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第28話 事件の現場検証

 前回の続き。

 料理部の部室に向かった先で、教頭が休部を言い渡す。

 その話を聞いていた初来愛が現れる。

 はたして、料理部と図書部はどうなるのでしょうか?


 書見のほどよろしくお願いします。

「これは、これは、大円さん。いらっしゃっていたのでしたらお声を掛けてくださればいいのに」


田洞たほら教頭が取り込み中でしたので、邪魔をするのも失礼かと思ったのです」


「そのようなお心づかいは必要ありませんよ。ですが、そのご様子ならば説明をしなくてもお解りいただけますよね? 図書部はしばらく休部にします」


 調理場とした家庭科室の中央に歩み寄る初来愛に、十二人の視線が集まる。


「分かりました。慎んで休部はお受けするのです」


「いや、素晴らしい! 実に潔いですなあ! 全く結構なことです!」


「ちょっと初来愛。どういうこと?」


「いいのか?」


 那依が声を上げ、奏生が遅れて後ろに付き、初来愛の耳元で小言を口にする。


「このままだと部活ができなくなるぞ?」


「はい。それは分かっているのです」


大円おおまど役員長は話が分かるようで助かりますよ」


 スーツ姿で小柄。横柄に薄い前髪から覗く表情を嫌らしく歪める田洞教頭。まるで馬鹿にしたような態度がテレビドラマに出てくる悪役みたいだと思案するニルトが、二人に遅れて家庭科室に入ってくる。


「ですから、今日一日は活動してもよいと考えていいのですよね?」


「は? 何をおっしゃっているのですか?」


「先ほどおっしゃっていましたよね? 教頭の権限により本日をもって執り行うと。つまり今日の終わりまでは時間があるということでよいのですよね?」


「確かにそうは言いました。しかし」


「いいえ。一日あれば十分なのです。問題を解決し、職員会を開き、安全確認を徹底させれば済むことなのです」


「ですがこれは高等部の問題です。あなたは中等部の学生なのですよ。中等部の学生が高等部に関与することなど、本来あってはならないのです」


「私は私立千城学園の役員長なのです。役員としての規律に準じて発言をしているのです。そのうえ図書部は大学合同研究会に所属しています。高等部の教頭の権限だけでは本来立場上すぐには対応できない決まりがあるのです。ですがそこは責任を感じ、自主的に対応すると言っているのです。その意を組んではいただけないのでしょうか?」


「分かりました。そこまでおっしゃるのでしたら異論はありません。ですが、本日中に問題を解決していただけなかったときには、言葉通りに休部とさせていただきます。よろしいですね?」


「はい。それはもちろんなのです」


「よかった。それを聞いて安心しました。では少し名残惜しいですが、このあと予定があるので、僕はこの辺で失礼をさせていただきます。こう見えてそれなりに忙しい身なのでね」


「はい。お忙しい中ありがとうございます」


「いいえ」


 そう言うと教頭は廊下へと歩いていく。


「初来愛。あんなこと言って大丈夫なの?」


「はい。こうしないと後で揚げ足を取られて大変なことになるのです」


「にしても教頭の奴、俺たちを目の敵にしてひでぇこと言うなあ。ハゲのくせにむかつくよ」


「包夢。気持ちは分かるが、そういういい方はするなよ。西藤先生がいるんだぞ?」


「だってよう。お前の好きな那依ちゃんがいじめられたんだぞ? ネチネチネチネチと。あいつなんて言ったと思う? 黒咲さんと話していても意味がありません。あなたたちはただの学生でしょう? この話の結果に対しどう責任を取るおつもりですか? だってよう。あんな奴がなんで教頭をやってぇるんだよ」


「ちょっと待って。木上くん。奏生が私を好きって本当なの?」


「本当だよ。この前好きな子が居るという話をしたら、那依ちゃんだって言っていたよな? まあ俺は年下が好きだから、というか、初来愛たん一筋なんだけど、最近はニルトちゃんでもいいかなって思っているんだけどね」


「ちょっと奏生、どういうこと! 私は幼馴染で家族みたいだから恋愛対象としては見られないって言っていたじゃないの!」


「いや、そういう訳でもなく。というかあの時はそう言わないといけなかっただろう? 状況を考えろよ。教室中の皆に聞かれて噂にでもなってみろ。後でいじられ続けるんだぞ」


