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第21話 初めての探索報酬

 2025/7/20に投稿しました。

 書見の程、よろしくお願いします。

 長い間、文章の見直しをしてきました。それなりに読める文章になって来たので、書き込みを再開していきます。どうか暖かく見守ってください。

 ダンジョンの外にたどり着いたニルトたち三人は、すぐに入構ゲートまで歩いていく。


 帰還用の第一ゲートに入り、入手アイテムをコンテナカートに提出する。ステートチェッカー用の唾液採取も同時に行う。


 ウィルスや呪いなどの衛生検査を受け、無事にゲートを通過し、アイテム査定時間を利用して、検疫署管轄の洗浄施設で身体を洗い流す。


 二階の待合室で探索者証明カードを提出し、整理券を受け取る。

 すぐに準備が整ったので三人と一緒になって個室に向かう。


「遠本様のレベルが14。加賀様が18。門守様が21ですね。この短時間で急上昇しているようですが、いったい何があったのですか? 詳しくお聞かせください」


 ドリューユニオンカンパニー専属審問スタッフ菊野芽衣きくのめいが、仕切りある席の前で、時音と萌恋とニルトに対面し、黒い瞳を向けてくる。

 セミショートの黒髪に明るい顔立ちで、ユニオンの制服姿とした暖かい色合いの白いスーツを身に着ける。


 落ち着いたように微笑み、三人に向けて続きを声にする。


「リーダーの遠本様。まずは報告をお願いします」


「うん」


 眉を晴らし、耳を傾けるニルトが、経緯を説明する。


「ボクたちは新しいルートを発見したんだよ」


「新しいルート? 隠しダンジョンを見付けたというのですか?」


 身を乗り出し、驚くように目を開く菊野芽衣に向け、思案するように右差し指を唇にそえるニルトが、口を開く。


「うん。詳細を報告するね」


「お願いします」


 壁絵を読み取ったこと。

 その後で雰囲気がおかしい場所にたどり着き、多くの敵と遭遇したこと。

 城塞風の異空間でモクモクと出会ったこと。

 ザッハフロッグとの戦い。

 巨大ゴーレムとの戦闘。

 事細かに説明を繰り返していく。


「時音がゴーレムを倒したんだ。その後は戦利品として宝箱が出て来たんだけど、それはさっき話した通りだよ」


「そうですか。よくご無事でしたね」


「うん」


「少し、不明瞭なところがあります。いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」


「何でも聞いてよ」


 菊野芽衣が隠しダンジョンに入る方法についての確認を口にする。

 その質問に対し、真摯に応えるニルトに向け、菊野が続けて質問を口にする。


「最後になりますが、そのゴーレムについての詳しい特徴を教えてください」


 時音が倒したことにしたニルトが、二度と現れることがないと予想し、MAXガインダーワンの強さを隠すように経緯を伝えていく。

 自分の能力を隠すために偽装したステータス値を超える行為はしていないと主張する。

 情報は命に関わること。他の探索者たちに支障がない程度に偽りを伝える。

 それらのことを考慮し、戦闘事は全て時音と萌恋の奮闘によるものとしたニルトが、手ぶりを交え、嘘の真実を告げていく。


「分かりました。確認した後に情報の対価を支払います。その際の割合は等分でよろしいでしょうか?」


「うん」


 そうした風にうなずきで応えるニルトが、突然と部屋に近づいて来る誰かの気配を感じ取り、遠くを見る目をする。

 それに気づいた菊野芽衣が、背後のドアに振り返り、コンコンと、響く音に耳を傾ける。


「はい」


 ノックの音の後に返答して立ち上がり、振り向き歩く菊野がドアを開けて来訪者と会話し、「ありがとう」と告げ、ドアを閉じる。

 三つの袋を片手で持ち、戻って来る。

 席に座り、袋の中から箱を取り出し、ふたを開ける。

 ドリューユニオンに所属することで受け取ることができるマネージウォッチが、箱の中からあらわになる。

 黒く丸い装置の全面に光沢あるパネルが備えられている。


 これがウェアラブル端末である事を思い出したニルトが息をのむ。

 欲しいと思っていた気持ちから青緑の瞳を輝かせる。


「こちらをお受け取りください。皆様がいらっしゃるとのことで、急きょご用意とさせていただきました。よろしければ使い方の説明をしたいと思います。よろしいでしょうか?」


