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辺境都市のポーション事情

 冒険者ギルドの受付嬢ユーリアは機嫌がよかった。

 このところガーラントの冒険者の帰還率が高い。

 そして怪我をしても短期間で復帰してくれることが多くなった。


 冒険者たちが出かけて朝に比べれば閑散とした昼前のギルドロビー。

 朝一番のクエスト争奪戦に敗れた冒険者や休息日の冒険者たちがちらほらと食堂酒場で飲み食いしていたり、クエストボードで売れ残った依頼書を見てその内容に顔をしかめたりしている。


 朝は4つあるギルドの窓口を全部開けて忙しくしているが、今はユーリアのところと隣の後輩エルナのところの2つだけで、どちらにも並ぶ人はいなかった。


 ユーリアは受付カウンターで冒険者の情報がまとめられた分厚いリングファイルをめくり、貢献度が5まで溜まっている人の名前とランクを書き出していた。次に彼らが窓口に来たときに昇級試験を勧めるためである。ギルドに貢献してくれる有能な冒険者をいつまでも低ランクで遊ばせているようなことはまったく以って無駄である。彼らにはより高みへ昇ってもらわなければならない。だからと言って無体にクエストを課し、ほいほいとランクを上げてしまうと、特に若い冒険者は増長や堕落をしやすい。それぞれに適切なスピードでほどほどにランクアップさせていかなければならない。難しいところだ。


 昇級冒険者リストの最後に見知った冒険者の名前を書き出して、ユーリアが人知れずほほ笑んだところで、隣で大きく伸びをしていたエルナがお昼休憩で交代するエルフの受付嬢を発見し、勢いよく立ち上がった。


「やったぁ!ユーリア先輩、お昼の時間ですよぅ!はやく行きましょう!」

「ふふ。はいはい。ではあとお願いします」

「お願いしまっすアーシア先輩!」

「おっけー、任せんしゃい」


 簡単に引き継いで、窓口を絞めて席を立つ。

 お昼時間の1時間は冒険者も滅多に来ないので窓口は1つだけ。


 ツインテールを振りまいて先行するエルナの後ろについて、食堂ではなく受付脇の小部屋へ向かう。この小部屋には長机と椅子が備え付けられており、だいたい20人くらいを収納できる多目的室である。よく会議などに使われるが、今日はさっきまで新人冒険者をターゲットにした無料の講習が行われていた。今しがた講習を受け終わった冒険者たちが部屋から出て来たところだ。


「やっほー。お疲れマステマ~!ごっはんだよ~!!むぎゅ!?」

「子どもか。落ち着けエルナ」


 ふざけて部屋に突入した後輩受付嬢を冷静な子どもの声が迎え撃つ。抱き着こうとするエルナの頭をアイアンクローで押しとどめる彼女の名はマステマ。ガーラントの冒険者ギルドに半年前から『ポーション職人』として雇われている新人冒険者だ。

 見た目はこの辺りではあまり見ない黒髪褐色肌のかわいらしい小さな女の子だが、今年の冬に成人したという話である。同い年のエルナや同じ成人したばかりの子たちと比べるとどこか落ち着いた雰囲気があった。しょっちゅう欠伸をしていてやる気がなさそうに見えるが、無断欠勤はしないしギルドの仕事はきっちりこなすし、誰かが困っていると進んで手伝ってくれる。真面目なのか不真面目なのかよく分からない娘だ。


 今の時間の新人冒険者向け講習は彼女が講師だった。

 ふざけているかのようなマステマの肩書『ポーション職人』はギルドマスターが半年前、マステマのふざけたポーション生産力に目を付け、彼女をギルドで囲い込むために新設した準ギルド職員の役職である。本来彼女はポーションをギルドの依頼に従って逐次納品するのが主な業務だが、定期的に冒険者へポーションの使い方の講習もしてもらっていた。