「それで嘘を吐いたっていうの? 私の気持ちはどうなるのよ! 私、ショックだったんだからね!」


「悪かったよ。後で誤解だって言うつもりだったんだ」


「いつ言うつもりよ。この話は去年の今頃だよね? もう一年経っているのよ! 私、村中君に告白されているんだけど?」


「村中? どこの村中だよ。俺が話をつけてやる」


「いいよ。私、断るつもりだから。それよりもこの埋め合わせはしてくれるんでしょうね?」


「わかった。今度の休みにでも話をしよう」


「約束だよ? 私、明日は一日奏生の家に居るからね」


「あ、ああ。そうしよう」


「いやあ、見せつけてくれるねえ」


 続ける二人の会話に耳を傾ける全員が何かを想像し、一部の女子たちが顔を赤くする。

 木上包夢がニルトの隣に立ち、「ようやくこれで落ち着ける」と、愚痴のように小言を漏らす。

 その伝えに反応するニルトが、「エッチなことするのかな?」と、真顔で首を傾ける。


「どうかな? あそこまで腐れ縁だとそうは行かない気がする」


「ふーん。好きなら好きでなにしてもいいと思うけどね」


「ちなみに俺はニルトちゃんも好きだよ。ニルトちゃんは俺のこと、どう思っているのかな?」


「えっ? 嫌いじゃないよ。でもね、男の人と好き合うことは無いと思うんだ」


「そうか。だったら俺と一緒にデートにでも行ってみない?」


「え?」


 どうしよう。

 時間に余裕がないかも。でもティアに云われているからね。人付き合いは大切にしないといけないからね。そう男になるための試練と捉え、応えを口にする。


「いいよ、明日は」


「包夢。ニルトはダメなのです。それに今は忙しくて時間がないのです。また今度にしてください」


「お? だったら初来愛たんも一緒にどう? 俺、エスコートだけは自信があるんだ」


「少しよろしいですか? 西藤先生に聞きたいことがあるのです」


 包夢の誘いに聞く耳を持たない初来愛が、料理部の顧問に声を掛ける。


「なにかしら?」


「今から私たちとそちらの生徒たちで技術棟に行きたいのです。行ってもよいですか?」


「それはできません。教員一名の同行が必要になります」


「でしたら先生もご一緒してください。お時間はあるのでしょう?」


「ええ。それは構わないわ。幸い今日はもう授業がないの。ただ来週の実習で使う食材の準備をしないといけないから、今から手配したいのよ。付きっきりになるのは避けたいわね」


「先生! その言い方はあんまりです! 料理部が休部になるかもしれないのですよ?」


 部長の佐東潮美が制服の裾を握り、目力を強めて声を荒げる。


「そんなはずないでしょう? 私も休部になってもらいたくないと思っているわ。でもね。このままだと存続さえも許さないという声があるのよ? だったら少しの間だけ休部に努めて次からがんばって行く方がいいに決まっているわよね?」


「でもそれじゃあ私たち三年の発表会が無くなってしまいます。今まで注目して応援してくださったOBの方々や、大学に行った先輩方も楽しみにしてくれています。それを台無しにしてしまってもいいのですか?」


「仕方がないのよ! 私も分かっているの! でもね、職員会で決まってしまったことなの!」


 西藤先生が困ったように大声を張り上げる。ブラウスのポケットからハンカチを取り出し、目元を拭う。


「ごめんなさいね。つい怒鳴ってしまって。私ね、皆のためにいろいろと弁明はしてきたつもりなのよ。それでもね、教頭が駄目だって。絶対に許さないって言うのよ」


「先生……」


 困ったように眉を寄せる佐東潮美と西藤教諭に全員の視線が集まり、その二人の間に初来愛が口をはさむ。


「源次郎はまだ帰ってこないのですか?」


「ええ。校長先生は来週の月曜日になります」


「詳しく聞かせて欲しいのです」


 校長が居ない場合は教頭が代理を務めることになる。

 やりたい放題。

 そんな話に耳を傾け、どこか無責任な考え方をするニルトが、早く問題を解決して家に帰ろうと願い、気になる女性に近づいていく。


「こんにちは。ボクはニルトだよ。お姉さんがゴーストに襲われた村上さんだよね? 怪我とか大丈夫だったのかな?」


 根拠のない決め付けだけど。犯人はこの人で間違ないよね?

