第33話 ラーニングがずるい
前回の続き。
家に帰ると召使がいる。家を改装した方がいいと言われ、頼むことにする。時間が掛かるので根源のダンジョンに足を運ぶ。そこで大きくレベルを上げ、レッサードラゴンを仲間にする。強くなったニルト〈ディー〉が拠点に戻ると改装が終わっている。さあ今からポーションを作ろう。そんな感じで話が始まります。
書見のほどよろしくお願いします。
まずはポーションシダを乾燥させないといけないね。でも時間が無いので今回は諦めよう。代わりに蒸留水で煮詰めた物を用意しよう。
「じゃあ、始めるね」
手早く包丁でポーションシダを切り分ける。煮込み用の壺に入れていく。
蒸留水を流し込み、魔動コンロに火を入れる。
「あとは一時間ボイルするだけ」
片手間で錬金陣布を用意する。
ガラス玉で大量の極小瓶を作る。煮汁を取り分ける器として使うことになる。
「ぐるぐるぐる~」
いつものように鼻歌を奏でる。
「ぐるぐる~」
あらかじめ用意した二種類のマテリエと蒸留水を合成し、魔素中和剤とヒーリングリキッドを作り上げる。その二つも合わせ、薬効水を作る。
「ぐるぐるぐるぐる~」
薬効水と煮汁を合わせ、できた合水と魔力水を合成する。
「ぐるぐる、ぐるぐる~」
これで初級ポーションの完成だね。
「できた」
空色に輝く小瓶が姿を現す。光と共に二〇本が錬金陣布の中央で形になる。
「あとは量産するだけ」
効率を上げて二日は掛かるかな?
がんばってやればすぐだよ、すぐ。
「シンディさん。こんにちは」
「こんにちは。ディーさん。ポーションの件はいかがですか?」
「完成したよ。確かめてよ」
「本当ですか! ありがとうございます! 受け渡しの許可をお願いします!」
取引申請が来たのでストレージにある一〇〇〇本を選択する。
「これが……」
シンディさんの手にボクの作った初級ポーションが握られる。
何かを見るように黄色い瞳を向けている。
「ふ~」
困った顔になる。
まずいね。何か失敗しちゃったのかな?
本に書いてあったレシピをアレンジしたのがいけなかったのかな?
「はあ~」
二回目のため息だ。悩ましい。少し口を開いた顔をしている。
「どう? 悪くないはずなんだけど」
「これが初級ポーションなのですか?」
「その言い回し、ダメなのかな?」
失敗しちゃった。良かれと思って工夫したのがいけなかったみたいだね。
気が抜けちゃったな。
「違います。このままでいいんですよ」
「え? いいの?」
「はい。逆に効能が強すぎるんです。薄めて再利用することにします」
「え? そうなの?」
なんだ、心配させないでよ。
「単価が九〇〇ギニーです。千本ありますので、九〇万ギニーを支払いしますね」
「そんなにいいの?」
「当然ですよ。いい仕事をしてきてくださったんですもの」
突然に効果音が鳴り響く。『特別クエスト〈初級ポーションを大量に納品しよう〉を完了しました』とするメッセージが流れてくる。信用ポイントが一五〇〇〇CP。報酬に九〇万ギニーを獲得したとする文字が表示される。
「ディーさん。ありがとうございます。これで開拓村の皆さんも救われます」
シンディさんが身を乗り出して手を握ってくる。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
何度もお礼を言う。
わざとらしいね。
ほほが笑っているよ?
