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ほんとうのおとうさんですか?

作者: 小波



 よおく顔を観察する。もちろん相手に不審がられないように。これはサングラス越しでも使える。


 ある日男に飢えていた。

ある日というか結婚間も無くから離婚までの私がそうなのだ。だからと言って努力を怠った訳ではない。努力の方向性がかなり歪んでいたのは本当だ。


 夫とすれ違い続けた結果、その時の私は既婚者でありながらシングルマザーの様に彼の帰らない暮らしをしていた。


その結果養われた目が、このひと、まだほんとうのおとうさんになっていないな、と見抜けるようになったのだ。


 産後間もない私にはたくさんの重圧がかかっていた。その大半が初めてのことばかりだった。そして幼稚園に上の子を送っていくとコロナが始まってしまった。県外出身だったのでそもそも知らない人だらけ、そこに不要普及の外出は控えてとスピーカーが走り去る。もう、誰とも喋らない。大部分の人間が疑心暗鬼でおそるおそる生きており、つまらない事で喧嘩もあったのらしい。(バーカウンターで予防接種打つか打たないかで取っ組み合いとか)

 喧嘩になるほど喋るわけもない幼児たちと世間話に飢えた私は切なく窓の外を見る。


 男もそうだけど愛情に飢えていたのだろう。

登園自粛も終わりまた玄関で挨拶をするだけのお馴染みが始まる。だから気づいた。


もしかすると寂しさゆえにじっくり見過ぎた。男親の顔だけを。

おはようございますの後の2秒。目が浮く、なんかこういうタイプのパパが何割かいる。

この人は揺るがない、こっちはお父さんと呼ばせてもらう。おじさんなのだ。ちゃんとした安全な真っ当なおじさん。

方やパパと呼ばれたジャンル、若いだけでは無い。おしゃれかどうかでもない。アンテナにかかった。この人は男を諦めていない。


やっとお父さんの顔になったね。あのひと。


ずいぶんとかかったわね。


落ち着くってこういうことを言うんだなぁと感想を言い合った。

彼は友達の旦那さん、幼馴染で共通の友人であるあの子とそう話していて。気づくとソファに並んでコーヒーを啜るお姉さん二人は揃ってシングルマザーである。



シングルマザーの男を見る目はやっと成長したのだ。



えんじ色で整えられた室内は加湿器と観葉植物しか置いていない。しっとりとした彼女の黒髪と大胆な家具しか置かない部屋から今はひとりが愉しいのと聞こえてくる。


家の外からのランプの灯りが差し込む。雷でも鳴りそうな言葉を無くした空だった。



単純な愛の中で暮らしたい。例えば、

この女友達の様に小さな亀裂は気にもせず大きな不安は絶対に襲ってこないと無意識が教えてくれる関係を。


ソファ席から移動してコーヒーのおかわりを

勝手知ったる私が適当な手つきで注ぐ。



もうあんたと暮らしたいよと悪戯に微笑む彼女と

ほんとーうにいいの?と了解を送る私。



好きなひと出来るかも知れないよ?



いやあたしはまだまだ先でいい。



でもずっとはいやだよね?



男運残ってるかな‥



何言ってるのー

このままな訳ないよ。



(だって幸せそうだからね)


そうかなー


預言者の様にわたしは

意味ありげに彼女に微笑む。




雲の奥で紫色の稲妻が光る。


殴られた様な衝撃を体じゅうに吸い込んだ。







ありがとうございます。また書きます。

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