第34話 サクラがうるさい
前回の続き。
なんとなくゲームを進めるディー(ニルト)。サクラと出会い、一緒に会話を楽しんでいく。冒険者クラスが不遇であるという話の流れから、それを否定するディーの思いに応え、一緒に検証することになる。教会地下ダンジョンで戦い、予想外の結末が訪れる。「ステータスを見せてください」と告げたサクラに対し、果たしてディー(ニルト)はどうするでしょうか?
書見のほどよろしくお願いします。
チャットにステータスを書き記し、サクラに転送する準備をする。
「待ってね。今から送るから」
「ストップです。これを使ってください」
寄れた紙を手渡される。破れそうな質感をしている。
「これはなに?」
「鑑定紙です。触れたまま魔力を通してください」
「以前に使っていたアレだね。これでステータスが分かるの?」
「はい」
言われた通りにしよう。
『
名前:ディー
種族:妖精
レベル:27
クラス:冒険者
称号:高貴なる血筋 探索者
戦闘力:1389498
能力値:
HP[4018/4018]
MP[18305/18419]
力[69+389]
敏捷[102+559]
知力[1321+661]
幸運[455+29]
魅力[408+56]
攻撃力[2545]
回避力[2896]
魔攻力[8675]
抵抗力[2128]
装備:
初心者のショートソード
初心者の皮鎧
初心者の革靴
スキル:SP[23]
探究[8]錬金術[11]魔力感応[21]
魔術[7]剣術[19]魅了[11]
運気[13]植物学[6]鉱石学[4]
魔物学[7]大工[5]料理[11]
闘気[8]魔防[15]特殊術[10]
毒耐[7]眠耐[4]石化耐[5]
麻痺耐[7]魅惑耐[29]混乱耐[8]
炎耐[32]冷耐[5]風耐[18]
雷耐[4]光耐[5]闇耐[7]
』
「へえ」
普段よりも表記が増えているね。
「どうですか?」
「面白いね。隠れた要素がこんなにあったんだね」
「見せてください」
「いいよ」
サクラに鑑定紙を手渡す。ボクの能力を見てどう思うだろう。
「――卑怯じゃないですかっ!」
「うえっ!」
いきなり抱き着いてくる。膨れた表情で瞳を凝らしている。
「幸運値が私の8倍もあるじゃないですかっ⁉ 100を超えているとすごいのに、圧倒的じゃないですかっ!」
「う、うん」
顔が近いよ。離れてくれないかな?
「だいたいレベルが27とかおかしいんです! まだ二日目ですよ! 戦闘力も桁違いに高いですし! トップレベルの何倍もあるじゃないですかっ! それに! ステータスの補正値も圧倒的です! 何ですかこれ? 五倍はあるじゃないですかっ!」
「う、うん」
「魔力感応スキルが怪しいですね! SPの残りも多いですし! あっ! なんですかこれ⁉ 運気と魅了スキルなんて初めて見ますよ! ずるいです! 上がりづらい能力値を上げるなんて汚いじゃないですかっ!」
「あ、あのね」
肩を揺らさないでよ。鎧がゴツゴツして痛いから。
「装備が初期のままなのにおかしいです! ピカピカするのもうなずけます! ディーさんのキャラクターはチート並みに卑怯です!」
「なんかごめんね」
「もう! よく分かりませんが腹が立ってきました! どうしてそんなに強いんですかっ!」
「うん……」
根源のダンジョンのことは教えられない。だって秘密なんだもん。
「言えないんですかっ? 言えないんですね! 友達にも言えないなんてひどいです!」
友達だったんだ。
「でしたらこの埋め合わせはしてもらいますよ! これからも付き合ってもらいますからねっ!」
どういう理屈?