「もういい?」
「大変に満足しました。私はディーさんが大好きですよ」
ぶっちゃけたね。
「それで、開拓村ってボクでも行けるのかな?」
なんとなく聞いてみる。
「行けますよ。商業ギルドに行って依頼を受ければすぐですよ」
「そうなの? あとで行ってみるね」
「はい。他に聞きたいことはありますか?」
「うん。じゃあ……」
ゴミ拾いを終わらせよう。信用ポイントを稼いでおかないとね。
「ただいま」
雑務が終わったので店売り用のポーションを作成する。
畑を増やして薬草の量産を始める。
お腹が空いたのでホーンラビットを狩ってくる。
特製の塩で肉をソテーにする。ドララと一緒に食べて満足する。
「きゅい、きゅい」
「行くか?」
「きゅい」
ついでに串を二万本用意した。観光街ローデスにワープする。
「ヘーデルさん。こんにちは」
「ディーさんじゃないですか。待っていましたよ」
「どうしたの?」
すると『特別クエスト〈屋台を出して観光地を盛り上げよう〉を完了しました』とするメッセージが流れてくる。
同時に二〇〇〇CPを獲得し、信用ランクがFに昇格したとする文字が流れる。
「いいの?」
「お嬢さんのおかげで新しく屋台を出したいという人が増えてきたよ」
「そうなの?」
来るときに見た気がする。それなりに人も居た気がする。
少しだけだけどね。
「次のお願いなんだがね。お客を集めて欲しいんだ。半年に一度売り上げを競い合いっている。ぜひランキング一位を目指して欲しい」
「一番になったら何かもらえるの?」
「そうだね。商業ギルドから景品が出るよ」
「どんな物なの?」
「食材を選べるんだよ。欲しい物を手に入れることができるはずだよ」
「ふーん」
関係ないかもね。一位になれる訳ないし、聞き流しておこう。
これからも暇になったらヘーデルさんと話をしよう。なんとなくクエストがありそうな予感がするからね。
「じゃあ行くね。しばらくしたら顔を出しに来るよ」
「そうかい。今回はありがとう。また何かあったらよろしく頼むよ」
「うん、いいよ。いろいろと楽しんでいるから気にしないで」
「きゅい、きゅい」
ドララも挨拶をしている。小さく飛び回っている。
ボクは手を振って歩いていく。遊歩道の奥にある屋台に向かっていく。
人が居るね。ベンチで五人が話し合いをしている。
お客さんは居ないみたいだね。手が空いているエルメさんと目が合ったので声を掛ける。
「調子はどう?」
「順調ですよ」
「そう。よかった」
それにしても本当に綺麗な人だね。
金髪碧眼の美人さん。ドレス姿で給仕とは思えない魅力がある。
「ドララさんもこんにちは」
「きゅい、きゅい」
なんだか嬉しそう。ドララの瞳が輝いている。
「売れ行きはどうなの?」
「先ほどまでたくさんの方がいらっしゃいました。それぞれに美味しいと言ってくださって、評判になっていますよ?」
「よかった。追加を持ってきたから補充しておくね」
「助かります」
コマンドを開いて、売上金の5961ギニーを受け取り、用意した二万本を選択する。ついでに特性塩も追加する。
「これだけあれば足りるよね?」
三日間で2200本ほど売れているから、しばらくは問題ないよね?
「そろそろ行くね。お店は任せたよ」
「はい。お任せください」
「きゅい、きゅい」
そう言って屋台から離れると、一人のプレイヤーが近づいてくる。
キラキラが気になるのかな? 少し怖い感じがする。
遠くに移動しよう。
マップを開いて商業街ヘテにいく。
「あっ! ちょっと!」
お断りだよ。
見ず知らずの人からの質問は受け付けないんだからね。
「ここが商業ギルドか……」
きらびやかなフロントルーム。まるでドラマに出てくる高級ホテルの玄関口。
大理石風の広場に数人のユーザーが集まっている。
でも全員がボクに気付く。驚くような顔になる。
注目されるのは嫌だよ。さっきも何かを言われそうになったし、感じが悪いよね。
さっさと受付に行こう。
「こんにちは」
カウンター越しから男性に声を掛ける。
「当ギルドにお越しいただきありがとうございます。私はギニール。ご用件を伺いましょう」
「開拓村に行きたいんだけど。どうやったらいいの?」
「ありがとうございます。配送の仕事ですね? ちょうど探していたところですよ」
すると『クエスト〈開拓村へ荷運びをしよう〉を受注しました』とする表示が出る。
「まだ受けるなんて言ってないのに……」
その気はないけど撤回したらどうなるのかな?
