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わたくしが来ましたわー! 後編


 錬金術師の少女がギルドに姿を見せると、昨日より明確な意思を持って冒険者の一画が色めき立ち、マステマのテーブルに座っていた3人もしなくていいのに戦闘準備を始めようとする。しかし声の主が赤いデイドレスに身を包んだ小さなダブルツインドリル令嬢であることを認めると、途端にその動きを止めた。


「はぅわぁあ!かわいいのが増えた!?」

「おい、どうすんだよ?あれ、マステマの嬢ちゃんよりちゃっこいぞ?」

「見た目相応の年齢だとすると10歳くらいでしょうか?しかもまず間違いなく貴族の子女です。さすがに剣を抜いてどうこうする相手では……。えっ?保護者は?とりあえずユーリア嬢をお呼びすべきですよね?」


 貴族のお相手役が定着しているユーリア嬢はというと、今日は少女が現れた時点で貴族街に向かう手はずになっている。もちろん昨日冒険者に尾行させて突きとめておいた保護者の屋敷に「お宅のお嬢さんが冒険者ギルドにいらっしゃっていますが」と、連絡するためだ。今日の朝のミーティングでギルド長が決定した。


 そしてその間の時間稼ぎ、もとい接待役はご指名を頂いたマステマの役目である。

 接待といってもふつうに勝負はしていいそうだ。というか『勝て』と命令された。

 上の方々はいろいろと大変そうだ。こわいこわい。


 少女は食堂の奥から伸びをしながらやって来たマステマの姿を見つけると、両手を腰に当てて満足そうな笑みになった。


「おはようございますわマステマ!絶好の勝負日和ですわ!!」

「おはよう、もう昼だけどな。くぁ~、あふぅ……。できればもうちょっと早く来てほしかった」

「むむむ!これでも朝のお稽古を最速で終わらせて、じいやの目を盗んで抜け出してきましたのに……!!」

「いや抜け出すなよ。じいやかわいそうだろ。それに世の中はけっこう危ないんだぞ。今もギルド内には虎視眈々と幼女の頬っぺたをぷにぷにしようとしている変態女騎士がいる」

「ええ!?そんな危険人物が!?…………えっ、ほぺプニは危険行為なんですの??」

「やつは身体強化の達人だからな、ひと撫でされれば頬が無くなる」

「ほわー!?ですわ!!!???」


 新鮮な反応を見せるキャロリナにマステマは「くっくっく」と笑って、昨日と同様にエルナの受け持つカウンターに案内した。


「えーと、……あれ?名前聞いたっけ?」

「あら?そういえば名乗った覚えがありませんわ!わたくしキャロリナ・マクファーレンと申します。マクファーレン男爵家の三女ですわ!といっても、辺境田舎男爵の三女なんてほとんど平民と変わりません。むしろ平民ですわー。無用な敬語など不要ですわー!」

「そうか。じゃあ、よろしくキャル」

「キャル!?」

「ん?あだ名はダメだったか?」

「い、いいえ!ですわ!全然だめじゃありませんですわ!ですわ!むしろどんとこいですわー!むふふふん(ニマニマ)♪」


 略称で呼んだだけで上機嫌になったキャロリナがちょっと心配になりながらもマステマは続ける。


「冒険者ギルドのクエストを受けるにはまず冒険者として登録する必要がある」

「ほわ!?冒険者登録!?ですわ!??」

「エルナ、キャルの冒険者登録と今日のポーション依頼を」

「はいはーい。んじゃ、代筆は必要ないと思うからこっちの紙に必要事項を記入してね。特技の欄にはスキルを書いてもいいし、お裁縫とかお絵かきとか単に得意なことを書いてもいいよ」

「はいですわ!」


 元気よく返事をし、目を輝かせてさらさらと流麗な文字で登録用紙を埋めていく。その様は冒険者に憧れて村から飛び出て来た若者と瓜二つだった。エルナとマステマは温かい目で見守り、ついでに周りで様子を窺っていた数人の冒険者に視線を送り、手出し無用と牽制しておいた。


