第23話 初めてのログイン
書見の程よろしくお願いします。
その輝きが二つのビーカーの底に魔術陣を作り出す。
前世の時代に最も得意としていたアビリティの一つ。
クラス創造者の共通スキル生成する者だけができる量産生成を行使したニルトによって、掲げる手のひらの先でビーカーが粉々に砕け、水とモドリケ草と合わさり、光子のように変容する。
「すごいな」
「美しいのです」
様々な色彩がまるで蛍の光のように浮かんで、螺旋に揺れ動く。
メモ帳にペンを走らせている恋理の視線が一点に集中し、携帯電話を掲げる初来愛の瞳が大きく開かれる。
その輝きが混ざり合い一つの大きな球体になる。
球体は光を放ち、中心が最も輝き、次第に形を変えていく。
まるで薬を収めるアンプル菅のように、小さい瓶の姿がいくつも形成されていく。
その光輝を一身に受けるニルトの身体の髪とスカートが風圧に流され、ゆらゆらと揺れ動いている。
淡い魔素の青とした光を放ち、氷の結晶を連想する模様を作り、中空に散乱とする幻想を生み出す。
その光景が空気に溶け込み、消えた後で机の上に液が入ったガラス瓶が二〇個ほど置かれている。
「上手くできたね」
青緑の瞳を赤く変色させ、調べの力を使い、表面が虹彩に煌めく無色とした薬液の本質を目にする。
名称 ガイミールの聖薬改
品質 100
レア度 B+
効果 HP回復大 状態異常回復中
説明 聖司教ガイが生涯を掛けて開発した最上のプチポーション。その秘薬をニルトが改良した物になる。少量でも十分に効果を発揮する。コストパフォーマンスが非常に高く、大銅貨一枚の原価を実現する。ガイが目指した真意を体現した最上級の薬になる。
「ちょっとやり過ぎちゃったかも」
このポーション、効力が強すぎるよね。
「うーん……」
まあいいか。なんとかなるよね?
面倒なことは全て恋理に任せればいいよね?
そう考え、瞳を青緑色に戻し、眉を晴らしたニルトが、何をしたのか理解できずににらみを利かせる恋理に振り向き、苦笑いを浮かべる。
その仕草に感化され、思わず口元を緩める恋理にうなずき、何とか誤魔化せたことに安心する。自分の正当性をより高めるために、ニルトが初来愛の掲げる携帯電話の前にアンプル管を持ち上げる。
「これを見てよ」
「はい」
「これもプチポーションだよ。治癒士ガイが生涯を掛けて作り上げた薬と同じ物になるね」
ニルトが恋理に振り向き、薬を手渡す。
説明を求めたい思いを飲み込む恋理が感謝を口にする。
「ありがとう、ニルトくん」
「ううん。お礼を言いたいのはこっちの方だよ。おかげで新しいポーションの製法が分かったからね」
家に帰ったらもっと改良してみよう。
全盛期によく使っていたクリムゾンポーションを超える薬を作るんだ。
心内で笑い、今から作業が楽しみで仕方がないニルトが、青緑の瞳を瞬かせる。
「さっそくレポートにまとめたい。ニルトくん、色々と話を聞かせてくれるね?」
「うん、なんでも聞いてよ」
「ふふ、ニルトが張り切っているのです」
携帯電話を操作し、アプリを終了させる初来愛が、「休憩を入れましょう」と告げ、水場に向かっていく。
「そうだな。手伝うよ」
初来愛に続く恋理が、黒いソファーまで歩き、メモ帳と薬をテーブルの上に置く。空の弁当箱を持って、昼食の片づけをする。
ニルトもまた恋理に近づき、トレイにマグカップを乗せる手伝いをする。
三人がそれぞれに話し合い、休憩用の紅茶を用意する。
そうしてソファーに座り、会話を進めていく恋理が、突然に左手を上げ、腕時計を目にする。
