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10/13

永禄6年/内側


「そういや坊ちゃん、この前お求め頂いてた植物の種子ですが、こんなものを手に入れましてな。」


「なに!?何か手に入ったのか!?」


「へぇ、なんでも西洋の瓜だそうで、西瓜すいかだとかいうものなんですが。」


 なーんだ、西瓜は平安時代から日本に入ってきてる。

しかし、費用対効果で別に食糧事情に寄与するようなものでもない、甘いから娯楽品にはなるだろうが。


「ああ、西瓜か。まぁいいそれも頂こう。」


「お求めのものではなかったそうですな、見つけたら持ってきますので。」


「ああ、よろしく頼む。金子きんすはいつもの所で受け取ってくれ。」


「はい、ありがとうございます。またよろしくお頼み申します。」


 やっと藪塚の完全行政権を手に入れた俺は焦っていた。

何でかって言うともう簡単にできる現代技術の流用が終わったからだ。

これ以上は科学技術の発展が無いと出来ない。

例を出すとプラスチックやカーボンなどのポリ系の化学物質などだ。

やり方はAIに聞けば分かる、けど、再現する場所がない。

電気技術もやろうと思えば出来る、小規模なら昔の自転車のライトみたいなコイルで発電させればいいだけだ。

しかし、それを生かすための技術がない、電灯だってガラスの技術がないし、フィラメントもない。

ないないない、なんにもない!ついでにやりたい事もなくなった。


「あの~若君、難しい顔されてるところ申し訳ねえんですが、炉の方を見てやってくだせえ。」


「ん、ああ、たたらばのオヤジ、炉の基礎が終わったのか?」


「へぇ、大工が言うにはそうみたいです。」


 このオヤジのたたらばは俺の息がかかってるので無理を言ってこっちの藪塚へ来てもらった。

技術流失なんてしたらとんでもねえからな。


「ああ、行こうか。」


「こちらでさぁ若君。」


 たたらばのオヤジに連れられて炉の造りについて色々と注文を付けて指示を出していく。

違うんだ、もう既に再現している技術ではダメなんだ。電気炉、これはありか?


【電気炉として再現が簡単なものとして、電気抵抗体を利用した直接抵抗加熱炉があります。しかしこれらにはニクロム、カンタル、タングステン、などの素材が必要なため再現不可能だと思われます。】


