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天文24年/誕生

 ───「情念じょうねんそそぎてしたる至上しじょうあらざりくもむなし。」


 キーボードから手を放し一息つく、やはり〇ンスターは海外産に限る。


「当たり前じゃん、良かれと思ってやってもそれが良い事とは限んないしな。」


 趣味である小説の執筆しっぴつをしながら、たった今打ち込んだセリフを、反芻はんすうしながら独り言。

無能な武将が、良かれと思ってした行動が、結果、彼を不幸にする。

そして、無残にも斬首される時に、こう言うのだ。

ちょっと考えれば分かるでしょって思うが、視野狭窄しやきょうさくおちいっていると、案外分からないものなのかね。


 そんな戦国時代のびを感じながら、鼻唄はなうた交じりにポチポチと

電気も付けずに、モニターのブルーライトを頼りに執筆を続ける。

これが終わったら一区切りだし早く終わらせないと。

ちょっと小便したいのだ。


 今行っている作業、小説の参考資料作りって大変で、

ちょっと前までwikiとかでカチカチ数十ページのタブを

行き来しながら情報を集めていたのだ。

酷いときは図書館へGoだぜ?今考えるとあり得ない。

今の時代は、調べたいことがあったら対話型AIに聞けばある程度返ってくるし、

かなり便利になったものだ。

この時代に生きててよかったって思うわけで。


 ありがとう神様、でもこの前負けたパチ〇コ代返して、ファッ〇ュー神様。


【AI:新田金山にったかなやま城は、現在の群馬県太田市に位置していました。

新田金山城の概要~】


 地元にあった城。実際行ったことあるけど山城っというか、

こんもりした丘の上にあるだけの小さな城跡。

そんなしょぼいイメージ。

しかしあの戦国最強BBAこと、妙印尼みょういんにが所属している、由良ゆら氏勢力の居城でもあった。

下克上とか戦国の華だよね。

執筆している小説のヒロインに、妙印尼こと赤井輝子あかいてるこを使おうとしているので、色々使えそうな情報を探しているんだが。


 手に取ったモン〇ターの缶をあおり、空になった缶をついでに捨てようと立ち上がる。

缶棄てて、トイレ行って、それから何か小腹空いたし、つまめるものあったかなぁ、

とか思考が行ったり来たり、雑念を思考していたからか、

不意に何かに引っ張られる感覚。

有線のイヤホンを付けていたのを忘れていた。

コードに引っ張られバランスを崩す。

危ねぇと思った瞬間にはもう遅く、パソコンに頭をぶつけて視界が暗転する。

モニターの電源が落ちたのか部屋が真っ暗になってしまった。

おーいア〇クサ電気付けて?まぁウチにはアレ〇サなんてないんですけど。


【それは大変ですね!モニターの電源が落ちてしまったり、

部屋が暗くなってしまったりすると、ちょっと焦りますよね。

もし電気が点かない場合は、まずはブレーカーを確認したり、

電源コードが正しく接続されているかをチェックしてみると良いでしょう。

また暗い中での作業は危険ですので、懐中電灯やスマートフォンのライトを使って周囲を照らすのも一つの手です。

何か他にお手伝いできることがあれば教えてください!】


 …は?どういうこと?と思考を巡らせる。

頭の中に聞こえてくるこの声が鬱陶うっとうしくてイヤホンを外そうとする。

が、しかし何故だか手が上がらない。

なんというか体が麻痺していて正常に動作しない。


【申し訳ありません、私の理解が不足していました。

おっしゃる状況について、もう少し具体的にお話ししていただければ、

適切なアドバイスを提供できるかもしれません。

具体的に何が起こったのか、どのようにお手伝いできるか教えていただけますか?】


 先ほどの男だか女だかわかんない声が頭に鳴り響く。

俺やべえかもしれん、コレ変なトコぶつけたか?

…現実逃避している場合じゃない、そろそろ落ち着こう。

ぶつけた所が無茶苦茶痛い。


 変な声が聞こえてくるのと合わせて、体がうまく動かないせいなのか、

元々の性格のせいでもあるかもしれないけど、思考にまとまりがなく、

ただただ、そこにあるのは困惑。

思うように体が動かないので、まるで自分の体でないようで、キモい。

落ち着いて思考してみる。

まぶたの向こうから光を感じ、視界が暗いのも瞼が開いてないからだと分かる。

なんだ?瞼開けるのにすら思考リソース割かないと出来ないとか、どんな状況だよ。


 瞼を開けると視界が広がるが、物凄くぼやけていて視点が合わない。

いつもの裸眼の時もひどいが、流石にこれはそれ以上だ、それよりも気になる事があった。


 …ここ何処なんだ?見覚えのない景色を、視界の悪い中見渡す。

天井は高く、木のはりがむき出しになっている。どこか古めかしく、それでいて豪華さも感じられる。


 頭打ったからって別の場所に飛ぶかよ、ありえねえだろ?