「もうすぐ三時だね。ニルトくん、帰りは大丈夫なのか?」
「ん?」
午後四時になると家に業者が来る。そう家族に連絡済みであることを思い出し、左手に装着したマネージウォッチの画面に瞳を当て、午後二時五四分の表示に目元を大きくする。
「うーん」
家に着く時間を考えるとそろそろ出ないとまずいかも。
そう思案し、編み結いリボンの髪を縦に揺らし、顔を上げて口を開く。
「ごめんね。今日はもう帰らないと」
「そうか。残念だが仕方がない。明日も昼食前にここに来てもらえると助かるのだが、来られそうかな?」
「うん、大丈夫だと思う」
「私が迎えに行くのです。ニルトは教室で待っていて欲しいのです」
「うん。お手柔らかにお願いするね」
「それはどうなのでしょうね。ふふ」
「初来愛、頼むな」
「はい」
そうした会話の間に鞄を持つニルトが、忘れ物が無いかとした考えを巡らせ、遠くを見るような瞳の色になる。
すぐに眉を晴らして胸やスカートのポケットに手を当て、二人に振り返る。「それじゃあね」と告げ、笑顔で鞄を持って出入口へと向かう。
金属ドアの前で立ち止まり、振り向き右手でスカートの端を摘まむ。「お疲れ様です」と言葉にし、軽くひざを曲げて視線を下にする。挨拶を済ませ、振り返り、ドアノブを回して廊下に出ていく。
その洗練された動きに視線を向けていた二人が、ニルトのお嬢様振りに共感し、談笑を交わす。
「ただいま!」
合鍵を使い、家に入ってすぐに洗面台へと歩き、手洗いと歯磨きを済ませ、誰も居ない脱衣所でフォーマルドレスに着替える。そのまま階段を上って自室へと向かう。
それから業者が来るまで廊下とリビングを掃除する。
「やはり白いな」
「ん」
「姉さん。さっきからそればっかりだな」
「いや、だがな。あれは卑怯だと思わないのか?」
「そうね。確かにそうだわ。私もそう思います」
剣の緩んだ青い瞳に同調する朱火と弾矢と能富手麻里の視線が、下座にいるニルトに注がれる。長い箸を持ち、猫耳フードの全身ふわふわした白い姿が小さく動く。
「愛らしいですね。ニルトさんはいつもああなのですか?」
「そうだ。ニルトは可愛い妹だ」
「家のガキンチョどもと違って上品で愛嬌があるぜぇな」
「うむ……」
「ねえ弾矢くん。ニルトちゃんは普段からこうなのかな?」
「なんのことだ?」
「人形とか好きなのかなって。私も好きだから、気が合いそうで嬉しいんだよ」
「ん、そうですね。ニルトくんの部屋にいっぱいあります」
「そうなんだ。えへへ」
「ニルトさん、暑くないんですか?」
「うん?」
「そんなモコモコの格好だと汗をかきませんか?」
「そんなことはないよ。涼しくていい具合だよ」
いつもの十人が遠本家のリビングに集まり、探索を終えた後の食事会を行っている。焼肉用の鉄板を二台囲って全員が席に着く。
白猫としたニルトの姿に全員の視線が緩み、その肉球の手で長い箸を片手で操り、神戸牛の脂身を鉄板の上に置いている。
「ニル坊。そろそろ食べていいぜぇな? 腹が減って堪らんぜぇよ」
「いいよ。そっちの鉄板はさっき調整したから、好きに焼いてくれていいからね」
「おっしゃああー! 琉兎! 頼むぜぇな!」
「そこは俺なのか? まあ、別にいいが。剣さん、遠慮なくいただきますよ?」
「ああ、どんどん焼いてくれ。足りなければ追加を用意する」
春夏冬環太郎が空腹を告げ、仲の良い槍樹琉兎が対応し、その調子に周囲が注目する。そんないつもの流れの中で焼肉の具材を鉄板の上に置き、魔力を通していくニルトが、脳裏に考えを浮かばせる。