 結局手に入らない素材だらけで嫌になる。

モリブデンやニッケル程度であればこの戦国時代の日本でも入手可能だろう。

しかし片田舎の北関東では、まぁ無理だな。

炉の組み立ての予定が付いたのか、たたらばのオヤジがニコニコと近づいてきた。


「いやぁ、若君の考えたこの炉ですが、すごいですなぁ。ちょっと前まではあんな綺麗な鋼作れなかったでしょうに。」


「───、つかない俺への当てつけか?」


「へ?いや、単純に凄いと思っただけでさぁ。どうしたんです?若君。」


「いやすまん、ちょっとたたらばの熱に中てられたみたいだ。帰るぞ、またよろしく頼む。」


「若君?すいやせん、なんかお悩みで?若君?若君~?」


 そう言って俺を心配してくれているたたらばのオヤジを置いて帰路に就く。

どうかしてる、何が「次の手段が思いつかない俺への当てつけ」だ。

たたらばのオヤジは当たり前に俺を褒めてくれただけだろうが。

どうにもあの国寿丸との邂逅から精神状態が不安定だ。


 あれから政治状況はガラッと変わった。

まず岩松派の支持を失った。

血統のみを誇りに生きている岩松は保守派と言えるだろう。

そんな奴らに今までと違うやり方を押し付けて、不興を買った。

それからは簡単だ、元々反りの合わなかったクソ親父が神輿となり俺の政治形態を非難し始めた。

既得権益やら横瀬派の工作やら偉い盛り上がりで、たたらばのオヤジなんかは俺に関わったから消されたとすら信じている人間が新田金山にはいるらしい。

結局嫌っている俺が居なくなったら困るのはお前らなのにな。

そして横瀬派が動き始めている。

今まで対岩松の神輿は俺だったんだが、はしごを外され今じゃ国寿丸が持ち上げられているらしい。

国寿丸の名声は鰻登りで俺のような穢れた鼠を退治する御猫様だそうだ。俺の方が猫天丸なのにな。

そんな横瀬派は一枚岩ではないが理解の出来ない方でなく政治的判断で国寿丸を取った。

結局、実利を好む横瀬派すらも俺を見捨てた。

国寿丸から由良の名前が出たことも不吉だ。由良とは横瀬が岩松から実権を奪った後に名乗った名だ。

つまりは、もう既に横瀬の御家乗っ取り計画は始まっていると考えた方が良い。


 考え事をしていたからだろうか、何も考えていなかったからか。


『ドカンッ!!!!』


 激しい爆発音と共にある家屋から黒煙が巻きあがる。


「───。敵襲か!?」


 俺が構えたのとは対に住民たちはまたかと笑っていた。


「あはは、またやっちょる。大丈夫ですよ猫天丸様。おーい生きちょるか?」


 住民の一人が俺の心配を余所に黒煙を上げた家屋に入って行く。


「おい!危険だ!こんな爆発、火薬だぞ!まだ爆発するかもしれん!」


 その家屋の一角にあったゴミが盛り上がり、声がする。


「ゲフッ!い゛き゛と゛り゛ま゛す゛。ゲフッげふっ!」


 真っ黒に染まった若い男が出て来て、ぶっ倒れた。

 大慌てで防人衆の治療室へ連れて行った。


「しかし、お主は何をしておったのだ。」


「いやー助かりました!食べるのを忘れていたのでまさか倒れてしまうとは!」


 ガツガツ飯を食らう目の前の男は、二十歳前後であろうか、やせ細っている。

倒れた原因が栄養失調の末爆発で粉塵に喉をやられ咳をした結果、バイタルサインの低下で倒れただけだった。

この詰所の治療室で結果を聞いた瞬間大したことがなさすぎて腰が抜けた。


「俺が言ってるのはそういう事でない。何をしておったのか聞いておるのだ。」


 爆発物を持っていたのだ、混乱や暗殺を狙っている可能性もある。


「何って、探求をしとりました。」


「探求?なんのだ?」


「この藪塚の地ではここら辺では珍しくいろんな物が手に入ります。それなので、激しく光り物凄い音と共に全身を打つ、あの摩訶不思議な事象を起こせないかと思いまして。」


 なんだって爆発を求めているんだこの男は。


「で?出来たのか?」


「小規模ならば出来るのですが、大規模となると分からんすのよね。」


「それがやりたいのか?」


「ええ、もちろんです!知らない事を知りたい。私はそれしか求めとりませんからね!」


 そう言って笑っているそいつに対して最初に思ったのは変人、次には使えると思った。


「俺はそれについて知ってるが、お前名は?」


「私は灰山恵六郎はいやまけいろくろうと申しますが。」


「では灰山、お前それを教えてやる代わりに俺の手伝いをしろと言ったらどうする?」


