表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/91

ファーガソン公爵夫人

王宮でグラントリーと別れ、ファーガソン公爵家に向かうことになった。

「アレステア、くれぐれも頼むよ」

「お任せください、殿下」

ダークシュタイン伯爵領では名前呼びだったのが、ここでは殿下と呼んでいる。


ファーガソン公爵家の馬車にジェネヴィーブとチェリシラが乗り、最後にアレステアが乗り込んでファーガソン公爵家に向かう。

ダークシュタイン伯爵家も王都にタウンハウスがあるのだが、警備体制が弱いと言ってグラントリーとアレステアから却下されたのだ。

ジェネヴィーブとチェリシラは領地に引きこもっていたので、自分の家のタウンハウスは10年以上行っていないから使用人の顔も分からない。

ダークシュタイン伯爵夫妻が年に数回滞在するだけなので、使用人も少なく警備もゆるい。

悪意のある者が使用人を装って、ジェネヴィーブとチェリシラの側にいくかもしれないのだ。


「父は王宮に出仕しているので、夜に紹介しましょう。

まず、母に紹介します」

アレステアはファーガソン公爵邸につくと、出迎えの家令に公爵夫人に伝えるように言う。



ファーガソン公爵夫人ウィンディーヌは、美しい夫人だった。

そして、白い肌に真っ白い髪が妖精のようである。とても18歳の息子がいるようには見えない。

「母上、こちらが手紙で連絡していた、ダークシュタイン伯爵令嬢です」

「まあ、よくいらしたわ」

両手を頬に添えて微笑むさまは、少女のようである。

「アレステア、可愛いご令嬢ね。

時々、話相手になってくれると嬉しいわ」


ジェネヴィーブは、公爵夫人の瞳が薄いピンク色なのに気がついていた。

アルビノだ。それは色素が薄く、陽の光に弱い肌。弱い身体。

アレステアを産んだ?

アルビノの身体が出産に耐えられるのだろうか?

ジェネヴィーブが横目でアレステアを見れば、アレステアは正しく理解したようで、

「母上は、僕を産んでさらに身体を弱めてしまい、屋敷から出ることはほとんどないのです。

ジェネヴィーブ孃とチェリシラ孃が、母のお茶の相手をしてくれると喜ぶよ」


「田舎の話だけど、たくさんお話したいです」

チェリシラが、公爵夫人の側に寄って跪き笑顔を見せる。


アレステアにとって、母親は美しいが、チェリシラは生命の輝きが弾けるようである。

崖から落ちてきたチェリシラを受け止めた時、王太子を殴った時、キラキラ輝いて見えた。

誰もが近寄りがたい雰囲気の母親に、躊躇なく寄り添う。


「ジェネヴィーブ・ダークシュタインです。

ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。

こちらは、妹のチェリシラ・ダークシュタインです。

ジェネヴィーブ、チェリシラと呼んでいただけると嬉しく思います」

ジェネヴィーブがチェリシラの横に跪くと、手を差し出した。

「頼りないかもしれませんが、医術の心得があります。

脈を見てもよろしいでしようか?

公爵家にお世話になる以上、滞在費相当をお返ししようと思います」


医術だと!?

ダークシュタイン伯爵領で、ジェネヴィーブの抜きん出た才能の結果を見たが、どれほどの能力があるのだろう。

アレステアは、ジェネヴィーブこそがこの世の奇跡かもしれない、と思った。


「公爵夫人、私は外に出れない身体で生まれました。しかも弱く何度も死にかけました。 けれど、姉の治療が私を変えました。

始めてお会いする私達を信用できるはずがないのは承知してます。ただ、毎日脈や体温を測ることで、体調管理ができます。

一緒に住んでいるからこそ、できるのです」

チェリシラの力説に、ウィンディーヌは困った顔をしても、ジェネヴィーブに手を差し出した。


短い時間、ジェネヴィーブは脈を測ると、サイドテーブルのメモに数値を書きこんだ。

「健康な身体にしますなどとは言いません。

けれど、悪化する予兆をみつけ、穏やかにお過ごしできるよう努めます」

脈が弱い、ジェネヴィーブは想像よりひどい状態が表情にでないように心がけた。


様子を見ていたアレステアは、チェリシラの手を取った。

「母上、僕はチェリシラ・ダークシュタイン嬢と結婚しようと思っています」

チェリシラは公爵夫人の前で否定するのは良くないと思ったが、それよりアリステアが僕と自称しているのが気になっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