。


「なんだ弁之助、お前の事だから俺が出陣していれば勝てたのにと悔しがるのかと思ったが。」


「それはそうなんだけどさ、でも猫天丸にとっては良いことなんじゃないか?ほら、手柄が示せるかもしれないし。」


「お前も折戸と同じことを言うのか、全く、心配じゃないのか。」


「心配さ、それでも戦場に立つ男児たるものそういう事すら念頭に置いて考えねばならんものなんだろ?」


「まぁ、そうではあるんだが、誰に似たのやら。」


「でも兄さん、ちょっとカッコいいかも。」


「それで、どうするつもりなんだ?」


「どうもこうも、岩松の当主が死んでたら跡目争いになる、そのために先手を打たねばならない。」


「根回しと既成事実?」


「そう、足利あたりに次代だと認めてもらえば嫌でも当主は俺になる。」


「そのために足利とも親交のあるぼくたち桐生の名も使いたいという事かな。」


「使えるものは何でも使えって事だよ。無論、桐生当主である君たちの父君が亡くなられていたならば俺の事を存分に使ってくれても構わないぞ。」


「あ、そうだ、その事についてなんだけどさ、俺と才之助で決めたんだけど跡取りは才之助な。」


「は?長男が家督を継ぐものだろ?なんでそうなったんだ?」


「別に、俺は家とかそういうのよりお前が作った藪塚の土地が気に入っただけだ。」


「兄さん、ちゃんと言わないと猫天丸さんも分かんないよ。ごめんね猫天丸さん。」


「えーとつまり?」


「俺はお前に付いて行くって決めただけだ。桐生の町とかどうでもいいし、狭くて息苦しい。じじい共の世話するのもごめんだ。それにお前に付いて行けば面白い事が見れるだろ?そのためなら家督なんて安いものだ。」


「はぁ、どうなっても知らんぞ。」


「もう、何度言ってもこの態度ですから、ぼくももう諦めました。」


御家の危機だっていうのになんだか気を抜かれたと言うかなんというか、こいつらのマイペースに付き合うと心が持たんかもしれん。

さて、この後は妙印尼とその他大勢に囲まれて評定することになるかな、考えただけで胃がキリキリする。

桐生兄弟のというか弁之助の思いつきによる突飛な行動の思考の逃げ先として今後の展開を考えてもめんどくせえや。もうどうにでもな~れ。



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