「うん。お願いするよ。時音も萌恋もいいよね?」


「いいわよ」


「うちもえんよ」


「はい。ではさっそく、皆様にお願いがあります。左腕にマネージウォッチを装着してください」


 菊野から端末を受け取った三人が、左腕の腕時計を外し、マネージウォッチに付け替える。

 装着した瞬間にパネルから立体映像が浮かび上がり、電源が起動する。


「はい。準備が整ったようですね。今装着していただいた物が探索者専用のウェアラブル端末、マネージウォッチになります。使用者の魔力を動力源とし、専用のバッテリーに発電した電気が流れていく仕組みになります。長期未装着の場合には電源が切れることもありますので、予めご了承ください」


 マネージウォッチは壊れづらく、装着と同時に個人認証がされ、自分以外の人は使用できない仕組みになる。


 時刻確認やインターネットに電話通信。

 探索経歴の参照に依頼受注や完了報告がいつでもできる。

 マップナビや予定管理にカメラや音楽、携帯電話アプリのような機能が全て備えられている。


 パネルから出力される光には立体的な映像が表示される。

 今主流のウィンドアOSに搭載されているディメンションモニターが使われているため、小型であるのにも拘らず、大画面で美しい映像を映すことができる。


 それらと互換性のあるデフォックスOSを起用し、ディメンションタッチアイコン機能の操作性を実現する。

 全てが先進的で古い価値観を持つニルトにとって物珍しく、青緑の瞳を瞬かせ、続く菊野の言葉に耳を傾ける。


「次は使い方についての説明をします。ワーレフ管理アプリというアイコンを押してください。すると皆様の経歴が表示されることになると思います」


 三人が告げられた通りに差し指を出し、浮き出る画面に向けて押し操作をする。


「表記のお名前に間違いはございませんでしょうか? 再度ご確認ください」


「ボクは合っているよ」


「私も問題ないわ」


「うちも問題ないみたい。それよりもこの名前の横にある文字はなんなん?」


 フルネームと所属名の中に等級という文字が表示されている。

 その中にアンワーレフ十級とする記述を目にしたニルトが、萌恋の質問に同意し、菊野にうなずきを送る。


「はい。そちらが探索者として現在皆様の評価に対する等級になります。まずはその定義についての説明をさせていただきます。一般探索者のことを我々はアンディサイドワーレフと呼んでいます。未定の救援活動者という意味を要約し、アンワーレフという呼称になります」


「じゃあこの十級ってなんなん? 」


「はい。等級についてのお答えをします。アンワーレフには専用の評価方式があります。お客様のニーズにお応えし、どのように依頼を熟してきたか。そうした信用を数値として評価するために等級が用いられます。その等級数が少ない人ほど高等なアンワーレフであるする証明になるのです。達成値と呼ばれる仕事率から算出した数値が加算されていき、一定数を満たすと級位が上位に移行していきます。これによってより高度な依頼を熟すことができるようになります」


「そうなの。上手くできているのね」


「はい。アンワーレフの等級は十級位から一級位まで存在します。二級位以上になっていただいた方には同意の元でワーレフに昇格できるシステムになっております。詳しくは後日資料を送付させていただきますので、そちらをご覧ください」