「探索は任せてください! 代わりに戦闘は任せますからね!」
「うん」
押しが強いね。断り切れない力がある。サクラは人を引きつける何かがあるね。異世界で出会った貴族のお姫様みたいだよ。
「行きましょう。一度だけのクエストです。私たちで終わらせましょう」
「うん」
特別クエストってリアルタイムに変動するらしいね。攻略サイトで勉強済みだよ。
「ドララちゃんも一緒ですよ」
「きゅう、きゅう」
嬉しそうに飛んでいる。サクラと一緒で機嫌がいいみたいだね。
「ディーさんが先を歩いてください。私は後ろから付いていきます」
「うん」
サクラ姫の機嫌が直ったみたいだ。やっと離れてくれた。
言われた通りにしよう。薄暗い地下道とした通路を歩いていこう。
それから何度も敵と遭遇する。戦う度にサクラが、「卑怯です」と、非難する。喜んでいるように見えるから嫌な気がしない。明るい性格なので思わず笑ってしまう。
「ドロロンです。やっかいな敵が出てきましたね」
黒いモヤに光る目と口を持つ敵が現れる。
「気を付けてください。物理攻撃が効かないです」
物知りだね。どこから仕入れた情報なんだろう。
「ケケケ……」
「強いですよ。ほとんどの人が返り討ちにあっています。闇の魔術を使って視界を奪ってくると聞いています」
サクラの説明が続くうちに、敵の身体が黄色に光る。
「キーキー」
ドロロンが鳴き声を放つ。黒い波動が流れてくる。
「来ます!」
魔力壁を前面に出す。魔術や特殊技はタイミングよくガードすることで無効にすることができる。そのマージンは一秒。根源のダンジョンで試したから確かだよ。
「あ、見えません!」
「きゅう~」
なんか可愛い。ドララと一緒に魔術に充てられている。来ることが分かっていたのに避けることができなかったんだね。やっぱりサクラは可愛いね。
「ケケケ……」
敵がまた光りだす。
今度は黒い球を飛ばしてくる。
「させないよ」
前に踏み出す。
飛んでくる攻撃に合わせ〈パリィ〉で防ぐ。黒い球が弾かれ、効果音が鳴る。『剣技〈マナパリィ〉を習得した』とするメッセージが流れてくる。
「何ですか! 見えないんですけど!」
サクラ姫が怒っている。早く終わらせよう。
「炎と風よ。ボクの願いに応えて強く燃え上がれ。小さく、圧し爆ぜりを繰り返し、オドから生まれるマナを黒く染め上げよ。バーンファイア」
揺らめく炎が火の玉のように敵に向かっていく。破裂音を鳴らし、爆発する。
ダメージコンボを刻む。一回当てただけで敵が居なくなる。
「強烈だね……」
現実と違って制御ができない。敵が消えた後も爆発している。サクラに当たったら大変だ。誰かと居るときは控えよう。
「うぅぅぅ、びっくりしました。強敵でしたね」
「そうだね」
嘘だよ。本当は弱かったよ。
「ここからが未知の領域です。慎重に行きましょう」
「うん」
サクラの指示に従い、分かれ道を進む。
階段を下りる。水流が多い場所に着く。細い道を通り、開けた先が乾いた通路になる。そのまま真っすぐ進んでいく。
「ストップです。止まってください」
静かにしていたサクラが声を上げる。
「どうしたの?」
足を止めて振り向くと、眉を寄せる悩ましい顔をしている。
「罠があるかもしれません。調べるので少し待っていてください」
「分かるの?」
「私は着眼大局の称号を持っています。おかげで危険回避スキルを覚えることができました」
ボクのリストには無いスキルだね。
「レアなんですよ? 条件を満たした人にしか使えないんです。危険を察知したり予測したりできます。罠の回避や解除もできるようになるんですよ」
「罠の解除……」
「やっぱりありましたね。今から無力化します」
サクラの体が黄色い光で満たされる。
「終わりました。呪いの罠だったようですね」
「呪い?」
「ステータスを減らすデバフが掛かります。何かしらの数値が弱くなりますね」
「そんなのがあるんだ……」
奥が深いね。知らないことだらけだよ。
「行きましょう」
「うん」
盲点だね。根源のダンジョンでも罠があるかもしれない。対策をしないといけないね。
「待ってください。そこに宝箱があります」
「どこ?」
「こっちの隠し通路です」
「え? 隠し通路もあるの?」
どうしよう。全く分からない。
指摘された場所に近づくと、すり抜ける壁がある。
「本当だ」