「積み荷の種類から難易度が選べます。初心者向けの薬の運搬。やや難しい生活必需品の運送。量が多く魔物と遭遇しやすい食料の輸送。どちらになさいますか?」
「当然薬の運搬にするよ。初めてだし、何も分かんないからね」
「これら全てがチーム活動になります。先着8名。定員数に達した時点で開始になります。ディー様はレベルが27。上級の食料輸送をお受けになるのがよろしいかと思います」
「そうなの? じゃあそれにするね」
「かしこまりました。手続きをいたします」
そう言うとすぐに転送が始まる。森の入口に移動する。
「もう開始になるの?」
「やっとかよ! これで行けるようになるな!」
「本当ねえ。試しに受けたけど意外とやる人が居ないから焦ったわよ」
「それで? 全員のクラスはなんだ? 俺は剣士だから前衛な」
「私は魔術士よ。後衛ね」
「治癒士」
「弓使い」
「盗賊よ」
「盾使いだ」
「同じくガードです」
「えっと、冒険者だよ?」
「はあ! クソ使えねぇのがきたな!」
クソ使えないんだ。
「おい! 足を引っ張るなよ……って? え!」
「可愛いんだけど」
「きゅい、きゅい?」
「ドラゴンですね」
「どういうこと?」
「チート?」
「いいなー。ドラゴンどこで仲間にできるの?」
「マジかよ……」
「お集まりいただきありがとうございます。これより開拓村に向かいます。馬車を一台用意しました。無事にたどり着くまで護衛をお願いします」
「あ、おい!」
「開始になります。準備をよろしくお願いします」
即座にカウントが始まる。全員の動きがあわただしくなる。
「ボクは使えない冒険者です。できるだけがんばります。よろしくお願いします」
「よろしく」
「かわいい」
「ディーさんって言うんだ」
「スクショです。スクショ」
「自慢できるな」
「ヤバいっしょ。有名人ジャン」
「すまん。言い過ぎた」
カウントが終わる。効果音が流れた途端に馬車が動き出す。
「ゴブリン」
「初めて見た」
「ガードは任せろ!」
「私も前に出ます!」
「回復は任せて」
「弓で応戦するっショ」
盾使いの二人が前に出る。ゴブリンが棍棒を叩きつけてくる。
「HPが一割持っていかれた!」
「強いです」
どんどん増えてくる。ボクも前に出よう。
「ドララも行くよ!」
「きゅう!」
「ディーさん! 前に出たらだめです!」
そんなに強いの? 剣技〈スパニッシュ〉だとどうなるのかな?
「はっ!」
あれ?
「うおっ」
「マジで!」
三体が一気に消えた?
「え?」
「なによ、今の」
「おいおい」
「きゅう!」
ドララが火炎放射を放つ。大量の敵が一瞬にして消えていく。
「すげぇー」
「ありえないわ」
「スクショです、スクショ」
「いや動画だろ!」
これアクションゲームかな? 時間内に終わらせればいいんだよね? なんか楽しくなってきた。
昔流行った無双ゲームみたいで爽快感があるね。
「はっ、やあ!」
それにしても弱すぎる。剣技を使う必要もない。一撃入れるだけで消えていく。
順調にストーリーが進んでいくね。進行役の御者が状況を説明してくれる。
「おお!」
「かっけ!」
「なによ。何なのよ」
外野がうるさい。いちいち驚くの止めてくれない?
「おう! デカいのが二体も出て来たな!」
「マジパねえ」
今度こそ手応えがありそう。二メートルを超えるホブゴブリンが走ってくる。
斬り付ける。赤いエフェクトが刻まれる。棍棒の振り落としに合わせ〈切り返し〉でカウンターを決める。そのまま〈スパニッシュ〉で切り倒す。
「はえー」
「強すぎる」
「どういう反射神経しているのよ」
追加の一撃でもう一体のホブゴブリンも終わってしまう。
ゴブリンが沸いてくる。ドララも調子がいいみたい。尻尾の一撃で次々と敵を倒していく。
「これ、俺たち必要ないっしょ」
「だよね……」
「動画はアップしておく」
「スクショも投稿します」
「ドラゴンさんがかわいい……」
もうボス?
「ベリアルグリズリー。始めて見る敵ね」
「でかいな」
ボクの二倍以上ある巨体が四つ足で迫ってくる。
灰色のクマさんだね。
「こいつで終わりかな!」
向ってくる方向にボクは疾走する。
敵の目前で立ち止まる。
噛みつきを仕掛けてくるのでステップで回避。爪の二連撃がくる。
とっさに〈パリィ〉。そして〈パリィ〉。連続で受け流し、反撃に〈三連斬り〉を繰り出す。
しかし敵の攻撃が止まらない。
仁王立ち。両手でひっかいてくる。
剣技〈パリィ〉。また〈パリィ〉。何度も攻撃を無効化にする。その様子がかっこよく見えるらしく、背後の仲間たちが驚いている。
「かっけぇー」
「がんばれ、がんばれ」
「何なのよ。なんでこんなに洗練された動きができるの?」
「俺たちと違い過ぎる」
「かわいい」
「なあ? 冒険者って本当は強いのか?」
そんなことよりも見てないで攻撃してくれないかな?
