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離宮の崩壊

貴族令嬢が拐われ、教会の地下に閉じ込められていたことは、早急に王宮に連絡がいった。

受け取ったのは、王ではなく王太子グラントリーである。

グラントリーの後ろには、ナバーハ総司令官が控えている。

「ダークシュタイン伯爵令嬢お二人とも、無事に保護いたしました。

教会で天使教の司祭を捕縛」

グラントリーに報告しているのは、第2部隊長だ。

「それと、教会の地下には礼拝堂があり、若い女性とみられる遺体がみつかりました。その臓器が天使像に(ささ)げられていました。

それと、地下の祭壇に灯されていた蝋燭(ろうそく)は、薬物が練り込まれているようです。子細は調査中です」


「殿下」

ナバーハ総司令官が、拳を握りしめるグラントリーに声をかける。


「大丈夫だ、総司令官。

満月とは、このことなんだな。満月に儀式をする若い女性として、ダークシュタイン伯爵令嬢が狙われた」

「殿下、ギラッシュ夫人が天使教を庇護しているのは有名な事であり、宗主が度々離宮を訪れています」

ナバーハ総司令が、王を引き下ろす好機と進言する。

天使教の宗主は、離宮で、王と愛妾と懇談しているのだ。


「総司令官、すぐに離宮を捜査してくれ。蝋燭も押収するように」

ギラッシュ夫人から王へと責任を追及できるチャンスであると、グラントリーも考える。

たとえギラッシュ夫人が否定をしたとしても、天使教を擁護していた立場で何も知らないは通じない。

国教は天使教を宗派から外し、邪教とするだろう。


母上、貴女の苦しみを一つ取り除けるでしょうか。

「総司令官、王妃陛下の警備を増やすよう、第1部隊の近衛に通達してほしい」


グラントリーは、ナバーハ総司令官が頷いて指示を出すのを確認して、第2部隊長に向き直る。

「保護したダークシュタイン伯爵令嬢は、ケガはしていないか?」


「教会を爆破した時にケガを負われてますが、かすり傷で、すでに治療を終えています」

第2部隊長は、言いにくそうに続ける。

「ご令嬢が作られた爆薬で建物を爆破することで、我々に居場所を教えるのと、逃げ道を作ろうとしたようです」


『ご令嬢が作られた爆薬で』


は!?

どこまでも規格外なんだ?

ジェネヴィーブのしたり顔が目に浮かんで、グラントリーは片手で口元を押さえるが、顔がにやけてくる。


「殿下、ご令嬢が爆薬を作るなど、ありえるのでしょうか?」

一緒に報告を聞いている総司令官が、否定的に確認してくる。


「東部の干ばつで、ダークシュタイン伯爵領だけは気候予想と、農地改革で被害が少なかった。それの中心となったのは、ダークシュタイン伯爵令嬢だ。

先験的な発想と、(いしづえ)となる深い知識。私は、令嬢なら爆薬も作れると考察する」

そう言いながらもグラントリーは、物悲し気な表情を一瞬見せた。


だからこそ、君こそが、この国の王妃に相応しいと思った。隣に立つ人として望んだ。



さほど時間が経たないうちに、離宮から伝令が伝えられた。

「ギラッシュ夫人の寝室から、王に盛られたと同じ毒が発見されました!」


グラントリーもナバーハ総司令も、思いもしなかった報告にいきりたつ。

「すぐにギラッシュ夫人と家族を、王暗殺未遂で捕縛(ほばく)しろ!

離宮の人間は、全員拘束だ!」

グラントリーが声をあげれば、誰一人逃すな、と総司令官が(げき)を飛ばす。



離宮は騒乱となっていた。

「離しなさい! 無礼は許しません!

私の言葉は、陛下の言葉です!」

拘束されたギラッシュ夫人が抵抗するも、鍛えられた騎士に敵うはずもない。


皮膚が変色して部屋に閉じこもっていたヘンリエッテ王女も、引きずり出されている。

「僕は王子だぞ!」

シューマンが叫ぶ。


「陛下に盛られたのと同じ毒が、発見されました」

近衛隊長が静かに告げると、シューマンは膝をつき、ギラッシュ夫人は叫んだ。


「そんな事、知らない!!」



近衛隊長はギラッシュ夫人と王子、王女を牢に入れると、王の執務室に行き、告げた。

「陛下に毒を盛った犯人を捕縛しました。ギラッシュ夫人が、毒を持ってました」


「そうか」

王は、愛妾の元に行くのを止めたから、愛妾が毒を盛ったと考え、愛妾を(かば)おうとは思わなかった。


近衛隊長は、王の様子を確認して総司令官に報告すべく、王の警護の近衛の騎士に声をかけると、王太子執務室に向かった。


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