 そう確信したように青緑の瞳を緩め、パーマロングで少し暗い雰囲気の村上を見上げ、愛想よく微笑む。

 前髪が長めに整い表情が大人しく、落ち着いた気色の唇が開かれる。


「あの、私は大丈夫よ。それよりも中田先輩が心配で……」


「中田先輩って……」


 よかった。この人が村上美憂さんで間違いなさそうだね。

 きっと犯人はこの人だ。

 そう心内で確信し、村上のうっそうとした視線の先が一人の女性にいく。


「ちょっと録真。どういう状況なの? あたし訳が分からないんだけど説明してよ」


「料理部と図書部が休部になる。さっきの騒ぎのせいでね。俺が先生に報告しなかったのがいけなかったんだ」


「だからってどうして魔物が出るのよ。あたし聞いてないわよ。咄嗟に避けたからいいけど、明らかにあたしを狙っていたわよね?」


「知るかよ。魔物の都合なんて分かるわけがないだろ。梨理はダンジョン科だろう? 何か恨みでも買ったんじゃないのか?」


「あたし、ゴーストなんて倒したことないよ」


 なんか変だよ。

 奏生さんが言ったのは、村上美憂さんがゴーストに取り込まれて中田梨理さんに襲い掛かったという話だったよね? でも実際は中田さんが最初に襲われている。これは重要な証言だよ? そう話の違いが気になるニルトが、二人の隣に近づいていく。


「ねえねえ。ボクはニルトって言うんだけど、少し聞いてもいいかな?」


「あ、え?」


「なにこの子、可愛い……」


 幼げであどけない微笑みを浮かべる美少女を目にして、とても可愛いと感じた中田梨理が、茶髪に染めたセミロングの髪から覗く薄化粧の童顔を柔らかく緩ませる。


「どこから来たの? 日本語が上手ね」


「うん?」


 首を傾けるニルトに合わせ、中田が前屈みに視線を合わせる。朝野録真が学内情報イメージセンサアプリインスペクションで中等部の情報を参照し、遠くを見る目をニルトに向ける。


「中等部の特待生でアプレイス……。なるほど、俺たちに何か聞きたいことでもあるのか?」


「アプレイスなの? この子が? そっか。希少なスキル持ちなのね……」


 純粋に美しく魅了効果のある青緑の瞳も愛らしく、幼く整った容姿に惹かれ、朝野と中田のほほが自然と緩んでいく。


「ゴーストが出て来た時の話を詳しく聞かせてくれないかな?」


「どうしてそんなことを聞くの? もしかして探偵のまねごとでもしているの? 可愛いわね」


「いいじゃないか。話してやれよ。図書部に相談をしたのは俺らなんだからな」


「そうね、いいわよ。襲い掛かってきたゴーストを避けたらそこに居る村上さんに憑いちゃったのよね。それでも勢いが収まらなくて、ゴーストが村上さんの体を使ってあたしに襲い掛かってきたのよ」


「うん、うん」


「それで図書部の三人に助けてもらったの。それにしてもあの二人すごいわね。木上くんに東先くんだっけ? 流石はAクラスの男子だよね。頼りになるわ」


「なんだよ。俺が頼りないって言っているのかよ」


「そうよ、録真の嘘つき。この前言ったわよね? あたしが危険な目に遭ったら助けるって約束したじゃないの」


「ちがわ、ねえけど。でもよ」


「あたし、録真が助けてくれるって少しは期待していたんだよ」


 少しほほを赤くする朝野を目にしたニルトが、言い合う那依と奏生と見比べ、カップルにも違いがあるんだと疑問に首を傾ける。

 気になる朝野と中田の関係を確認をするため、甘い雰囲気に割り込み、声を掛ける。


「ねえ、ねえ。二人とも付き合っているの?」


「え? まあ……な」


「うーん、どうなんだろうね?」


「おい、そう言うなよ」


「だってさあ……」


 顔を少し柔らかくする二人の様子にニルトは肯定と感じ、その瞬間に感じた別の気配に気付く。


「ありがとう。なんとなく分かってきたよ」


「おう。よく分からないけどもういいのか?」


「うん」


「ニルト」


 西藤教諭との会話を終えた初来愛が近づいてくる。


「今から暗室に向かうのです。この前のように鑑定をお願いしたいのです」


「うん、いいよ。早く終わらせようね」


「え? それはどういう意味なのですか?」


 自信に満ちた目をするニルトの意味深な言葉に、初来愛が分からないとした風に、ロングの長い黒髪を揺らし、頭を小さく傾ける。


「うーん、くちゃい」


「お味噌の匂いですね。発酵が進んでいい香りなのです」


 白い頭巾に白い作業服を着るニルトと初来愛の会話に向け、料理部部長の佐東潮美がマスクに隠れた口を開く。


「今見てもらっている味噌は大学からの依頼で譲り受けた壺で発酵させた物になるの。一カ月ほど寝かせているのよ。こっちとそっちの壺は二カ月と三カ月寝かせた物になるわね」