なんとなくそう思いつつもボクは反撃に出る。
ドララが火炎放射を放ってくれたので、炎がベリアルグリズリーに引火する。巨体が仰向けになり、地べたで暴れまくる。
「すごい迫力……」
「ゲームとは思えないですね」
これはチャンスだね。一気に畳みかけよう。
正眼の構えから剣技〈三連斬り〉を何度も繰り出す。
「すげぇー」
「なんでノーモーションなの?」
「マニュアルだと光るエフェクトが発生しないんだ!」
「マニュアルモードとか無理ゲーだろう」
「ディーさんかっこいいです!」
敵が消滅した?
剣技を十回出しただけで終わっちゃった。
「これで終わりなの?」
ちょっと簡単すぎない? 信用ポイントと経験値と報酬が手に入り、マップ移動が開始される。
「お疲れさまです」
カウンター越しに受付の男性と対面している。
「ここはどこなの?」
「開拓村の商業ギルドになります」
「そうなんだ。商業ギルドってなにをするところなの?」
今更だけど聞いてみる。
「取引のサポートをする場所になります。家やお店の貸し出しに、バザーの許可証の発行やクラン申請の取りまとめをするところでもあります」
「だったらここでも家が買えるのかな?」
あれば便利だよね。
「そうしたことはギネルダヤでのみ対応しております」
「じゃあここの商業ギルドは何のためにあるの?」
「買い付けを行っています。周辺で取れたアイテムや素材を売り払うことができます」
「例えばどんな物があるの?」
「近くに鉱山があります。採掘した鉱石に魔物の素材や薬草の類が持ち込まれますね」
「それ、ボクでも買い取れる?」
「できませんよ。領主様の許可が必要です」
「そっか」
だったらこれで売ってくれないかな?
ストレージから紋章入りの獣皮紙を取り出す。
「それは! 王城への通行許可証ではありませんか!」
「売ってもらえる?」
「仕方がありませんね。今回だけですよ?」
「本当!」
「ただし! 今回だけですよ?」
「うん、いいよ。品物を見せてよ」
取引コマンドが開かれる。数量が記載されたアイテムが表示される。
「全部もらうよ」
こういうのは買っておいた方がいいよね。
「ありがとうございます。100000ギニーになります」
「表示よりもだいぶ安くない?」
「王様の客人です。安くするのは当然です」
キラキラのせいかな? また割引してもらえたよ。
「じゃあそれでお願い」
「ありがとうございます」
やったね。マジック草が手に入ったよ。これでマナポーションが作れるね。
他にもインゴットが手に入ったよ。変わった名前のハーブもあったし、あとで栽培しておこう。
「他にご質問はありますでしょうか?」
「外に行くことはできるの?」
「領主様の許可が必要です。信用ランクCの実績があれば可能です」
「じゃあどうやって帰ればいいの?」
マップにはギネルダヤの表記がない。ワープで帰れないんだけど。
「この場で対応しています。ギネルダヤに戻りますか?」
「うん。お願い」
帰ろう。
クエストを受ければまた来ることができるよね?
「かしこまりました。馬車の手配をします」
すぐに噴水がある公園に転移される。
メールの着信がくる。確認のためにシステムメニューを開く。
「サクラからだ」
一緒に遊びませんか? だって。
いいね。まだ時間があるし、遊ぼうって返信しておこう。
一度拠点に戻ってアイテムの整理をしよう。
「かわいいです!」
「きゅい、きゅい」
公園のベンチに座って話をしている。
ドララがサクラの腕の中に納まっている。
「懐いているみたいだね。綺麗な女の子が好きなのかな?」
「きゅい!」
「綺麗だなんて。ディーさんに言われると説得力がありません。それよりもこの子はどうしたのですか?」
「敵として遭遇したから使役したんだよ」
「使役? ディーさんは魔物使いになったんですか?」
「ううん。冒険者だよ?」
「えっ⁉ 冒険者になったんですか!」
サクラが立ち上がり、黒い瞳を見開いている。
「そんなに驚くことなの?」
「だって不遇クラスですよ? なった人のほとんどが転職したって聞きます」
「そうなの? もったいないね」
冒険者になればラーニングができる。最強になれるかもしれないのに残念だね。
それとも違うのかな? 他のクラスはもっと強いのかな? ボクの認識が甘いってことなのかな?