「お疲れさまです、マステマさん」

「おお、ユーリア嬢!今日も美人だな!ちょっと待ってて。片づける」


 マステマが講習で使っていた自筆の人体図や資料などを手にまとめると、それらはただちに光の粒子となって魔法陣に溶け込むように消えさった。


「便利ですね、収納魔法」

「ふふん♪だろぉ?最近容量がちょっと増えたんだ♪」


 得意げに自慢するマステマに思わず笑顔になってしまった。よく動く小さな手足とくるくる変わる無邪気な表情はとてもかわいらしい。成人女性には失礼な感想だが、小動物を想起させて大変微笑ましかった。それはユーリア以外の人々も同様に感じているようで、マステマが食堂で「おかえり!怪我はしていないな!?」と帰って来た冒険者に声をかけるようになってから笑顔の人をよく見るようになった。小さな身体で冒険者のお世話をする姿はどこかおとぎ話に出て来る小人の妖精を思わせるのだ。本人に言えば「はぁ!?冗談ではない!」とこの世の終わりのような顔をするだろうけれど。




 ギルドの100席ある食堂はだいたい3分の1くらいが埋まっていた。4人掛けの丸テーブルに座ると、マステマは笑顔いっぱいで通りがかった三つ編み栗毛テールの給仕に声を掛けた。


「へいラーラ!いつもの(・・・・)を頼む!」

「かしこまりー!そっちの2人は決まった?今日の日替わりはマステマに教えてもらった殺人兎(キラーラビット)の照り焼きだよー!パンでもライスでも合うよー!」

「あー、わたしもそれにしよっかな?マステマセット。パンで!」

「いいわね。わたしもマステマセットをライスで」

「はいはーい。マステマセット、パン1ライス2ね!少々おまちー」


 『マステマセット』とは、マステマがギルドに居着いてから生まれた『日替わり定食・ヤサイマシマシ半盛り』の別名だ。


 毎日内容が変わる『日替わり定食』は食堂に入り浸るマステマが冬の間に強面な元冒険者の料理長と意気投合して考えたもので、エルフ王国から輸入される醤油や味噌を使ったメニューが多く、平原のエルフの主食であるライスを選べるのが特徴だ。しかしその発案者であるマステマは冒険者ギルドの標準1人前を半分でギブアップしてしまった。


 身体を動かすことが仕事の冒険者の1人前。その量は身体が小さいマステマにもデスクワークが主体の受付嬢やギルド職員にとってもかなりの大盛だった。そこで料理長は全体の量を半分に減らし、マステマの強い要望で野菜をふんだんに使ったメニューを作ってくれた。これは食堂で昼食をとるギルド職員からも多数の支持を得た。そしてほぼ毎日マステマが日替わり定食の野菜マシ半盛りを注文するので、彼女と親しい職員や冒険者は親しみを込めてマステマセットと呼ぶようになったのだ。


 マステマはユーリアたちの注文を聞くと呆れたような顔をした。


「いい加減“マステマ”セットはやめろ、縁起でもない」

「いーじゃん、分かりやすくてさ!」

「ふん、食い過ぎて腹が堕落するがいい!」

「しないし!お腹ぷよぷよじゃないし!まったいらだし!!……まったいらじゃないよ!?」


 エルナは何故か胸を両手で隠した。


 マステマは悪魔の名前だ。

 神から与えられた悪霊たちを束ね、人間を堕落と破滅へ誘う悪魔である。女神教では神の命令で人間の善性と信仰心に試練を与える御使いとされているが、その裏には任務の枠を超えた人間への強い敵意があると言われている。


 マステマが冒険者ギルドで登録した時に念のため偽名かどうか確認したが、本人曰く『正式に与えられた名前』なのだそうだ。いったい何をどうしたら子どもに悪魔の名前を授けるようなことをするのか。少なくともユーリアには、冒険者の命綱たるポーションを作り、ギルドの酒場で彼らの帰還を笑顔で迎える目の前の少女は、おおよそ悪魔とは真逆の存在に思えた。


