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襲撃されるファーガソン公爵邸

ファーガソン公爵邸には、興奮した民衆が集まっていた。

それを扇動しているのは、天使教であるのは間違いないが、宗祖の姿は確認できない。


王宮とファーガソン公爵邸は至近距離であるが、アレステア達は群衆に邪魔されて、思うように進めない。

馬で周りを蹴散らして進むのがやっとである。

だが、ファーガソン公爵邸の辺りで騒動が起こっているのは間違いない。

「どけ!」

第2部隊が先鋒をして、人垣を分け入り道を開けていく。

少しづつ近づいて、公爵邸が見えるようになると、公爵邸の庭から人の悲鳴や、剣の振う音、喧騒が聞き取れてくる。


ジェネヴィーブとチェリシラは、公爵夫人トルテアの部屋にいた。夫人だけでなく、逃げなかった侍女達も集まって避難しているのだ。

ヤーコブが部屋に待機していて、部屋の外にはファーガソン公爵家の私兵が警護している。


庭では、キラルエと側近達、ゼノンとファーガソン公爵家の私兵が、侵入してくる人間を処理して、屋敷の中に押し入るのを止めている。

公爵邸の敷地内ならば、侵入してきた賊ということで処断ができるが、屋敷の外の押し寄せて来る人並みをまとめて処理するわけにはいかない。

いくら剣の達人が揃っていても、次々と塀を乗り越えて侵入してくる民衆の数が多すぎる。

しかも、目の前で斬られているのに、怖気ることなく突進してくるのだ。


宗祖が、ファーガソン公爵邸にいるダークシュタイン姉妹を奪えと言ったのかもしれない。

陶酔している、もしくは酔い痴れている、そういう状態の民衆には善悪の判断がないのだろう。



「お姉さま、殿下が危険です。あまりに暴徒が多すぎます」

チェリシラが、ガラス扉の外のバルコニーを見ながら言う。

「煙幕できますよね?」


「ダメ、ダメよ! チェリシラ!」

ジェネヴィーブはチェリシラの考えが分かって、止めに入る。


「こんな理不尽な事に、負けるのですか!? 私とお姉さまなら、きっと勝てる!」

チェリシラがジェネヴィーブの手を取れば、ジェネヴィーブは一瞬の躊躇(ちゅうちょ)のあと(うなず)いた。

覚悟を決めると、姉妹の行動は早かった。


「トルテア様、侍女の皆さんも、これから起こることは決して他言なさらないでください」

ジェネヴィーブがバルコニーで準備をしている間に、チェリシラは部屋にいる公爵夫人達に秘密を守ることをお願いする。


「大丈夫よ、ここにいる侍女達は、ファーガソン公爵家に忠誠を誓った者達だから。

今までも、私の存在を外に漏らすことはなかったわ。

今も、逃げずに私達を守ろうとしてくれているのが証明よ」

アルビノの公爵夫人、その情報が外に漏れる事はなかった。

信用している、とトルテアが侍女達を庇えば、侍女達も頷く。


「ヤーコブ、合図をしたらこの煙幕球を前と左右に投げて。煙が薄くなったら次々に投げるの」

公爵夫人の部屋は2階にあり、夫人の肌が日光に弱い為、公爵が月夜を楽しめるように大きなバルコニーを設置している。


「キャンドルやランタン、照明器具を集めてください。

合図をするまで灯りを消していて、一度に点火できるようにしたい」

ジェネヴィーブはバルコニーのガラス扉を開けて、サッシに照明器具を並べて行く。

「チェリシラは、煙幕が張れるまでバルコニーに隠れていて。

私が守るから、思う存分やりなさい」


「今よ、ヤーコブ、投げて!」

バルコニーに隠れながら、ヤーコブが喧噪の中に煙幕球を投げ入れる。

煙幕がバルコニー全体を包みこむと、驚いた人々の視線がバルコニーに集まる。


キラルエとゼノンは、剣を持つ手に緊張を残しながら、これがジェネヴィーブの仕業だと確信していた。


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