「知っとるんですか?!」


 目を見開き、立ち上がった男を制し答える。


「ああ、だが答えはどうだ?」


「手伝いますとも!!手伝いますとも!!!」


「ならば一から教えていくことになるが、先は長いぞ?」


「よろしくお願いお頼み申す!!!」


 本当に教えて欲しいのか、男、灰山は土下座し始めた。


「よろしい、おい!誰ぞ!新入りだ!」


 防人衆を呼んだら星野と折戸が来た。


「総隊長殿、コイツですか?」


「ああ、『色々』と教えてやれ。」


「了解です。」


 そう言うと星野が灰山を連れて行く。がんばれよ~。

しかし灰山とかいうこの男は、独学で爆発物を作るほどの変人だ。

そこにたどり着くまでの技術力と執念、それを買う事にした。

ものになるかどうかは置いておいて、この防人衆で学んでもらって伸びしろが有りそうなら、出来るかもしれん、防人衆秘密技術研究局。

俺がいつからか作りたいと思っていたそれは、現代技術を研究し再現することを目標とする秘匿性の高い組織、それを構想していた。

技術研究局、これ自体は今もある、がそれは戦国時代での技術を研究する事を目的としている。

現代技術の再現を行う、これだけなら大したことに聞こえないかもしれない。

だが、現代技術の生産物を思い出してほしい。

合金やゴムや樹脂などありとあらゆる便利なものを使って作られている、その物はこの戦国時代には再現の出来ないものだ。

しかし、俺の脳内には答えがあるんだ。現代技術の結晶AIが。

余計な実権なんていらない、ただ、あってる事実を試せば成功するんだ。

何足も飛び越えて答えだけを導き出せるそれならば、前に諦めたニトログリセリンですらも無理ではないのかもしれない。

そうなってしまえば材料さえあれば現代式の重火器だって再現できるかもしれない。

灰山の知りたいという欲求は恐らくホンモノだろう、それは技術開発を大きくけん引する引力となるだろう。

少しずつ科学技術を教え込み、それを試していく。

ただそれだけなのに、時代にそぐわないオーパーツの完成だ。

そうなると秘匿性が問題か。


「総隊長殿!お忙しいですか?」


 思考していたら折戸が声をかけて来た。丁度いいとこだったのに。

残念だが、この事は後々考えればいい話だ。


「どうした?折戸。」


「米須がご相談したいと。」


「なんだと、米須は何処だ?」


「作戦室に居ります、お連れします。」


 折戸に連れられて作戦室へ向かう、慌ただしく動き回る防人衆たちを見て考えを巡らす。

この防人衆も大きくなったもんだ。最初はホント十人程だったのに。

現在では百を超える勢いらしい。そんな防人衆をまとめる隊長格は何人かいる。

目の前の折戸一嘉おりどかずよし、コイツが一番古株で俺との付き合いが長い信頼できる奴で防人衆全ての隊長みたいなもんだ。

先程樋山を連れて行った星野雄七郎ほしのゆうしちろうは組織のナンバーツーだ、頭が切れるし情に厚い。

他にも現場主義の三日月八助みかづきはちすけや入衆してすぐに頭角を現した有戸昌弘ありどあきひろなど何人かいるが。


「こちらです、おい米須、総隊長がいらっしゃったぞ!」


 そしてこの小太りした男が先程の星野とは違い名目こそないものの、事務担当で折戸へ忌憚なく意見を言い合える実質ナンバーツ―、米須鷲治郎こめすしゅうじろうだ。


「ああ、すいません。本来ならばお伺いしなければいけないところを、お忙しい所ありがとうございます。」


「何かあったか?」


「それが、源之丞のおっさんが技術研究局の人員が足らないのでもっとよこせって話でして。」


「流山がか?それなら先程候補を一人出したところだ。」


「あれ?そうなんですか?よかったぁ~。今まで人員をまわせなかったから、ずっとせっつかれてまして。」


「丁度良かったな、たまたま市井で見かけたんだ。使えるやもしれん。」


「ありがとうございます。流石は総隊長殿ですね。」


「ああ、そうだな。」


 これもただ褒めたいだけの話なんだろうが今の俺にはチクチクと棘が刺さる感覚だ。


「後ですね、私のようなものが烏滸がましいのかもしれませんが。」


「なんだ?言ってみろ。」


「最近の総隊長殿は難しい顔をしておられる回数が増えたと、ももが言っておりまして。疲れていらっしゃるのではないかと心配しております。」


「俺がか?」


「ええ、たまにはゆっくり休んでみてはどうです?丁度温泉も新しくなったそうですし。」