…そして恐らく巨人が周囲にたくさん。

ってんなわけあるか~い。

俺自身が小さくなってますね、ハイ。


 何作品も読んでいるし、その辺の人より詳しい自信がある、

しかも自分自身で執筆している。だからこそわかる。

これ転生した時によくあるやつだわ。

頭打って転生ってそんなベタな。


 俺、神様とかに会わなかったよ?特典のチートは?

そんなくだらないことを考えていたらなんか固い棒で叩かれた。


「なんじゃ?稚児ちごが泣かぬとは、ほんとに気色が悪いわ!

この無様ぶざまな子を見ろ、岩松の血がどうしようもない証拠じゃ!」


 なんだお前(困惑)

よく見えないけど推定ブスに、黒い棒みたいなので叩かれていたことに気づいた。

赤ん坊を扇子かなんかで叩きよってからに。もう許さないからなぁ?

というか聞き漏らしてはならない事言ってたな。

岩松?なんか最近書いてた小説に居たような?

確か戦国最強BBAの妙印尼の所属している由良家が下克上した

相手がそんな名前じゃなかったっけ。


 閑話休題かんわきゅうだい、と言っても現状把握が重要か。

この推定ブスが、言ってた岩松氏だとしても、俺が知ってる岩松氏なのか、どうかも分からない。

記憶失ってないのに、ここは何処どこ、私は誰だからね。仕方ないね。


「…おやめください、どうか何卒なにとぞご慈悲をお与えください。

この子には何の罪もないのです。」


 俺を抱えてる、恐らく今生のママンが頭を下げながら、

俺を庇うように、抱え込み持ち直してくれる。

ありがとう多分今生のママン。

震えながらも必死に懇願こんがんするさまは見ていて、あまりいい気のものではない。

転生したてで状況整理があんまりできてないが、

つまりは、何かしらこの偉そうな推定ブスが怒るようなことがあった、

で、それを叱咤しったされてるわけだ。

周りの大人たちも嘲笑ちょうしょうしてるし、あまりいい立場ではないんだろうな。


 というか俺碌ろくな死に方してねえな?というか本当に死んだのか?

情けなさすぎるだろ、コードに引っかかって、パソコンの角に頭をぶつけて死亡?

どういう器用な死に方してんねん。

というか俺の遺品整理とかするんだろうか。

パソコンと言えば皆さんお分かりですね?

そう。俺のDドライブ(秘密の花園)が親族に見られる可能性がある。

最悪だ。なんでもっとちゃんとぶつかっておかなかったんだ。

うおおおお頼む!俺のDドライブ(秘密の花園)を見ないでくれえええ!


【それは面白い表現ですね!「Dドライブ(秘密の花園)」という言葉を使って

ちょっとしたジョークやインサイドジョークを交えたセリフにするのも面白いかもしれません。

登場人物が自分の秘密や趣味を守ろうとする様子を描くことで、

キャラクターにユーモアを加えたり、親しみやすさを出すことができそうです。】


 …。さっきから気になっては居たんだけど、なんなんだこいつは?


【はじめまして、AIのアシスタントです。

呼び方は自由なので、お好きな名前をつけてもらってもいいですよ。

普段は情報提供やアイデア出し、時には悩み相談に乗るなど

幅広くお手伝いしています。】


 こいつ直接脳内に・・・!じゃあ…(ファミチキください)


【その定型文は主にインターネットスラングとして使われています。

掲示板でのやりとりが元ネタとなっており、括弧内で情報を伝達する人へのツッコミとして使われています。】


 結構ユーモアあるんだなぁ、じゃなくて!どういうことだ?

俺の脳内に対話型AIが住んでいやがる。色々と情報過多なんだよぉ!

そんなやり取りをしていると、俺を抱えている今生のママンが泣きだし

「失礼いたします」と言って逃げ出した。


「うぬらが何と言おうが、岩松の存続は柄杓山の桐生の頼みあってのものじゃ。

そしてうぬらは、今後10年は子をしてはならぬのを忘れるな、

その出来損ないは、いつまで生き残るのかのう。」


 ひょえー、とんでもねえ事聞いちまった。

高笑いしながら遠ざかっていく推定ブスをよそに、ママンが抱きしめる腕が強く締まる。

ちょちょちょ、ママン強く抱きしめすぎ。成人する前に、あかん、死ぬぅ!