「うん、なかなか奥が深そうだね」


「はい。では続きまして、チームトゥルーシード様の位置付けについての説明をさせていただきます」


 菊野芽衣の話が続く。

 世界に対し、自分たちがどれだけの評価を得ているのかを一目で判る信用度が表示され、ダンジョンでも依頼受注ができ、ワンタッチで達成予約が可能になる説明が続いていく。


「手始めに、皆様が発見した隠しダンジョンの探索結果を今回は調査依頼という形にしたいと思います。まずは依頼項目から共通クエストを選択し、受注のボタンを押してください」


「え? どうしてそうなるのかな?」


「はい。皆様は探索者としてまだまだ信用がありません。そのための措置だとお考えください。何事も危険は付き物です。いらない詮索をする方々が多数いらっしゃいますので、そういった用心のためなのです。ご理解の程いただきたく思います」


 菊野の説明から新しいルートの発見をユニオンの意向にしたいという意志が伝わってくる。

 そうしなければ騒動になり、未成年である三人に注目が集まってしまう。

 不徳な輩が増え、私生活にも影響が出るとする理由が告げられる。

 そうした都合を知ったニルトが時音と萌恋の顔に青緑の瞳を向けて、うなずきの合図を送る。


 共通クエストの依頼項目から赤くマーキングされた指定依頼のアイコンをタッチし、千城窟ダンジョン隠し通路の調査依頼とする太文字を選択した三人が、確認ボタンを押していく。


「ありがとございます。さっそく完了の手続きをさせていただきます。前金の報酬額三〇〇〇万円を支払います。後日改めて確認次第、残りの三〇〇〇万円をお支払いします。当然ですが税金はすでに差し引き額とさせていただいております。ご了承のほどよろしくお願いします。それと振り込みは等分で本当によろしいですね?」


「それでいいわ」


「うん。ボクもそのつもりだよ」


「はい、かしこまりました」


「なあ? 六〇〇〇万円ってことは一人二〇〇〇万円ってことなん?」


 萌恋が会話の流れに割込む。

 桃色のハーフアップの前髪から覗く眉をつり上げ、驚くように瞳を開いている。


「と、言いますと? こちらの額に不服があるという事でしょうか?」


「違うけん! 多すぎるっていっとるの!」


「そうおっしゃられても、私どもとしては適正報酬額を提示しただけにすぎません。本来個人業者の方々がこういった情報を公開する場合には、十数億円の値が付くことがあるかと思います。皆様にとって様々な制約や責任があるとかと思いますが、そういった保証も兼ねておりますので、それほど得をしたという額でもないかと思います。むしろ少ない金額であると私個人としてはそのように考えております。なにかと至らないことが多くあるかと思いますが、何卒よろしくお願いします。加賀様、いかがでしょうか? そういった具合でよろしくお願いできないでしょうか? 遠本様と門守様もよろしいでしょうか?」


「うん。ボクはこれでいいと思っているよ。だって色々と融通して守ってくれるんでしょう?」


「はい。それはもちろんです」


「そうね。そう考えると私も適正額だと思っているわ。それにね。ニルトと関わっていくのなら、この程度のことで驚いていたらだめよ。私はもう慣れてきたわ」


「うち、そげんに役に立てとらんし」


「ううん、違うよ。萌恋と時音が居なかったらボクは今頃ここに居なかったと思うよ? それくらいのことはしているんだから気にしないで受け取って欲しいよ。それにね。入手アイテムの査定とかもあるんだから、はっきり言ってこんなことで驚いていちゃだめだよ?」