「できましたわ!」

「はい。登録名『キャロリナ』、登録ジョブは『錬金術師』でよろしいですか?」

「ですわ!(むふー♪)」


 エルナはその場で親指サイズの小さな金属板にもらった情報を刻みこんだ。金属に文字を刻む魔法は初級の土魔法の派生で簡単にできるが、きれいに印字する技能がギルドの受付に必須のスキルである。


 キャロリナは銀色の冒険者タグを両手で大事そうにもらうといっそう目をキラキラさせて、タグを触ってみたり掲げてみたりして周囲の大人たちを存分に和ませた。


「そんじゃ、今日の下級ポーションクエストだね。ちょっと待ってねー」


 エルナは受付の奥に用意されていた空のポーション瓶を受付の上に乗せた。


「今日のノルマは50本だよー」

「ご、ごごごごごごじゅう!??」


 ドン、と重たい音で置かれた両取っ手付きのプレートの上には、10本組みの試験管立てのような器具に整然と並んでいるポーション瓶が5つ。それと薬草がたっぷり詰まった布の小袋が2つである。

 ノルマ本数を聞いて、さっきまでのウキウキ気分を霧散させたキャロリナ嬢が激しく動揺してマステマに問いかけた。


「あ、あのーぅ、マステマ?わたくし思うに、ちょっと、ほんのちょっとだけ、いえ、ごくごくほんの少~しだけなのですが、……ポーションの本数がちょぴっと多すぎる気がするのですけれど……?」

「ふむ。エルナ、何か事故でもあったか?」

「んにゃ、事故じゃないよー。南の麦畑の先にでっかい森があるでしょ?エルフの森じゃない方。そこに昨日ゴブリンの大規模集落が見つかったんだってさー」

「潰すのか?」

「もっちろん、そのための冒険者ギルドでしょ!それで中堅どころが複数、朝にけっこうポーション買っていったのと、人数の多い『豊穣の確約』の補給がたまたま今日に重なったんだよ。それといつもの使用期限が切れたギルド備蓄分。あと今日も少し売れそうだからそれを数本足して切りよく50本にしといた。多かった?」


 マステマはキャロリナの顔を窺ったが、彼女はプルプル震えるだけで肯定も否定もしなかった。これは多分、プライドが邪魔をして拒否できないパターンだろう。マンガで見た。


「くっくっく、2人なら余裕だな!」

「で、ですわ!天才錬金術師のわたくしにかかれば、ご、50本くらい、余裕ですわー!!」


 虚勢を張った後に「ど、どうしましょー!?」と後悔している新米錬金術師を伴ってマステマは特等席に戻った。キャロリナは同じテーブルの対面の位置に陣取る。


 ちなみに先ほどまで同席していた辺境トップ3バカは隣の隣のテーブルに移動して、一応警戒して待機しているが、すでに弛緩モードだ。バルドルドなんか酒を頼むか迷っている様子で、ヘルミナは新しい女の子を舐めるように視姦中。イケメン戦士もなにがおもしろいのか興味深そうにこちらを見ていた。


 マステマも平民としては上等なワンピースを着ているので、食堂のこの一画だけ令嬢のお茶会の雰囲気が漂うが、テーブルの上にあるのはポーション瓶と薬草だ。


 かくして地味な闘いが始まった。


 マステマは収納魔法倉庫から蒸留セットと井戸水を取り出し、いつものように蒸留を開始する。対してキャロリナは、使い手の少ない収納魔法に驚きながらも、得意げに小さな肩掛けバッグから、かわいらしい花柄の錬金釜と魔法少女の杖のようなマドラーステッキを取り出した。


「あ、お水を……(キョロキョロ)」

「井戸水でいいならこれを使え。今朝汲んだ」

「あら、ありがとうございますわ!」


 キャロリナは井戸水の入ったリンゴ酒瓶を受け取るとそれをそのまま錬金釜に入れ、次いで薬草の葉っぱを「ちょっと鮮度がイマイチですわー」と言いながら茎から取り外してプチプチ入れていく。そしてポーション瓶を釜の手前にセットすると、マドラーステッキを両手に持って鍋の中に突っ込み、澄ました顔で《錬金開始(イグニッション)》と唱えた。


