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第37話 ゲーム攻略で暇つぶし

 書見の程よろしくお願いします。

「うーん、もう何にもやりたくないなあ」


 ゴミ掃除のクエストを終えて屋台に串焼きを補充したボクは、錬金術でものづくりをしている。

 沢山のアイテムを作るために、初級錬金術の本を読んで、片端から完成させている。

 けれどもう疲れたんだよ。

 何もしたくないんだよね。

 ベッドでごろごろしていたいんだよ。だからね。


「えへへ」


 癒されるー。レシピに載っていたファンタスティックベッドだよ。鉄のインゴットとトネルコの木を材料にしたんだよ。

 フカフカだよ。ボヨンボヨンで背中が気持ちいいんだよ。


「ああ、癒されるー」


 それにしても、さっきからメールの着信がうるさいね。

 ファイデルとアクトとサクラからだけど、お店が大変なことになっているから絶対に表に出るなってうるさいんだよね。

 なんか攻略サイトの情報掲示板にボクのことが書かれているらしくて、熱気が冷めるまで大人しくしていた方がいいって教えてくれているんだけどね。


「こういうのって面倒なんだよね。自由に遊べないっていうのがいい迷惑だよ」


 だったらボクにも考えがある。敵からドロップしたアイテムを繋ぎ合わせて作った服を身に着けることにする。

 フード付きの闇のローブだよ。


「えっと、どうかな?」


 ベッドから降りて鏡の前に立つ。身長が程よく高校生くらいの年齢に見える。黒いマントのようなフードを被ると誰なのか分からない。


「この子すごい美人だね」


 自分で言うのもなんだけど、アイドルとか俳優さんとか言われても違和感がないよね。銀黄の長い髪に翡翠色の瞳。スッピンでこれだけ美しいのは反則的だと思う。


「あとはドララを連れて冒険に出るだけだね。根源のダンジョンに行って今日はおしまいにしよう」


 さっさと攻略するんだよ。

 レベルをガンガンと上げて時音のお母さんに影響を与えるんだ。

 ボクは裏口から外に出る。そのまま従魔小屋に足を運び、ドララを呼び出すことにする。


「行くよ!」


「きゅう!」


 確かに表に人がいっぱい居るね。購入制限を掛けてはいるけど、それでも行き来の収まりがないね。


 こっちを見ている人が居るけど、ボクだと気づいた様子がないみたい。闇のローブで気配を隠しているから、誰だか分からないんだろうね。


 ボクはマップを呼び出し、根源のダンジョンの入口に向かう。

 すぐに五芒陣に光る地面にたどり着き、足を踏み出し、遠くにある階段を降りていく。坑道とした樹洞のような通路が見えてくる。明るい光り苔が照明代わりになるようで、美しく幻想的な光景に心の高鳴りを覚える。