面白いね。全く見分けがつかない。
何度も手を入れたり抜いたりすると、壁が揺れるように波紋ができる。つい楽しくて思わず笑ってしまう。
「ディスカバーリングのおかげです。隠し通路の場所が分かるようになるんですよ」
「そんなのがあるんだ」
「どうです? 私と居ると探索が楽になりますよ?」
「確かにそうだけど……」
だからってダンジョンの情報は教えられないんだよ。
ボクも隠し通路の見分ける方法を考えないとね。
「先に行きます。もしかしたら罠があるかもしれないので」
「うん。お願いね」
壁の中に入っていくサクラを追って中に入ると、木造りの箱が見えてくる。
「危険はないですね」
サクラが宝箱に近づき、時々上辺を叩いている。何の意味があるのか分からないけど、落ち着きがない仕草が幼く見える。
「開けますね」
そう意気込み、サクラが宝箱の蓋を持ち上げる。
「どう?」
箱の中を覗き込む。半身を入れて中の物を取り出そうとしている。
「やりましたよ! 初級ポーションです!」
残念だね。それは外れだよ?
「10本あります。私が五本もらってもいいですよね?」
「いいよ。全部サクラに上げる」
「いいんですか? 回復薬は品薄なんですよ? 初級ポーションは現状で回復できるアイテムの中でも最上級なんですよ?」
「だっていっぱい持っているんだもん」
ストレージに100本ある。余程のことがない限り使い切ることはない。
「それでは遠慮なくいただきますね。必要になったら言ってください」
「ボクが持っている物も渡しておくよ。回復効果が高いって評判だからね。もしもの時は使って欲しい」
申請を出して二〇本手渡す。
「お金を払います」
「気にしないで。いろいろと教えてくれたし、お礼みたいなものだよ」
「そういう訳にもいきません」
「いいからもらってよ。友達なんでしょう? こういうのは気持ちだよ」
「……分かりました。今回は預かっておきます」
他の人たちはどうしているんだろうね。ポーションが無いのならヒーラーにお願いするのかな?
「お腹が空きましたね。少し休憩にしませんか?」
「いいね。串焼きがあるから一緒に食べようよ。味の評価をしてくれると嬉しいね」
「いいんですか? 遠慮はしませんよ?」
ビックボアとグレートウルフの串焼きだよ。
夜になると深緑の森で出てくる魔物だよ。食べたことがないから楽しみだね。
「いい香りです。美味しそうですね」
「いっぱいあるから遠慮せずにね。ドララも一緒に食べようよ」
「きゅい、きゅい」
ストレージから串焼きを取り出す。サクラとドララに手渡していく。ドララが器用に食べてくれる。旨いと言っている気がする。
「美味しいです! フェアリーズのお店と同じ味がします」
「サクラも行ってくれたんだね。あそこはボクのお店だよ」
「そうだったんですか?」
「うん」
なんか嬉しいね。知り合いが知らないうちに来てくれたからね。それなりに流行っていた証拠だね。
「これからも大変ですね。ディーさんのお店だと知られたら、もっと人が来ると思います」
「そうかな? そのうち売れなくなると思うよ?」
「知らないんですか? ディーさんは有名人なんですよ? 現実でも綺麗な女性のはずだって皆さんが騒いでいます。美人だからファンの人も多いんですよ」
「そんなことないよ」
「謙遜です。このゲームはリアルに合わせてアバターが設定されています。大きく形を変えることはできませんが、ベースのいい方ほど可愛く見えるようになっています。ディーさんのリアルが美人じゃなかったらおかしいです」
ボクは男だよ。美人じゃないよ。
「それに、フェアリーズの串焼きはバフが付くんです。掲示板でも話題になっています」
「そうなの?」
「鑑定紙を使えば分かります。五パーセントほど攻撃力が増えるんですよ」
「へえー」
意外な事実。知らないことだらけだよ。
「私も料理がしたいです……」
急にしおらしくなってどうしたの? サクラって感情の起伏が大きいよね。
「スキルを取ればいいんじゃない?」
ゲームなんだから自由にしないとね。
「現実の話です。したいのに包丁を持たせてくれないんです」
「ひどい。誰がそんなことを言うの?」
「皆さんです。お兄様もそうですし、お父様もお母様もそう。使用人の皆さんもケガをしたらいけないって強く言うんですよ?」
もしかしてすごいお嬢様なのかな?