リーズン処理で魔力を通すことだけが調理方法じゃない。
五勘の極意、覇知を用いて熱を均一に伝えていく方法もあるんだよ。
そうした風に実践し、普通の数倍の速度で加熱処理を施していく。
「皆、焼けた物からどんどん取っていってね」
「なによ、これ! おいしいわね!」
「本当だ。この前食べた時と全然違うよ!」
「旨い! 野菜の味が格別じゃわい!」
ニルトが調理する鉄板の近くに座る手麻里に理道小咲美に田大厳永が、肉と野菜を取り皿に乗せ、口に含んでいく。
「ニルトさん。お肉とお野菜に何をしたんですか? こんなにも早く焼けるなんて、砂子は不思議で仕方がありません」
「熱が表面に均一に通るように魔力で調整しているんだよ」
何を言っているのか分からないが、一生懸命に野菜と肉を焼いてくれる世話好きのニルトを目にする筒美砂子が、目元を穏やかにする。
この前弟に会って敬語を使われ、皮肉とした生意気な言葉を聞かされた記憶が新しく、目の前に居る少女が自分の妹であったらいいのにと、弾矢の顔を視線がいき、微笑む表情になる。
その気配を感じ取った小咲美が、何かの勘違いをしたように表情を緩ませる。
「砂ちゃん。ジャガイモが美味しいよ。お肉の油を吸っていい感じだよ」
「そうですか? では小咲美ちゃんが進めるジャガイモさんをいただきますね」
「うん。食べて、食べて」
「砂子。抜け駆けは好くないわよ。分かっているんだからね!」
「あら、手麻里さんも興味があるのですか?」
「そんなことはないわよ。私は四人の友情に興味があるだけよ。別にかっこいいとか、優しいとか、そういう感じじゃないんだからね!」
「そうですか? では、そういうことにしておきますね」
「鶏も豚も焼けたよ。皆さん、どんどん食べていってね」
「ニルトちゃん、ニルトちゃん。焼いてくれるのは嬉しいけど、ちゃんと食べているのかな? 私たちのことばかり気にしていないで、ニルトちゃんも食べてくれないとダメだよ?」
「大丈夫だよ。少しずつ食べているからね。心配してくれてありがとう。小咲美お姉ちゃん」
「ん、うん! えへへ。だったらいいんだよ」
気になるニルトからお姉ちゃんと呼ばれ、小咲美が照れ隠しのようにほほを引きつらせる。ニルトちゃんは近親の親戚なんだから、あたしにとっても妹のような存在だよ。そう心内で思い、密かにほほを緩ませる。
そんな和やかな雰囲気の中で今日の探索成果を語る琉兎が、思い出したように話題を変える。
「そういえば、ステータスの更新で分かったことなんですが、俺の魔力が2も上っていましたよ。以前にニルトさんから教えてもらった鍛錬方法のおかげですね」
「なんや、それっぽっちか? ワイは4も上がったぜぇな」
「ふっ。気合が足らんな。わしは6じゃわい」
「な、んだと。俺が一番低いのか?」
「あら、厳永もそうなの? 私も6上がったわよ」
「砂は7です」
「あたしは8だよ」
「うっ、くっ……」
「ん、お兄。お兄は幾つ上ったのですか?」
「20だ」
「「え?」」
「弾矢くん、弾矢くん。どういうこと?」
「まあ、ちょっとな。だがオレよりも姉さんの方がすごいぞ」
「105だ。それがどうした?」
「「え?」」
「ちょっと上がり過ぎじゃない! 弾矢くん! いったいどういうことよ!」
「「うん、うん」」
手麻里の突っ込みに全員がうなずきで応える。
ボクも初めて聞いたよ。まだ二日ほどしか経っていないのに魔力が105も上がるなんて異常だよね?