「考えておく、ありがとうな、米須。」


「いえ、我々には総隊長殿の苦労を知る術はありませんが、どうか無事に暮らしていけたらと思っております。」


「そうだな、そうなって欲しいものだ。」


 米須との会話で感じた焦燥感は間違いなく技術の停滞が原因だ。

早く手を打たないと、その考えばかりが先行し、結局なにも手が打てないのが現状だ。

歯痒い、乳児の頃と違って動けるからこそ、そう思う。

自分で動ける、意志の疎通ができる、他人を動かせる。

なのに遅々として埋まらないこの飢えはもう止まらないのだろう。

誰か助けてくれ、そんな無責任な思考になってしまう。


 防人衆の詰所から次の予定である藪塚城の予定地へ向かっている最中に大手を振って走ってくるももがいた。


「猫天丸様~!お~い!」


 そう屈託のない笑顔で俺に近寄らないでくれ、そう思ってしまった。


「なんだ?また俺は難しそうな顔をしていたか?」


「いつもじゃんそれ。それもあるけど、藪塚城見に行くの?」


「ああ、そろそろ根久利岩が固まり始める時期なんでな。」


「そうなんだ、ねぇねぇ!私も付いて行っていい?」


 彼女のいつものパターンだ、何故だかももは俺が悩んでいるとついてくる。


「面白いものではないぞ、根久利岩が固まるまで誰もおらんような場所だ。」


「猫天丸様が居るじゃん。」


 変なの、と言わんばかりに、当たり前のようにそう言ったももを断る術を持っていなかった。



「ふむ、あと少しという所か。」


 根久利岩を保護している漆喰を触ってみて感触を確かめる。

藪塚城の場所は結局茶臼山の入口にした。ここならば石切り場と温泉地が近いし、なにより新田金山からの防衛地点となる。決め手はそこだった、俺の立場が危ういため、いつ討伐に来てもおかしくない。


「そういえばさ、隣の家のまこちゃんが結婚したんだよね。」


「へー。」


 キチンと線引きがされている区画を見て城郭を想像してみる。俺の想像と違わぬ堅牢な城になりそうだ。

鉄筋コンクリートで補強された大手門を見て腐食の心配をする。コンクリートは腐食するし、根久利岩では対策のしようがない。


「それでね、貞ねえちゃんはいつ結婚するんだろうって六郎おじさんが言っててさ、猫天丸様は貞ねえちゃんはいつ結婚するか知ってる?」


「あーいつだろうな、というかあやつ、結婚する気あんのか?」


 今は俺が新田金山へ行けないため溜まりに溜まった藪塚の書類を提出しに行って離れている侍女へ不安が募る。


「だよね!貞ねえちゃんは男の人から人気なのに誰~も相手しないんだから!」


 へー、お貞ちゃんモテるのか、まぁ確かに何でもできるし顔もスタイルも悪くない。

それに武家の侍女として仕えてはいるが、その相手が俺みたいなガキンチョだしお手付きがなさそうってのもポイントか。

それに二十歳くらいだし丁度いい年齢なのかもな。


「まぁ、その辺はお貞が決める事だ、俺にとってはどーでもいいことだ。」


 まぁ今お貞ちゃんに離れられたら困るが。


「そうなんだ?私は猫天丸様は貞ねえちゃん娶るのかと思ってた。」


「なんで俺がそんなことせにゃならんのだ。」


 まぁでもその辺考えてやらんといかんか。

この時代では侍女はその武家の持ち物みたいなものだ。

だから結婚なんかも面倒を見ることもある。


「えー?だって猫天丸様べったりじゃん!貞ねえちゃんもまんざらでもなさそうだし。」


「俺がか?ないない、俺はお貞が好いた奴と結婚すればいいと思うぞ。」


 自由結婚がなかったわけでもない、俺は先進的な考えを持ってるしな。


「あーあ、貞ねえちゃん可哀そう、あんなに思ってるのに。」


「お前みたいなものが理解できるものじゃないぞ、お貞の覚悟は。」


 お貞ちゃんの場合恋愛感情というよりか信仰とかの方が近い。たまに怖い。


「ふーん?じゃあわたしが貰ってあげようか?」


「お貞をか?そっちの趣味はないんじゃないかな。」


 百合ですか!キマシタワー


「違うよ!猫天丸様をだよ。」


「ないない、俺はこんなんでも武家だぞ。どっかのお姫様と政略結婚するだけだ。」


「えー?それだとちょっと悲しくない?」


「結婚ってのはそういうものなの。」


 ももを娶るねぇ、別に側室として立場のない人間を娶ることはあった。

が、俺はそういうのしないかな。興味はもちろんあるが、肉体的にそういうのまだないんで。ドウテイチャウワイ!