それに、料理が苦手なのかもしれないね。
ボクは一般人だから分からないけど、サクラにはサクラなりの苦労があるんだろうね。
「ディーさんはどうですか? 料理は得意ですか?」
「それなりにできると思うよ。けどね、ゲーム内での私情は話さない方がいいと思うんだ」
「……そうですね。ディーさんが親しみやすいのでうっかりしていました」
サクラが立ち上がり、笑顔になる。
「休憩は終わりです。行きましょう」
「うん」
じきに強制ログアウトの時間になる。早く探索を終わらせよう。
ボクは乾いた道を真っすぐ進んでいく。
「――止まりなさい! ここは危険なのよ! 引き返しなさい!」
壁に寄り掛かる茶色い肌のお姉さんが居る。皮鎧にナイフを持つ姿をしている。
「ケガをしているじゃないですかっ! すぐに治療します!」
「いいよ。ボクがするね」
そう言って、初級ポーションをストレージから取り出す。
「これを使ってよ」
お姉さんに近づき、ゆっくりと差し出す。
「……ありがとう。助かるわ」
素直に受け取ってくれた。一口に含むと、緑色の光に包まれる。
「生き返ったわ。一時はどうなるかと思ったわよ」
険しい表情が自然になる。NPCなのかな? 表情が豊かだね。
「私はレイラ。孤児院で見習いのシスターをしているわ」
「ディーだよ」
「サクラです。どうしてこんなところに一人で居るんですか?」
誰かに似ている。初めて会った気がしない。
「むしろあなた達こそどうしたの? こんなところまで何しに来たの?」
「生命草を取りに来たんです。教会のシスターに頼まれて依頼を受けました」
「私も生命草を取りに来たの。グラッセ神父の病を治すために必要になるのよね」
「私たちも手伝います。どこにあるんですか?」
「この先にあるのよ。地図にはそう書いてあるわ」
ダンジョンマップがあるんだね。行く前に教えてくれてもいいよね。
でもどうしてケガをしていたんだろう。何か理由があるのかな?
よし、聞いてみよう。
「この先が危険だって言っていたけど、どうしてなのかな?」
お姉さんの表情が険しくなる。
「敵がたくさん居るのよ。倒しても増え続けてくる。先に進みたいのに通れないのよ」
なにそれ、面白そう。
「確かめてきてもいいかな?」
「――ダメよ! 命がいくつあっても足りないわ!」
そんなに怒らなくてもいいよね。
「ディーさん。口が笑っていますよ? 戦いたいって顔に書いてあります」
だって物足りないんだもん。少しくらい遊んでもいいよね?