野菜と鶏肉を口に含んでご飯を食べるニルトが心内で美味しいと告げ、周囲の状況に耳を傾ける。
「剣さん。ぜひ俺にもご教授ください。どうしたら魔力をそんなに上げることができるのですか?」
「私はグリーンポーションを鍛錬中に飲んでいる。一日十回ほど繰り返している。それだけだな」
「グリーンポーションを、ですか?」
「そっか! その手がありましたね! 砂もやってみようと思います!」
「うん、うん! あたしもやってみるよ!」
「ちょっと、待ちなさいよ! グリーンポーションっていくらすると思っているのよ!」
グリーンポーションは魔力を少し回復する効果がある。
需要が高い分だけ値段も高い。剣お姉ちゃんにとっては分からないけど、弾矢お兄ちゃんと朱火ちゃんは無理をして使っているはずだ。幸いプチポーションの作り方も分かっているし、今度皆のために魔力回復用の物を作ってみるのもいいかもしれないね。
そう心内で思い、そろそろ中休みの焼きそばに取り掛かろうかと思案して、取り箸で具材をつかむニルトが素材に魔力を通す。
「保管取引署に提示された価格には一本五〇万円の値が付いていたはずですよ? 俺には無理です」
「ワイらには手が出せんぜぇな。弾矢と朱火ちゃんも同じなんか?」
「いや、オレたちは基本が低いからな。一本で数回分は回復する。だからそれほど出費があるわけでもないさ」
「ん。お給金で何とかしています」
「むしろ姉さんの方がおかしい。一日に何本使っているのか分からないくらいだ。冷蔵庫にもたくさん仕舞ってある」
「何を言っているのだ? たかが五〇万円で魔力が底上げできるのだ。安いものではないか」
「うわぁ、一度言ってみたいわね! さすがはお金持ち。私たちには付いていけないわ!」
「うん! 俄然やる気が出たよ! あたしもポーションを飲んで弾矢くんたちに負けないんだからね! 次からたくさん魔力を上げるからね!」
「そうですね! 砂も負けません! 弾さんに置いて行かれないようにがんばります!」
「はぁ、ここにも居たわね。お金持ちの家の子が二人も」
五〇万円か。ちょっと高いかも。
そもそもグリーンポーションには種類がある。一番軽いものでその値段だと採算が取れない気がする。
そんなことを考えるニルトが、熱を通した焼きそばにソースを絡めていく。
「このままだとワイらだけが置いて行かれるぜぇな。琉兎、何とかならんか?」
「そう云われても、こればかりはどうすることもできん。俺もお金があればグリーンポーションを購入したいが、生憎都合がない」
「わっはっはっは! 気にしても仕方がなかろう! わしらは今を楽しむことが先決じゃ! なあ? 環太郎! お主もそう思わんか?」
「確かにそうぜぇな! 厳永にしてはいいことを言うぜぇよ!」
「おい、厳永。そのコップに入っている物はなんだ? もしかして酒か? 俺の前で酒を飲むとはいい度胸じゃないか」
「ちょっと厳永! あんた何を持ち込んでのよう!」
「うむ! これはオレンジジュースじゃわい! 合法じゃ! マッドマジカルドックという。わしも危険がないか調べたが、概ね問題はないわい!」
「ほう。これが例の物か? 巷で流行っている錯覚酩酊サプリメント。探索者の間でも有名になっているな」
「姉さんは知っているのか?」
「ああ、合法だぞ? 今はまだ危険が認められていないだけだがな」
「ちょっとなによ、それ! 面白そうね! 厳永! 私にも飲ませなさいよ!」
「うむ!」
「あ、ずるい。砂もください。少し興味があります」
「うむ! 他にも飲みたい者はおるか?」
そうしてうなずくように全員が赤い錠剤を受け取り、飲み物に混ぜていく。
「焼きそばを美味しく食べるボクは、気分が高揚した皆さんとの夕食会を存分に堪能していくのでした」
終わり、と。
「うん!」
今日も上手に書けたね。
「さっそく時音にお願いされたオンラインゲームを始めようかな?」
これもアンワーレフのお仕事だからね。
指名依頼はすでに受注済み。依頼の通りに成果を出さないと信用に係わるからね。がんばらないと。
まずはベッドの上に置いてあるセンサーを装着しよう。
「えっと。ナーブイマジナリーセンサーを服の上から取り付ける」
ジェルシートみたいな先端を指定の位置に張り付けるために、表面のフィルターをはがしていく。
「できた。後はギアを装着して寝るだけだね」
強制的にノンレム睡眠に入ることができるらしく、その間にゲームが開始される仕組みになる。
「もう十一時だね」
確か八時にユニチューブでカウントダウンの生放送がされたんだったよね。今から見ておかなくても大丈夫かな?