 マステマはキャルの真剣な顔からの中二病発言(イグニッション)に吹き出しそうになるも、頬をピクピク動かしただけで堪え切った。


 すると錬金釜を中心に調合陣と呼ばれる無数の魔法陣が上下左右に展開され、それぞれが輝き役目を果たすと次々と新たな魔法陣が開く。その様子はさながら夜空に咲き誇る無限の花火のようで、マステマを含めはじめて錬金術を見た冒険者たちを感心させた。もっともスキルを使用している本人は周囲を気にするどころではなく、ゆっくりとマドラーを回しながら目まぐるしく展開される魔法陣に次々と魔力(パラメータ)を振っている。錬金術は1,000人に1人のレアスキルであるがそれを使いこなせる人間は更に少ない。彼らが自尊心に溺れる理由である。

 咲き乱れた魔方陣が落ち着くと、マドラーによって錬金釜の中で渦巻いていた液体が手繰り寄せられるように空間に飛び出し、次にはランプの魔人が吸い込まれるようにしゅるしゅるとポーション瓶に収まった。


 キャロリナはポーション瓶が放つわずかな光が消えるまでステッキを放さず、真剣な表情で最後まで魔法陣の制御に集中していた。腕は確かである。

 やがてふぅっと長く息を吐いて、出来上がったポーション瓶を満足そうにじっくり眺めると対面でただただ蒸留を待つマステマへ満面のドヤ笑みを向けた。


「ふふん!どうですかマステマ!?」

「おお!錬金術はすごいな!わたしより早いし、調合陣の制御も見事だった!」

「ふふふん!もしよろしければ、鑑定していただいてもよろしくってよ!」

「うんうん、ちゃんと下級ポーションだ。品質も申し分ない」

「ふふふふん!それでほどでもありますわー!」

「さすが錬金術師!んで、出来上がったポーションは錬金術スキルの【鑑定】で自己チェックして、ちゃんとできていたらまとめてあっちの納品カウンターで納品するんだ。呼び鈴で呼べば鑑定持ちのギルド職員が検品してくれる」

「分かりましたわ!ふすー!休憩したらどんどん作りますわー!」


 錬金術には休憩が必要なようだ。


 休憩中キャロリナはマステマをずっと観察していて、「【回復魔法】でのポーション作成は初めて見ますわ!不思議ですわ!」とか、「3本もまとめて作れますの!?」とか、「浄化魔法の大盤振る舞いですわ!大神官ですわ!?」とか、「良質!?【回復魔法】で良質のポーションは作れないはずでは!?」とか、「ひぃい!!活性魔力量が桁違いですわー!錬金術師ギルドのギルド長なんてカスですわー!!」とか、いちいち新鮮に驚いてくれておもしろかった。


 尚、活性魔力というのは魔法の放出前段階で準備している魔力のことだ。冒険者たちが俗に「練った魔力」や「高めた魔力」などと呼んでいるものの上品な呼び方である。キャロリナが正式に魔法や錬金術を勉強していること、それに魔力の感受性が非常に高いことがうかがえる。ついでに錬金術師ギルドのギルド長のことは全然尊敬していない様子も明らかになった。


 初々しく『はじめてのポーションクエスト』をこなすキャロリナを眺めながらポーションを作っていると、隣の隣のテーブルからぼそぼそと会話が聞こえて来た。


『はぁああ!かわいすぎりゅぅうう!死ぬぅうう!』

『なぁ、あれどう思う?』

『仲良くポーション作っているだけですね。ボク帰っていいですか?』


 帰っていいよ。呼んでないし。

 冒険者ギルドに乗り込んできた錬金術師見習いに身構えていた他の冒険者たちもちらほらと解散していく姿が目に付いた。


 その後もマステマとキャロリナは順調にポーションを仕上げていった。

 しかし3本ずつ作るマステマが4セット目を始めようかというころ、キャロリナの方は10本目を終えたころ。突然キャロリナの華奢な身体がふらっと傾いた。


「ぐ、ぐるぐるですわ~……ふみゅ~……!」

「おっと、危ない」


 常に身体強化を掛けているマステマはキャロリナが椅子から落ちる前にテーブルの反対側に回り優しく抱き留める。


「どうしたマステマ!?手伝うか!?」

「いや、大丈夫。ヘルミナはいい。ただの魔力切れだ。錬金術スキルは視た感じ燃費がすこぶる悪いようだからな……よいしょっと」


 マステマはこんなこともあろうかと収納倉庫に突っ込んでおいた『ヒトをダメにするゆったりソファの出来損ない』を取り出して、キャロリナをそこに沈めた。加えて下級ポーションとは違うビンに入ったポーションを取り出し、キャロリナに渡す。