「ふえ? まだあると?」


「そうね。ニルトの言う通りね」


「分かったよ。今回は受け取るよ。うちはそのお金で装備を整えるね。それで次からもっとがんばるけぇんね」


「その意気だわ。今週末も期待しているからね。ふふ」


「お手柔らかになあ」


「お話がまとまったようで何よりです。引き続きアイテム査定の話に移ります。よろしければこのまま進めてもよろしいでしょうか?」


「うん、お願いするね」


 うなずくニルトが入手したアイテムを思い浮かべ、菊野の声に耳を傾けていく。





「等分した約八五二万円を受け取り、盾とモドリケ草に青ポーションと帰還石をチームの財産として保管することにした」


 もう少しで今日の記録が終わるね。


「オーガニーストーンに高い値が付くとは思わなかった。嬉しい誤算である。魔力石よりも需要がある。一つ数千円から一万円を超える値が付く」


 オーガニーストーンは千城窟ダンジョンだけのアイテムになる。

 魔力を通すことで固有の素材や食材に変換される魔石になる。

 結構大きい物が取れたので報酬が高くなったんだと思う。

 ちなみに黒い魔力石は一つ数百円から千円前後の値が付いた。

 青い魔力石はその数百倍の値がするんだけど、あれだけ苦労して手に入れたのにその程度なんだから、割に合わない仕事だよね。

 次からは売らずにボクが買い取ることにしよう。


「午後八時四〇分ごろ。時音の親族が経営する会社の人に車で送ってもらう。二十分ほどで帰宅が完了する」


 その最中にティックラインでアドレスの交換をしたんだ。さっきもメッセージのやり取りを済ませたばかりなんだよ。まあ、それはさておき、家に着いてすぐに朱火ちゃんと弾矢お兄ちゃんに怒られたんだ。今回は少し反省したよ? さすがにボクも悪いからね。当然かな?


「そうしてお風呂に入り、ご飯を食べて部屋に戻る。時刻は一〇時三〇分。パパとママとティックライン電話をして、色々と褒めてもらうことになる」


 ボクの初めての冒険をいっぱい喜んでくれたんだ。


「えへへ」


 でもね、やっぱり少し心配に思われたのは仕方がないことなのかもしれないね。

 だってパパとママだもん。

 ボクの親だから当然だよね。

 怪我だけはしないでねって二人からいっぱい云われたよ。


「ふふ」


 でも嬉しいなあ。そんな風に心配をしてくれる人が居るのだから、ボクは幸せ者だよ。


「えへへ、終わった」


 日記帳を閉じ、ボクはボールペンを筆記用具に仕舞い込む。


「それじゃあ」


 魔力石も手に入ったことだし、さっそく一階の倉庫で物質転移保管装置の修理に取り掛かろう。


「ん?」


 ティックラインの電話だ。

 誰からだろう。

 ママからかな?

 でもさっき話したばかりだしそれは無いよね。

 だとすると初来愛かな?

 ボクは響きを上げる携帯電話を机から取り上げ、表示を確認する。


「あれ?」


 時音からだ。


「どうしたんだろう。こんな夜更けに。さっきティックラインのティートークでメッセージのやり取りをしたばかりだよね?」


 電話モードの着信合図。

 ボクはアプリを許可して音量を最大にする。


「なに? どうしたの?」


『こんばんは。さっきぶりね』


『ニルくん。うちもおるよ』


 動画グループトーク機能。

 なにげにティックラインって電話よりも便利だよね。


『急で悪いんだけどニルトにお願いがあるの。アルティメットトレジャーテイルオンラインのことは知っているわよね? 実は明日の夜にサプライズでサービスの開始を実施しようと思うのよ。公開は午後一時を予定しているわ。生配信で夜の八時からログイン開始を宣言するの。その時間にぜひとも参加して欲しいのよ。できるかしら?』


「え? なに? どういうこと?」


『うちからもお願いするね。しぃちゃんの頼みを聞いてもろてぇもええかな? なあ、ニルくん』


「えっと、できるかできないかという前にゲーム用のパソコンを持ってないんだけど。勉強用のノートパソコンが一台あるだけなんだ。それでもいいのかな?」


『だったら明日中にパソコンも送り届けるわ。設置もこっちでやるから、後はお願いをするわね。ニルトが世界に入ってくれるだけでも助かるのよ』


「いいけど、あんまりできないかもしれないよ? だって休日はダンジョンでレベル上げをしないといけないからね? それにボク、ゲームよりもワーレフになることに興味があるんだ。マネージウォッチを見て思ったんだけど、意外にできそうなクエストが多くて気になっているんだよね。二人とも手伝ってくれるんでしょう?」