「えっと。次はどうしようかな?」
パソコンで情報を集めるのはオンラインゲームのセオリーだけど、昔と違ってウェブサイトの全てがAIで監視されているから、難しいんだよね。
運営が認定したホームページ以外での情報公開は禁止されている。
だからこそコミュニティーを探すには、相応の労力が必要になる。
でもまあ考えても仕方がないよね。さっさとログインをしてしまおう。
エアコンの温度に問題はないね。さっきトイレでおしっこもしたし、あとは寝るだけだね。
「これでいいかな?」
ベッドで横になったボクは意を決し、ヘッドギア被って起動スイッチを押す。
『ナーブバーチャルマッチングをスタートします』
女性の声が聞こえてきた。
次の瞬間に意識が薄れ、一瞬にして睡魔が襲ってくる。
「あれ? ここは……」
景色が近代的なお城の一室に移り変わる。
社交場のような部屋に一人でボクは浮かんでいる。
『名前を決めてください』
さっそく取扱説明書に書いてあった通りの展開になる。
あらかじめ決めていた名前を伝える場面だ。
「それじゃあテストユーザーって名前にしてよ」
オンラインゲームの定番だね。名前じゃなくても存在が分かればいいよね。
『却下します。世界に準ずる名前をお決めください』
「え? どういう意味?」
『質問にお答えします。名前として成立しない形容が含まれています。そうした要素は全て棄却されますので、今後もご注意ください』
「え……」
なんか面倒くさい。
「じゃあさあ。キミが決めてよ。ボクに合う名前をね」
『かしこまりました。演算を開始します』
演算なんて大げさだよ? もっとシンプルに決めてくれればいいよ。
『処理が完了しました。プレイヤー名ディー様。これより種族の決定及び能力値の振り分けを行います』
「やっと終わったんだ。じゃあそれも全部キミが決めてよ」
体が軽くなってきた気がする。どうしてだろう。
『かしこまりました。再び演算処理を開始します。……アベレージの識別……確率演算処理を実行します…………完了しました。続いて観測による実測演算を実施します…………完了しました』
「遅いよ。まだ準備ができないの?」
なんか変な感じ。背が高くなった気がする。
『ステータスの設定が完了しました。ユーザー名ディー様。これよりゲーム開始に移行してもよろしいでしょうか?』
「うん、いいよ」
『了解しました。開始を宣言します。アルティメットトレジャーテイルオンラインの世界にようこそ』
「まぶしい」
時間が加速する。知識が流れてくる。ゲームのオープニングが始まる。
魔物が多く住む辺境の国ネルアドメリア。
最果てのダンジョンと呼ばれる世界樹がそびえ立ち、世界各国から貴重なアイテムを求め、冒険者が集まってくる場所。
そうした長い会話が続き、チュートリアルで戦いのレクチャーを受けたボクは、王城が見える広い街並みの広場に転移される。
「これがゲーム? すごい! 映像がリアルで綺麗じゃないか!」
他のプレイヤーたちの声が聞こえてくる。地面から光が輝いて、続々に姿が形になる。
「わー、すごい! リアルー!」
「おいおい。これが俺か?」
「ねえ、ねえ! 私だよ? 分かる?」
「え、マジか! すげぇかわいいなあ!」
「えへへ、ありがとう。あんたもいい感じよ!」
「あ、ユミ? 私だよ! エリだよ!」
「え? エリ? あ! エリ!」
「どう? 似合う?」
「うん、別人みたい」
皆さんが嬉しそう。見ていて楽しくなる。
「おし、さっそく行くぞ。まずは情報収集からだ」
「おう。俺は北から攻める。二時間後にチャットで連絡を取り合おう」
「じゃあ、オレッチは南だな」
「あたしは東」
「残りは西か。いいぜ。二時間後になあ!」
いいね。友達との連携。楽しそうだね。
でもボクにはちょっとハードルが高いかな。
「二人とも見てください。体がキラキラしている子がいますよ? すごい美人さんですね」
「そのようだ。しかし不思議ではある。このゲームに課金アイテムはなかったはずだが?」
「キャラデザで上手く作ったんじゃないのかな? それにしても上手にできているよねー」
ボクのうわさが聞こえてくるけど、気にしないでおこう。
さっそくステータスを確かめてみよう。
『
名前:ディー
種族:妖精
レベル:1
クラス:無職
称号:高貴なる血筋
戦闘力:215
HP:[40/40]MP:[200/200]
力:[15]敏捷:[55]知力:[45]
スキル:SP[20]
』
「へえ……」
チュートリアルのときのステータスと全然違うよね。
「うん」
まずは教えてもらった通りにスキルの習得しよう。
初期ポイントの20を使って項目から選択しよう。
これは最初だけの特別な設定になる。レベルアップによって得られるポイントとは別の扱いになる。チュートリアルではそう言っていたよね?