「魔力ポーションだ。少しずつ飲むといい」

「あぅ……ありがとうですわ……ご迷惑をおかけして……」

「ああ、大丈夫大丈夫。いいから飲みんしゃい」


 病人のような状態のキャロリナはくぴりとポーションを口にした。


「……ッ!?お、美味しいですわ!?……え、この魔力ポーションくっそ美味しいですわー!???」

「くっくっく、言っただろ?ポーションの味にはちょっと自信があるって」

「ほわぁあ♪うんめぇー☆ですわ!」


 案外元気そうだ。

 マステマはキャロリナをソファに任せて、その横に椅子を持ってきてポーション作りに戻った。薬草を入れて、【初級回復魔法(ヒール)】が発動するほんの1ミリ手前の状態を意識して魔法を行使する。その様子をキャロリナはソファの上からじっと見上げていた。


「マステマは、まだまだ余力がありそうですわね……」

「うん?ああ、【初級回復魔法(ヒール)】の方が錬金術より効率いいのもあるが、わたしは生まれがちょっと特殊でな、魔力量だけは多いんだ。魔法力出力限度が低すぎて中級魔法も撃てないけどな。ヒールでいいならなんぼでも使える」


 つまりポーションならいくらでも作れる。

 それが冒険者ギルドに囲われた根源だ。


「うぐぐ……まさにポーション職人……完全にケンカを売る相手を間違えましたわー」

「あれ?喧嘩なんか売られたっけ?」

「売りましたわ!超売りましたわ!!なんなら絶賛激安セール中ですわ!!!」

「ちょっと何言ってるか分かんないです」

「なんでわかりませんの!?」


 なんてバカなやり取りをしていると、ちょっと騒ぎになったのを見たからか、はたまた昼時になったから食堂に来たのか、受付をしていたエルナがマステマたちのところへやって来た。


「んーと、とりあえずマステマの勝ちでいいのかな?」

「当たり前ですわぁ!わたくしはふつうの錬金術師並にポーションを作れますが、もう魔力が底をついて作れませんわ!すべての錬金術師はマステマのポーション作成能力を見習うべきですわぁ!」

「ふーん、持ち上げるじゃないか?錬金術師ギルドではポーションの作成なんて魔力を割くだけ無駄な些事だと考えていると聞いたぞ」

「いいえ!錬金術師は冒険者のためにもっとポーションを作るべきですわー!優先度を低くしている錬金術師ギルドがおかしいのですわ!これは重要なお仕事ですわー!」

「くっくっく。そうかそうか、ポーション作りは重要な仕事かー。よかったな?キャルはもう冒険者だから、いちいちわたしと勝負などと言わずとも、今度からはふつうにポーション作成依頼を受注できるぞ」

「はう!?」

「?……どういうことマステマ?」


 最初から『勝負すること』を第一にしていたキャロリナにマステマは大きな違和感と興味を持った。マステマの排除が目的なら負けた時の身柄の行方を真っ先に示すはずだし、勝負の内容も勝敗の基準も、もっと細かに決定して判定する審判を用意したことだろう。

 しかしキャロリナはそれをせず、ただ勝負のみを望んだ。ということは彼女にとって勝負はなんらかの手段ではあってもそれ自体に特別重きはない。勝負を抜きにして顧みると、キャロリナは冒険者のためのポーション作りが重要な仕事だと主張し、魔力切れまで頑張ってポーションを作っただけだ。


