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妹の覚悟

王もこれ以上は強く言う気が無いらしく、興味はアレステアの横にいるチェリシラに移ったようだ。


「妹も、姉のように才覚があるのか?」

チェリシラが答えるより早く、アレステアが王に答えた。

「いえ、彼女は私の婚約者としてご紹介のために同行させました」

アレステアは言葉を含ませることなく言い切った。


「ファーガソン公子の結婚相手として、マリリエンヌ王女を押していたはずだが?」

王も表情を変えずに、アレステアに確認する。

愛妾が産んだ王子、王女は王位継承権がないため、降嫁が望まれる。公爵家ならば、王にとって一番望む形になる。

だが、反対に降嫁される側の貴族にとって、持参金以外の魅力はない。

それどころか、王が交代した時に、正妃の子供である次代王が愛妾の子供を疎むことはよくある事だ。

降嫁を受け入れた時点で、次期王の時代には重職から外される可能性が高い。

愛妾の実家が高位貴族や王族ならばともかく、現王の愛妾の実家は男爵家。

王が陞爵しようとしたが、実績がともなっておらず、貴族院の反対で未だに陞爵はかなっていない。

貴族院の裏に王妃の実家がいるのは分かりきっている。


「もったいないお話ですが、彼女に出会った瞬間に彼女しかいないとわかりました」

王も愛妾の子供のリスクを分かっているだけに、強く勧めれて貴族の反感をかうのは得策ではない。

それでも、王子、王女が高位貴族に縁付けば、大きな力になることは間違いないのだ。

自分が在位している間に、確固たる地位を確率すればいいのだ。

ファーガソン公爵家は、絶対に取り込まねばなりない家だ。


だが、王太子と公子、二人が同じように伯爵家の娘を望むという。

しかも、視察に行ってそれぞれが見初めたなどあるのか。たしかに美しい娘達だ、質素な装いをそれなりのドレスを着せれば更に美しくなるだろう。けれど、美しい娘などたくさんいる。

王は、少し考えて笑顔を見せた。

「婚約が決まったことを祝わねばなるまい。

大事にしてやれよ」

二人同時にというのは、ありえない。

王家の縁談を断る為というのが、真実であろう。それには、田舎娘はうってつけだ。

田舎娘など、直ぐにボロを出すに違いない。


気持ち悪い。

それが、チェリシラの謁見の感想である。

王と王太子、王と公子、それぞれが会話しているようで、探り合っているようだ。

この場にいるのに、自分の話をされているのに、蚊帳の外である。

これが、王の謁見。


そして、ここではダークシュタイン伯爵家の娘など、取るに足りない存在なのだ。

利用できるかどうか、が人間の価値になっている。

お姉様を、そんな基準で判断するなど認めない。 

お前なんて、お姉様の才能の前にひれ伏すがいい! って言いたいけど、言わない。今の自分には何の力もないから。

もし、ここで羽を出しても、王の命令で壁際に並んている近衛兵に取り押さえられるだけだ。


王宮に入ってから、グラントリーとアレステアの雰囲気が変わった理由もわかった。


王宮が魔宮って、お伽噺みたい。

王太子と公子は、まだお姉様の能力の全部を知らない。

天気観測とそれからの予測、農地改革と土木、それだけだ。


私が生き残れたのは、姉のおかげだ。

羽を隠す練習は激痛に(さいな)まれた。。それをお姉様が処方した痛み止めで乗り越えたのだ。

羽が隠せなかったら、人をとして生活することは叶わない。

痛みを感じさせず動ける薬。それは命尽きる瞬間まで戦う兵士を作れる悪魔の薬だ。

痛みは身体を守る為に、必要なのだ。


絶対に、お姉様を守る。


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