「一カ月物はお味噌って感じがするのです。二カ月物は少しなめらかな匂いがします。三カ月物にもなるとさわやかな香りがするのですね」


「どれも普通の豆を使用しているんだけど、発酵具合が速くて、一カ月程度で一年間寝かせた物と同じ状態になることが分かっているのよね」


「素晴らしいのです。この壺が市場に流通するようになれば、より豊かな発酵食品が短時間で作れるようになるのですね」


「そうなんだけどね。このままだとそれも無駄になるのかもしれないのよね。なんだか悔しいよ」


「大丈夫なのです。必ず私たちが原因を突き止めてみせるのです。ですから教えてください。問題になっている物は今見た中にあるのですか?」


「えっと、三カ月物で、千城窟大豆を使用した物になるんだけど……」


 佐東潮見が振り向いた先に、ニルトが屈んで壺に触れている。

 その事実を目にした初来愛が、普段から信用している友人に不信感を募らせ、その疑問を払拭するべく、声を上げる。


「ニルト。何をしているのですか?」


 壺の蓋を開け、頭巾越しで隠れたブラウンゴールドの眉をハの字にする。

 その様子を目にし、佐東潮美が口を開く。


「その子が触っている物と近くに置いてある物が、同じ味噌壺になるんだけど……」


「ニルト。もしかして分かっていたのですか?」


「うーん、くちゃい。それにすごい力を感じるよ。これ、薬の素材にもなるかもしれないよ?」


「薬とは、どういう物かな?」


「魔力を回復させる効果がありそうだから、ダンジョン探索で疲れたときに使うと、効果が出ると思うよ。野営の粗食にお味噌汁。食欲不振に効くと思うし、食中りを癒すのとは違うけど、ちょっとした代謝なんかを良くしてくれる効果があるかもしれないね」


「よく知っているわね。今度調べてみるわ」


 そう佐東潮美が口にした後でニルトの瞳が赤く染まっていく。

 調べの力を使い、心内で結果を読み取っていく。


 名称 千城窟大豆の超熟成味噌

 品質 45

 レア度 E+

 効果 魔力回復微

 説明 千城窟ダンジョンの環境に適応した豆を使用している。発酵させたことにより魔素が分子に多く取り込まれ、食べると魔力を回復させる効果がある。通常の大豆と違い、タンパク質とカルシウムが多く、普通の物よりも旨味が強い。


「うん?」


 そっか。中身じゃなくて壺を見ないとね。

 原因は壺に使われている材料にあると考えるニルトが、赤い瞳を大きくし、黒く丸い容器に意識を向ける。


 名称 熟成の壺

 品質 50

 レア度 E+

 効果 保温 発酵促進 壊れやすい 品質向上

 説明 バグ研究の天才科学者の江読勇樹こうとくゆうきによって作られた壺。火の魔石と変化の魔石と風の魔石をプロトブルによって分解し、新しく変容させた物。試作品であり、壊れやすい欠点を有する。特性の効果が高く、作者の思い通りの性能を発揮する。