「マステマさんが当ギルドへいらっしゃってから冒険者の帰還率が改善されました。ありがとうございます」

「ふふん?」


 ユーリアの突然のお礼に頬杖をついていたマステマは目を一瞬ぱちぱちさせて呆けたが、次にはニカっと白い歯を見せて笑った。


「帰還率が上がったのは冒険者たちが気を付けたからだ。礼なら本人たちに言え。冒険者に大人気のユーリア嬢から『帰って来てくれてありがとうございます』なんて言われたらやつら、いろんな液体を身体中から垂れ流して喜ぶぞ?」

「汚いよ!!」

「くっくっく」


 マステマはおどけて煙に巻いたが、帰還率の上昇は間違いなく彼女のおかげだ。


 下級とはいえ、すぐに効力が無くなってしまう生鮮消費材のポーションをマステマは1日に数十本も生産でき、冒険者ギルドには常に緊急時に備えた数十本の備蓄ポーションを揃えられるようになった。供給量が安定したことで下級ポーションのギルド価格は以前のおおよそ半分で提供できるようになり、冒険者にいきわたりやすくなった。


 これだけでも十分な貢献ではあるが、マステマの真価は講習と合わせることで発揮された。


 一般的に『最低限の処置しかできない』『小さな傷以外には効果がない』と、やたらと低い評価が広まっている下級ポーション。その認識を変えている、というより、本来の正しい認識を冒険者に与えているがマステマの15分足らずの簡単な講習だった。


 適切に処理した後に下級ポーションを使うことでそれなりに大きな傷まで対処できる。

 傷口をポーションで洗い、服用することで魔物や森に潜む悪いもの――マステマは『さいきん』とか『ざっきん』と呼ぶもの――が体内で増えて悪さをすることを抑制し、傷口が膿んだり熱を出したりすることを防ぐことができる。

 ポーションの飲み過ぎも人体に悪い影響が出る。許容量を飲んでしまったら速やかに帰還すること。


 これに加えて、非常に大雑把ではあるが人体の構造、負傷した場所や種類に対する適切な応急処置、どうなると人は動けなくなるかなどを、マステマが自分で描いた美麗で詳細な図を使って端的に説明してくれる。冒険者の大部分を占めるまともな教育を受けていない農村出身者はもちろん、騎士団出身者や貴族の末妹のユーリアでも有用な知見だった。


 冬の入りにギルド長の依頼で始まったマステマの短いポーション講習は、冬の終わった今、冒険者のみならず職員も一度は受けるべき講習としてその立場を確立した。見た目が小さな女の子なので意地でも受けないという新人や他所のギルドから来た冒険者もいなくはないが、負傷してもまた再び冒険へ出かけられる冒険者が増えたのは彼女の力が大きいとユーリアは確信していた。


 羨ましいことにエルナが迷惑そうなマステマの頬っぺをふにふにして遊んでいると、ラーラともうひとりの給仕が3人分の料理を運んで来た。


「へい、お待ち~。マステマセット3つね。ごゆっくり~」

「わぁい♪」

「子どもか」


 マステマに冷静に諫められたが、はしゃぐエルナの気持ちも分からないでもない。


 殺人兎の照り焼き。野菜たっぷりの骨出汁あっさり塩ハーブスープ。エルフ方式で炊き上げたライス。ライスは白くふっくらとツヤツヤと、スープは骨出汁の脂がキラキラと、照り焼きは香ばしい臭いを立ち昇らせて黄金色に輝いていた。街の食肉の調達源のひとつであり料理長の腕と人柄がよく、そしてエルフ食材をエルフ以上に熟知したマステマがいる冒険者ギルドだからこそ食べられる贅沢なランチだ。


 気を付けないとこれは堕落してしまいそうだ。


 尚、殺人兎は名前こそ物騒だが自衛のために角で人を刺し殺すことがあるだけで、完全な草食性の魔物だ。魔石は小さくてほぼ使い物にならないが、肉は鶏肉のように獣臭さが少なく柔らかい。ガーラント伯爵領には冬でも青々としている草がいくつか生えており、そのおかげで彼らは年中肥えていた。人類にうれしいほぼ食用の魔物である。


