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王の罪

ナバーハ司令官は、グラントリーを待っていたかのように扉を開けていた。

「殿下、申し訳ありません」

第2部隊がジェネヴィーブ達を守れなかったことを言っているのだろう。


「いや、第2部隊が優秀なのは分かっている。彼らが出し抜かれたのなら、誰であってもダメだったろう。

だが、彼女達は必ず生きて戻って来る」

グラントリーが首を横に振り、勧められたソファに座る。

「不思議に思うかもしれないが、彼女達は信じさせる何かがあるんだよ」


グラントリーの表情を見てナバーハ司令官は、ジェネヴィーブの婚約者候補辞退を残念に思う。

こんなに信頼があるとは、思ってもいなかった。

「殿下」

ナバーハがグラントリーにかける声が低いから、グラントリーも気を引き締める。

「殿下、襲撃犯として捕縛した奴らは、第4部隊の兵士達でした」


グラントリーは一瞬瞬きしたが、すぐに拳を握りしめた。

「貴族でなくとも、第4部隊は国の軍隊だ。しかも王都の安全を守るための軍だ。

それが、貴族令嬢を襲っただと?」

拳は震える程、力が入っている。


「第4部隊は、天使教が説法をする時に、街が騒乱にならないように警備にあたっている軍でもあります」

天使教の宗祖、はギラッシュ夫人が離宮によく呼んでいるのは分かっている。

「陛下自身もギラッシュ夫人を介して、天使教と接点があると考えるべきでしょう」

ナバーハ司令官が言う事は、グラントリーだって分かっている。

「拘束した襲撃犯が、火矢での襲撃も白状しました」

そして、とナバーハは続ける。

「火矢で襲撃した日は満月で、清めた火矢だから殺してもいい」


力なくグラントリーが立ちあがる。

「それは、ジェネヴィーブが狙われる理由と関係ある・・・ということだ」

まるで、何かの宗教行事のようではないか。

「火矢で狙われた時は、学院でのことがあって、恨みからのものだと思っていた」


「王都で貴族令嬢が乗る馬車が、火矢で襲われた。

我々が、何もしなかったと思いますか?

第2部隊、第3部隊総力で捜査しましたが、横やりが入りました」

ナバーハ司令官のいう事は、グラントリーと同じ状況だったということだ。


「私も同じだ。これで、王太子と軍総司令官より権力者が犯人を隠匿(いんとく)していると考えるべきだろう」

「同感です」

それは王しかいない。


「こちらです。

襲撃犯を尋問している牢にご案内します」

尋問ではなく拷問であろうが、ナバーハ司令官の後をグラントリーが歩く。


『火矢で襲撃した日は満月で、清めた火矢だから殺してもいい』

先ほどの言葉が、グラントリーの頭の中に蘇る。

では、今日は満月でもなく、清めた武器ではないから殺してはいけない、という事だ。

だから(さら)った理由というなら、生きている。


薄暗い地下の尋問室には、男達の呻きと血の匂いが充満していた。

襲撃犯のような下っ端に、襲撃を依頼した人物を知らないだろう。

今は、それよりジェネヴィーブの居場所だ。


「司令官、攫われたジェネヴィーブ達の居場所は分かったのか?」

司令官は首を横に振る。

祭壇に飾られた蝋燭に、睡眠効果があって、隠し扉からダークシュタイン伯爵令嬢達を運び出したらしい。



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