『だったらゲリックの名前で指名依頼を出しておくわね。しばらくは優先順位を上げて欲しいの。アルティメットトレジャーテイルオンラインに入ってくれるだけでもいいのよ。お願いよ、ニルト』


「え? え? ということは土日の探索はお休みってことなのかな?」


『そうね。そうしてもらえると助かるわ』


『ごめんね、ニルくん。うちは手伝えそうにない。うちは寮に住んどるから、ゲームは設置できん。もしかしたら一軒家を借りて引越しをするかもしれん。その時になったらできるかもしれんけど、今は無理やから、しぃちゃんのことはよろしく頼むな』


「え? え? じゃあ、しばらくはダンジョンに行けないってこと?」


『ごめんなさい、ニルト。落ち着くまでの間だけでもゲームに専念して欲しいの。その後は必ず探索に付き合うことを約束するわ。だから、今だけはお願いを聞いてくれないかしら』


『ニルくん! お願いだよ! しぃちゃんのお母さんの命が掛かっとるの! 助けてくれんか?』


『萌恋……』


 大仰しい言い回しだね。でも本気の想いが伝わってくる。


「いいよ、手伝ってあげる。でもね、詳しく聞かせてくれるんでしょう?」


『ええ、少し長くなるけど、それでもいいかしら?』


「うん」


 それからボクは時音のお母さんの病気についての話を聞くことになる。

 ダンジョンを踏破したお母さんが不妊症の治療を願い、時音を生むきっかけになったこと。

 それが原因で不治の病に掛かってしまったこと。

 長い眠りに就き目を覚ますことができなくなってしまったこと。

 同じ症状の患者さんを集め、お医者さんのお爺さんとゲーム会社のお父さんが研究をしていること。

 その結果、お母さんが異世界で暮らす夢を観ていることが判明したこと。

 そして夢の中にもダンジョンが存在していること。

 全ての患者さんが夢の中でダンジョンを踏破したいと考えていること。

 そうした説明が続き、七度目のうなずきを繰り返している。


「分かったよ。手伝うよ」


『ありがとう、ニルト』


 時音のママが大変な目に合っているんだ。

 それだけでも助けになりたいよね。

 でもゲームの腕前は期待しないでね。70年前のテレビゲーム依頼、今まで一度もやったことがないんだからね。


『要件はそれだけよ。明日から私たちも千城学園に通うことになるわ。会えるか分からないけど、そのときはよろしく頼むはね』


『うちも同じだよ。よろしくなあ』


「うん、分かったよ。明日も早いし今日はゆっくりと休んでね」


『うん』


『そやね』


「じゃあ、おやすみ」


『『お休みなさい』』


 グループトーク機能が終了する。すぐにボクはティックラインアプリの常駐を切り、携帯電話の電源をスリープにする。


 でも残念だ。

 せっかくダンジョンに行けると思ったのにゲームに専念をしないといけないだなんて、予想もしていなかったよ。

 文句を言うのも違う気がする。だって時音のママが大変な目に合っているんだ。ママが居ないのは悲しいよね。一肌脱いで協力するのは友達として当然の務めだよね。


「うん、がんばるよ」


 頭を切り替え、物質転移保管装置の修復に取り掛かる。

 今日は人工アイテム袋の生地を作るんだ。



**



『初来愛。今日の調子はどうなのだ?』


「はい。先ほど高等部の校長と話をしていたところなのです。しばらくは教諭方が対応してくれるそうなのです。場合によってはワーレフ協会に依頼をするそうですね。ですから、私たちは別の視点から料理部を助けることになりそうなのです」