「なるほど」


 材料に複数の魔石が使われているね。

 赤い瞳を青緑色に戻し、壁際まで歩いていく。

 立ち会う佐東潮美の視線がいき、初来愛が口を開く。


「何を気にしているのですか?」


 その掛け声に反応することもなく、廊下側の壁をコンコンと叩くニルトが、何度かうなずき、二人に振り返る。


「皆が居る部屋も見せてもらえないかな?」


 その一言を皮切りに、三人が暗室を出て調理場に移動する。


「どういう状況だ? 何かわかったのか?」


「いいえ。ニルトに全て任せているので、私には分からないのです」


「そうか」


 奏生に答えた初来愛が、作業服を脱ぎ、壁際を歩き回る赤い瞳のニルトに黒い瞳を向ける。


「なるほど。だとすると……」


 あご先に指をそえ、独り言をつぶやき、作業服のまま名前の知らない男子生徒と女子生徒に近づいていく。


「ねえねえ、聞いてもいいかな?」


「いいよ」


「どうしたの? 何か分かったの?」



 背の高い男性が金原生馬。普通科の三年で研究発表会を控えている。

 その相方で部長の佐東潮美を補佐する普通科三年の葛西葉子。

 二人に対して見上げるように赤い瞳を向けるニルトがマスクをずらし、口を動かす。


「二人ともこの作業部屋によく来ると聞いているけど、最近ここで変わったこととか、違和感を覚えたこととかあるのかな?」


「えっと、言っている意味が分からないよ。どういう感じが変だって言いたいのかな?」


「そうだね。もう少し分かりやすく説明して欲しいな」


「そうだね、少し待ってね」


 気付いていないのかな?

 すでにおかしい気配がすると心内で告げ、瞳を凝らし、魔圧を開放する。


「こんな感じだけど、温かくなって来ないかな?」


「えっと。そうね。温かくなってきたわね」


「何かしたのかな?」


「ちょっとね」


 その行為に気付く奏生と那依と包夢。うっとりとした表情を浮かべる初来愛と合わせ、四人がニルトに近づいていく。


「遠本。何をした? 嫌な気配が一瞬で無くなったんだが」


「そっか。冷たい魔素が漂っていたのね。私、気付かなかったよぉ~」


「ニルトちゃんはすごいよなあ。その年でこれだけできるなんて。俺、感動したよ」


「ニルト。もったいぶらずに教えて欲しいのです。現時点で分かっていることを説明してください」


「うん。いいけど、真の犯人が誰なのかまだ分からないんだよね」


「つまりここでは言いづらいのですか?」


「うん。まだ確信が持てていないからね。もう少し調べれさせてよ」


「少し、いいかな?」


 佐東潮美が那依と包夢の間に割り込み、ニルトに声を掛ける。


「つまり、誰かの仕業だと言いたいのよね?」


「うん。そうだけど……」


「その根拠はなに? 警察の方々は違うとおっしゃっていたんだけど?」


「そうねぇ~。普通に考えると自然に起きた現象になるよねぇ~」


 那依が瞳を凝らす佐東に合わせ、ほほに指をそえる仕草をする。

 今までの状況を思い出した周囲の視線がニルトに注がれる。


「では犯人はこの中に居るとでも言うのですか?」


「うーん、まだ言えないよ。そう断定はできないからね」


「その言い回しだとこの中に居ると思っているんでしょう? 疑いを持っているって言っているようなものよね?」


「うん。それかもしれないけど……、もう少し調べさせてよ」


「どういう理屈でしょう! 詳しく教えてください!」


 白い作業服姿の佐東潮美が、背の低いニルトに近づき、見下げるようににらみを効かせる。


「少し落ち着いてください。佐東さん。怖い顔をしないでください」


「そうなのです。まだなにも分かっていないのに、ニルトに近づくのは止めてもらいたいのです」


「ですけど……」


 那依が心配し、初来愛が気を利かせ、佐東潮美の肩に触れる。


「いいよ。気になると思うから原因を教えてあげるね」


「ニルト。自信があるのですか?」


「うん。その前に聞きたいんだけど。この技術棟で魔力石や魔石を扱っているところってあるのかな?」


 その質問に対し、室内の気配が静かになる。


「誰か知らない? 魔力を扱う研究をしている部屋とか聞いたことがないかな?」


「一階の部屋は全て魔石を扱う場所になっているわね」


 作業着姿の西藤吉見教諭から声が掛かる。


「例えば、どういった用途で使われているのかな?」


「そうね。一番有名なのが二脚型の魔動機甲装マナフォースアーマの試乗試験をする部屋ね。他にも園芸部がダンジョンで育つ野菜の肥料に魔力石を使っているわ。マナフォトエレクトロニクスを学ぶ授業で使う部屋にも魔石と魔力石があるわね」


「そういうところって部屋の壁に防魔材が使われているよね?」


「良く知っているわね。中等部の学生なのに偉いわ。そうよ。魔素には引火する作用があるわね。特殊な物になると互いに反発し合い、有毒なガスを生むことになる場合もあるわね。だから魔素を通さないようにできるだけ室内の壁に保護材が使われているのよね」