「つまり、理由は分からんが、キャルは最初からポーション作りが主目的で冒険者ギルドにやって来たようだな」

「ふーん?でもそれならマステマと勝負なんてしないで最初からクエスト受ければよかったんじゃないの?」

「くっくっく。昨日キャルは『完全アウェー』と発言した。大方冒険者ギルドでの錬金術師の扱いも心得ていたのだろう。端からわたしとの勝負にかこつけたのは、錬金術師見習いでも受付で追い返されずにクエストを受注し、錬金術師を嫌う冒険者が直接手を出してこないようにクッションを置くためだ。ついでに売名行為も兼ねていたんじゃないか?そのあたりは子どもながらお貴族さまっぽい」


 マステマの総括にキャロリナは頬を赤く染めて目を反らしていた。どうやら大筋は間違っていないらしい。別に恥ずかしがることでもなかろうに。

 しかしエルナは「えーと?」とまだ理解していない様子だった。


「そうだな……。分かりやすく言えば『別に冒険者のためにポーションを作りに来たわけじゃないんだからね!』『あくまでポーション職人と勝負をしに来ただけなんだからね!』『これからも作ってあげるから錬金術師だけどよろしくね!!』って感じか?まあ、本来所属すべき錬金術師ギルドに対する表向きの理由付けという意味もあったのかも知れんがな」

「ち、ちちちちがいますわー!ほわー!くるくるきゅ~」


 キャロリナはマステマの噛み砕きすぎた発言をいきんで否定しようと身体を起こしたが、すぐに目を回してソファに戻った。


「ただのかわいい娘だねー」

「ただのかわいい娘だろ?」

「はぅ~!!!」


 エルナとそんなことを話して笑い、意気込んでいた辺境トップ3の過保護者たちもお疲れ解散モードだ。バルドルドは酒を飲み、イケメン戦士は静かにその場を離れ、ヘルミナは「ほわぁああ!」いつも通りである。


 薬草汁をポーションにすべく回復魔法因子を埋め込んでいると貴族街に出張していたユーリアが戻って来た。彼女と一緒に来た執事風の初老の男性がおそらくキャロリナの保護者だろう。


「お嬢さま!?」

「う、セバスチョン……」

「ぶふッ!!……チャンだろ?セバスチャン。え、違うの?」

「いえわたくしはチャンはおろかチュンの称号も得ておりません」

「称号だったのそこ!?」

「そんなことより、これはいったい……?」

「わたくしは大丈夫ですわー。ちょっと魔力を使い過ぎただけですわー」


 どうしてこうなったかについては、お屋敷に戻ってからゆっくりとお嬢さまに聞いていただくとことにして、このお嬢さまのツンデレ計画はお開きになった。

 結局、なぜキャロリナが冒険者ギルドでポーションを作りたかったのかは不明なままだが、もし次に会うことがあればその時にでもゆっくり聞けばいいだろう。




 それからわずか3日後。


「わたくしが!冒険者ギルドに!!来ましたわーッ!!!」

「いやいや、半径85cmのパーソナル近距離で叫ばないでくれ。舞い戻り早ぇし。護衛付きだし」


 今日も今日とてダブルツインドリルのキャロリナは、やはり今日も意味もなく一回転してドリルをぶん回し、華麗なステップでズビシッとマステマに指を突きつけた。身長が130cmしかないからその指先は顔面にやや届かない。


「マステマ!その稀有なポーション作成能力を鑑みて、あなたをわたくしのライバルに認定して差し上げますわ!光栄に思いなさいですわー!!」

「ライバル……?ああ、友だちね、はいはい。トーモーダーチー」


 マステマはキャルの人差し指に自分の人差し指の先を合わせて【回復魔法(ヒール)】でその接点を光らせた。偉大なる映画に異世界から敬意を込めて。マステマと指先で繋がった男爵令嬢は途端に真っ赤な顔になった。


「ち、ちちち違いますわ!ライバルですわーッ!ラ・イ・バ・ルッ!!!」

「くっくっく。分かった分かった。よろしくなキャル!」


 その日からときどき冒険者ギルドのマステマの特等席の隣には、護衛を伴った金髪ロリダブルツインドリルの錬金術師令嬢が座るようになった。



次話は1週間後.

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