『となると、奏生の仕事だね。初来愛もそっちを優先するのか?』


「いいえ、違います。というよりも恋理? それはどういう意味なのですか?」


 私はティックラインディメンションテレフォンから出力されるアバター映像を見ながら、昔から付き合いのある古小恋理と会話を楽しんでいるのです。


『そろそろ私の番だ。ニルトくんを貸して欲しい』


 なるほど。そういうことなのですか。


「ニルトは物ではないのです。私の大切な友人なのです。というか、どうしたのですか? 何か研究に進展があったのですか?」


『そうだね、聞いてくれよ。昨日の午後にアーカイトを見に行ったんだが、分別されていた物が全て接合していたんだ。まるで誰かが修復したようにね』


「不思議なこともあるのですね」


『そうだな。だから私は顧問の化生情花かせいじょうか教授に相談をしたんだが、思いのほかに興味を示してもらえたよ。それで急きょ会うことになってね。持ち出して調べてもらったんだが、驚くことに65億年前の物であることが判明した。以前欠片の状態で計ったときと大きく違う結果だと云われたよ』


「そうなのですか?」


『ああ、文字の専門家にも相談をしてみたのだが、手がかりが無くてすぐには分からないと云われたよ。できればニルトくんにもお願いをして解読を手伝ってもらいたい』


「そうですね。明日お願いをしてみます。それでよいのですか?」


『頼む。もちろん貸しにしてもらっても構わない。なんだったら休日の買い物に付き合ってもいい。もちろん私のおごりでね』


「それは魅力的な提案なのです。ですがお断りします。そうしたことはニルトに言ってあげてください」


『初来愛。ここは冗談を言うところだぞ? 何かあったのか? やけに機嫌が悪いな』


「別に何もないのです。恋理には関係のないことなのです」


 嘘なのです。本当はニルトが気になって仕方がないのです。三人でダンジョンに行き、隠しダンジョンの入り口を見つけたとの報告を聞いているのです。


『話してみろ。それとも私に言えないことなのか?』


「そんなことはないのです。少し疲れているだけなのです」


 ニルトが別の誰かと楽しくしていると、なんだかいらだつのです。

 私も一緒に冒険がしたい。


『ダンジョンで新発見をしたニルトくんが気になるのか?』


「知っていたのですか?」


『やはりね。分かりやすいなあ、初来愛は』


「どうして知っているのですか? この事はまだ公開されていないのですよ?」


『実は私もニルトくんが気になっていた。だから調べていたんだよ。彼女の不思議な魅力についてね。その結果ついでに噂を聞いてしまったんだ。それが本当だったとは思わなかったけどね』


「そうなのですか」


 噂を広める。つまり、価値を高める行為につながる。

 仕方がないことなのかもしれませんが、少し強引な手法のような気がします。

 発見者の情報も漏らしているのでしょうか? もしもそうであるのなら明らかに違反になるのです。

 今度お父様に言って注意してもらうことにした方がよさそうですね。


「ん……」


 そうです。もともとの原因はニルトが悪いのです。

 見ていると胸がドキドキするのです。

 女の子同士で変なことなのですが、一緒に居ると心が落ち着くのです。

 これが好きという気持ちなのでしょうか?


『初来愛? 聞いているのか?』


「恋理。聞いて欲しいのです」


『なんだ? 話をしてくれる気になったのか?』


「恋理は恋をしたことがありますか?」


『ない。という訳でもない』


「そうなのですか?」


 意外なのです。男性が嫌いだと思っていました。


『まあ、その話は今度にしてもらいたい。それよりも恋についてとは、どういう意味だ?』


「私はニルトが好きなのかもしれません。こんなにも落ち着かないのは初めてなのです」


『面白いね。続けてくれ』


「はい」

 履歴。

 2025/7/20 エピソードタイトルの微修正。

 2025/8/14 読みにくい箇所を修正。

 2025/12/26 全文章を見直し、微修正する。


 文章の直しがなければいいなあ。と思っています。

 ニルトの冒険。今後ともよろしくお願いします。

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