 マステマは食事の前に小さな手を合わせて『いただきます』と唱える。聞いたことのない言葉だが祈りの聖句だそうだ。魔法の収納から出した二本の棒の食器で口に入れると、見ているだけでこちらが幸せになるほどうれしそうな顔をする。ユーリアとエルナもフォーク&ナイフで続いた。


「うん、おいしい!エルフのショーユって黒くて不気味でなんか怖かったけど、照り焼きにするとすっごくおいしいよね!えへへへ♪」

「くっくっく。エルナの醤油への偏見が是正されたことは喜ばしいが、照り焼き程度で醤油を知った気になっては困るな!照り焼きは醤油を使った料理の中でも中堅!出汁と合わされた醤油の真髄にはほど遠い!!機会があればそのうち作ってやろう!」

「あら、それは楽しみですね♪」


 ユーリアは心からそう思った。


 マステマは常識を破壊する。

 ただの塩味ばかりに堪えかねて、厨房のコンロを借りたマステマがきれいに焼きあげた上質のトリ肉。その鍋に嬉々として砂糖とショーユをぶち込んだときには調理スタッフも給仕も戦々恐々とした。あのときは無口な料理長が「ヴぉぉおおおおッ!」と魔物の雄叫びのような悲鳴を上げて、何事かと受付をしていたユーリアも席から飛び上がった。


 砂糖はガーラント伯領でも栽培されている。希少品だが王都ほど高級品ではなく、少し裕福な平民のユーリアたちでも買えるが、甘いお菓子を作るためのものだと信じていた。それを正体不明の黒いエルフ調味料とともに料理に使うなど、ふつうに生きているガーラント市民は考えもしないひとつの境地である。しかもまだその一端だというのだから、否応にも期待は膨らんでしまうというものだ。


「ねぇねぇショーユ料理もいいけど、マステマ、中級ポーションは作れないの?」

「あん?中級ポーション?」


 何の気なしに言ったエルナの言葉を受けて、マステマはユーリアの方を一度見て、ユーリアがとぼけて首を傾げるとエルナの方に向き直った。


「そういうご立派なのは錬金術師どもに頼めばいいだろ?」

「え~、あの人たちなんか威張ってるし、すんごいお金とるんだも~ん!」

「まあ錬金術のような希少スキルを持っているやつはだいたい特別意識が強いからな。だがそういうやつらは扱いやすいだろ?『あなたたちしか作れませ~ん、錬金術師すげ~、よっ!金の亡者~』とか言っておだてればホイホイ作るんじゃないか?」

「演技でもやりたくない!……ん?金の亡者って悪口じゃない?」

「くっくっく」


 冒険者ギルドと錬金術師ギルドの仲は悪い。

 その原因はポーションだった。


 ポーションを作れる人間は限られる。錬金術スキルを持つ者か、回復魔法であるヒールを使える者。マステマは後者だ。しかも中級以上のポーションになると回復魔法では作成できず、錬金術スキルがないと作ることができない。


 ヒールを使える者の代表は教会の神官だが、彼らは治療院を運営しており、患者に直接回復魔法をかけて対処する治療が主な業務である。魔法が未熟な神官は修行として下級ポーションを作るが、それは治療院で処方されるもので冒険者ギルドには回ってこない。


 だから最もポーションが必要な冒険者ギルドの選択肢は2つ。冒険者の新米ヒーラーに依頼を出すか、錬金術師ギルドから買うか。しかして小遣い程度の金額で依頼を受けるのは教会にも属さずヒーラーとしてもまともに稼げないような素人の冒険者だけだ。彼らが作ったポーションの効果は低く、生産量もとても少なくて安定しなかった。


 よってポーションの購入先はほぼ錬金術師ギルド一択となる。ポーション市場はどこの都市でも錬金術師ギルドが独占しているような状態だ。そうなると当然のように国や領主が定めるギリギリ最高額で売り付けて来る。冒険者ギルドや一般市民が何を言おうが無駄。騎士団にも納入している彼らは、文句を言うなら作らないという選択もできるのだ。緊急で必要なときにはここぞとばかりに値を吊り上げてくる。