設定画面を開くと習得できる技能名が表示される。
ボクは一つ一つに目を通していく。
「へぇー、妖精の種族に固有スキルがあるんだね」
魅了と気運。どちらもポイントが一で取れる。
「お? 魔力感応がある」
ポイントが一〇も必要だ。
説明はないけど魔覚に似ている気がする。
「うん、決めた」
ボクは軽快にスキルを選択して、再びステータス画面を開き見る。
『
名前:ディー
種族:妖精
レベル:1
クラス:無職
称号:高貴なる血筋
戦闘力:215
HP:[40/40]MP:[200/200]
力:[15+1]敏捷:[55+5]知力:[45]
スキル:
錬金術[1]魔力感応[1]魔術[1]
剣術[1]魅了[1]運気[1]
植物学[1]鉱石学[1]魔物学[1]
』
「ばっちり」
魔力感応がポイント一〇。錬金術と魔術がポイント二。他は一でいい感じ。
「ねえ? あなた。少しよろしいですか?」
「うん?」
「やっと気づいてくれましたね。失礼かもしれないけど、プレイヤーの方ですよね?」
「うん。そうだけど、なにか用かな?」
小柄でグレーの長いお姫様ヘアーをした女性が声を掛けてきた。
「アバターを良く見せてもらってもいいですか?」
「え?」
「へえー。うんうん。これは、これは。なるほど、なるほど。いいですね」
「え? え?」
「あー! 姫! 抜け駆けはずるいよー! 僕も気になっていたんだよ!」
小柄で空色の髪の男性が近づいてくる。
「へえー、こうなっているんだー。近くで見るとキラキラが弱くなるんだねー」
「そうですね。あら? いい匂いがしますね。ゲームなのに不思議ですね」
何なの? ちょっと失礼だよ? 何がしたいんだ。
手とか腰とか触ってくるし、とっても迷惑だよ?
「むう」
「おい、待て! 二人ともさすがに失礼だろう!」
「あっ、何をするんです!」
「うわっ」
黒髪の背が高い男性がやってきて、失礼な二人をボクから引き離してくれた。
「すまない。連れが失礼をした。不快ではなかっただろうか?」
「うん。迷惑だよ」
「すまん!」
「あらら、ごめんなさいね。調子に乗っちゃいました」
「おい! アクトも謝れ! 姫も謝ったんだからな!」
「うっ、ごめんなさい」
「重ねてすまない。二人には同じことをさせないようにあとで必ず注意をしておく。だから今回だけは許して欲しい」
「うん、分かったよ。次からは気を付けてよね」
「そう言ってもらえると助かる。俺はファイデルだ。こいつがアクト。で、そっちの姫が……」
「サクラです。よろしく」
「ボクはディーだよ」
「ディー。いい名前ですね」
「さっきはごめんね。僕はアクトだよ。よろしくねぇ」
「うん」
「そうだよー! せっかくだから一緒に遊ばない? ゲームは皆で楽しんだ方がいいと思うんだ!」
「アクト! 図々しいぞ! さすがに失礼だろう?」
「えー、ダメかな?」
「ダメに決まっているだろう!」
皆でゲームを楽しむ。いい言葉だね。
「私もアクトに賛成です。ディーと一緒に遊びたいと思います」
「姫まで……、いや、しかし!」
出会いは大切にする。ティアも言っていた。ここは誘いに乗ってみよう。
「いいよ。付き合うよ」
「いいのか?」
「うん、よろしく」
「すまん。恩に着る」
「やったね! 言ってみるもんだね!」
「ではフレンド登録をお願いします。ディー、よろしいですね?」
「うん。いいよ」
修正履歴
2025/12/28 酷いので全修正。
やっと書けました。
また修正するかもしれません。