「きゅう!」


 進んだ先で敵と遭遇する。ドララが炎を吐き大勢にダメージを与える。その勢いが止まった瞬間にボクが追い打ちを仕掛け一気に仕留めていく。


 敵はカースリザードスケルトン。ときおりカースサーバントスケルトンが現れ、リーダーシップを執る。


 だけどすでにボクの敵ではない。次々に現れる多勢を物ともせず、どんどんと先に進んでいく。


 ときどき罠を発見する。トラップサーチバングルの効果で回避することができる。

 次第に通路が広くなる。奥の方に巨大な門が見えてくる。


「とうとうボスの部屋にたどり着いたみたいだね」


「きゅう」


「中に入ろう。でもドララは見学だからね。絶対に前に出ちゃだめだからね」


「きゅう!」


 扉を開けて入ると松明に火が灯る。広い闘技の場を徐々に明るくしていく。

 NPC風の人が立っている。よく見ると、全身厳つく赤い武装姿で剣士風の出で立ちをしている。

 突然にクエスト表記が流れてくる。


「英雄たちの魂を沈めよ? それってどういう意味があるのかな?」


 すると地面に剣を突き立てていた敵が鞘を抜き取り、こっちに向かってくる。


「いきなり来るなんて卑怯だぞ!」


 突然の奇襲にボクはショートソードを抜き取り、〈パリィ〉を繰り出す。

 二度三度と重ねる剛腕の剣撃をはじき返し、反撃の機会をうかがう。

 一寸のミスも許されない。一撃を受けただけでも死ぬことになるかもしれない。

 そんな予測を身に覚え、完全防御に徹していく。連続でログが流れ、〈流水剣〉〈払い斬り〉〈落下一斬〉と敵がコンボを繋げてくる。

 ボクは〈パリィ〉で全てを防ぎ、バックステップで払い上げる斬り付けを回避する。そのまま横に走って敵の背後を取る動きをする。


「お前! 強いな!」


 敵もボクに追従してくる。横走りをしながら〈真空斬り〉を放って、遠距離攻撃を仕掛けてくる。


「くっ」


 とっさにステップで回避。しかし、連続で追撃がくる。中距離レンジからの〈分身剣〉が幻想の剣撃を生む。それを〈パリィ〉でなんとか防ぐ。

 なかなかやる。NPCはスタミナに底が無いのか、戦いの手を休めない辺りが苦戦を強いられる。

 でもね、そう簡単に上手くいかないものなんだよ。


「はっ!」


 ラーニングが発動している。覚えたばかりの〈真空斬り〉を瞬時に放つ。そのまま〈払い斬り〉でコンボに繋げ、〈流水剣〉で頭上を狙う。おかげで足が止まり、一方的な攻勢の流れを断ち切ることができた。

 すぐに〈スパニッシュ〉で攻撃を繰り出すと、堪らず敵が防御の構えになる。さすがに〈パリィ〉は出せないようで、大剣の剣身でボクの攻撃を受け止めてくる。


「いいねえ! 最高だよ! キミの技をもっと見せてよ!」


 キュピーンと連続で音が鳴り続けている。敵の技を習得したとするメッセージが流れている。

 次々に覚えたばかりの技を繰り出していく。〈三連斬り〉〈五月雨斬り〉〈十字斬り〉〈分身剣〉〈落下一斬〉とそれぞれに試していく。

 立ち止まり、大剣を持って守りを固める敵。その隙に距離を取って体勢を立て直すと、剣技〈心斬〉の表記が流れてくる。


「え?」


 気付いた時にはもう遅い。腹部を斬られ、HPの八割が消失する。


「うそ!」


 ノーモーション。構えたまま攻撃を繰り出す必殺の技。フェイントじゃないフェイントがボクの胸を襲ってくる。

 だけどまだ負けた訳ではないんだよ。一度見たから来るタイミングが分かっている。

 剣技〈パリィ〉ではじき返し、襲い来る斬撃を無力化する。


「ふっ」


 続けて正眼の構えから動かない敵の斬撃をはじき返す。なんとなく当てたい場所が分かってくる。そこに〈パリィ〉を繰り出すと、面白いように防ぐことができる。


 でもね、このままだとじり貧だよ。敵にダメージを与える手段がないからね。

 ボクはとっさに特殊術〈毒撃〉放つ。すると、紫色の球が飛び出し、敵にヒットする。毒になったとする表記が出てくる。


 いいね。

 これで逃げれば勝てるかもしれない。むしろ勝機はこれしか無い気がする。ボクは全力で身を固める作戦に切り替え、〈パリィ〉と〈魔力壁〉で防御に徹する。


 そうして、時間が経つ。毒状態を持続させたまま戦っている。あと少しで倒すことができる。当然敵の攻撃は続いている。でも守りに徹したボクは鉄壁だからね。集中さえ続けばどんな技でも防いでみせる。