「じゃあさ、わたしって誰と結婚すればいいと思う?」


「好きになったやつとでいいんじゃない?」


「例えばだよ、たーとーえーば!」


「そうだな、あれだ。桐生兄弟なんかはどうなんだ?」


 弁之助も才之助も興味を示していたはずだ。それに気づかない程鈍感な子じゃない。


「うーんとね、まぁありと言えばありなんだろうけどね。」


「なんだその言い分は、まさか不満か?」


「だってさ、弁之助様はぶっきらぼうだったし、才之助様は優しいけどちょっとなよなよしてるっていうか。」


 合掌。


「親友よ、今ここにお前らの恋が終わろうとしています。」


「ははは!なにそれ!」


「俺が弔ってやらんと可哀そうで可哀そうで。」


 まぁ初恋なんてそんなもんで甘酸っぱい記憶と共に奥底へしまっておくものだ。


「ん-でさ、猫天丸様、最近変わったよね。」


「どうした急に。」


 恋バナに花を咲かせていたと思ったら急に真顔になった。


「どうなんだろ、他の人にはさ、壁を感じるって感じでさ、私や貞ねえちゃんに対しては素を見せてくれるというか。」


「そうか?」


 全然気づかなかった。マジすか。


「でもね、それが良いことなのか悪い事なのか。わかんない。だってさ、取り繕ってくれる事がなくなったってことでしょ?」


「…。」


「前だったら難しい顔しながら格好つけてたのに、でもそれは猫天丸様の変化なのか、それとも私たちは猫天丸様に認められたのか、どっちなんだろって。」


「心配せずともよい、私はそう簡単に崩れるものではないよ。」


「そうそれ、どっちなの?余裕が無いの?それとも私たちを猫天丸様の懐に入れてくれただけ?」


「どう、なんだろうな?」


 図星、だな。多分両方正解。

俺は気づかない内にお貞とももを守るべき存在として見ている。

それが右馬の局を守れなった贖罪なのかは分からない。

そして国寿丸と接触して不安に駆られ精神的にダメージを受けている。

それが気づかない内に言動に出ていた、か。


「わたしはね、かわいい女の子だから流民生活でもあんまり苦労しないで生きてきたの。」


 理由は分かる。売れば高いからだ。


「だけどね、ここに来てから本当の意味で生きてるんだって感じるの。」


「それは、なんでだ?」


「多分ね、猫天丸様が居てくれたからじゃないかな。」


「なんで俺が?」


「だってね、暮らしてて不自由を感じたことないもん。それって猫天丸様がいつものように、そう、いつも私たちを考えて考えて考え抜いて導いて下さってるから。」


「俺がずるい事をしているだけだとしてもか?」


「ずるくたっていいよ!だってあんな一生懸命考えて下さった結果、私たちは楽しく生きることが出来るんだって、猫天丸様が教えてくれたんだよ!」


「───そうか、俺のやって来たことは、無駄ではなかったんだな。」


「わたしだけじゃない、街の人みんなそう言うよ!だからね、金山の人が猫天丸を悪く言ってもね、みんな感謝してるから!」


「ありがとう、もも、俺は大事なことを忘れていたのかもしれない。」


 何が岩松だ、何が横瀬だ由良だ。

俺はただの元一般人でしがないサラリーマンだったかもしれない。

だが、今こうやって必死に地べたに這い蹲ってるのは猫天丸という人間じゃないか。


「だからね、辛い時は泣いても良いんだよ?」


「はは、俺は泣かない『鼠憑き』だぞ?」


「それ禁止!そうやって自分で虐めるからボロボロになっちゃうんじゃないの?」


「そうかもしれんな。」


 この茶臼山から見下ろす藪塚を見て、やり直す決意をした。



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