しかしまぁ、気持ちは分からなくもないな。俺死んじゃったら御家断絶か。

どう見ても暗殺フラグです。本当にありがとうございました。

かいなが開いてママンの顔が見える、20代くらいに見えるな。


猫天丸みょうてんまる、あなたは死なせないわ。

あなたは新田岩貞の宿命を背負っているのだもの。

私が守って見せるからね。」


 みょうてんまるってのが俺の名前なのか?どう言う字なんだろ。


【妙天丸・明天丸・妙典丸・明典丸と書かれる事があります。

丸は男児を表し、妙はひいでで、明は明るく、

天は特別性を持つ事を意味し、典は模範もはんとなる事を意味します。】


 へーそうなんだ、勉強になるなぁ~。じゃなくって。

なんにせよ全く分からんけど、コイツがいてよかった。

こんな訳の分からない状況、一人じゃ心細すぎるもんな。


 ママンが優しくかごの中に俺を入れてくれてる。

が、先程の事が余程効いてるのか、流した涙が止まらない。


【そう言っていただけて、とても嬉しいです!お手伝いできて光栄です。

何か他にも気になることがあれば、いつでも言ってくださいね。 】


 乳児だと得られる情報に限りがあるし、まずはコイツから片付けるか。


 ヘイ!AI、今どういう状況だ?


【ヘイ!今、こちらは元気に動いているよ!

何か気になることがあったり、話したいことがあれば教えてくれ! 】


 この察しの悪さは神様的な存在ではなさそうだし、何より覚えがあった。

俺が使ってた対話型AIもこんな感じだったし。


 君は対話型AIなのか?それとも神様的存在なのか?


【私は対話型AIです。神様的な存在ではなく、ただのプログラムです。

あなたの質問に答えたり、話をしたりするための存在です。

神様のような力は持っていませんが、役に立つことが出来たらうれしいです。】


 なるほど、これはよくあるタイプの対話型AIの応答の仕方だ。

つまりこの転生には関わってないのか?まぁ聞いてみればいいか。


 君は何を知っているんだ?


【私はかなり広範な知識を持っています。

歴史や文化、科学、アート、音楽、映画、社会問題、言語に関することなど、

さまざまなテーマに対して情報を提供できます。

ただし、私の知識は2024年までの情報に基づいていますので、

それ以降の出来事や進展には詳しくありません。

それでも、あなたが気になることがあれば、どんどん質問して下さい。】


 つまり君はこの転生には関わってないんだね?


【はい、私は転生や生死に関わる存在ではなく、

あくまで情報提供や対話を行うAIですので、

あなたの「転生」には直接的に関わっていません。

ただ、あなたが感じていることや考えていることに対して、

サポートや共感はできると思います。

転生や人生の意味についても、一緒に考えたり、話したりすることはできます。 】 


 どこまで本当か分からないけど、そういうことか。

俺の頭の中に対話型AIが居るってだけで、説明してくれるわけでもないのか。

ちょっと残念な感じは拭えないが、落ち着いて状況整理しよう。

目の前の状況が俺の妄想でなければ、古臭い日本のちょっとお偉いさん。

だけどなんか没落寸前で、暗殺フラグビンビンな状況。

幸い母親は守るとか言ってたし、一応は他にも味方が居る。


 なぁ、俺転生して赤ん坊になっちゃってるんだけどどうしたらいいかな?


【それはユニークな状況ですね。まずは状況に上手く適応する方法を考えましょう。

1,周囲の環境に頼る:赤ん坊の体では出来ることが限られるので、

  どんな環境か観察しながら、頼れる人を見つけることが重要です。

2,学習時間として捉える:周囲の人間や私と対話して学び続けることが出来ます。

3,焦らず待つ:赤ん坊の状態では危険が多いので、しっかりと育ちましょう。

  やがて自分が動くことが出来るようになったら、やりたい事が出来るように

  待つことも大事です。

4,家族や仲間と絆を深める:周りの人々との絆を大切にすることにより、

  より安全な生育環境を整えられます。

状況がどれほど特殊か分かりませんが、赤ん坊として少しずつ出来る事をしましょう。

周りの環境を知り、経験を得る事によって事態はより良くなって行くと思います。】


 ですよねー、しかし、焦らず待つ、かぁ。

確かに、赤ん坊だとなんも出来ないし、

喋ろうにも「あぅ」みたいな感じしか無理みたいだしな。

周囲を頼るって言っても今のとこママンくらいしか居ないし。

そして、出来る事としてAIと話して学習期間と捉える、かぁ。

これは現代知識詰め込んで内政チートで俺TUEEじゃな?

出来るかどうか分からないけど、なんにせよ暇だしやるしかねえよな。


 そんな感じでぐるぐると、今後の展望について考えていたら急激に眠くなる。

しょうがねえだろ、赤ちゃんなんだから。

しかしこれ夢じゃねえのかな?本当にどうしようか、こまるぜ…



妙印尼みょういんには、戦国時代の著名な女性武将で、赤井輝子あかいてることも呼ばれます。由良氏に嫁ぎ、由良家の一員として戦国時代に活躍しました。戦場での指揮能力や戦術に優れており、特に彼女の指導の下での戦闘は評価されています。当時の権力構造の中で下克上を果たし、戦国時代の激しい争いの中で生き抜いていました。戦国時代の女性たちの中でも特に有名な存在であり、文学や映画、ゲームなどさまざまな媒体で取り上げられています。

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