「恩人を危険にさらしたくないわ!」
「きゅい」
「ほら。ドララちゃんも危険だって言っていますよ?」
「きゅい!」
「そうなの?」
「きゅい?」
なんか違う気がする。
「私に考えがあるわ。一度戻って準備をさせてくれないかしら? できれば二人にも手伝って欲しいわ」
お姉さんがそう言うと、特別クエストの表記が更新される。レイラがパーティーに加わり、その知らせが届く。
「チェーンクエストですね。一つずつ解き明かしていくことで、完結するようになっているんです」
納得がいかない。先に進めない理屈が知りたいね。
「ごめん。やっぱり見てくる」
こういうのは確かめておかないといけないよね? だってクエストに強制力があるのかを確認しておかないといけないよね。
「ドララは二人と一緒に居てよ。ボクが戦っている間は、守ってあげてよ」
「きゅい」
「ごめんね。お姉さん、少しだけ見てくるよ」
どうせ強制ログアウトするし、一定時間のデスペナルティーがあっても平気だよね。
「仕方がないわね。そこまで言うのなら私も付いていくわ。恩人を一人にしておけないもの」
「だったら私も付いて行きます。一蓮托生です」
「経験値をいっぱい稼いであげるね。でもその代わり、ボクが死んだら逃げてよね。それだけは守って欲しいな」
方針が決まった。ボクが先行して様子を見る。
サクラたちはボクの後ろに着く。戦わず、逃げられるようにしてもらう。
そういったことを告げて歩き始める。しばらくすると敵の気配が近づいてくる。
少しずつ見えてくる。ショートソードを出して先制する。
出会い頭に一撃入れる。徐々に戦いの回転率を上げる。魔力感応スキルでMPを消費する。
「二人ともドララより前に出たらダメだからね!」
叫んではみたけど聞こえているか心配になる。だって敵が多くてうるさいんだもん。
ポイズンビックマウスとスケルトンとドロロンの軍勢が迫ってくる。闇の魔術の光が飛び交い、視界を奪う意思力が感じられる。
タイミングよく魔力壁を展開する。魔術を弾いて反撃に出る。
剣技〈返し切り〉からのカウンターに合わせ、〈払い斬り〉を続けて繰り出すと、コンボ攻撃と呼ばれるカウントを刻み、敵の数を減らしていく。
「はあっ」
覚えたばかりの〈払い斬り〉はコンボに繋げることができる。カウンター以外にも斬り付けた後に繰り出すことで、連続で斬り付けることが可能になる。
コスパもよく使い勝手がいい。剣技だからこそ威力が高く、敵を一撃で倒すことができる。
あとはドロロンだけだ。物理攻撃が効かないので魔術を放つしかない。
でも詠唱が必要になる。詠唱中は手を止めなければいけなくなる。
そう思っていたらラーニングが発動する。〈魔力弾〉という特殊術の取得に成功する。
「やあっ」
発動すると黒い球が生まれてくる。一定の距離まで貫通作用があるらしく、複数の敵にダメージを与えていく。
これは使えるね。〈魔力弾〉だけでも十分にせん滅できるよ。
「行けるわ! このまま敵を倒せば何とかなりそうよ!」
レイラさんの声が聞こえてくる。二人とも無事みたいだね。アシスト画面を意識すると、視界に仲間のHPバーが見えてくる。
天井から光が差している。ガレキが散乱して地面に苔が生えている。
ずっと奥に緑が茂っている。簡単にたどり着ける距離にある。だって敵が弱いんだもん。
「ディーさん! 何か居そうな気がします!」
それ、死亡フラグだよ?
ボス級の敵が来るに違いない。だってそういうもんでしょう?
「――ありがとうございます! これでグラッセ神父の病気が治ります!」
そういえば、ボスにディジーズワイトが出て来たね。〈魔力弾〉を連発したら死んじゃった。思い出してみても弱かったね。
「これでお別れですね。一緒に冒険ができて楽しかったです」
サクラがレイラさんと話をしている。
「こちらこそありがとう。これで孤児院が救われるわ」
そういえば病気になった原因を聞いていなかったね。今更だけど、レイラさんに尋ねてみよう。
「ねえ、レイラさん。今回の原因はなんだったの? 理由があるなら教えてよ」
レイラさんが困ったような顔になる。
「神父は薬に詳しいの。地下で薬草を取りに行った先で病気になったのよ」
「それで?」
「分からないかしら? 元凶はあなたが倒したディジーズワイトよ」
「……そうなの?」
えっと、弱かったよ?