 しかしノロマだね。もしかしたらシステムの限界なのかもしれないね。コンマ数秒ごとにモーションが選択されている気がする。

 ボクの思考に全てが追い付いていないようだね。

 でももう敵のHPが尽きそうだよ。数値的にどれだけの量があったのか分からないけど、赤く長いHPバーの囲いが無くなっている。


「ん? これで終わり?」


 なぜか動かなくなったので、念のために回復を済ませることにする。インベントリーから中級ポーションを取り出し、口に流し込む。


 体が軽くなっていく。今までの疲労感が癒える。緑色の光が彩っている。


「おっと」


 敵からオーラが流れている。

 何か来るかもしれない。

 壮年風の容姿がはっきりと分かるようになる。生気を帯びた唇が動き出す。


「ルードリッヒ・ベナンダット」


 その告げ口を皮切りに姿が変容する。

 赤く燃えるオーラが強くなる。青い〈魔力壁〉の色彩が混ざり合い、どう考えても無敵状態に見える。そのまま刺突をする構えになる。


 これはまずいかも。大技が来るよ。

 おそらく〈一刺九斬〉が放たれるに違いない。すでにラーニング済みで一度も使っていないけど、敵の奥義に間違いない。


 どうしよう。食らったら一撃で終わるかも。初見で防げるのか心配なんだけど。


「きゅう!」


 突然、敵の背後からドラゴンとした巨大な牙のエフェクトが生まれる。そのまま左右と挟み込むように噛みつく映像が流れる。


「あ」


 一撃でクリティカルヒット。その一瞬のあとに敵が消滅していく。


「そっか……」


 それもそのはず。ドラゴンファングは現実でも神殺しの牙と呼ばれている。防御力無視の貫通攻撃。当たれば必ずダメージが通る反則技になる。

 その瞬間に怒涛のレベルアップラッシュが訪れる。

 クエストの達成に、200000CPと桁違いの信用ポイントを獲得する。


「わーい」


 なんかラッキー。仲間のおかげで助かったよ。

 ドロップアイテムにベナンダットの大剣が手に入ったね。確定入手かな? きっとそうだよね。さっそくインベントリーから取り出して装備してみよう。

 そうして帯剣すると赤いオーラのエフェクトが流れてくる。


「かっこいい……」


 腰から抜くと、赤い炎の紋章が輝きを放つ。一振りすると初撃の度にエフェクトが赤い光を生んでくれる。


「いいね。こういうの……」


「きゅう」


 俄然楽しくなってきたね。やっと初心者から卒業できたよ。

 ボクは奥のフロアに進み、光る五芒陣の床上にたどり着く。その場でマップを開いて外に移動できることを確認する。

 予想通りワープ箇所が増えている。根源のダンジョン一階層を踏破したとするメッセージが流れている。初回ボーナスとして30万CPを獲得したとするログが表示されている。


 どうしよう。このまま帰ってもいいけど、もう少し遊びたいかな?


 メールを目にすると、サクラが運営に報告したとする要件が書かれている。

 街中でのユーザーへの執着はPKに当たるとしているのに、今回のように個人経営のお店に張り付いて離れないケースはどうなのかと非難されている。これもハラスメント行為に当たるとして、規則に問題があると記述されている。

 どうやらすぐに受け入れられたらしく、あとで修正の告知が来るとのこと。


 それでも時間が掛かりそうだね。どうせだからこのまま進んで奥の様子を見てきてもいいよね。


「じゃあ行くよ。ドララ、付いてきて」


「きゅう!」


 階段があるので降りることにする。胸が高鳴ってワクワクが止まらないね。誰も来たことがない場所の攻略は背徳感があるよね。


「うわ……、綺麗……」


 壁がクリスタルのように青く輝いている。

 青い光を放って明るく彩っている。

 地面から突き出す結晶が幾何学的な模様をしている。なんとなく錬金術で造った魔動つるはしを出して思いっきり叩いてみる。


「おお……」


 金属音が鳴り響き、高品質ミスリル鉱石を取得したとするメッセージが表示される。


「この世界のミスリルってどの程度の価値があるんだろうね……」


 現実だと青銀鉱石とも呼ばれている。魔素の浸透率がとても高く、初心者でも簡単に魔力を含ませることができる。どこでも重宝され、ある種のレアメタルとして扱われている。


「いい場所だね……」


 採取に籠ってみるのもいいかもしれないね。採って売れば大金持ちだね。でもね、今回は様子見だよ。色々なモンスターと戦うことが目的なんだからね。


「行くよ、ドララ」


「きゅう」


 そう言って、奥へと慎重に足を運んでいく。


「ガッタン操糸?」


 なんか変なのが出て来たね。

 魔術士みたいな服装をして、指から垂れ下がる糸をゆらゆらとさせている。

 先手必勝だよ。意味不明な敵は、攻撃させない方がいいからね。攻勢を取らせると何をするか分からないんだよね。


 ボクは覚えたばかりの〈一刺九斬〉を繰り出すことにした。MPを500消費して、中距離レンジからの刺突攻撃を放つ。


 そのまま胸への一閃。頭上に首と上半身と下半身へ九つの斬撃が撃ち込まれていく。

 ベナンダットの大剣から炎の紋章が浮き上がり、敵の背後に流れていく。

 そのあとすぐに敵が消滅する。

 レベルが上がりラーニングが発動する。裁縫〈操糸〉を取得した。


「つよ……」


 大剣の性能かな? それとも剣技の威力が高いせいかな?