「うん、うん。じゃあさあ、暗室はどうなのかな? あそこは魔防材が使われていないようだけど、大丈夫なのかな?」


「そうね。気付かなかったわ。二階と三階は普通の場所になるから、たぶん使われていないかもしれないわね」


「ちょっと待ってください! 魔素が漏れて何かしらの原因が発生したとでも言うのですか?」


 佐東潮美が眉を寄せ、怒ったように声を上げる。


「つまり私たちの管理が悪かったせいで事件が起きたとでも言いたいのですか?」


「違うよ。魔石や魔力石を使うといっても能動的に使う場合に限り、魔素に対する扱いを制限する必要があるんだよ。ここでは受動的な要素しかないからね。発酵したときに出る匂い酵素に含まれることがあるかもしれないけど、空間に作用することはまずないから、安全だとボクは考えているよ」


「だったらどういうことですか? はっきり言ってください」


「そうだね。その前に聞きたいことがあるんだけど。今日みたいに部屋に入れない人が入ることはよくあることなのかな?」


「もしかして、中田さんと村上さんを疑っているのですか?」


「ちょっと気になることがあってね。実際にどういう状況なのか確認をしておく必要があるんだよ」


「あるよ。俺が中田と村上を連れてくる」


「私も下級生を連れてくることがあるよ」


「そうだね。今は授業中で居ないけど、基本的に責任者が居れば自由だよね」


 朝野録真に葛西葉子と金原生馬が、それぞれ質問に答えた。


「そういえば皆さん、午後の授業はどうしたの? まさかサボったんじゃないでしょうね?」


「先生。勘弁してください。私たち料理部の危機なんですよ?」


「そうだね。俺も気になって授業どころじゃないですね」


「俺もそうです。葛西先輩と金原先輩が居るのに、副部長の俺だけ抜けることなんてできないですよ」


「仕方ないわね。今日だけよ」


「「ありがとうございます!」」


「それで? ニルト。そろそろ分かっていることを教えて欲しいのです」


 そう言葉にした制服姿の初来愛が、白い頭巾を脱ぐニルトに近づく。


「いいよ。一階の広場で説明をするから集まってよ」


「ねえ、遠本さん。もったいぶらずに先に私たちに教えてよぉ~」


「そうだな。自信があるようだが、図書部の俺たちに情報共有をしておいた方がいいと思うぞ」


「まあ待ってよ。もうすぐに理由が分かるから、取りあえず付いて来てよ」


 那依と奏生の心配を他所に、白い作業服を折りたたむニルトが笑みを浮かべる。

 そうして五限目のチャイムが終わりを告げ、技術棟一階吹き抜けの広場に全員が集まり、六限目開始のチャイムに耳を傾ける。

 中央の植木にスコップを突き刺すニルトに、図書部の全員が集まる。


「なあ、本当にわかるのか?」


「まあ、まあ。ニルトちゃんの力を信じて待とうよ。俺はじきに原因が判明するような気がするんだよね」


「そうは言うけど、木上くんはいつも適当よねぇ~」


「うるさいよ! 頭の中がお花畑で本当はどうでもいい黒咲さんには関係ないよね!」


「ちょっと! それどういう意味よ!」


「あ、あった! 皆、これを見てよ!」


 那依と包夢の声を遮り、ニルトが大声を上げ、植木の土の中から手のひら大の石をつかみ取る。


「綺麗な石だねぇ~。まるで巨大なエメラルドの原石みたいだよぉ~」


「ほらね。ニルトちゃんを信じて正解だったよね」


「ニルト。その手に持っている物はいったい何なのですか?」


「あ! もしかして召喚石か?」


「包夢お兄ちゃん大正解」


「よっしゃ!」


「包夢。よく分かったな?」


「木上くんなのに意外よねぇ~」


「二人ともひどいな。俺もそれなりに普段から勉強しているんだぞ。そんなことばっかり言うと、泣いちゃうからな」


「ニルト。説明をしてください。どういうことなのですか?」


「うん。でもね。その前に関係者を呼んで欲しいかな?」


「分かりました。すぐに教頭を呼び出します」

 改訂履歴

 2026/1/2 全修正。すごく汚いです。


 なんか面白く書けないです。

 なんとなく、そんな気がしました。

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