 よって冒険者ギルドの者は総じて錬金術師が嫌いだ。古参の高ランク冒険者たちがやたらマステマを過保護にする理由はここにあった。


 しかし、マステマの囲い込みで下級ポーションこそ改善されたが、錬金術師ギルドに足元を見られて購入する中級ポーションは依然として高価であり、希少である。冒険者ギルドも上級冒険者パーティも常備できるほどの余裕はない。


「マステマが下級ポーションみたいに中級もポンポン作れれば、冒険者のみんなももっと帰って来られるようになるのになぁ」

「そうかぁ?ポーション頼りに突撃するバカが増えるだけだと思うが」

「それは、ふふ♪そうかもしれませんね」

「……うん、たしかに!」


 マステマの冒険者を体現するような台詞にユーリアは苦笑交じりに、エルナは『ダメだ、あいつら』みたいな顔をして同意した。


 もしも錬金術師ギルドが中級ポーションを大量に安く卸すようになっても、あるいはマステマが冒険者ギルドで大量に生産するようになっても、多少の被弾をチャラにしてくれる保険を持った冒険者は今まで踏みとどまっていた境界線を踏み越えるようになる。冒険者とはそういう生き物だ。その点では下級ポーションという最低限の命綱を、可能な限りつなぎ留めている現状の方がいいのかもしれない。


 冒険者は冒険するもの。けれど身の丈に合わない冒険は身を亡ぼす。

 受付嬢として帰って来たタグを整理するのはただただ悲しい。新人もベテランも着実に実力をつけて、一歩一歩ランクを上げてほしい。ユーリアはしみじみと思うのだった。


「あ、そういえばマステマさん」

「うん、なになに?デートのお誘い?よし!テッヘ・ペロリストン高原に白銀龍を見に行こう!」

「違いますし行きませんよ」


 軽薄な男性冒険者のようにユーリアを誘うマステマを笑顔で撃退し、続けた。


「マステマさんは変な冒険者に目を付けられやすいですから、早くDランクの昇級試験を受けてください」

「ああ、なんかバカに絡まれてたね~マステマ。一昨日だっけ?」


 マステマはもぐもぐしながらうーん、と少し考えた。


「受けた方がいい?」

「はい。なぜか冒険者はDランクから一人前という風潮があります。ああいう下のランクから搾取しようとする人はぐっと減りますよ。貢献度はポーションの納品で十分です。いつまでも昇級しないと監査で引っかかることもありますし、そろそろ」

「ふーん、Eランクで討伐クエスト全然やってないけど?」

「Dランクから町の外に行く冒険者もいるよ。2割くらい?だからそれは気にしなくてダイジョーブ!」


 マステマがランクを上げるのを控えているのは他のEランク冒険者に配慮してのことだ。安全なギルドの中でポーションばかり作って早々にランクアップしてはゴブリン討伐や地下の下水処理スライム槽の糞運びなど、過酷な肉体労働をこなしている者たちは不満を募らせるかもしれない。下級ポーションの生産はとんでもなくギルドへの貢献度が高いし、Eランクは討伐依頼の達成が義務ではないので何の問題もないが、マステマの懸念も分からなくもない。それでもいつまでもEランクに留めておくより、上げてしまった方がいいというのがギルドの判断だった。


「ま、気が向いたらな」


 マステマはそう言ってスープを飲んで流そうとするが、ユーリアは手を抜かない。


「試験は3日後です。お昼を食べたら手続しましょうね」

「っく、笑顔で回り込まれてしまった!なんだそれ?新しい技か!?」


 おいしくて楽しいお昼の後、ユーリアとエルナは両側からマステマを捕まえて受付に連行していった。

 マステマは「ドナドナ!?かなりドナドナだよコレ!!」と言っていたが、よく意味は分からなかった。


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