 どちらにしても、この戦法で攻略していけばいいかもしれないね。


「ドララ、次に行くよ」


「きゅう!」


 ボクは意気揚々と奥へと進んでいく。

 それから、ガッタンと名の付く敵たちに遭遇する。単騎でのみ出現するため、一撃で倒すことができる。

 大工〈形成構築〉、彫金〈高速加工〉、鍛冶〈思想成形〉、錬金術〈短縮合成〉をラーニングすることができた。

 途中でアイテムも手に入る。ディスカバーリングで発見した隠し通路から宝箱を見つける。

 謎の革靴を取得できたので装備する。未鑑定のために名前が無いが、初心者のブーツよりも履き心地がいい。白くて美しい厚底のブーツ。デザイン的にも黒いローブと相性がいいね。


「よーし、どんどん狩ってレベルを上げるぞー」


 それからさらに奥へと進んでいく。途中でカースサーバントスケルトンが現れ、例のごとく魔物を連れている。なんとなく〈チャーム〉で魅了し、〈使役〉で仲間にする。

 何度もガッタンシリーズと遭遇する。ガッタン操糸。ガッタン錬使。ガッタン鍛冶。ガッタン大工。ガッタン宝飾。それらを瞬殺して経験値とアイテムに変えていく。

 そうして、またカースサーバントスケルトンが現れる。今度の魔物も同じ手順で仲間にする。


「これで三体目だね。名前はモッコリーだよ」


「ムギ」


「ドララにローリー。新しい仲間だよ。先輩としてよろしくしてあげてね」


「きゅう、きゅう」


「ミリリ!」


 名前:ドララ

 種族:レッサードラゴン

 レベル:18

 戦闘力:95626537

 HP[4865/4865]

 MP[1401/1453]


 名前:ローリー

 種族:ロイヤルフェアリー

 レベル:7

 戦闘力:4033983

 HP[782/782]

 MP[651/651]


 名前:モッコリー

 種族:エリアポケットベアー

 レベル:1

 戦闘力:242177

 HP[730/730]

 MP[88/88]


「中々の強さだね」


 ステータスを開いてみたけど、ボクの初期の能力よりも高いよね。


「ローリーは回復と付与魔術が得意だけど、モッコリーは何が使えるのかな?」


「ムギ」


 すると、〈絶対防御〉が発動する。


「お前……、すごいね」


 他にも石を拾い、腹部にあるポケットに手を入れる。


「なにしているの?」


「ムギ」


 狸のようでカンガルーのようなモッコリーが、ボクに何かを訴えている。モコモコの丸い手のひらをお腹のポケットに当てている。


「ムギ、ムギ」


「そこに触れればいいの?」


「ムギ!」


 そっと近づいてお腹に触れてみる。フサフサの毛並みが気持ちいい。ドララよりも大きく見える体がフカフカと柔らかい。

 すると突然、インベントリーが表示される。


「え?」


 アイテムが収納できるの?