「あんな化け物、今までに居なかったのよ。ダンジョンのボスでさえワイトよ。それでもボス部屋から出ることがないわ。ああやって独立して動いてくることはないのよ」
せっかく行ったんだからボスも倒して帰ればよかったよ。なんか拍子抜けだね。
「それをあんなに簡単に倒してしまうんだもの。こんな可愛い顔をしているのに、どこにそんな力があるのかしらね」
相性が良かっただけだよ。敵の範囲攻撃がたまたま魔力壁で防げたからだよ。
「でもこれからは落ち着くと思うわ。あなたが倒してくれたおかげで行きやすくなるからね。ありがとう。報酬は無いけど、何か困ったことがあったら遠慮なく言って欲しいわ」
その伝えのあとにメッセージログが流れてくる。信用ポイントと経験値が取得される。
「お疲れ様です。ディーさんはこれからどうするんですか?」
「ログアウトするよ。もう時間だしね」
「残念です。もっと遊びたかったです」
「土曜日は休みだよ。あとでログインするかもしれないから、そのときになったら遊ぼうよ」
「うぅぅぅ、それも残念です。休日はやることが多いんです。時間がありません」
「なんか大変だね」
もしかして社会人なのかな? それとも学業が忙しい? どちらにしても、ボクよりも年上かもしれないね。
「楽しかったよ。また遊ぼうね」
「はい。お疲れ様です」
そう言って、ボクは拠点に戻る。
「あれ?」
「ふふ」
「あら?」
どうしてサクラとレイラさんが居るの?
「……ここがディーさんの拠点ですか」
もしかして、パーティーで居ると一緒にワープされるのかな?
「いい家ね」
「ありがとう。それでね。どうしてレイラさんとサクラが居るの?」
「あなたが連れて来たんでしょう?」
「ふふ。引っ掛かりましたね! パーティー登録を解除しないとダメなんですよ。解散をコマンドメニューから選択するか、ログアウトするしかないんです」
「だったら解散するよ。今から申請するから、ちょっと待っていてね」
メニューを開いて、パーティー解散を宣言する。するとサクラと別れた案内が表示される。
「残念です。ディーさんと離れるのはさびしいです」
「二人ともありがとう。これから気を付けて帰ってね」
これで一安心。
あとは畑の作業だけ。取得した生命草を増やす設定をしておこう。
どうせだからログアウト中の処理もしておこう。戦闘できないけど、生産はできるみたい。ガラス玉と蒸留水と魔力水を作っておこう。
「ただいま」
「お帰りダス。お客さんが来ているダス」
「誰かな? と思ったら二人ともまだいたの? もう帰ったと思っていたよ」
「すごいです。ポーションがいっぱいあります。作り方を知っているんですか?」
「こんなに安くていいのかしら? 私も買わせてもらうわよ」
「いい品だね。購入数を制限した方がよさそうだよ?」
「いい加減にしてよ! ボクは落ちるからね! あと誰だよ! 知らない人が居るんだけど!」
さりげなくローブ姿の男性が居る。
「初めまして。自分は隣に住むロックスと言います。まさか隣人がディーさんのお店だとは思わなかったのでびっくりしています。あいさつ代わりに来たんだけど、今いいかな?」
「いいけど。よろしく」
「よろしく。よかったら畑で取れた物を売ってくれないかな? うちは野菜と家畜を育てているから、物々交換でもいいんだけど。お隣同士仲良くしようよ」
「いいよ。今度設定しておくね」
「ありがとう。助かるよ」
「ディーさん。ポーションの作り方を教えてください」
「むう! サクラの意地悪! ボクはもうログアウトするからね!」
さりげなくロックスからフレンド登録が来たのでボクは許可を出す。そのままログアウト申請をして、カウントを耳にする。
だってサクラがうるさいんだもん。いつまでも切りがないからね。
改訂履歴
書きたいことがあるのにうまく書けません。