「うーん……、でもディーさんですからね。それくらいが丁度いいのかもしれませんね」
「それはどういう意味だよ。ラーニングは強いよ? 敵の技が覚えられるんだよ?」
「知っています」
「だったらいいよね。最強になれるんだよ? どうして不遇なの?」
「それ、本気で言っているんですか?」
「うん」
「いいですか? ラーニングが発動する条件は極稀なんです。幸運が低い人ほど発動することがありません。しかも幸運はレベルアップで上昇することが稀なんです。情報屋の検証では、レベルを8まで上げる間に一回しか発動しなかったと云われています」
「でもボクは毎回発動するけど?」
「そんなはずがありません。たまたま運が良かっただけです」
「そうなの?」
だったらボクの幸運が高いんだよ。見たことがないけど、絶対にそうとしか考えられないよ。
「いいですよ。そこまで言うのなら、今から一緒に検証しましょう」
「どこに行くの?」
「ディーさんは信用ランクがFになったんですよね?」
「うん」
「だったら教会に行きますよ」
「どうして?」
「丁度いいクエストがあるんです」
そう言い放ったサクラに付いていくボクは、住民街ザッカートに転送し、街外れの孤児院にたどり着く。
「お願いします! グラッセ神父を助けてください!」
教会のシスターが困っている。
神父が病気で倒れたらしい。薬を買うにしても錬金術師が居ないため、手に入れることができない。作るにしても材料に生命草が必要になる。地下奥地に群生する貴重な薬草らしく、どうしても取ってきて欲しいと頼まれる。
制限時間は半年。それまでに用意しなければ神父が死んでしまう。
特別クエスト。一度限りの依頼になる。
「ここは敵が強いらしいです。いろいろな技を使ってくるので、検証にはもってこいです」
「そうなんだ」
まるでニューヨークの下水道みたいな場所だね。水の量が少ないけど見た目がまんまだよ。
「出てきましたよ!」
サクラの装備がすごい。全身フルプレートで大盾とハンマーを持っている。
敵が三体走ってくる。ポイズンビックマウスの表記がある。黒い毛並みに中型犬くらいの大きさがあるね。
「ボクに任せてよ」
「きゅう、きゅう」
こういうのは先制するのが一番だよ。
剣技〈スパニッシュ〉で一気にダメージを稼ぐんだ。
「危険です! 毒攻撃を仕掛けてきますよ!」
「はっ!」
稲光が走る。一瞬にして敵が消滅する。
「どういうことですか?」
「よわっ」
効果音と共に『特殊術〈毒撃〉をラーニングした』とするメッセージが流れてくる。
「なっ、なんでなんですかっ!」
「ほらね。覚えたよ」
毒撃って何だろう。出し方が分からない。
「うぅぅぅ。なんだか悔しいです。もう一度試してみましょう」
「いいよ」
道なりに真っすぐ進む。流れがある水道を歩んでいく。
「今度はスケルトンですね。多彩な攻撃を仕掛けてくるので強いらしいです」
「任せて」
カタカタと骨格の音を鳴らす二体が現れる。盾と剣と槍を持っている。
「人型の敵は得意なんだよ!」
そう言って、剣で切り込んでくる瞬間に〈切り返し〉でカウンターを合わせる。
そのまま〈パリィ〉で槍突きをはじき返し、すかさず振り下ろしの斬り付けをする。遅れて横なぎの〈スパニッシュ〉を与えると、二体が一瞬にして消滅する。
「強すぎます!」
ログに『剣技〈払い斬り〉をラーニングした』とする表示が流れてくる。
「ず、ずるいです!」
「えー?」
「どうして一回でラーニングができるんですかっ!」
そんなこと言われても、できるんだから仕方がない。
素早くサクラがボクの肩をつかむ。まじまじと見詰めてにらみを利かせてくる。美人に近づかれるとはずかしい。早く離れてくれないかな?
「ディーさん! ステータスを見せてください!」
「う、うん」
改訂履歴
2026/1/26 文章の手直し。微妙に失敗したかも。
2026/1/30 『ぐるぐる』とか直す。少し手直し。
やっとプレイヤーとの絡みが始まりました。