「すごい……」


「ムギ、ムギ」


 何の理屈か分からないけど、1280キログラムまで収納できるみたい。

 ボクが持っているアイテム袋よりも大きいね。

 思わず嬉しくなり、ボクは皆に触れるように手を伸ばす。


「いいよ、いい! お前たち、すごくいいよ!」


「きゅう、きゅう」


「ミリリ」


「ムギ」


 それから、当然のように魔動つるはしを取り出し、その場で採掘を始める。

 ミスリル鉱石を大量に取得して、モッコリーに収納していく。


「うん。満足」


 掘って移動して戦いを繰り返している。そうしてついにボス部屋にたどり着く。


「どうしよう。このまま行ってみようかな?」


 どうせゲームだし、死んでもいいよね? あとはログアウトするだけだし、デスペナルティーなんて怖くないよ。


「皆、下がっていてね。絶対に前に出ないでね」


「きゅう、きゅう」


「ミリリ」


「ムギ」


 ボクは大きな扉の前に立ち、手を掛けて中に入る。

 暗い通路を進むと、鋼板のような床が続く広大なフロアにたどり着く。

 一面が全て金属で、カンカンと足音が鳴る。


「なんだろう……」


 そうつぶやいた瞬間に、どこからともなくライトのような光源が辺りを照らし始める。


「わあ! すごい……」


 巨大な羽を備えた船が遠くの方に鎮座している。

 まるでエフエターナルファンタジーに出てくる飛空艇のように、金属でできた大型船の形をしている。


「なっ! なに?」


 突然、地響きが起きる。

 遠くにある船が音を立てて起動する。


 無数の砲台が動き出し、こちらに向けて光の玉を放ち出す。


「魔動飛空戦艦ベアトーチカ?」


 なにこれ、なにこれ。

 突然の名前の告知に驚きを覚える。

 弾幕の嵐。光る玉が向かってくる。

 ボクはとっさに〈魔力壁〉を生み出し、タイミングよく〈パリィ〉で防ぐ。


「ドララとローリーはモッコリーの後ろに隠れて待機だよ!」


「きゅう」


「ミリリ」


「ムギ、ムギ!」


 ローリーが回復と付与で全員を支援する。モッコリーが〈絶対防御〉で守りを固める。

 ここで死ぬようなことにはならないはずだ。


 それよりもボクが問題だ。弾幕が激しくて微妙に被弾している。

 このままだと死んでしまう。


「うぉおおー」


 前に向けて突撃する。ときどき〈パリィ〉で防ぎ、左右にステップを踏む。途中で〈魔力壁〉を使い、被弾しそうなタイミングを回避する。


「くっ」


 ホーミング弾のような光る玉が飛んでくる。

 横から来るため、〈魔力壁〉を出すことができない。たまらず直進して弾丸の間を駆け抜ける。


「うぁああー」


 すごい迫力。とてもゲームとは思えないよ。

 クリア条件が分からない。でもなんとなく船体の中に居る丸い物体が怪しい気がする。

 近づくにつれて分かってくる。赤く光る物体が甲板の中央に鎮座している。


「いっけー」


 でもあの高さをどうやって克服しよう。

 船底がコンテナ船を超えているよね?

 そう思っていたら、ラーニングが発動する。


「やったぞ!」


 特殊術〈飛行〉。とっさにボクは白い羽を生やし、空中に浮かび上がる。

 すると鋼板から足が離れる。いつもの慣れた感覚が背中から伝わってくる。

 そのまま低く浮かび上がり、床すれすれを移動する。


「行ける!」


 弾幕が背中の上を通っていく。とても避けやすく戦艦との距離を縮めていく。


「あ! ずるい!」


 突然、魔動飛空戦艦ベアトーチカが浮き上がる。

 近づくにつれてジェットエンジン風の音が聞こえてくる。


「卑怯すぎる……」


 人のことは言えないけど、こいつも空を飛ぶのかよ。

 一気に浮き上がりを見せる。鋼板から離れ、数十メートルほどでホバーリングする。


「もしもボクが飛べなかったらどうやって攻略するんだよ!」


 そうして、巨大な魔術砲が動き出す。光を収束させて船体の左右から無差別にエネルギーを放出している。

 近づく者を全て撃ち落とす勢いで弾幕が張り巡らされる。

 ボクはそれを避けて甲板に近づいていく。ホーミング弾に〈魔力壁〉で迎え撃つ。タイミングよく弾き、最短ルートで突貫する。


「うわぁああー」


 転がり込むように激突する。そのまま一回転して頭をぶつける。


「いっつー」


 でもこれでボクの勝ちだね。

 体を起こし、中級ポーションを口にする。

 HPを全回復させて、ゆっくりと赤い球体に近づいていく。


「はっ」


 大剣で斬り付ける。すると球にひびが入る。その度に大きさが変わっていく。


「これ、もしかして爆発するのかな?」


 なんとなくそんな気がしたので、〈飛行〉を使い、空に浮かんで攻撃する。

 すると案の定、全てが弾け、世界が光に包まれる。

 強大な爆音を上げ、ボクの体を吹き飛ばした。


「危なかった。死ぬかと思った……」


 錬金術で作った身代わりの護符が役に立ったみたいだね。

 残りのHPが一だけど、何とか助かったよ。

 戦艦が沈没していく。その様子を空から眺め、正規の攻略方法に疑問を抱く。

 本当にどうやって攻略するんだろうね。


 でもこれであとは帰るだけだね。今日は楽しかったよ。

 レベルアップ効果音を耳にして、いつの間にか受注していたクエストの完了を知らされる。信用ランクがDになったことを理解する。


「おつかれさま」


 今日はこれで終わりにしよう。

 改訂履歴


 うーん、自分では面白いと思っているんですけどね。

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